オールマイトの自由メシ   作:ジャックマン二

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長らくおまたせしました、オールマイトは何処まで行ってもオールマイトな九話です
私事になってしまいますがこの間初めて高給居酒屋(自分の中で)に行き、これは…………オールマイトのネタに使える!って思って経費だからとバカスカ酔っぱらった上司の注文名義で食べてきました
本当にオールマイト化、旨ーーーい!!!と叫びそうになってとにかくジンジャエールを飲んで次の日腹を抱えた馬鹿の話でした


九話 対駅チカ蕎麦屋

 

この日、オールマイトは一軒の古ぼけた店に来ていた。

特に書く必要は無いと思えるこの行動だが、実は書いたのには理由があるのだ。

それは後ほど。

 

「空いてますか?」

 

「はーい、アラアラ大きい人が来たわね」

 

まるで某中島の如く元気に戸を開け、声をかけるとおばあちゃんと呼べる年齢のマダムが笑顔で対応してくれた。

これがもう良いらしい。

 

(人生の大先輩がまるで近所の子が来たかのように手軽に相手してくれる

この自営特有の空気が好きだ!

いやね、ほら私って有名だったじゃん、だから何処行ってもワーキャー騒がれてたのに古ぼけた自営はそんなの無かったのよ

だから良く行ってたなぁ……)

 

まぁ自分語りは無視して話を進めよう。

オールマイトは適当な席に座るとメニューすら開かずにすぐに注文した。

 

「そばがきと冷や、後で天ざると銀シャリで」

 

「そばがきなんて通ね~」

 

「ハッハッハッハッ、昔からそばがきに目がなくて」

 

「がきと天、シャリ一丁」

 

厨房へ戻りほぼ待つことなく冷やこと冷やされた日本酒が出される。

大きさ的にはオールマイトの掌サイズの瓶。

それを見て既にテンションが上がっている。

 

(うーん、この親しみやすさ

自営ってのはチェーンと違ってこれこそが売り!

しかも見給えこの冷や、キンキンじゃなくて少し冷蔵庫で冷やしたレベルの冷たさが素晴らしい!

店主のこだわりってのが解るよ)

 

湯呑とも取れるグラスに注ぎ一口、最初はピリッと辛味が来て徐々にマイルドになる。

この時点で素晴らしいのに口内で温度が高まると今度は香りが花開く。

まぁつまり、凄く飲みやすいしオールマイト好みの味だ。

 

「はいそばがきおまたせ、ざるはいつでも出来るから声かけてね」

 

「おぉ……」

 

出されたのはすいとんの様なもの。

説明するならそばがきとは蕎麦の生地を適当に千切って茹でたすいとんの一種で、江戸時代ではそばがきを肴に飲むのが普通だったそうだ。

 

(さて……そばがきはその店の蕎麦粉の力がよくわかる物だ

流石にこのオールマイト、蕎麦には五月蝿いぞ)

 

いやアンタは何時も五月蝿いだろ。

箸で器用にそばがきを一つ掬い、それを口に運ぶ。

 

(う〜ん、もう一本じゃなくて五本は必要だったね冷や!

もう全てが良い!何これ店主こだわり過ぎてないかな!香りも食感も一級品で更に形も団子とかじゃなくて刀削麺見たいなヒラヒラ系とか既にこだわってる!

ハフハフしないで適当に齧って冷を一献!カァ!旨い!旨すぎる!)

 

そばがきで騒いでるゴリラ。

ちなみに前世で蕎麦を食べてたのは体の都合で、消化良く栄養が多い蕎麦はオールマイト的に良かったそうだ。

江戸時代で江戸患い(脚気)の特効薬になるほどビタミン等が豊富な蕎麦は消化器官の駄目になってたオールマイトとしてはサプリメント以外で補給出来る手段だったらしく、実はエンデヴァーに内緒で彼の息子とごく偶に食べに行ってたそうだ。

 

(この店、もう最高ではないか!

くそぅ……前世なら蕎麦大好き倶楽部の会員と共に通うほどの店なのに)

 

悔やみながらも飲む手は止めない。

そして何本か冷やを追加し、そばがきが尽きたところで女将に蕎麦を頼んだ。

 

「はいおまたせ」

 

「おぉ……」

 

少しすると蕎麦と天ぷらを持ってきてくれる女将。

読者諸兄は蕎麦の三たてというのを知っているだろうか。

挽きたて

打ちたて

茹でたて

そこにそばの実を採ったばかりの採りたてを加えて四たてと呼ぶ事も有るそうだ。

まぁ、細かいのは置いておいてこの蕎麦は実に見事だ。

均一に切られた麺と香りの良い蕎麦粉、店主の腕が良いからか麺を見ただけで解る程の艶。

 

(素晴らしい!!!

もうこれは国宝級の蕎麦ではないか!いや、落ち着けオールマイト!

蕎麦は茹でたて寿司は握りたて天ぷらは揚げたて、ここで時間をかけては蕎麦男の名が廃る!)

 

先ず麺のみを軽く摘み、何もつけずに勢い良く啜る。

 

(素晴らし過ぎるぞ!!!

蕎麦の香りが良く、喉越しが良い!!!

麺も歯切れがよく、大将は挽きたてを馴染ませてから切って出してるな!

くぅぅぅうううう、たまらん!

旨ぁぁぁぁああああい!!!

つけ汁も蕎麦の香りに負けない優しくも存在感のある出汁と、味を崩さない支える程よい味付け!

たまらん!)

