追記
セブンイレブンじゃなくてサンクスでした。凡ミス…っ!
再追記
西住流と島田流のお二方の肩書が家元と師範が逆になってたのを修正。再凡ミス…っ!
大洗女子学園への初登校日の前日、鳴らないと思っていた電話が急に鳴ったのに西住みほは驚いた。焦って電話先の名前も見ずに電話に出ると、
「助けてぇ!財布忘れて一文無し状態!」
と、よく知る…抜けているところもあるけどお兄ちゃんみたいと慕っている青年の情けない声が聞こえてきた。出る前の深刻な表情とは打って変わって困惑の表情を浮かべる。
「私今大洗なんだけど…」
「実は今俺も大洗なんだよ!」
「えっ?」
「俺も昨日聞いて今日来たんだ!」
「えっ!?」
錯乱しているのかいまいち要領を得ない答えに疑問符がでる。
「どういうこと…」
「やっべ!とりあえずサンク」
公衆電話からかけていたらしく、言い終わる直前でブツッという音ともに電話が切れる。
地元を離れるときは今後、知った顔とどんな顔して会えばいいのかな?と悩んでいたが、そんなことは消し飛び、取り合えず今の自分より動揺してそうな人物へと急いで会いに行くことにした。
「すまねぇ…すまねぇ…」
「ううん、気にしないで」
幸い近くのコンビニですぐ合流できたが、しおしおと萎れた雰囲気を醸し出していた青年を目の前に苦笑を浮かべながら店内で買ったアイスを渡す。どうやらみほが一人で引っ越して心配だから見てきて、あとついでに食堂とバーの仕事も取ってきたからそっちで働いてこいと彼の保護者から伝えられたらしい。
「もうちょっと早く言ってくれればみほにも連絡出来たんだけどなぁ…。マスターの知り合いにいきなり連れて来られて」
「マスターさん、そういうところあるもんね」
お互いに少し笑った後ひとしきり話して一区切り。
「…俺が来たのは、俺の意思でもあるけれど、マスターからも頼まれた。たぶんしほさんからも何かしらお願いされたと思う」
「…うん」
西住流師範代でもある母親にみほが叱責されてから数日後、先ほど話に出てきたマスター…青年の叔母兼保護者からみほの母親の動画が送られてきた。
叱責したときの姿からは想像もできないほど泣き上戸で、島田流家元を巻き込んで荒れている母親の黒森峰制服姿は別の意味で見たくなかった。島田流師範もなんで黒森峰の制服を着ているのか。
ただ、その口からは自分への想いを聞けたので、事件が起きた時より気持ちはだいぶ軽くなっていた。そのあと録画していたマスターが自撮り風に持ち替えたあと、ピースしてニカッと笑っていた。その後ろにはカウンターで2人の介護をしながら水を飲ませる表情の死んだ頼太の姿があった。
次の日、珍しく顔を真っ赤にしたしほからみほは呼び出しを受け、それを伝えに来たまほがたいそう驚き怖がっていたが、何があったかを知っているみほは吹き出さないようにするのに大変だった。
余談だが、その動画が送られてきた数日後、姉であるまほやチームのみんなとも話す機会が持てた。どうやら彼が背中を押してくれたらしい。決勝戦が終わった後よりもだいぶ精神的にも良くなった。
「まぁ、とりあえず。バーで会う機会は当分ないと思うけど食堂で会ったときはよろしくな、みほ」
「うん、こちらこそ」
言葉を続ける青年は微笑みながら手を差し出し、みほは笑いながら握り返した。と、ここでみほは気付いたことを口にした。
「そういえばなんでお財布忘れたの?宿に取りに帰ればいいのに」
「ああ、それは…」
理由を言う前に別方向からの声に遮られる。
「親分、見つけました!」
「さっさと持ち帰るよ!」
みほがそちらの方を見ると、どう良く見積もってもガラの悪そうな、本来の水兵服に近いセーラー服を着た4人とバーテンダーの恰好をした1人がいた。げぇ!と声を出した青年をあっという間に簀巻きにし、そのうちの一番大きな人が担ぎ上げたと思うと、すごい速さで去っていった。
「ちっ!このまま仕事から逃げれると思ったのにぃ!みほ!とりあえずこれからよろしくなぁぁぁぁぁ…」
あっという間な誘拐劇に困惑しながらも、マスターのところにいた時と同じくまた仕事から逃げてたんだろうなぁ…と思いながら、彼女たちを見送った。
「…あ、当たった」
食べてたアイスは当たりだった。幸先いいなぁと先ほどの兄貴分が担がれていった光景は頭の片隅に追いやって、幾分か楽な気持ちで明日からの新しい学園生活に期待と不安を寄せるのであった。
担がれつつ連行されている青年、酒匂頼太はなーんでこうなったかなと思い返していた。
