ダンまち ベル・クラネル超英雄化計画   作:膝に矢うけたった

4 / 9
こっちも書きたい。そんなお年頃




「君はどこの誰で、なんでうちのキッチンを使っているんだい?」

 

 黒髪ツインテール、ついでに低身長巨乳の、ついでのついでに胸の辺りに何故か紐を通している少女が厨房に立つ女性に話しかける。女性はいきなり押しかけてきて、真っ直ぐ厨房に向かい料理を始めた。一切説明はなく、自己紹介すらしていない。完全に不法侵入である。

 

「そないなこと、決まってるやないの。厨房に立つんは、料理を作る為、うちが製薬でもしとるように見えはります?」

 

「ロキみたいな話し方をするんじゃなーい! なんで! 君が! ボクと! ベル君の!大事なホームに! いるのか、その理由を聞いてるんだ!」

 

 話し方が微妙に犬猿の仲とも言える相手に似ているのも、少女の神経を逆なでする要因になっている。

 

「それやったら、そこにおる坊に聞きなはれ」

 

 料理の手を止めることなく、彼女はそう告げる。少女が後ろを振り向くと、何よりも大事な家族が困ったような表情で入口に立っていた。

 

「ベ、ベル君! おっかえりぃい!」

 

 少女はベルに飛びつくと、女性に顔を向けて威嚇するように唸り声を上げた。

 

「彼女はベル君の知り合いかい? いいや、そんなことはないはずだ。つまり、今すぐガネーシャのところの子ども達に突き出すべきだ!」

 

 そう早口でまくし立てる。ちなみに、ガネーシャの子どもというのはガネーシャ・ファミリアという、街の治安維持を担うファミリアの団員達のことである。不審者を警察に突き出す、そう言うことだ。

 

「えーっと、神様、紹介します。僕の師匠の雪姫さんです。田舎から来てくれたんです」

 

 少女の動きが止まる。雪姫は今も黙々と料理を作っている。ベルはその間でただ、困ったように笑うことしかできなかった。

 

「師匠、こちら、僕のファミリアの神様のヘスティア様です。どこのファミリアにも入れなかった僕を眷属にしてくれた方です」

 

 このベル・クラネル、オラリオに来た当初、弱そうな見た目や純粋すぎる性格が災いしてどこのファミリアにも入ることができなかったのだ。余談だが、ゴブニュ・ファミリアという鍛冶系ファミリアにも行っているのだが、そこでは神直々に苦言を頂いている。

 どこのファミリアにも入れず路頭に迷っていたところに、手を伸ばしたのがこのヘスティアと言う神であった。まだ眷属のいなかった彼女の眷属となり、共にヘスティア・ファミリアを立ち上げたのだ。実はこの神様、神友の所に居候していて引きこもっていたら追い出されたのだが、それはベルには教えていない。

 このファミリアは団員一名、ベルが先達の力を借りられないのにはこういう事情があったのだ。

 

「炉の女神、家庭円満の神、聖火もやったかな。十二神を自ら他の神に譲る神格者でもある。ええやないの、坊にはぴったりの神様どすなぁ」

 

「え、なんでそんなにボクのことに詳しいんだい?」

 

「ハデスとヘスティアはオリュンポスの癒し枠。これ常識やわぁ」

 

 何故かやたらと神々に詳しい雪姫に、さすがの女神もちょっと引き気味である。小さな声で笑いながら、調理の済んだ物から順に皿に盛りつけていく。

 

「師匠って何故か、そういうことにも詳しいんですよ」

 

「話には聞いてたけど、ベル君の師匠君は謎だね」

 

 そんな会話をしている内に、彼女がテーブルに料理を並べ終えた。普段のヘスティア・ファミリアなら絶対に食べられないような、料理の数々がそこにはあった。濃厚な料理の匂いが鼻をくすぐる。神様も思わず喉を鳴らしてしまう。

 

「早ぅ食べておくれやす。冷めると味も落ちてまうやろ?」

 

