今回はサブタイの通りブロッコリーヘアの彼が出て来ます。
「リコリス狩り……ですか?」
『そうだ』
フキさんとのお出かけから約数週間後、久々に楠木さんからの連絡が入り依頼かと思っていたが予想とは裏腹に少しばかり物騒な話を切り出された。いや、リコリスと関わる以上は物騒な話じゃない時なんてないのだが……。
「なんでまたリコリスが? そもそも国家機密で公には情報が出ていない筈ですよね? もし仮に知られていたとしても、そちらは隠蔽する権力持ってるんですし」
『我々としても原因を探っている所だが少し前の地下鉄爆破事故の際にいた人物だと私は睨んでいる』
「爆破事故ですか……」
フキさんと買い物をし帰ろうとしていた日、近くの駅で崩落事故が起きた。しかし、運良く回送列車だった為に死人は出ず事故として処理された──表向きはだが。
フキさん曰く、あの日多くの3rdリコリスが犠牲になったらしい。事故の原因は取引きされた千丁の銃を受け取った取引相手だと推測されているが正直に言ってしまえば、俺はフキさん以外の生死は気にしていない。
いたたまれない気持ちにはなるし、悲しい気持ちにもなる。「もっと話しておけば……」なんて考えることもあった。でも、最終的にはフキさんは生きているのだからいいじゃないかと思ってしまう。
この気持ちをフキさんに伝えれば仲間思いのフキさんに嫌われること間違い無しなので、口に出す事はない。
誤解のないように言っておくが、別に俺は彼女達の死をどうでもいいとは思っていない。俺は、リコリスとしての彼女達の死を少しばかり軽く見ている。
リコリスは暗殺集団ではあるがそこには必ず生きるか死ぬかの戦場であり、いつ死ぬかも分からない。たから、もし仮に任務中に命を落とすことがあっても『リコリス』と言う名を背負った彼女達ならしかたがないのかもしれないと思ってしまうのだ。逆に、任務中ではない『少女』としての彼女達の死は嘆かずにはいられない。
捨て駒として扱われる彼女達が可哀想で仕方がない。
助けることもままならない、ただの部外者ではあるがそう思わずにはいられないのだ。
「その話を俺にして来たって事はそのリコリス狩りについての情報収集の依頼って事ですかね?」
『そうだ、話が早くて助かる』
「まぁ、それ以外俺と話す事ないでしょうし」
事務的な連絡以外でこの人と話すことはないし、話したくないというのが正直な話だ。まぁ、本人の前で言うと首が飛びかねないので言わないのだが。
そもそも、世界でも最高峰と謳われるラジアータから情報が盗まれたとなればハッキング以外には考えられない。そして、そんな事を出来るのはただ一人……しかしごく最近そのたった一人が死んだと噂されている。
つまり、リコリス狩りが全てのリコリスを把握している可能性は低い。おそらく、何かしらの手段で一度顔を見たことのあるリコリスを狙っていると考えた方が納得がいく。
「しかしリコリス狩りか……もし仮に情報が手に入っても、生き残れるかどうかってのが問題か」
相手はリコリスを殺す犯罪者。
どう考えても、リコリスの尻に敷かれてる様な俺では見つかったら到底逃げ切れる自信はない。その時はその時で覚悟を決めるつもりではいるが、今回ばかりは慎重に物事を判断して行動しなければいけない。
取り敢えず明日から情報収集を開始することとして、今日はゆっくり店番でも──
「お? 駄菓子屋なんて珍しいじゃねぇか」
「いらっしゃい、お兄さん駄菓子屋初めて?」
「いや、海外での仕事が多くてな。日本にくるのは久しぶりなんだわ」
「へぇ」
物珍しそうに商品棚を見つめる男性は緑髪の天然パーマにアロハシャツ、そしてその上に黒いコートとなぜか違和感のない着こなしをしている。
外にはサングラスをした強面の男たちが数人見えるが……怪しい人たちでないことを祈ろう。
「ここは品揃えが良いな……バランスが保たれてる」
「ば、バランスですか?」
あれ、この人思ったよりやばい人? いや、人を見かけで判断してはいけない。ほら、几帳面な人なのかもしれないし。
しばらく品定めをしているのをら眺めていると、ふとアロハシャツ男が立ち止まった。
「なぁ、アンタはリコリスって知ってるか?」
「リコリス? 彼岸花の学名のリコリスですか?」
「いや、知らねぇならいいさ。いずれ分かることだからよ」
「は、はぁ……」