いつの間にか転生したのはいいけれど赤ちゃんの肉体に精神が引っ張られほげーと暮らしていたが、テレビで戦車道が行われているのを見てガルパンの世界であることを気付いた。
戦車道と特に接点もない生活だったので、このまま原作と絡むことはないんだろうな…と思ってのほほんと暮らしていたある日。
親が多忙になってきたので叔母(バーを持っているのでマスターと呼んでいる)に預けられることが多くなってきて、自分はそのバーで過ごすことも多くなった。ここまでは普通…ではないが、原作に絡むことはないと思っていた。
そのバーはなんと家元ズが常連だったのだ。しかも結構な頻度で来店する。マスターが学生時代に戦車道をしており、よく2人に絡んでいた━「と」じゃなくて「に」ということに頼太は戦慄した。―らしい。
高校に入学するとき、親は海外に転勤になったが、自分はそのままマスターの元に下宿することになり、お店の手伝い兼バイトもするようになった。酔っぱらって面倒くさくなった2人、もしくはマスターを含めた3人の看病を何度かしたこともあった。
まぁおかげで時々西住姉妹や愛里寿が遊びに来て、それぞれ関わりを持てたり、それぞれの試合時に応援席の裏でお店をよく出店して手伝いをさせられたりして、それぞれのチームのメンツともボチボチ仲良くなった。
その甲斐もあってかあの決勝戦のあと、フォローできる部分も多かったけど、黒森峰の戦車道以外の生徒の一部や黒森峰のOG、西住流の一部のお歴々の方々などからのプレッシャーからはフォローできなかった。それもあってか、原作よりは幾分かマシな状態だったのだが、結局は大洗に転校することになってしまったのだった。
みほが大洗に転校したという話を聞いたとき、マスターに自分が大洗に行くことを提案しようと店に行くと、マスターも同じ考えだったらしく、「職は用意したから学園艦に行って来い、あとはカトラスに聞け」の一言と共に死角に隠れていた水兵さんたち…サメさんチームから簀巻きにされたあと、気が付いたら学園艦に乗っていたのだった。
「逃げたことについて弁明は?」
「妹分に会いたくてつい荒ぶってしまった」
「…はぁ。店の準備が終わったら自由時間だって言ってるのに」
「ついでに仕事もしたくなかった」
「そっちの比重が大きいように感じるんだけど?」
大洗の学園艦の船底、通称「大洗のヨハネスブルグ」と呼ばれている場所の最深部にあるBAR『どん底』。ここに連れてきた主犯格の海賊帽をかぶった女の子――褐色、イケメン、メカクレ――のは呆れながらツッコミを入れる。
「それにここってお客さんくるの?お前さんたちのアジトっぽい感じがして誰も来そうにないけど」
「目の前にいるじゃないか」
「…客?」
「常連の太客さ」
どや顔してる4人と「親分はともかく他の3人が太客…?特にフリント」と首をかしげているエプロン姿が1人。
「とりあえずあんたには上の食堂とは別にここでも働いてもらう。ここの説明は明日する。わかったな?」
「分かってる分かってる」
そこまで言い終わると、にかっと笑うイケメン。
「あんたが仲間たり得るか…見定めさせてもらうよ。カトラスの師匠のお墨付きだから大丈夫だと思うけどね」
「ははは、仕事以外に関してはマスターの顔を泥に塗らない様にするよ」
「そこをちゃんとしなきゃ泥を塗ることになるんだろうけど、どんだけ働きたくないんだあんた…」
呆れた表情をしたが、切り替えるように首を振るイケメン。
「紹介がまだだったね。わたしはお銀、竜巻のお銀って呼ばれている」
「あたいはフリント~♪大波のフリントさ~♪」
「わたしはラム。爆弾低気圧のラムさ。よろしくね〜」
「サルガッソーのムラカミだ」
「…カトラスだ。生しらす丼のカトラス」
「唯一の知り合いの二つ名が一番意味分からない…っ!」
常連さんの娘でいつの間にかマスターの弟子になっていたカトラス以外初対面だったが、知っているとはいえ唯一の知り合いの二つ名が一番衝撃的だった。なんで生しらす丼なんだよ。
「美味しいからしょうがない」
本人に聞いても答えになってなかった。
「…いろいろツッコミが追い付かないけどまあいいや。ちなみにマスターから俺の泊まる場所って聞いてたりは?」
「特に何も」
「ですよねー」
こうして頼太の初大洗の記念すべき一日目はバーの従業員控室に泊まることとなった。
「ふと思ったんだけどさ」
「うん」
「すでにバーテンダーいるのに俺いる?」
「巻き添え」
「おい」
家元ズが大洗の制服で戦車道大作戦で出たのは知っていたけど、改めて検索したら今年の夏にフィギュアになっててワロタ