 その言葉を聞いて、席に着く二人。すぐに料理を口に運んで、その味に顔が緩んでいく。久しぶりに食べるまともな料理、その味も中々のものとなれば、緩むのも仕方ないことだろう。

 

「そういえば、よくここがわかりましたね。僕、ホームの場所は教えてないですよね?」

 

 料理を食べながら疑問を口にするが、相手は自分の口に人差し指を当てて小さく笑うだけだった。

 

「師匠君は少し、謎すぎないかい? ボクとしてもちょっと怖いんだけど……」

 

「これも、地上の未知というものどすえ」

 

 神々は地上に刺激と未知を求めて降りてきたのは確かだが、こんな未知はたぶん望んでないだろう。未知というのが望むものだけとは限らないのも確かだが。

 

(嘘はついてないんだけどなぁ。たぶん、嘘はないけど、言ってないことの方が多いって感じかな)

 

 神に嘘は通じない。だからこそ、神に隠し事をする時はそれらしい物言いをするのが一番なのだ。結局、ご飯は美味しくいただいて、ベルの話になるのだが、案の定ミノタウロスの件でヘスティアがベルの身体をまさぐりながら、無事だったのかと頻りに聞いている。彼も彼で、天然ジゴロのような言葉で答えているのだが、身長差のせいで兄妹の会話に見えてしまう。

 

(あぁ、なんやろなぁ。これはこれで、実に面白い光景やないの。もう少し眺めてるのもええかもしれへんなぁ)

 

 師はそんなことを考えながら二人を眺めていた。

 

「よっし、それじゃ、ステイタスの更新をしようじゃないか!」

 

 そう言って、ヘスティアは腰に手を当てて胸を張る。ステイタスの更新というのは神にとって最も重要な仕事の一つである。どれだけ経験を積んでも、更新しなければ能力とはならないのだ。

 そして、このステイタスというのは例え同じファミリアであっても、容易に教えていい物ではない。

 

「それじゃ、うちは洗い物してはるから、終わったら言っておくれやす」

 

 師も例外ではない。彼女が食器を洗い始め、背を向けたのを確認した後、ヘスティアは上着を脱いでソファーにうつ伏せになったベルの背中に乗る。そうしてステイタスの更新を行うが、途中一瞬だけ眉を顰める。そして、更新の終わったステイタスを紙に写す。

 

「相も変わらず、ベル君は成長期のようだね。今回はなんとトータル200オーバーだ。君は一体どこまでいくのか、神であるボクにも予想できないよ」

 

 小さな声で雪姫に聞こえない様にそう言って、写した紙を渡す。手渡された紙を、ベルは食い入るように見つめていた。そこには自分がどれだけ成長したのかが記されている。

 

ベル・クラネル

 

LV1

 

力  F343 → E402

耐久 H116 → H141

器用 G297 → F326

俊敏 E479 → D571

魔力 I0

 

魔法

『』

 

スキル

『    』

 

 

 

 

英雄宣誓(アルゴノゥト)

・能動的行動に対するチャージ実行権

 

 

成長期、彼女はそう言ったが、この成長速度はそれだけで片づけられるものだろうか。普通の冒険者はトータル三桁上昇など一日で達成できない。明らかにこの上昇量は異常なのである。神様の言うことだからということで、本人は信じ込んでいるが。

 

「ベル君、何度も言うようだけど、このスキルはどんな負担があるかわからない。だから、よほどのことがないかぎり使っちゃダメだぞ」

 

 不自然に消されたような跡から目を逸らさせるように、彼女は『英雄宣誓』についての注意を口にする。このやり取りは、ベルが初めてファルナを刻んだ時から行われてきたものだ。

 彼女の言葉に頷いたあと、紙を折りたたんでしまう。そして、今も厨房で洗い物をしている自身の師に向けて口を開いた。

 

「師匠は今晩泊まる場所とかあるんですか?」

 

「安心しなはれ。今夜の用事は決まってはるから、洗い物終わったらここを出ていくで。さすがに、この狭い場所に泊めてとは言えんわぁ」

 

 ここは廃教会の地下室、人が数人も住むには狭すぎる場所なのである。今夜の予定は考えてあるらしく、それを聞いたヘスティアは胸を撫で下ろす。

 

