「…あっ!クズシ様ぁー!!!」
「…………何事だ。」
振り返ると、基地中核から射的訓練場へ続く道を駆けてくるシャケが目に入る。何事だろうか。どことなく嫌な予感がするのは気の所為だと思いたい。
「っはぁ、はぁ………クズシ様!!お手紙です!お受け取りください!!なんか知らないシャケに『クズシという名の者にぃ、渡してこいぃ。』って渡されました!」
「……特徴は?」
「フードを被ってたので分かりません!!」
「…そうか。………もう良いぞ。感謝する。」
不穏。それに尽きる。
家族からか?同僚からか?
…………………………………いや。
「……………上からか。」
差し出し人は、【総司令官】。
絶対的な権力者であり、弱肉強食が是とされるシャケ社会での実質的な最高権力者。それが総司令官。
そんな奴が俺に?面倒事であることが確定したと言っても過言ではない。俺にとっては悲観と同義だ。
内容を見れば、在るのは【食事会】という単語。
ああ。最悪だ。しかし……………
「…………受ける以外は……無いか…………」
組織内での色々な汚さという点では人間にも劣らないシャケの醜い社会性の中に居る限り、逃げるのは無理だと悟った。……悟らざるを得なかった。
どうしてこんな所だけ人間寄りなのだろう。
………………どうして。
◇
「クズシ様。到着しました。」
「あぁ。」
所変わりて現在は船の上。…と言ってもシャケ用であるので、人間の船とは到底似ても似つかないものだ。
近い形状だとオープンカー…とでも言えばいいのだろうか。そこそこ遠い所まで移動するには最適な代物である。
オクタリアンとの貿易によって仕入れられているものなので品質もある程度は保証されている。
「では………ここから先は私の入場は許可されていませんので……ごゆっくりどうぞ…………」
「あぁ。貴様もリラックスしていると良い。」
「光栄ですっ。」
目前に聳え立っているのは水面の上まで続く山。
……つまり、島だ。
目的地はこの島の上にあるパーティー会場。今すぐにでも帰りたい気分だが生憎許可は出ていない。出そうにもない。手遅れなのだから観念して向かおう。
ゆうに500メートルはあるであろうその壁には点々と休息するための足場があるが、泳ぎだと時間が掛かり過ぎる。俺はとっとと行ってとっとと帰りたいのだ。
願わくば愛武器の清掃をしたい。
「……貴様。少し踏ん張った方が良いぞ。」
「…え?はい………………」
故に最速で行くならば海底から跳ぶのが理想だろう。そうしたら壁を掴んで腕力で跳んで…後はフィーリングで。
「では行ってくる。」
尾鰭をバネのように伸縮させ海底から翔び立ち、爆発的な推進力で更に前へと突き進む。さながら前世での『正しい』シャケの様だ。下を見てみれば、俺が跳んだ時に生まれた水流で舞っているシャケ達が目に入る。……貧弱。
そういえば壁の窪みは、思ったよりも掴みやすい様だ。形もそうだが…………もしや先に誰かこのルートを使った者が居るのだろうか。確実に強い事が伺える。是非とも一度拳を交えてみたいものだが。
少し思案しながら動きを繰り返しているとあっという間に到着していた。これも筋トレの賜物だなと実感する。
…………とりあえずは差出人の総司令官を探すか。
◇
「……おお、クズシくん。来てくれると信じていたよ。」
そういうお前は総司令官。
「パーティーまではまだまだ時間があるようだ。3時間といった程だ。……そうだ、良い機会だ。私の娘と共にこの島を周ってみないかね?君も嬉しいだろう。」
「………ッッ!?……………是非、ご一緒させて頂きたいと思います。」
あぁ。ゴミカス。
…………………………嵌められた。
俺は確実に、招待状に記載されていた予定時刻から30分前である今に到着した筈だ。
冗談じゃない。誰が嬉しいものか。思考を読まれていた事にも言い表せない不快感を感じる。
…………ただ、まぁ……確かに。不本意だが、どうせ同行しなくてもどこの馬の骨かも知らないシャケに言い寄られるだけだ。『特記戦力』。その称号が示す強さに吸い寄せられて来る愚者は多い。
それらを、たった一匹のシャケを連れるだけで除けられるのだ。収支で言えばギリギリ
「許可が取れた様だぞ。ベニイロ。」
「…………………えっ?ほんま!?」
……そう。例え常日頃から俺に付き纏い只管背後から声をしつこく掛けてくる、底抜けに明るく、やかましいシャケだとしても…………ギリギリ
「私がおらんくて寂しかったクズシくん?あーだよねだよね!私みたいなやっさしくてつっよくてかァっんわいいシャケちゃんがおらんくて寂しかったでしょ!?寂しかったでしょォ〜〜〜?でももう大丈夫!なぜって!?
私が来たから!!!!がっはっはっはァ〜い!!」
………………………ギリギリ
あぁー。帰りたい。
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やってくれたらガチャ運が0.03%上がるかも。(大嘘)
ただの質問です。気にしないでください。気に。時に、特に、このイカちゃんは。
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生かすべきだ。
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殺すべきだ。