例の事件から約一週間が経ち、俺の身の回りは大きく変化した。
まず第一に、客足が以前よりも増えた事。
おそらく、楠木さんが何かしらの手を回して集客率を上げてくれているのだろう。その半分はリコリスだがなんと、東京のリコリス達が住んでいるDAの本部ではお菓子はかりんとうしか支給されないらしくいつも物珍しそうに店内を見て回っている。
リコリスにはDAから料金を支払われているため一応会計はするがほぼ無料の様なものだ。
俺としては賑やかで嬉しくはあるが彼女達が人を殺めた後、もしくは殺める前に寄っていると考えるとなんとも複雑な気持ちにはなる。
第二に、DA本部にもよく呼ばれる様になった事。
第一にも話だがリコリス達が住んでいる本部にはかりんとうのみが支給され、お菓子のレパートリーが少ない。そのため、楠木さんからのお達しでウチに寄ることがないリコリス達のためにも月に数回DAに店を出張させている。
今時の子供にはあまり受けない様なお菓子や古いお菓子も彼女達にとっては新しいものの様で、常に目を輝かせている。
その笑顔が好きで俺自身DAに足を運ぶことが楽しみになっている。
裏の世界で生きていた俺だがリコリスの存在というのはあの日初めて知った。
『リコリス』和名は彼岸花。独立治安維持組織Direct Attack通称DAのもとで訓練されたエージェントであり、彼女達に戸籍はない。
彼女達の仕事は犯罪者やテロリストが事件起こす前に処分をする事だがその活動が公になることは無い。
なぜならDAとは国家の下にいながら、その指揮下にはおらず強力な特権を有している。彼女達がもし誤って公になりそうな行動を起こしたり、隠しきれない事態が起きたとしても組織がそれを揉み消す。
事件は事故へ、悲劇は美談へと塗り替えられる。
今や平和の象徴とされる旧電波塔も、例外では無いとか。
つまり、八年間日本は目立った犯罪がない安全な国──と言うわけではなくただ気づかないうちにその犯罪の種が積まれていただけと言うわけだ。
だから、俺は昔あの男に拾われ裏の世界なんて場所に放り投げられたのだ。完全にリコリスすら必要としなければ俺は何でも屋なんてものは営んでいない。
リコリスは高校生くらいの少女達から構成され、彼女達は女子高生に扮して社会に紛れ込んでいる。たがら、誰もその存在に気づくことは無い。まったく、物騒な世の中だ。
対峙する様に目の前に座る楠木さんに対して深くため息をつく。
「だから、俺もよく知らないんですって」
「貴様の前依頼人のお陰で千丁もの銃が取引されていたんだ、信用出来ん」
「それただのとばっちりでは?」
立ち上がり尋問室から出て行く楠木さんを横目に未だ外れることのない手錠を眺めながら、再度大きなため息をつく。
「どうしてこんなことに……」
****
ことの発端は前依頼人が取引に用いていた銃の在処を教えろと言う質問だった。
取引されるのは千丁もの銃らしく、戦争でも始めようとしているのかとも言われている。
依頼人のボディーガードとして雇われていた俺に情報があると睨んだDAは朝の品出し中に颯爽と現れ俺を拉致。そして本部へと連行された。
当然、ボディーガードとして雇われただけの俺はそんな情報を持っている訳がなく記憶の隅々まで思い出してみたがやはりそれらしき情報は思い出せなかった。
それからしばらくしてDAの中にあるコンピュータのラジアータなるもので取引時間を掴んだと伝えられ、なんとか釈放。
しかし、それは偽の取引時間であり本来の取引時間はラジアータで掴んだ時間の約三時間前と言うことが判明し再度拉致。そして現在に至ると言うわけだ。
「はやく品出ししないといけないのになぁ……」
「それならあたし達がもう済ませたよ」
「ふ、フキさん?!」
一人で楠木さんに対する愚痴をこぼしていると、いつの間にか壁に寄り掛かる様にして俺の初恋の相手春川フキが立っていた。
「フキさんってば俺にわざわざ会いに来てくれんですか?」
「ちっ、楠木司令から呼ばれなきゃ来ねぇよ」
