ラ・ベート 〜アレは本当に動物だったのか〜   作:川内かまぼこ

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狐って美形が多いイメージがありますよね。Sっけのある狐耳美人に踏まれたい願望は全ての男がいだいていると思います。


狐の話

 私が大学生になって4年が経つか経たないかという頃、同じゼミに所属している同輩が『私の先祖を助けた狐』という論文を発表した。その内容は俗に動物の恩返しのような昔話のそれだった。山で罠にかかった狐を助けたことから物語は始まる。先祖の名前は米吉(こめよし)といい、大工をしていた。性格は寡黙で真面目な男で、いかにも職人肌な人間だったという。そして、彼は隠れキリシタンでもあった。ある日のことである。米吉は大工であり、同じ隠れキリシタンだった仲間達と遠出の仕事を終わらせた帰り道で、キリシタンであることがバレ、役人に追われたそうだ。逃げる途中、米吉は他の仲間に先に行くようにというと、役人にわざと見つかり、仲間達がいる方向とは真逆に逃げ、仲間達から役人を引き離した。仲間達はたいそう米吉を心配したが、米吉はものの数時間で皆の元へと帰ってきた。米吉曰く、今朝助けた狐が俺の前に現れて、俺に化けてかわりに役人に捕まってくれたと仲間達に話した。米吉は続けて「あれはきっと神様が俺たちを助けるために使わしてくれた狐に違いない」と言った。仲間達はそうだ、そうに違いないと喜んだ。翌る日、一人のキリシタンが火刑に処されたと聞き、米吉と仲間達はなお一層、狐と神に感謝したという。故郷に帰った米吉達は家族にこの事を話、身代わりになってくれた狐に感謝し、祝宴をあげた。米吉は人が変わったように陽気に騒いだという。そんな米吉は数年後に故郷とは遠く離れた場所で、大事故に巻き込まれ生涯を終えた。家族には遺灰だけが届けられた。

 

*****

 

「狐ってさあ、悪者にされやすいよね」

 

と唐突に話題を変える東風先輩。今まで、昨日起きたとある新興宗教団体絡みの事件の話していたのに、ころころと話題が変わる人である。

 

「確かに九尾の狐を筆頭に、あまりいいイメージはないですね。どちらかと言うと悪戯好きの悪役よりですね」

 

「まあ、その一方で日本には稲荷信仰があるから、どちらとも言えないよね」

 

ちなみに狐はカレーで食べたことがあるよと先輩はケタケタと笑った。日本人と狐との関係は深い、稲荷信仰にしかり、昔話でもよく狐が登場する。狐は時に人に化け、人間を化かす天才として知られる。数多くの話があるのは、それだけ日本人にとって狐は身近な動物だったのだろう。

 

「先輩は伏見稲荷に行ったことありますか?」

 

「あるよ。祐徳稲荷にも言ったよ」

 

「狐って美味しいんですか?」

 

「下処理をちゃんとすれば美味しいよ」

 

というか、この先輩はなぜいつも動物の話をする時に味の話をするのだろう。まあ、気にわなるけど。

 

「なんか狐の話してたら、狐うどん食べたくなったな。おススメのうどん屋があるんだけど一緒にいく?」

 

「奢りですか?」

 

「もちのろん」

 

「一番高いの頼もう」

 

「意外とがめついねスイカちゃん」

 

西瓜(にしうり)です」

 

こうして、先輩と自分はカフェテラスからうどん屋に移動したのだった。うどん屋では、連日流れているとある新興宗教団体のニュースが、また流れていた。信者を洗脳し、金を巻き上げ、暴行し死に至らしめたとして、教祖と幹部たちが逮捕された事件だ。ちなみに奢ってもらったうどんはクソまずかった。

 

*****

 

 とある地域にこのような昔話が語られている。掻い摘んで話すと、ほかの村からやってきた大工達が大事故を起こしたというものであった。その大工のうち一人を火葬したところ、炎の中からカカカッという笑い声が聞こえて来た。燃え残った骨は人間のものとはかけ離れており、どう見ても何らかの四足獣の骨だったという。火葬場にいた人々はその骨を粉々にし、骨壺におさめて供養し、家族のもとに送ったらしい。私はこの話を知った当時、真っ先に同輩の先祖、米吉が頭に浮かんだ。これが、米吉の事を言っているのだったら仲間の元に戻ったのは、本当に米吉だったのだろうか。知る術はない。同輩も今は大学を去っている。ちなみに今、その同輩は狐を救い主の御使とする新興宗教団体の教祖を父親から継いだと風の噂で聞いた。

 

 『アレは本当に動物だったのか』

  第四章 家族は知らないアレ 一部抜粋

         著者 梅咲東風




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