フキに想いを伝えたい!   作:猫又侍

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長くなりそうなので前後編で分けます。
そしてありがたいことに日間ランキングに載り、たくさんの人に見てもらえて大変嬉しいです! 今回はフキ成分を角砂糖レベルで入れられたかなと思っております。


file3.DA出張店 前編

 待ちに待った──という訳では無いが今日はDA本部へと向かう日。

 

 目的はリコリス達へ駄菓子を届けることに加え、楠木さんに進捗の報告をしに行くためだ。後者が主な理由だが依頼されて二日ほどで報告する事はそこまでない、殆どない。

 

 そもそも、DAに向かう真の目的はフキさんに会うためであってフキさんがいなければ正直言ってあまり行きたくはない。中々店に立ち寄ることのできないリコリス達のためと考えていくかもしれないがそれでも億劫に感じられる。

 

 ただフキさんが居るとなれば嫌な場所にもるんるん気分で向かうことが出来る。矢張りフキさんしか勝たない。

 

「取り敢えず張り紙貼って……よし、行くか」

 

 DAは公には存在していない非公式の組織であるため、当然都内に本部がある訳ではない。遠い山の奥、車で五時間と言ったところだろうか。兎に角、車で行くような場所ではない。しかし、駄菓子を届けるという仕事があるため車の荷台に駄菓子を乗せて行かなければいけない。

 

 もう少し近くに本部があっても良いのではと思うが何を言っても現実は変わらない。あまりにも時間がかかり過ぎるので俺は毎度深夜帯に出発するがそれでも着く頃には早朝であり、寝不足でDAへたどり着く。

 

 ワンボックスカーの荷台にある程度の駄菓子を積み込むと、運転席に乗り車を発進させる。

 

 太陽はまだ地平線の彼方に沈んでおり、顔を出すのは二、三時間後と言ったところだろう。

 

 DAに着くまで静かな車内と言うのも味気ない。

 昔近所の中学生から日頃の感謝と言って渡してくれたCDをかける。内容は演歌という渋いチョイスではあるがたまには演歌を聴きながら運転するのも良いかもしれない。

 

 ****

 

 DAの本部についた頃には既に日は真上まで登っていた。

 

 諸々の認証を済ませ、荷物チェックを受ける。

 

 リコリスの安全を確保するためとはいえ、毎度駄菓子も検査にかけられるのは心外だ。まぁ、ここ最近は信用度も上がってきたのか検査もすぐに終わる。

 

 車を指定された場所に止め、少しずつ荷物を出張店へと運び込む。普段はラインナップが少ないが俺がこうしてDAに出張店を構えると種類も増え、リコリス達が多く立ち寄ってくれる。

 

 それから二十分ほど荷物を運ぶ作業を繰り返し、陳列を終える頃にここにきた目的である楠木さんが現れた。

 

「お久しぶりです、楠木さん」

「お前も、元気そうだな」

 

 店を開けるのは楠木さんへの報告が終わってからになりそうだなと考えながら、楠木さんに「こっちだ」と司令室へと案内される。

 

 毎度司令室に報告をしにくるが、ここはいつ来ても緊張する。それを分かっているのか秘書の人がコーヒーを淹れてくれる。インスタントだからなのかやはり少し物足りない気がする。いや、おそらくリコリコのコーヒーが美味しいだけなのだろう。

 

「それで……進捗はどうだ?」

「どうだと言われても……現状ではウォールナットは死んでると考えても不自然ではありません。知り合いのハッカーに探りを入れても成果はなし、見つかったものと言えばコレくらいです」

「これは?」

「ウォールナットが実際に撃たれた現場の映像です。リコリスに護衛を依頼して居たようですが……この通り無惨にも撃ち抜かれています」

 

 俺が楠木さんに提示したのは知り合いのハッカーと雑談しながら、そのパソコンをハッキングして密かに抜き出したドローンの映像。

 

 そいつは鼻高々に『僕が世界一のハッカーになった!』と言っていたが実力で抜けていない時点で歴代の中での世界一とは言いにくい。ただ変に刺激してもこちらのハッキングに気付かれてしまう可能性もある訳で、その場は接待する様に喋っていた。

 

「リコリスに依頼とは舐められたものだ」

「舐めるも何も、ハッキングされた事実をリコリスにも隠してるんですから知らないで依頼を受けても仕方ないと思いますよ? というか、リコリスって依頼なんて受けてたんですね。知りませんでした」

 

 リコリスはてっきり本部の指令で仕事をこなす集団とばかり思っていたが人助けもしている組織だとは。

 

 しかし、楠木さんは「違うな」とタブレットを置きため息をつく。

 

「錦木千束は知っているな?」

「はい、旧電波塔事件を解決したリコリスと聞いています」

「そうだ。その千束がある事情でDAではなく電波塔付近で喫茶店兼DAの支部を構えている。そこの仕事だ」

「喫茶店……まさかリコリコですか?」

「なんだ、知っていたのか?」

「いえ、つい最近立ち寄ったばかりと言いますか」

 

 まさか居そうだとは思っていたが本当に居たとは。

 

 世間は広い様で思いの外狭いのだと実感した。

 

「取り敢えず、この後はクリーナーを使った痕跡も見られますしおそらく既に遺体は処分された後かと」

「なるほど……分かった。ひとまずこれを上に提出するとしよう」

 

 その後楠木さんは会議があると言って秘書の人と共に司令室から出て行ってしまった。

 

 俺も特に司令室にいる必要もなく、出張店へと戻る。

 

 DAのフリースペースの一角を使用し開く出張店だが、俺が戻っできた頃には既に多くのリコリスが休憩の為にフリースペースに訪れていた。

 