「またまたそんな照れちゃって〜」
「うぜぇ……」
やだ、怒ってるフキさんも可愛らしい。
DAに来る様になってから楠木さんの命令だと言って嫌々でも駄菓子屋(DA店)に顔を出してくれるフキさんは、人望が厚い。
リコリスは序列があるらしく、それを制服で分かりやすくしている。一番下ベージュの制服を来た3rdリコリス、その次は紺色の制服を着た2ndリコリス、そして最も優秀とされるリコリスが赤色の制服を着た1stリコリス。
ちなみフキさんは赤色の制服を着ている。つまり、1stリコリスという訳だ。
「そういえば、例の機銃掃射をぶっ放したって言う2ndリコリスの子はどうなったの?」
「あ? たきなの事か? あいつは千束の何処に転属だ」
「千束って錦木千束? 電波塔事件を一人で解決したって言う?」
「そうだ、その千束だ」
「へぇ……」
錦木千束。実際に見たことは無いがリコリスの間で知らぬ者はいないと言われる、旧電波塔事件を解決したリコリス。実際事件には多くのリコリスが関わっていたらしいが最終的には錦木千束単騎で事件を終結させたという事で、歴代最高のリコリスと呼ばれているとか。
「まぁ俺にとってはフキさんが一番だから安心してよ」
「何を安心すればいいんだよ……ほら、手出せ」
「え? まさか手を繋いでくれたり?!」
「しねぇよ、手錠を外すだけだ」
「ったくめんどくせぇ」と言いつつも素早く手錠を外してくれるフキさん。リコリスと接している時も感じていたがフキさんは相当面倒見がいい。仲間のことをなによりも大切に思い、行動しているのが側から見てもわかる。
俺には誇れる仲間も家族も居ない。
だから、フキさんを見ていると少し羨ましく感じる。
「ほら、外れたぞ」
「ありがとうフキさん、これお詫び」
「ん? なんだコレ?」
「え? ビッグカツだけど……」
子供から大人まで誰でも一度は食べたことがあるであろうビッグカツ。カツなんてものではなくただの平たい衣のついた何かの筈なのに、どうしてかそれがカツにしか感じられないというなんとも不思議な駄菓子。
駄菓子屋を建てる前、日雇いバイトでせっせと働いていた極貧時代にはよく白米と食べていた。駄菓子だと思って侮るなかれ、マジでおかずとして食べれる。
しかも駄菓子屋は基本百円未満が多く財布にも優しい。
「カツって……どこがだ?」
「フキさん、それは言ってはいけない」
「そ、そうなのか?」
「まぁ取り敢えず気にしないで食べて食べて」
「──うまい」
「でしょ?!」
ビッグカツを頬張ると、矢張りその見た目とは裏腹にしっかりと味がついている事に驚愕しているのか黙々と頬張るフキさん。まるでリスみたいで可愛い。
「お前、今変なこと考えてねぇだろうな?」
「ん? 俺はただリスみたいで可愛いと──っぶね!」
「正直に言い過ぎだこらぁ!」
思ったことをそのまま口に出したら思い切り殴られそうになってしまった……華の女子高生がそんな事するんじゃありません。
しかも、空を切る音が中々いい音をしていた。おそらく当たっていれば吹っ飛んでいた自信がある。
怒ったのはフキさんはそのままどこかに行ってしまっていた。しかし、フキさんと少しでも長く話せたのでよしとする。
「さて、帰って店番すっか」
その後DAの本部から出たは良いものの財布を店に忘れてきたことを思い出し、俺は楠木さんに頭を下げてリコリスから送ってもらう事になるのはまた別の話。
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どうしましょ
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フキ視点も欲しい
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オリ主視点だけで十分
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それよりもっとイチャコラさせろ