フキに想いを伝えたい!   作:猫又侍

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今回フキ成分が足りない……無念


file2.喫茶リコリコ

 俺の朝は品出しから始まる。他には万引きなんてする時代じゃないが在庫の確認をしたり、店の前の掃除など。

 

 DAからのお呼び出しがあれば本部に出向き依頼を受けるなんて事もあるが最近は珍しく依頼が来ない。相変わらずリコリス達は任務帰りや任務前に立ち寄ってくれるし、一般のお客も楽しそうに駄菓子を選んでくれている。

 

 しかしながら駄菓子屋というほぼ店番の仕事だが一応これでも俺は人間なので、たまには休暇を取らなければやって行けない。リコリス達にも休みがあると信じたいが、戸籍がない彼女達に基本的人権の尊重をされているのかは危うい。

 

 ともかく、駄菓子屋だとしてもたまには休みが必要だ。

 

 ──と、言うわけで以前にお客が近くにコーヒーが美味しい喫茶店があると噂を耳にしたので今日はそのお店でくつろぐつもりだ。勿論、一日中という訳ではない。フキさんの顔を拝みに街に繰り出さなければ行けないし、休みだと言っても午後からは普通に開店する予定だ。

 

「ここが噂の喫茶店……えっと、『喫茶リコリコ』か」

 

 なんともリコリスが働いていそうな名前だが、普通の人からすればただの名前の響きがいい喫茶店だ。事実、リコリスが働いていそうなだけであってそうでない可能性もある。

 

 カランとベルを鳴らしながら入店するとまだ開店したばかりだからなのか、俺以外には客はいなかった。

 

 店内は和風な雰囲気がありながらもステンドグラスで僅かに洋風な雰囲気もあり、なんとも心地よい空間となっている。

 

 カウンター越しにはマスターと思われるイケオジが立っており、俺に気づくと「いらっしゃい」と優しい声を掛けてくれる。カウンターに案内され、メニュー表を開くと美味しそうなスイーツがあちらこちらに載っていた。

 

「コーヒーを一つ」

「はいよ」

 

 思いの外気さくな接客をしてくれるイケオジと、ただ垂れ流されているテレビ。

 この空間はなんとも心地よく、店に来ていたみんなが口を揃えて良い喫茶店だと言うのも頷ける。

 

 コーヒーが提供されるまで文庫本を開いて待っていると、店の扉がカランと音を立て赤の和服を着たショートカットの少女と青の和風を着たツインテールの少女が入店してくる。

 

「先生だっだいま〜!!」

「遅れてすみません店長」

 

 方や元気な少女に方やクールな少女。

 そういえばこの店はホールスタッフが可愛いと食べモグで書いていた気がするがホールスタッフは三人となっていたはずだがもう一人は一体──

 

「居た! 良い男っ!」

「へ? ちょわわ!」

 

 いつの間にか俺の横には緑の和風を着た髪の長い女性は素早く俺の手を取ると、目をキラキラさせてこちらを見てきた。

 

「ねぇあなたの名前は? 年齢は? 出身地は? 趣味は?」

「え、えっと……」

「ミズキ、客に詰め寄り過ぎた」

「いいじゃない! こんな出会いがない店で久しぶりに良い男見つけたんだし!」

「すみません、好きな人がいるので」

「なっ!」

 

 ミズキと呼ばれた女性は俺の言葉を聞くなり立ち上がり、二歩ほど後ずさるとがくりと床に這いつくばった。

 

 この店は個性的な人が多いらしい。

 

「すまんなウチのミズキが」

「いえ、気にしてませんよ」

 

 おそらく俺がフキさんに詰め寄る時もこんな感じなんだろうなと、フキさんには申し訳なく思いつつも矢張り気持ちはハッキリ伝えないと分からないと結論に至り考えるのをやめる。

 

 ミズキと呼ばれた女性は外見はいいが今の反応からするにおそらく残念美女というやだろう、

 

「ここはいつからやってるんです?」

「もう随分昔からだ」

「へぇ……俺も五年ほど前にここから二、三分歩いたところに駄菓子屋開いたんですけど全然気づきませんでしたよ」

 

 店の外観は目を引くものがある。

 一度通れば気付いてもおかしくは無い。

 

「私もこの近くに駄菓子屋があるとは知らなかったよ。今度何か買いに行くとしよう」

「その時はお願いします」

 

 「お待たせした」と店長が言いコーヒーが出される。

 味にうるさいと言う訳では無い、逆にコーヒーはたまにしか飲まないため味の良し悪しがわからない。

 

 恐る恐るコーヒーを口に含むと、コーヒー特有の苦味と共に旨味が口の中に広がり思わず声が漏れる。

 

「美味しい……」

「気に入ってもらえて何よりだ」

「はい、とても気に入りました」

 

 もう少し堪能して居たかったがカウンターの上に置いてある携帯が震え、画面には『楠木』と表示されて居た。

 

「──すみません、少し電話しても大丈夫ですか?」

「気にしなくても今はお客はいないさ」

「ありがとうございます」

 

 店長からも確認が取れたので楠木さんの着信に応答する。

 

「もしもし綾木です」

『先日のラジアータハッキングの件で調べてもらいたいことがある』

「……あれはそちらの事故で処理されてるはずです。彼女達にもそう伝わってるんでしょう?」

 

 つい先日の前依頼人が関与したとされる銃取引事件。

 その日にリコリス達と司令部との電波障害が発生し、指示を仰ぐことができずその場にいた2ndが機銃掃射で敵を制圧。その独断行動が本部に指摘され、現在は本部ではなくどこかの部署へと転属された。