リコリスの名前を知っているその謎の男は不気味に笑いながら幾つかの駄菓子を手に取り俺の元へ歩み寄る。
ただ会計をするだけのはずが、どこか身構えてしまう。
「これ、いくらだ?」
「全部で……200円です」
「おぉ、やっぱ駄菓子屋は安くて助かるぜ。所で──お前の使命はなんだ?」
「っ!」
依然として不適な笑みを浮かべるその男は俺の心を見透かすように、そして蛇のように俺を捉えていた。
逃げようと思えば逃げれる、はぐらかそうと思えばはぐらかせる。しかし、それを本能がよしとしなかった。逃げたら死ぬ。確かな答えが、頭から離れなかった。
「──なぜ知っている」
「まぁ、うちに優秀なハッカーが居るのさ。それで、もう一度聞くぜ。お前の使命はなんだ?」
「そう言う君の使命はなんだい?」
「俺が? 俺は世界のバランスを保つために居る。ただそれだけだ」
確証はなくカマ掛け程度の質問だったが、まさか本当にアランチルドレンだったとは……。いや、アランチルドレンを名乗るただのやばい厨二病かもしれない。いや、そうであってくれ。
「そうか──ただ、残念ながら今の俺に使命なんてものはない」
「は?」
「俺にはここがある。もしも、今俺に使命があるとするのなら、この小さな駄菓子屋の店主としてみんなを笑顔にすると言うことだ」
相手の圧に屈することなくなんとか返したが、アランチルドレンでありハッカーと手を組んでいる……つまり、コイツが例のリコリスである可能性が無いわけではない。
つまり、相手は銃を所持していると考えるのが妥当だ。
すこしでも変なことをすれば、撃たれると思っていた方がいい。
「「…………」」
二人の間に微妙な空気が流れる。
ふと、男が視線を外し外を見る。
「ちっ……邪魔が来たか」
「邪魔?」
音がそうつぶやくと、遠くから数人の足音がこちらに向かって居るのが聞こえる。
まさか、リコリスたちがここをかぎつけたか?
「にいちゃん! 駄菓子買いにきた!」
「……おう」
大勢で走ってきたのは、近所に住む小学生の子供たちだった。ひとまず、リコリスでは無かったことに安心しながらも男が子供たちを人質にとらないかドキドキしている。
だが、意外にも男はカウンターの側で立ったまま子供達を眺めていた。
「にいちゃん、このアフロのにいちゃんだれ?」
「ぶっ……アフロ……」
「あ? 何笑ってやがる」
「い、いや。子供は純粋だなと思って……このにいちゃんは俺の友達だよ。たまたまここに寄ったんだとさ」
「へぇ〜。まぁいいや、にいちゃんこれちょうだい!」
「ほい、100円ね」
キャッキャとはしゃいで駄菓子を買い終えた子供たちは、瞬く間にどこかへと姿を消した。ここにくる子供たちは元気いっぱいの、嵐のような子供たちばかりで笑顔が絶えない。
「これが、お前の使命か?」
「そうだ。たとえ殺しの才能を持っていたとしても、俺はこうして駄菓子屋をやるよ」
「そうか……邪魔したな」
「随分とあっさり帰ってくれるじゃないか」
「バカ言え、ここには定期的に通うぜ。友達、なんだろ?」
そう言ってまたニヤリと笑う男は初めの不気味な笑みとは違い、先程の子供たちのように少しだけ無邪気な笑顔だった気がした。
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「ふう……死ぬかと思った」
「おい、店主が何怠けてんだ」
「うおっ! なんだフキさんか」
男が姿を消し、一息ついているといたの間にか店内にフキさんがいた。いや、リコリスのステルス能力をここで使わなくてもいいのでは?
「なんだとはなんだ、こっちは客だぞ」
「なにその迷惑客みたいな台詞……でもまぁフキさんだから全部可愛く見えるんだけどね」
「……お前よくそんな事簡単に言えるよな」
「フキさんにだけだぞ☆」
「キモい」
「酷い!」
何気ない会話。キモいとか言いつつ、嫌そうな顔をしていないあたりまんざらでもないのかもしれない。もしかしたら、アピールの甲斐があったとか?! いや、ないな。うん。
「でも、やっぱフキさんといる時が一番落ち着くよ」
「……言っとけバカ」
「あ、デレた」
「うっせぇ!!」
「ヒデブッ!」
フキさんだけは、何があろうとも守ろう。
それがたとえ──自分の命を捨てることになったとしても。
今回はフキ成分が足りなかった……
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