 

一気に半分ほど蕎麦を食べてしまうがここで一旦手を止める。

そして次の狙いは天ぷらだ。

 

(素早く食べすぎてまだ熱々の天ぷら……ふっ、オールマイトがお供に選ぶのは塩!)

 

手を伸ばしたのは女将が一緒に持ってきてくれた瓶に入った塩。

ただ市販品では無いのか、ラベルが張っておらず何の塩かまでは解らない。

 

(ちょんちょんっと掛けて、それじゃあ先ずは主役からいただくかな)

 

海老天を持ち上げると「おぉ……」と息を飲んでしまう。

デカい、一般成人男性並みの大きな海老をカラリと揚げた天ぷらにゴクリと唾を飲み込みかじりつく。

サクッと小気味のいい音と厚すぎない衣、そしてプリッとした海老に塩の旨味。

 

(旨い……旨すぎる!!!

プリッとした海老と軽くサクッとした衣!

そこにこの塩の尖っていない優しい味わい!

三位一体極まりではないか!

オール・フォー・ワンから爆豪少年を救った時の緑谷少年、切島少年、飯田少年のコンビネーション!!!

まさかこれ私の大好きな舞茸天!?サクサク衣にシャキシャキ舞茸とか最高!!!

獅子唐もシャッキリサクサクで手が止まらん!!!)

 

天ぷらを半分程食したところでまたもやブレーキをかける。

視線の先には茶碗に盛られたホカホカの銀シャリ。

本当はこの天ぷらをおかずにして食べるつもりだったのだがあまりの旨さに食い進めてしまったのだ。

 

(う、むぅ……親子丼くらいにするべきだったかな?

まぁ……いただきます―――絶望した!こんなに旨い銀シャリを無視して食べていた自分に絶望した!!!

これ旨い!

米一粒一粒が立っていて艶めいている!しかもこの絶妙な丼用のパラッと感!

ただの米では無いな!)

 

慌ててメニューを見てオールマイトは敗北を悟った。

メニューの表紙には『蕎麦と丼あたりや』と書いてあったのだ。

 

(ふっ…………旨いそばと旨い天ぷら……そして旨いシャリ……私の調査能力の低さには呆れるな)

 

更にオールマイトを絶望させたのは短冊メニューに書いてある『自家製タルタルソースとり天』だ。

 

(サーよ……どうやら私は君が居なければこの程度の男、もし許されるならあの時に戻って君と一緒にこの自家製タルタルソースとり天を食べたかった……)

 

何を言ってるのか少し理解出来ないが、笑顔を忘れずに確りと全て食べるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

お笑い芸人中丸マッスルは悩んでいた。

お笑い芸人としては中堅以下、芸名にまでした筋肉はボディビル大会で入賞すら出来ない。

まさに人生の窮地に立たされていた。

そんな彼は近所の蕎麦屋で一人黄昏れる。

 

「はぁ……」

 

いつもの事、いつも落ち込んではいつもここに来ていつもザルを食べる。

ただ、今日は一つだけいつもが無かった。

 

「空いてますか?」

 

「っ!?」

 

金髪の超ムキムキな男が入店してきたのだ。

アルプス山脈の如く隆起の激しい胸筋、巨大な重機を乗せたかのような肩。

樹齢何百年かと思う程の太い足、そして天使の如く繊細でありながら悪魔の様に大胆な腕。 

 

(ぼ、ボディビルダーの理想形じゃねえか)

 

どんな節制と鍛錬をしたらこんなに仕上がるのか、中丸はすぐにでも尋ねたくなったが彼の注文を聞き立ち止まる。

 

(さ、酒だと!?しかも天ぷらに米!?

暴飲暴食の限りじゃねえか!)

 

ボディビルダーとして炭水化物の過剰摂取は厳禁。

更に油まで、彼は何者なんだと不気味に思ってしまった。

だが……

 

「うんまーい!!!

サクサクとり天にピクルスタップリのタルタルソースが相性最高!!!」

 

何故か……何故か惹かれる。

中丸はその何故かを知るため、食事を終えた男に近づいた。

 

「あ、五月蠅かったですか?」

 

「あ、いえ……その、自分中丸マッスルって芸能人でして……その……何故か貴方の姿に惹かれまして」

 

「?」

 

「実は自分……ボディビルでもお笑いでもてんで駄目でお兄さんの姿を見て何が自分に足りないのか知ってる気がして」

 

「成る程……」

 

男は考える素振り一つせず、すぐに答えてくれた。

胸を張り堂々と。

 

「笑顔です!!!」

 

「え、笑顔?」

 

「そう!楽しい時も辛い時も笑顔でいれる!

自分が笑顔じゃなきゃ人の笑顔なんて出せませんよ!」

 

凄く力強く……そして凄く染みる言葉だった。

中丸は自分に足りなかった何かを見つけ、男にお土産として裏メニューの焼き飯を渡して帰宅した。

 

「笑顔……笑顔かぁ……うん、笑顔だ!」

 

この数年後、中丸マッスルはブレイクし当時救ってくれた謎のボディビルダーの事を語るのだった。

もっとも彼ことオールマイトはボディビルダーでは無いが。




中丸マッスル
売れない芸人、入賞不可能なボディビルダー
だがオールマイトの一言に救われて頑張る。

番外編は?

  • 五話に一度程度で
  • そりゃ十話くらいじゃね?
  • もっとオールマイト見せろ!
  • いやオール・フォー・ワン書けよ!
  • 最早別作品として作るべきと申しますぞ
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