ラ・ベート 〜アレは本当に動物だったのか〜 作:川内かまぼこ
蛇とは古来より不死の象徴とされ、さまざまな神話で語られてきた。一説によると蛇とは古代の地母神の象徴であるため、しばしば蛇が悪者として登場するのは男神が最高神に立つために行われる古き女神を引きづり下ろすための儀式と言えるらしい。日本でも白蛇は神の使い、アオダイショウは家を守っているから傷つけてはいけないと言われている。蛇とはそれほどまでに神聖な生き物なのだ。これは私と先輩が旅をする前に起こった出来事である。先輩のところにとある呪いに関する依頼が来た。先輩は呪いを専門に研究しており、その筋では有名な存在である。そんな先輩に呪いを解いてほしいという依頼が舞い込んできたのだ。先輩と私はすぐさま依頼主のところへと向かった。依頼主は蛇に取り憑かれていると自ら語る。いつも眠りにつくと夢の中で、蛇が現れて首に巻き付いてきて締められるという事が続くそうだ。苦しくて目が覚めると首には蛇に絞められたような跡がくっきりと残っているという。たしかに、依頼主は首に包帯を巻いていた。先輩は依頼主に「何か心当たりはあるのか」と問いかける。すると、依頼主は数ヶ月前に白蛇を誤って殺してしまったことを伝えてきた。先輩はさらに首の包帯をとって締め跡を見せるよう依頼主に言い放つ。依頼主は包帯をとって蛇に絞められた跡を見せてきた。
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いつものカフェテラス。いつもは先輩と示し合わせた訳ではないのだが、なんとなく集まって他愛もない話をしている。だが、今回は先輩直々に話があると呼び出されたのだ。いったいなんのことか、どうせくだらないことだろうと思いながら先輩を待つ。
「は、はじめまして」
向かいの席、いつもは先輩が座る席に女性がいきなり座ってきた。なんというか、見るからに地雷系前回のファッションのこの女性。自分はこの女性を知っている。ここ数日、自分の後をつけてきていたストーカーだ。
「ラ・ベートさま、お会いできて光栄です!
「は?」
いきなりの発言に思考が停止する。この娘はいったい何を言ってるんだ。
「あ!すみません、その前に自己紹介をしないと
と自身の頭をコツンとたたき、ペロッと舌を出す。その舌はスプリットタンになっており、どことなく蛇を彷彿とさせる。図らずも少しゾッとしてしまった。
「美鈴は文学部の1年生で
この娘は、さっきから誰に向かって何を話しているんだろう。
「待って、君は勘違いしてる」
「どうか美鈴と呼んでください」
「・・・美鈴さん、君は勘違いしてる。まず、自分はラ・ベートじゃない。ラ・ベート教とかいう新興宗教とも全く関係ない。今すぐ、退会するんだ」
「いいえ、あなたは美鈴のラ・ベートさまです。だって、ラ・ベート様は美鈴をお兄ちゃんから助けて下さったじゃないですか」
なんのことを言っているのかさっぱりわからない。正直、誰か助けてほしい。先輩早く来ないかな。
「あの男ならきませんよ」
「え?」
「ラ・ベート様にたかる蝿は美鈴が処理しました」
「東風先輩をどうしたんですか?」
「あんな男どうでもいいじゃないですかー。ラ・ベート様にはもう美鈴がいるんですから」
この美鈴という女性、話が全く通じない。というか、先輩はいったいどうなった。すぐさま、スマホで先輩に連絡をとる。あの先輩が、そうやすやすと死なないことはわかっている。しかし、連絡は繋がらない。
「ラ・ベート様、あんなのほっといて美鈴と交流を深めましょう」
「先輩に何をしたんですか」
「あんな奴が、今までラ・ベート様の周りを付き纏っていたなんて本当に信じられないです」
「先輩に何をしたんだ」
美鈴は答えない。ただ、自分がやったことをさぞ誇らしげに褒められるのを待っている。
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結論からいうと依頼主は誰にも呪われていなかった。依頼主は、先輩に依頼をした次の日に首吊り自殺をしたのだ。先輩はいつも言っていた。呪いに最もかかりやすいものは、思い込みが激しいものだと。病は気から、信じる者は救われると言うように、何事も思い込むことによって人は強くも弱くもなれる。「呪いとは汚れだ」というのが、先輩の口癖だった。怒り、妬み、劣等感、罪悪感、それらの負の感情が人の心を蝕む。先輩曰く、今回の件はそれ以前の話だという。私が以前紹介した
『アレは本当に動物だったのか』
外伝1 存在しなかったアレ 一部抜粋
著者 梅咲東風
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