ウタの誕生日に行けてとても良かった。
ウタちゃん可愛い!
“赤い土の大陸”に存在する、天竜人たちが住まう聖地【マリージョア】。
ある時を除いて、世界政府関係者以外の立ち入りが禁じられている天然の要塞。
本来であれば一般人が立ち寄れないパンゲア城の近くにある広場にて、天竜人たちが集まっていた。
彼らは皆ある方向に体を向け、静かに目をつぶっている。その顔はとても幸福そうであった。
そんな彼らの傍には奴隷が立っていた。いつもであれば痛ましい表情をしているはずだが、その時だけは安堵の表情を浮かべている。
なぜ天竜人と奴隷が一緒になって幸せそうにしているのかというと、彼らの前にいる青年が原因だった。
青年はトランペットで一曲演奏したかと思えば、次にはヴァイオリンで、その次はフルート、ドラム…etcと、種類が異なる様々な楽器を使用して演奏している。
常人ならあり得ないことだったが、青年だけは違う。彼はそれが可能なのだ。
ただ、様々な楽器が演奏できるからというだけで、天竜人が集まるということはあり得ない。
彼らは世界貴族。ありとあらゆる音楽を知っているのだ。
ならばなぜ、このような状況になっているのかというと、それもまた青年の演奏が理由だった。
青年の奏でる曲はありふれたモノであり、昔から存在するものもある。通常ならば誰が演奏しても、結果はほとんど変わらない。しかし、彼が演奏した場合だけは違う。
青年が演奏すると、その曲に込められた想いが聴く者の脳にダイレクトに伝わり、まるで曲の世界にいるような錯覚を思わせる。さらに、聴く者の感情を最大限まで高ぶらせる。
そのような、誰しもが唸る演奏だった。
しばらくすると、青年の演奏が終わる。一瞬静寂に包まれると、大きな拍手が聞こえてきた。
天竜人の最高位、五老星の一人が手を叩きながら青年へと歩み寄る。
「素晴らしい。流石、【音楽の皇帝】と呼ばれるほどだ。今まで聞いた音楽で一番の物だった」
「ありがとうございます。天竜人様にそう言っていただけるだけで、私は至上の喜びです。この度はこのような機会を作っていただき、誠にありがとうございます」
青年は失礼のないように最大限のお礼を言う。彼の目には天竜人が喜ぶ表情が映っていた。
本来なら天竜人にすぐ奴隷にされそうな彼であるが、契約によりそのようなことにはならないようになっている。
その契約とは定期的に天竜人の前で演奏する代わりに奴隷を免れるというものだった。
ただこれは青年を守るためではなく、天竜人がお互いをけん制するためであった。彼を独占するという行動を抑止するためのものである。
それ程まで天竜人に気に入られている彼の名はヴェン。
ある島出身の音楽家で、今や世界で知らないものは少ない、世界一の音楽家であった。
そんな彼は今、あることを思っていた。
(やっぱワンピースの世界の天竜人やっべぇ~。こいつらと関わるんじゃなかったわ~)
【悲報】ワイ、ワンピースの世界に転生する。
自分の名前はヴェン。それが今世の名前だ。
昔から自分が転生していることには気づいていたが、どこの世界かは知らなかった。ただ、どこか見覚えのあるものがあったため、ある程度の予感はしていた。
だが、まさかそんなわけないだろと。世界経済新聞とか、天竜人とか、何か知っているものがあるけど、ただの空似だろと、当時は現実逃避をしていた。
しかし、それが確信になったのは5歳の時だ。
理由はたまたま見た新聞の見出しだった。その見出しは【海賊王ゴールド・ロジャー。逮捕!】というものだった。
それを見た瞬間、自分がワンピースの世界に転生していることに気づいた。
もし、これが自分ではなく、他の誰かでそれを自分が見る立場だったら、いいなぁと思ってただろう。
何故なら、いろんなものがあるからだ。自分が知らないものだらけの世界はさぞ楽しいだろう。
だが、ワンピースの世界への転生に気づいて思ったことはワクワクより、不安だった。
だって、ワンピースだぞ!?
海賊王処刑後は海賊が蟻のように存在し、略奪を繰り返すわ。世界政府は保身に走って民間人殺すわ。天竜人はクソだわ。
人の命が砂より軽い世界とか絶対嫌だろ。しかも、よりによってクソ野郎ほど強い立場にいる。
前世がしがない社会人で、特殊な技能が何一つない自分にはどうしようもない。
なら原作知識を駆使して生きようかと思えば、そもそも知っているのが二年前のシャボンディまで。
それ以降のことはほとんど知らないし、それ以前もはっきりとは覚えていない。
そんな状況でどうしろと?
ただ、救いはあった。この世界は努力すれば強くなれるのだ。
又聞きだが、ルフィたちも二年間の修行で二年前の強敵を難なく倒せたとか。なら、それ以上の年月を修行に充てれば強くなれるだろう。
ルフィたちほどではなくとも、ある程度は強くなれるはずだ。
そう考えたら、善は急げと言わんばかりに行動を開始した。
とりあえず、体力をつけることから始めようと思い、走り込みを行った。その後に、石とか砕けるようになればいいかと考えていた。
何か家族や近所の方からは変な目で見られてたが、気にせずに努力した。
だが、現実は非情だった。
結果だけを言うと、全くと言って無意味だった。
五年間努力した。体力をつけるために走り込みなどをしても一般人の域を超えることはなく、石や木を破壊しようとすれば自身の手足が傷つき、漫画で見た六式や覇気なども何一つ身につくことはなかった。
端的に言えば、才能がなかった。
それに気づいたときは絶望した。俺の人生終わったと。
それ以降は祈る毎日だった。
海賊がこの島に来ませんように、天竜人に目を付けられませんように、この島に何か特別な物とかありませんように、と。
毎日ビクビクしながら過ごす日々だった。何もないこの島でひっそりと暮らすだけの日々。
娯楽のない、つまらない日常を過ごすことになった。
あ、でも一つだけ暇をつぶせるものあったわ。娯楽って言う程のものじゃないが。
なんでも自分がいるこの島は音楽が盛んらしく、ありとあらゆる曲や楽器があるらしい。この島の住民なら中央にある学校の楽器を使用してもいいとのことだ。
せっかくだから、前世でやらなかったことをやってみるか…。何か一つでも弾けるようになればいいなぁ。
【速報】ワイ、エレジアの学校に通うことになる。
オリ主は結構バカです。