ラ・ベート 〜アレは本当に動物だったのか〜   作:川内かまぼこ

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にゃんにゃんニャニャーン。


猫の話

 私は以前に豚から産まれた猫の話をしたことがあるが、それはウェールズ伝承やアーサー王物語に登場する怪猫キャスパリーグのことである。また、私が以前人類の友は犬だと答えたが、人類を最も活用している動物は猫だと私は思う。猫の愛くるしさに隷属された人間のなんと多いことか。犬は狩猟文化が生んだ人類の友であり、猫は穀物文化が生んだ人類の友であるが、現在では犬に比べて愛玩用にしか飼われることのなくなった猫。まるで、長靴を履いた猫である。しかし、猫には前項で述べた通り、怪魔としての性質もある。怪猫、化猫、猫又、魔女の使いの黒猫。魂が九つもあるのは猫だけじゃないだろうか。私が、大学一年生の頃四年生の先輩と全国を旅していたのは読者諸君にはもう言ったことだが、その旅の最中でこんなことがあった。私と先輩は基本的に二人で旅をしたのだが、そこにある時同行者ができたことがあった。一匹の黒猫である。彼の目的は生き別れた兄弟を探すことだった。なぜ、そんなことがわかったかというと、本人がそう言ったからである。

 

******

 

「先輩がさあ、今度結婚するんだけど、お祝い何がいいかな?」

 

いつものように、唐突に話題を振ってきた東風先輩。いつものカフェテラスのことである。

 

「先輩の先輩ですか?」

 

「そうそう、奥さんの修行期間が終わって、宮司になったからようやく結婚できるんだって」

 

「奥さん宮司なんですね」

 

女性の宮司とはこれまた珍しい役職の奥さんをお持ちだ。では、夜の営みでは神主プレイとかするのだろうか。神主プレイってなんだ?

 

「なんか、変なこと考えてないスイカちゃん」

 

「西瓜です。罰当たりなことなんてこれっぽっちも考えてないですよ」

 

意外とスイカちゃんすけべぇだからなと先輩はケタケタと笑った。自分は西瓜ですっと答える。それにしても、この先輩にも仲がいい先輩がいたのだなと感心した。それから、その先輩の先輩がどういう人なのかと気になってくる。

 

「先輩の先輩って、何してる人ですか」

 

「骨董屋さん。本業は呪い屋だけど」

 

やっぱりというか、先輩の先輩もろくな人じゃないかもしれない。

 

「ああ、いや呪い屋って言っても呪いをかける方じゃなくて、呪いを研究して対処する屋さんだよ」

 

「いや、現代日本で呪いを生業にする人が儲かるんですか?」

 

「まあ、ほぼほぼカウンセラーみたいなもんかな。そこそこ儲かってるらしい」

 

それはほぼほぼ詐欺ではと思うのだが。そもそも、現代に呪いなんてものが存在するのだろうか。ホラー映画じゃないのだから。まあ、自分や先輩なんかは呪いで産まれたと言っても過言ではないけど。

 

「思い出すなあ。先輩には大学1年生の時に研究を手伝わせてもらってさ。よく一緒に旅してたよ」

 

「大学1年から何してんですか。授業の単位大丈夫だったんですか?」

 

「まあ、何個か落としたのがあるけど。進級は先輩がなんとかしてくれた」

 

「先輩の先輩何者。旅にはその先輩と2人で行ってたんですか?」

 

「ああ、基本的にはね。たまにアンちゃんや先輩の奥さんが一緒に来た時もあるよ」

 

という事は先輩の先輩の奥さんと先輩は面識があるのか。庵さんとも面識があるという事は、結婚式には先輩と庵さん一緒に行くのだろうか。流れで、自分達も結婚するとかいいださないといいが。というか、庵さんのウエディングドレス姿想像できない。絶対にタクシード着る。

 

「そうそう、佐賀に化猫伝説調べに行った時はビワさんとマロンさんと一緒に言ったな」

 

「急に知らない人の名前が出てきたんですけど」

 

「ビワさんは残って、俺とマロンさんは対馬にヤマネコ見に行ったんだよね」

 

多分、ビワさんかマロンさんのどちらかが先輩なのだろうなと思いながら、自分は次の授業の前に一服するために早めに席を立つ。

 

「マロンさん元気かな〜」

 

マロンさんが先輩の先輩か。本名はなんだろうか、栗松とかかな。

 

******

 

「オイラはオメェさんがいうアレじゃにぇーだよ」と黒猫は前脚を舐めながらいう。私と先輩が佐賀に向かうために乗ったフェリーでの話である。私は、こんなにも話をできるアレと接触したことがなかったので、興奮のあまり数々の質問をしてしまった後に言われた言葉だ。「もちろん、先輩の方がいうような呪いで産まれたもんでもにぇーだよ」と愛くるしくゴロゴロと転がる黒猫を私と先輩は見つめる。「確かにオイラが人間だった時に猫型のアレに喰われたのは確かだにぇーよ。だけど、いつのまにかオイラの方が主人格になったんだにぇーよ。そう考えるとオイラはオメェさんらが探してるアレと呪いのハーフってことかもにぇーよ」と独特の喋り方をする黒猫に私はますます興味を示して質問を重ねる。「では、あなたは元人間ということですか」と聞くと「さあにぇーよ。オイラは昔の記憶が曖昧だからにぇーよ。オイラが覚えているのが、この主人格の記憶なのか、別のものなのかもわかんにぇーよ。ただ言えることはオイラみたいなのは他にもいるんじゃにぇーよ」と答えた。この不思議な猫と先輩との旅はしばし続く。

 

 『アレは本当に動物だったのか』

 第十三章 話しかけてきたアレ 一部抜粋

         著者 梅咲東風




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