 数に制限があるため一品につき一つまでと制限を設けているが現金のやり取りがある訳でもないので、ルールを守るなら勝手に持って行ってもいいと看板を置いていたのだがリコリス達は律儀に列をなして俺が戻ってくるのを待っていた。

 

「お待たせ致しました、店主が戻ってきましたよ〜」

「あ! 綾木さん! 遅いっすよ!」

「お? 乙女さん久しぶりだね。今日は何を買いに?」

 

 店の中央にある椅子に腰をかけるとフキさんとペアを組んでいる乙女さんが先頭に並んでいた。

 

 その手にはココアシガレットやヨーグルと言った駄菓子が握られていた。

 

「いいチョイスだ、ココアシガレットはみんなタバコ吸うみたいに食べてたなぁ……」

「え?! 何すかそのカッコいい食べ方?!」

「ははっ! フキさんに怒られない程度にやってみるといい。駄菓子は見た目から食べ方、味まで楽しめるものだからね」

 

 目をキラキラと光らせながらココアシガレットを見つめる乙女さんに、少し微笑ましい笑顔を向けながらも形ばかりの会計を済ませると乙女さんは空いているテーブルに向かって行った。

 

 俺がフリースペースを使う理由はただそこしか使えながらと言う訳ではない。

 

 駄菓子屋とは本来、子供達の社交場として大変人気を博していた。戦前や戦後は子供が子供の面倒を見る時代であり、そんな中でも大人が一人世話をしてくれ、親は安心して子供達を駄菓子屋へと送り出す。

 

 しかし、高度経済成長期を迎えると同時に男は仕事女は家事という現代では差別と言われるような考えが根強くなり更にはゲームが一般的な娯楽となった現代では駄菓子屋で集まり会話をするなんて事もなくなり次第に駄菓子屋はなくなっていった。

 

 現在でも駄菓子屋はあるが昔ながらの駄菓子屋と言うのは中々見かける事はない。

 

 リコリスは基本任務外での不必要な外出はしない者が多く、そのほとんどが自室で過ごしている。そんな彼女達が同室のリコリス以外のリコリスとも会話をする場を設けて周りとの信頼度や仲間意識を高めるためにこうしてフリースペースを活用しているという訳だ。

 

「これください!」

「はいよ」

 

 俺の願い通りかは分からないがフリースペースを活用し、同室以外のリコリスと喋る人達は多く賑わっている。昔の駄菓子屋の前と言えばこうして誰もが笑顔ではしゃいでいる光景が普通だったのかもしれない。

 

 しばらく接客を続け、並ぶ人が居なくなった頃を見計らい休憩に入る。

 

 気まぐれでリコリス塔へと向かう途中、ライセンス更新をするための試験を受けているリコリスが目についた。

 

 リコリコで見た元気いっぱいの方のリコリスだった。

 

「やぁ、ライセンス更新かい?」

「どわぁ! って貴方確か最近うちに来た!」

「綾木悠って言います。駄菓子屋の店主兼何でも屋やってます。今はDAの圧……依頼で情報屋をやってるんだ」

「あたしは錦木千束、千束でいいよ。それにしてもなるほど……フキが言ってたのさ貴方って訳か」

「フキさん? なんでフキさんが──「コラ千束ぉ!」うおっ! フキさん?!」

 

 俺が錦木さんと話していると、後ろから聞きなれた怒号が聞こえ後ろを振り向くとそこには錦木さんと同じ服装をしたフキさんが立っていた。

 

 いや、露出度高くないですかね? 直視できないんですが? いくら体力測定のために動きやすい服装にしてるからってこれは童貞殺しに来てますやん。いや、リコリスだから妥当なのか?

 

「お前勝手な事……ってお前は何で壁と密着してんだ?」

「フキさんが直視出来ないので壁向いてます」

「……こっち見ろ」

「無理です」

「見ろ」

「無理です」

「殺すぞ?」

「むしろその姿見て死にそうなので」

「つべこべ言わずにこっち見ろコラァ!」

「ひぇ〜!」

 

 前をかるたの如くひっくり返され、視界一杯に光が差し込み思わず目を細める。

 

 しばらくして目が慣れてくると、目の前には刺激の強過ぎるフキさんが立っていた。何故か錦木さんはニヤニヤしているが、正直笑い事ではない。

 

「……おい」

「はい」

「どうだ」

「どうだとは?」

「その──似合ってたりするのか?」

「正直好きな人のその格好は破廉恥で「は?」スミマセントテモニアッテマス」

 

 何故だ、何故いつも面倒臭そうに接してるフキさんが積極的なんだ。頭がパンクしそうになりながらもなんとか理性を保つ。

 

 なんとなしてこの状況を脱しなければ。

 

「あ! そうだ、もう休憩時間終わりだから戻らないと〜。それじゃあライセンス更新頑張って〜!」

 

 捨て台詞を吐きフリースペースに向かって全速力で駆け抜ける。幸い、追ってきてない様だが曲がり角を曲がりすぐに壁にもたれかかる。

 

 先程から心臓の鼓動がうるさい。

 

 ドクンドクンと通常よりも早く鼓動しているのが自分でもわかる。

 

「──あれはズルいよフキさん」

 

 ****

 

「良かったのフキ。彼、行っちゃったけど」

「気にする事でもねぇよ。どうせまた会うんだ」

「おやおや〜、また会う気何ですかぁ〜? いっつも鬱陶しそうに話してるのにぃ〜?」

「ちっ、うるせぇな」

「でも、話しといた方がいいんじゃないの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──フキには好きな人が居るって」




感想や評価、よければよろしくお願いします!

どうしましょ

  • フキ視点も欲しい
  • オリ主視点だけで十分
  • それよりもっとイチャコラさせろ
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