ラ・ベート 〜アレは本当に動物だったのか〜   作:川内かまぼこ

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新キャラ登場!


人間の話

 落語家三遊亭圓朝作の真景累ヶ淵という落語では、心の病は全て神経の所為だとし、妖や霊の類は全て人のうちに潜むとされてる。人のうちには闇が潜む。アレは暗闇から産まれる。ならば人の闇からもアレは産まれるのだろうか。いや、アレらが人に明確な悪意をもっているのは人のうちの闇が原因なのかもしれない。ならばこそ、人の闇から産まれるアレは、どのような存在なのだろうか。豚から産まれた猫、鶏から産まれた蛇、古来より親とは別の種族で産まれた動物は災厄を呼び込むものだ。だとしたら一体、人間から産まれるのはどんな化け物なのだろうか。私から言えることは人間から産まれてくるのだ、鬼であれ、悪魔であれ、とびきり醜悪なものが産まれるに決まっている。

 

******

 

「スイカちゃんおはよう」

 

「西瓜です」

 

といういつものやり取りを言ってみたが、いつものカフェテラスにいつもの席に東風先輩ではない人が座った。

 

「誰ですかあなた?」

 

新手のナンパかと思ったが、どうやら女性のようだ。ボーイッシュな見た目で一瞬勘違いしたが、美人さんだ。それに自分の匂いは同性にしか効かない。

 

「はじめまして、西瓜那月さん。僕は葡萄色庵(えびいろいおり)。一様、東風の彼女をやらせてもらっている者だよ。敬意を持って(いおり)さんと呼んでくれたまえ」

 

先輩の彼女だった。まじで存在してたんだ。イマジナリー彼女じゃなかったんだ。

 

「はじめまして、(いおり)さん」

 

「はいはい、はじめまして。東風のやろうが最近かわいい子と仲良くなったって、抜かしたから釘を刺しに来たけど。よく見たら女の子じゃなくて、男の娘だったんだね」

 

「男の娘じゃないです、ジャンダーレスです」

 

意外と先輩の彼女は嫉妬深い方なのか。

 

「釘を刺すって、具体的に何するつもりだったんですか?」

 

「東風じゃなくて僕にしなよ」

 

いやどうなんだろうか。彼氏いるのにその彼氏にちょっかいを出そうとしている女をナンパする彼女が存在するのだろうか。存在した、目の前に。

 

「東風はやめといた方がいいよ」

 

何かまだ勘違いをしているのだろうか。自分の恋愛対象は女の子である。

 

「あいつ人間じゃないから」

 

「は?」

 

いきなり何を言っているんだこの人。

 

「人間じゃないって、その根拠は何ですか?」

 

「僕、男ダメなんだよね。性的な意味で」

 

初対面の人間に何を話しているんだこの人は。

 

「でも、東風とはできる。それはあいつが人間じゃないからだと思うんだ。確証はないけど女の感ってやつ」

 

「いや、東風先輩はどう見ても人間ですよ」

 

「えー、でもあいつ変だよ。ケタケタって笑うし」

 

たしかに先輩は変な人だが、先輩は人間だ。それは間違いない。

 

「東風先輩とは高校生の時から付き合ってるんですよね」

 

「あーうん、相談にのってもらったのがきっかけで、仲良くなって、そっから成り行き的に?あいつの前では大泣きしたことがあるから、いっかなって」

 

「どっちが告白したんですか」

 

「東風だよ」

 

「意外ですね」

 

先輩はこういう女性がタイプなのか。意外だ、相容れない。

 

「那月ちゃんってさ。僕と同じタイプでしょ。僕、匂いでわかるんだ」

 

「同じタイプ?」

 

「何でか知らないけど、同性を惹きつけてしまう匂いをだしてる。タバコ吸ってるのはその匂いを出来るだけ隠すため」

 

この人はどこまで知っているんだろう。場合によっては先輩には悪いがここで…。

 

「まあ、仲良くやろうよ。東風の友達なら僕の友達だし」

 

「…あなたはどっちですか」

 

さあ、どっちだろうねと庵さんは妖艶な笑みを浮かべていう。そして、立ち上がり「君は男の子だから送らなくていいね」と言った。

 

「最近、ラ・ベートとかいう殺人鬼が彷徨いてるらしいし」

 

「最後に一つだけいいですか」

 

「なんだい?長い付き合いになるんだから、一つと言わずに何個でも」

 

「先輩ってヒモっぽいですけど、実際どうですか?」

 

その質問に一瞬ポカンとした顔になった庵さんだが、すぐにあはははっと笑う。

 

「東風はヒモじゃないよ。授業料も自分で払ってるらしいし、何よりあいつ本だしてるから。あんまし売れてないけど」

 

「ああ、あの本名隠す気0のペンネームのやつですよね」

 

そうそうと庵さんはまたあははっと笑った。

 

******

 

人のうちには闇が潜む。私の母親も大変な闇を抱えた人だった。最終的に一家離散する羽目になったが、本人は現在、別の家族と幸せな生活をおくっている。ならば、私も人間の闇から産まれた存在と言えるだろう。私がどうしようもなくアレに惹かれるのも同族を求めてなのかもしれない。では、私の子供はどうだろうか。もし、私に子供ができたならそれは一体どんな姿をしているのだろうか。という話を先日私の恋人にしたところ、「お前の遺伝子打消してでも、お前似には産まない」と言われてしまった。さて、話が逸れてしまったが、本題に入ろう。人に明確な悪意を持つアレらと共生することができる人間が存在する。私の恋人がその1人だ。そう言った人間にはとある特徴がある。それは、何故か他者を惹きつけるという魅力がある事だ。アレらの中にはそういった人間を利用して狩りをするものがいる。その見返りなのか、襲う人間は宿主に対して悪意や迷惑な感情を抱いている存在だけだ。そういった人間は稀だが、そのような行動をとるアレも稀である。もしかしたら、人間と共生できるアレは人間のうちから産まれたのかもしれない。

 

 『アレは本当に動物だったのか』

 第十章 人間から産まれたアレ 一部抜粋

         著者 梅咲東風




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