「あ、でも、ちょぉっと、神はんと二人で話したいことあるんやけど、神はん借りてもええ?」

 

「ボクは構わないぜ。ボクも君とはじっくり話をしてみたいと思っていたんだ。勝手にここに入って来た件は、おいしいご飯に免じて許すけど!」

 

 ヘスティアの返事を聞いて、彼女は残りの洗い物を手早く終わらせる。その後、ベルに手を振りながらヘスティアを連れて廃教会の地上部へと歩いて行った。

 地上部に着いた二人は片や星を眺め、片や師と呼ばれる女性を見つめていた。

 

「で、や。坊に何を隠してはるん? 成長期? そんなんであそこまで上がるんやったら、今頃おらりおは高れべるのばーげんせーるどす」

 

 確かに聞こえないように言ったはずなのだが、どうやら彼女の耳には届いていたようだ。洗い物を始めたからと安心したのは早計だったのだろう。

 

「聞こえてたことについては何も言わないよ。でも、ベル君は本当に成長……」

 

「早熟スキル、生えとるんやろ? いつからなん?」

 

 雪姫が顔をヘスティアへと向けて、目を細めて笑みを浮かべる。何故知っているのか、ヘスティアはそれに対して驚くことしかできない。

 

(まさか、『あのスキル』の発現条件を知ってて、その発現を確信してる?)

 

「ほぅ、その様子だと昨日今日ではあらんのね。じゃあ、ふぁるなを刻んだ時から、とか?」

 

 ヘスティアの心臓が跳ねる。それは事実を言い当てられたことによるものだ。

 

「まさか、ん、原因は……、うち……、でも……、えぇ……」

 

 その様子からそれが間違っていなかったと悟った雪姫は、頭を押さえて小声で何やら喋っている。ヘスティアではそれを聞き取ることはできなかった。

 

「んんっ、さすがに師匠君でも彼のステイタスに対する詮索はそこまでにしてもらおうかな。こっちも君には聞きたいことがあるんだ」

 

 ヘスティアが咳ばらいをしてそう告げると、雪姫はすんなりを引き下がった。彼女の聞きたいことの答えは十分に得られたのだろう。

 それからは、ヘスティアがオラリオに来る前のベルのことや、彼にハーレムはロマンなどという思考を植え付けた祖父(クソジジイ)について質問する。彼女はそれに対して、懐かしむような表情で答えていく。そして、最後にヘスティアは一番気になっていたことを口にした。

 

「師匠君、君は本当にただの人の子なのかい?」

 

 

 

 

 

 地下で待っていたベルの下に帰って来たのは、ヘスティア一人だった。雪姫は話の後すぐに廃教会を離れてどこかへ行ってしまったのだ。その話を聞いてベルは苦笑いこそするが、驚いてはいない。きっと、いつもそんな感じなのだろう。

 そうして、二人は就寝準備を進めることになり、ベルは歯を磨き、ヘスティアは先ほどの出来事を考えていた。

 

(『全能超越(ガデス・オーヴァー)』、早熟する。追い求める限り効果持続。想いの強さにより効果上昇。ベル君が最初に発現したスキルの一つ。師匠君が関わっていると思ったんだけど……)

 

 ――ただの人の子やったら、きっと、うちは坊とは関わってへんやろなぁ

 

 最後の質問から得られた答えはこれである。普通ではない、それは確定したが、この言葉の中で彼女は一つ嘘を吐いていた。

 

(普通でもベル君とは関わっていたってことなんだろうね。でも嘘が見抜ける以上彼女は『全能の女神(ゴッデス)』とは呼べない……)

 

 『全能超越』、その謎に頭を悩ませながら、ヘスティアは眠りにつく。尚、別々に寝たはずなのだが、朝になるとしっかりベルの寝ているソファーに一緒になって寝ている女神の姿があるのは余談だろう。

 




紐神様降臨。ステイタス表示はこんな感じで大丈夫だろうか
というわけで、ベル君魔改造の片鱗現る。最初からスキルが二つついています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。