音楽の皇帝   作:スココLU

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くそ理不尽な理由で追放されるオリ主君可哀そう…


俺、なんかした?

「…もう…こうするしかないのか…」

 

ゴードンは学長室で一人、顔を歪めていた。

彼の目の前にはとある少年のことが記された紙とその傍には印鑑が置いてある。

 

「ヴェン君…すまない。君を守り切れない私を、許してくれ…」

 

ゴードンは印鑑を手に持つとエレジア…いや世界の宝と言っていいほどの少年について記された紙にハンコを押す。

そのハンコには【一時国外追放】という文字が記されていた。

 

ゴードンは印鑑を元あった場所に置くと、深くため息をついた。

彼の視線が机の前に置いてある無数の紙が引き詰められた複数の段ボールに向けられる。

 

「なぜ、こんなことに…」

 

ゴードンは段ボールから一枚紙を取り、内容を確認する。何度も見間違いであってほしいと願ったが、内容に変化はなかった。

そこに書かれた内容はゴードンが見つけたヴェンに対することだけだった。その内容とは…

 

『一緒に演奏したくない』『心が折れる』『みじめな気分になる』

『『『早く!彼を追い出して!』』』

 

ゴードンは再びため息をつく。

彼は椅子から立ち上がると、真っ黒の染まった夜空を見上げる。月すら見えない空を見ながら9年間を思い出していた。

 

 

 

ヴェンが来て数年は良かった。

最初は楽譜の読み方を主に教えていた。彼は最初に演奏していたのが不思議なほど楽譜が読めていなかった。ドレミファすら分からない程に。

これはもったいないと思い、思わずスパルタになってしまったが…。

 

ある程度月日が経ち楽譜が読めるようになったヴェン。

彼はありとあらゆる楽器が操作できるという才能を持っていた。それに加えてあの演奏。

彼の才能を腐らすわけにはいかなったため、全ての授業に参加することを許可した。

それに対していろんなことがあったが、全て無事に解決できた。…多少やりすぎなところはあったが。

 

それから数年がたち、彼はエレジアにいる全員に認められるようになった。未だ音楽の技量は成長途中だが、それは既に世界トップクラスの域になっていた。

今ではもう彼に引けない曲はなく、彼が合わせられない相手はいない。エレジアの音楽家が彼とセッションしたいと願い、バックバンドの依頼も届くようになった。

 

ただ、それがいけなかったのだろう。

 

いつの間にか彼の周りには人がいなくなっていた。誰も彼と演奏をしようとしない。

気づけば彼は一人寂しく楽器を奏でるだけだった。

 

 

 

「どうすればよかったのだ…」

 

ゴードンは頭を抱えて苦悶する。

ヴェンは間違いなく音楽の天才だ。それもただの天才ではない。世界を変えるほどの音楽の才能を持っている。

そんな彼を腐らせるのは世界の損失だ。あの時、彼を誘ったことは間違いではないと確信している。

 

しかし、彼の才能は私の予想を超えるものだった。

彼が演奏すればその場の空気を支配する。聴者はまるで天国へ誘われるような感覚に陥り、曲そのものを感じることになる。

そして、それは他者の音をも支配した。

 

ヴェンの演奏はセッション相手の奏でる音を覆いつくし、歌手の歌声を狂わせる。彼の演奏は周囲へとプレッシャーを与えていた。

そのプレッシャーは常人には耐えられるものではなく、彼と一緒に演奏した多くのものが音楽を辞め、その演奏を聞いた同業者も彼を遠ざけるようになった。

次第に彼に対する非難が集まり始め、その結果が現在の状況だ。

 

ゴードンは三度目のため息をつく。ちらっと壁に掛けられている時計を見れば、ヴェンがやってくるころ合いだった。

すると、トントンと扉が叩かれる音が聞こえる。どうやらヴェンが来たようだ。

 

「…入りたまえ」

 

私も覚悟を決めるべきなのだろう…。どうか、彼の人生に幸あらんことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ~て、これからどうしよう…」

 

自分は今交易船に乗ってエレジアを旅立っていた。周囲は海に囲まれ、故郷であったエレジアはもう姿形が全く見えなくなっている。

あれからヴェンはゴードンに国外追放を言い渡された後、数日も立たずにエレジアを発つことになった。

 

この数年でヴェンは音楽が上達し、エレジアで知らぬものはいないぐらい有名になったと自負していた。

だから、旅立つ時にたくさんの人が見送りに来てくれるだろう、可愛い子や綺麗な子がいっぱい来てくれるだろうとヴェンは考えていた。

 

しかし、彼の見送りに来たのはゴードンと両親だけ。

可愛い子なし。同僚もなし。教師も後輩もいない。たった三人のみ。

その光景を見たヴェンは三人の前で泣き崩れた。…三人は悔しさの涙と勘違いしていたが。

 

仮にもコンクールで多くの賞を取った有名人に誰一人来ないってどういうこと?薄情者か?

…いや、何かそんな気はしてた。

途中から教師が教えてくれなくなったし、同僚や先輩たちがセッションすることもなくなったし、後輩も教えを乞いに来ることが無くなっていた。

みんな自分を避けるようになって、一人で演奏することが多くなった。

 

…そんなに嫌われることしたか?

確かに避けられるようなことをした覚えはある。

 

その時は…何かの発表会があって、一人で演奏するとき、ついでに同時に歌も歌おうと思ったんだ。

それまで歌うことはなかったが、音楽の才能があるんだ。なんとかなるだろうと思っていた。

 

結果、歌い終わったら全員倒れていた。

全員泡拭いて倒れており、息も絶え絶え、ゴードン何か口から血みたいなのを吐いていた。

その後はゴードンから二度と歌わないでくれと懇願され、その必死な顔に頷くしかなかった。…というより頷かなかったら殺すというような表情をしていた。

 

他にもたくさんある。

料理をしようとして全部焦がし、掃除をしようとして器具を破壊し、馬に乗ろうとすれば暴れ回す。何をしても悪い結果となった。

 

…嫌われて当然だわ。

 

そういえば、一つ不思議なことがあったなぁ。

あれは確か…一人で演奏していたとある夜だった。

演奏していると、一つの楽譜が目の前に現れたんだ。その楽譜はかなり時間がたったものなのか古びており、ところどころには骸骨が描かれていた。

その時持っていた楽器で演奏しようとしたが、その楽器で演奏できるようなものではなかった。

仕方ないから歌ってみたが、何も起こらなかった。しかも、歌っている途中で楽譜が消えていた。一体どこ行ったんだ?

…まさか楽譜に意思があって、それにも嫌われたんじゃないだろうな。

 

まぁ、過ぎたことは置いておこう。

エレジアを出る気はなかったが、せっかく外に出ることになったんだ。楽しむとするか。

小銭はたどり着く島々で演奏でもすればその日暮らしぐらいは手に入るだろう。

そうと決まれば…

 

「よーし!エレジアに帰れるようになるまで旅を楽しむぞ!」

 

あ、海賊とか海軍、天竜人に目を付けられるのだけはやめてな!

この広い海で早々出会うことはないだろうが、ハハハ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グラララおもしれぇ小僧がいるじゃねぇか」

「…」

「おいどうした。白目何か向きやがって」

 

何で四皇と出くわすんですか、神様…

 




フラグ立てるからそうなるんやで
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