 

 元はといえばDAの核ともいえようラジアータをハッキングされたのが原因の筈なのに対し結果は2ndのスタンドプレーとされ、ハッキングの事はリコリス達にも嘘を伝えられている。

 

 それを調べろとはDAはなにを考えているのだろう。

 

『そうだ。しかし、ラジアータをハッキングしたウォールナットと言うハッカーが死んだと報告が入った』

「尚更です。これ以上何を調べろと?」

『これまでに死んだと何度も噂されてきた人物だ。実際はどうなのか、上にも報告を急かされている。できるか?』

「できるできないじゃ無いでしょ? 出来なかったらどえらい目に遭いますよ」

 

 主にフキさんから。

 

 楠木さんは楠木さんで上からの圧力があるらしい。

 

 こちらは殺されずに生かされている身であり、依頼を無視することはできない。

 

「まぁ調べれるだけ調べます。ただ相手は世界最高峰のハッカーですし、必ずしも情報が手に入るとは言い切れません」

『分かっている。では、頼んだぞ』

 

 楠木さんとの通話を終えると残りのコーヒーをグイッと流し込み会計を済ませる。

 

 帰り際に店長さんが何か聞きたそうな顔をして居たが「なんでもない」と言われそのまま店を出てしまった。

 

「取り敢えず、他のハッカーにでも当たってみるか」

 

 情報収集となればしばらくDAに行くことはないしフキさんとも中々会えなくなる。

 

 そんな寂しさを抱きながらも駄菓子屋への帰路に着くのだった。

 

 * * * *

 

「よぉ」

「──」

「な、なんか言えよ」

 

 駄菓子屋へと戻ると店内にはフキさんと見知らぬ2ndリコリスが店番をしていた。

 

 店番をする姿はさながら日本人形のような可愛らしさと、それでいて万引きを絶対にさせまいという強い意志を感じる眼差し──天使か?

 

「天使ですか?」

「お前今すぐブチのめすぞ?」

 

 矢張り天使らしい。

 

「フキさん、その隣のリコリスは?」

「コイツはたきなの代わりに入った2ndだ」

「どうも! 乙女サクラっていいます!」

 

 元気な挨拶と共に頭を深々と下げる乙女さん。中々礼儀正しい子だ。と思ったが何やらフキさんが顰めっ面をしている。かわいい。

 

「お前あたしの時と挨拶違すぎんじゃねぇか?」

「そりゃ先輩は同じリコリスっすから」

「ほぉ……後で覚えとけよ」

「なんで?! 理不尽っすよ?!」

 

 やいやいとレジで言い合う二人はまるで仲のいい姉妹と言った様子でどこか微笑ましく感じる。

 

 そんな暖かい目を察知したのかフキさんが一つ咳き込む。

 

「それで? 楠木さんから依頼は聞いたけど他に何かあったの?」

「いや、別に用って訳じゃ──」

「先輩ってば店に入る前からソワ「ふん!」ぐへっ!」

 

 乙女さんが何かを言おうとした矢先にフキさんがなぜか乙女さんに鳩尾を喰らわせ、その場で乙女さんはうずくまる。

 痛そうだが本気でやった訳ではなさそうで嘔吐までしていない。

 

「乙女さん何か今……」

「気にするな」

「え? でもいまフキさん顔が……」

「撃たれたいか?」

「アッハイ黙ります」

 

 なぜだろう、すごく怒っている。

 ふと机を見ると、百円玉が一枚ポツンと置かれておりフキさんのでには小さな袋に駄菓子が数個ほど入っていた。

 

「まさか駄菓子がほしかったり?」

「……悪いかよ」

「ふふっ、悪くは無いよ。フキさんらしくていいと思う」

「……んだよあたしらしいって」

「まあ、どうだろうね?」

「ムカつく」

 

 おそらくフキさんは乙女さんのために駄菓子を買いに来たのだろう。俺が行く本部以外のリコリスは基本かりんとうしか支給されない。フキさんはそんなかりんとうのみを支給されてきた乙女さんに駄菓子を知ってもらうためにわざわざ買いに来たのだろう。

 

「やっぱり、フキさんは優しいなぁ」

「あたしは優しくなんかねぇよ」

「そんな俺が誉めたからって照れなくてもいいのに」

「いちいち余計なこと言わねぇと気がすまねぇのか? あ?」

「言いたいことは言えるうちに言うのが俺だからな」

 

 それからお茶でも飲んでいったらどうかと聞くと、フキさんはいつも通り「任務があるから」と言って乙女さんの手を引いて行ってしまった。

 

「いやぁ、フキさんに会えるとは思ってなかったから今日はラッキーな日だ。よし! 依頼頑張るか!」

 

 そう張り切ったものの、中々ウォールナットについての情報は掴めず悪戦苦闘することになる事を俺はまだ知らなかった。

 

 ****

 

 

「よかったんすか? 駄菓子なんて任務の前に買って」

「いいんだよ、これは特別だからな」

「特別? その平たいカツもどきがですか?」

「──まぁ、任務が終わってからお前も食べてみろ」

「え〜、なんすかそれ〜気になるんすけど〜!」




感想
評価

モチベに繋がるので良ければお願いします。

どうしましょ

  • フキ視点も欲しい
  • オリ主視点だけで十分
  • それよりもっとイチャコラさせろ
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