ラ・ベート 〜アレは本当に動物だったのか〜   作:川内かまぼこ

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金魚すくいって、ついやりたくなりますよね。


金魚の話

 私が小学生の頃の話である。私の小学校には生き物係があって、私の所属する教室にも金魚が三匹かわれていた。ある日、私の友人が誰も知らない四匹目の金魚がいると、こっそりと私に教えてくれた。その金魚は恥ずかしがり屋で、水槽の隅にある小壺の中に常に隠れているという。生き物係である友人が餌をやっても、出て来る事はなく暗闇の中、目だけこちらを向いているという。しかし、何故だか水槽を掃除する時に小壺の中を見るといなくなっており、改めて金魚を数えても三匹しかいない。しかし、再び水槽に水を入れるとやはり四匹目の金魚が小壺の中からじっとこちらを見ているという。友人は、毎日のように四匹目の金魚に話しかけていた。その姿は誰が見ても異質そのものだった。

 

*****

 

「見てこれ、かわいいだろ」

 

そう言って、東風先輩はケージの中から黒いウサギを取り出した。いつもの大学のカフェテラスである。

 

「どうしたんですかそれ、たべるんですかそれ」

 

「食べねえよ!彼女が旅行に行くから、その間世話を頼まれたんだ。名前はオディールちゃん」

 

「黒鳥ですか。たしかにウサギの数え方は羽ですけど、鳥じゃないですからね」

 

ん?ていうかさっきこの先輩なんか変なこと言わなかったか。

 

「え⁉︎先輩、彼女いるんですか!」

 

「いるよ。高校の時から付き合ってるよ」

 

「あんたみたいなのにも彼女ってできるんですね」

 

どういう意味だよ。と先輩はまたいつものようにケタケタと笑う。

 

「でも最近あんまりかまってくれなくてさあ。ウサギは寂しいと死んじゃうっていうけど、俺も寂しいと死んじゃうよって彼女にいったらさ。『東風は死んでもいいから、オディールちゃんはちゃんと面倒見てね』って言われたよ。ひどくない」

 

「彼女さん辛辣ですね」

 

「基本的に女の子の方が好きだからね。あの子」

 

どういう経緯で先輩と彼女が付き合うことになったか、気になるところだが、それよりもやらなければいけない事があるので自分は席を立つ。

 

「あれ?どこ行くのスイカちゃん」

 

「西瓜です。ちょっと、図書館に。金魚繚乱という本を読んでレポートを作成しなければいけないんですよ」

 

「金魚繚乱か。ひとりの女を思って、金魚を育てる男の話ねー。俺もオディールちゃんを彼女と思ってお世話しようかなあ」

 

オディールちゃんは、ちょっと嫌そうに先輩に掴まれている両手の中で身じろぎしている。

 

「そういれば、昔小学校で金魚飼ってたな」

 

「ああ、自分のところはメダカでした」

 

自分は生き物係では無かったので、そんなに世話をしていなかったが、ある日メダカが全滅した時は生き物係の子がわんわん泣いてたっけ。と思い出しながら、自分は先輩を置いて、図書館に向かうのであった。

 

*****

 

 事件は突然起こった。クラスの女子が水槽の中にある小壺をわざと落として割ったのである。その女子は友人のことを密かに思っていた。しかし、友人は金魚ばかりに目を向けるため、彼女は金魚に嫉妬し、友人が一番可愛がっていたいない筈の四匹目が住む小壺をわざと割ったのだ。これに友人は激怒した。友人は普段おとなしい性格のため、あんなにも怒った彼を見たのは初めてのことだった。友人は徐に鉛筆を取り出し、女子の右目に向かって突き刺した。教室が、女子の悲痛の叫びとクラスメイトの動揺の叫び声で大騒ぎになる中。友人はひとり、割れた小壺の破片を涙を流しながら拾っていた。いったい、彼の何があんな行動を引き起こしたのか。当時の私は、幼さ故か分からなかった。しかし、今考えてみれば彼はもしかしたら、あの四匹目の金魚に恋をしていたのかもしれない。では、彼をそこまで魅了した四匹目の金魚とはいったい何だったのか、今では知る由もない。その後、友人も目を刺された女子も別の学校へと転校して行った。今日まで、その友人とは会っていない。しかし、確実に言えることは、今でも彼は金魚を愛でているのだろう。

 

 『アレは本当に動物だったのか』

  第六章 友人が見たアレ 一部抜粋

         著者 梅咲東風

 




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