ラ・ベート 〜アレは本当に動物だったのか〜 作:川内かまぼこ
七つ大罪と呼ばれる罪があり、即ち「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「強欲」「怠惰」「暴食」「色欲」の七つである。この元となったと言われているのが、八つの枢軸罪と呼ばれるもので、前半に述べたものに「虚飾」と「憂鬱」をたして「嫉妬」を引いたものがそれだ。「虚飾」それは産まれたままの自分を過度に着飾ること。人間が初めて犯した罪である。善悪のきのみを食べたアダムとイヴが一番最初にしたのが産まれたままの姿を隠す事だった。つまり、服を着たのである。では、服を着ることが罪になるのだろうか。それでは、次は「色欲」の罪に当てはまることになる。現在の人類では産まれたままの姿に欲情するなと言われても、そんなこと仕方がないとしか言えないではない。それほどまでに人間のうちには「虚飾」の罪が染み込んでしまっている。少し話が逸れてしまったが、今回は読手諸君にこんな話を紹介したいと思う。これはとある小学校で起こったことである。その小学校では
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今日は皆が待ちに待った学園祭、自分は所属しているコスプレサークルのメイド喫茶でメイドとして働いていた。この日のためにサークルの子たちが手に寄りをかけて作ってくれたチャイナ風メイド服である。我ながらかわいいと大満足であり、作った本人たちも絶叫ものだった。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
しかし、自分は表情がこの顔で固定されているため、接客が苦手である。だが、そこがいいと結構指名が入っていた。先程きた東風先輩たちも自分を指名してくれたのだ。ちなみに美鈴はローアングルからの写真を撮りまくっていたので出禁にした。
「なっちゃん、ご主人様からご指名でーす」
なんやかんかしている間にまた指名が入った。やれやれ人気者は辛いと思いながら、指名してくれたご主人様のところへと向かう。
「ご指名ありがとうございます。チャイナメイドのなっちゃんです。ご注文お決まりですか?」
自分でも棒読みだなと思えるぐらいの演技力だが、お客さんの中には寧ろこれがいいという人がいるらしい。目の前のパーマで無精髭で目つきが悪く目元の隈がすごいガタイがいいおじさんもその口なのだろうか。
「はじめまして西瓜那月くん。私の名前は
と目の前の客は自分にだけ見えるように警察手帳を見えてきた。
「警察が自分になんのようですか?」
「君の真上の階に住んでいた男性の話、といえば君も察しがつくんじゃないか?」
そういえばそんな迷惑なやつがいたなと思い、とりあえず柚子原に水を注ぎ、自分は向かいに座った。
「最近彼が自宅に帰らずに行方不明になっている事は知っていることだろう」
「ああ、そういえば最近見ませんね」
「彼は失踪する前に君の部屋を訪れたことがわかっている。随分と君に執着をしていたようだな」
「フッ」
思わず笑いが吹き出してしまい、柚子原を訝しめてしまった。
「何がおかしいのかな?」
「いやただ、自分がストーカー被害で申し出た時は実害がないからって一切請け負ってくれなかったのに、そのストーカーしていた犯人が失踪したら真っ先に自分が疑われるなんて皮肉だなと思っただけです」
「…………」
柚子原はジッとその目つきの悪い目をさらに悪くして自分を睨みつけてくる。
「彼について知っていることはあるか?」
「知りませんよ。自分を疑うなら死体が出てきてからにしてください」
まあ、もし出てきたらの話だけどと内心思いながら自分は席を立つ。そして、出口を指差して柚子原に言った。
「ご注文がなければ出て行ってくれますか?営業の邪魔なので」
「………………………」
柚子原は押し黙り、注がれた水を一気飲みすると立ち上がり出口を目指す。しかし、去り際に自分に対して忠告をする。
「今後、ストーカー被害に遭いたくなければ格好を見直す事だ。男なら男らしい格好をすれば君に引っかかる馬鹿も減るだろう」
この言葉に自分は納得がいかなかった。
「白鳥になれない醜い家鴨の子は、自分で着飾らないでどうやったら美しくなれるんですか?」
「は?」
「テメェらのために着飾ってるわけじゃない。自分は今よりもっと綺麗な自分になりたいから着飾ってるんだよ」
勢い余って中指を立ててしまったので、柚子原が何かいいそうになったが、一部始終を見ていたサークルの子たちが止めに入る。
「ご主人様お出口はあちらですよ」「さっさと行ってらっしゃいませご主人様」「もう2度と帰ってきやがらないでくださいご主人様」
大量のメイドたちに圧倒されたのか、柚子原は舌打ちをして出て行った。
「なんなのあいつ、私たちのなっちゃんに向かって」「なっちゃん気にすることないよ」「なっちゃんはそのままが1番かわいいよ」
サークルの仲間たちはそれぞれの言葉で慰めてくれる。自分はそれがとても嬉しかったし、同時に悲しかった。この人たちは自分の本当の姿を見ても同じことを言ってくれるだろうか。
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日を追うごとに家鴨の子たちはいなくなり、ついに最後の一匹になってしまった。例の羽毛が生えない家鴨の子である。教師陣は最初猫か何が入り込んでいるのかと思ったが争った形勢もなかったために人が入り込んでいるのではないかと疑ったそうだ。そこで、教師陣は夜中に家鴨小屋を監視することにした。夜がふけていき、12時が回った頃だ。ゴキュゴキュッという音が家鴨小屋から聞こえてきた。教師陣は急いで家鴨小屋に入り、中を懐中電灯で照らす。そこにいたのはまるでパッチワークのようにつぎはぎの羽毛を着て、親鳥の血を啜る家鴨だった。ひとりの教師が錯乱して持っていた棒でその家鴨を叩き殺したという。他の教師陣は恐怖のあまり、その場から逃げ出した。次の日、教師陣は改めて小屋に出向いたところ、そこに親鳥はおらず死体すらなかったという。しかし、小屋の隅っこにあの羽毛が生えていない家鴨の子が何かに何度も殴られたような状態で死んでいたそうだ。
『アレは本当に動物だったのか』
第十七章 生まれてきたアレ 一部抜粋
著者 梅咲東風
誤字脱字などがあればお教えください。