ある日の事、オールマイト、オール・フォー・ワン、ステインの3人は落ち込みながら街を歩いていた。
ちなみに言うならこの3人は先程たまたま遭遇しただけで落ち込んでる理由は三者三様である。
何とかテンションを上げようとするのだが、矢張りその理由により上がらずかと言って仲のいい者に愚痴る訳にもいかずに何とも言えない微妙な空気感が出てしまう、言うなら微妙な空気感なのに解決策のない微妙な状態なのだ。
「あ⋯⋯」
そしてその時見つけ出したオアシス。
焼肉『高楽亭』
「皆―――」
オールマイトが声をかけようと振り向くと、二人は黙って頷いた。
「いらっしゃいませ〜」
「三名で」
店員のうららか〜な女性にそう言うとすぐに席に案内された。
そしてすぐに注文し、早くに出てくる米と肉。
3人は黙って焼いた。
先ずはオール・フォー・ワンだ。
普段なら最初はタン塩と決め、細かい自分ルールを決めているが今回はカルビからだ。
しかも三連皿にタレを注ぎコチュジャンとニンニクをたっぷり入れた普段とは全く違うジャンクジャンクしたタレ。
そこにカルビをつけ、ご飯にワンバンさせ口に運び一気に白米をかき込んだ。
「旨い!」
先程、自身の愛車に子供がイタズラしてきた。
それだけならまだいい、だが親はそれを無視しお喋りに夢中で注意しても「子供のやったこと」と逆ギレしてくる始末。
その怒りをカルビを噛む事と米を流し込む事で、やるせない怒りを爆発させる。
ステインが注文したのはタレなしの豚トロ。
焼けた豚トロを、三連皿に辛口タレとコチュジャン、そして七味を足した辛味のみを追求した謎のタレに浸しご飯にワンバンさせ口に運び一気に白米をかき込んだ。
「旨い⋯⋯」
隣町の品揃えのいい本屋に来たのに、自身の欲しい法律関係の本のみ売り切れ、本屋巡りしても何故かそれだけが売り切れてるやるせなさを豚トロの脂と共に飲み込んでいく。
オールマイトが注文したのは豚バラ肉である。
それがカリッカリに焼けると、三連皿に味噌ダレを入れそこに七味を追加。
そしてそれを纏わせ白米にワンバンさせて口に放り込む。
そこから白米を一気にかき込む。
「うまーい!」
たまたま近くの映画館でやってた『針伊本田と剣者の意志』と言うB級映画を観たが微妙、そしてその後も微妙な事が続きそのモヤモヤを一気に白米で流し込む。
3人は無我夢中で理不尽ややるせなさを爆食で一気に流し込む。
白米が3杯を越えた辺りで3人のモヤモヤは打ち消えていた。
そして注文されるのは矢張りアレだ、焼肉とくればアレである。
「お待たせしました〜生ビール3つです」
そう、そしてホルモンを注文し網に置いた。
「それでは!」
「「「かんぱーーーい!」」」
モヤモヤの消えた3人はジョッキをぶつけ一気に飲み干す。
「これこれ!」
「たまには自分ルール無視の焼肉も良い物だ」
「ハァ⋯⋯安い焼肉屋だからこそ許される行為⋯⋯ハァ⋯⋯高級店では許されない行為です⋯⋯」
そう言うとビールを追加したオール・フォー・ワンがステインを指差す。
早速酔い始めたらしい。
「そう、だからこそ僕は高級店が嫌なんだ!」
「柵さん?」
「八木さんは思いませんか? 料理とは⋯⋯食とは人生で一時を彩る脇役やパーツであり高級店はそれを無視して料理を主役に押し立てている!
そうなっては肩が凝って仕方ない!」
なんとなく言いたい事が分かるからか、オールマイトはウンウン頷く。
確かに、現役時代はそう言う高級店にお呼ばれする事が多かったが結局は1人で食べるカップ麺の方が旨かった。
ちなみにステインはそこら辺分からないからか黙々とホルモンを焼いている。
そして程よく焼けるとオールマイトはふと口を開く。
「私だけかな⋯⋯ホルモンって普通に焼けたよりよく焼いた方が美味しそうに思うの」
それを聞いた瞬間、2人の箸が止まった。
よく焼き、在り来りに言えばそれをこの安いホルモンで行おうとしている。
そして出来上がったのは焦げ付く寸前の小さくなったホルモンだ。
そして3人はそれを口に運ぶ。
「うまーい!焦げ目のカリカリとホルモンのコリコリ!」
「脂が落ちてるがそれを補う食感の暴力!」
「ハァ⋯⋯まさに口福」
3人は再度ビールを飲み干し追加で注文、そして様々な肉を焼いては食べて飲んでと騒ぎ始めた。
「ところで何でホルモンって呼ぶんだろ?」
「大阪でほおるもん(放り捨てる物)が語源のはずですよ
それがなまってホルモンってなったとか」
そんな風に酔い始めた3人はくだらない話をしながら会計を済ませるのだった。
ちょっとしたおまけ。
3人の注文を取りに来る青年は、酔っ払いのアホ話しに聞き耳を立てていた。
「ワードウルフってあるでしょ?」
「ありますね」
「アレやってる動画で、そのウルフの内容が―――」
オールマイトが言おうとした瞬間、呼び出しが鳴り慌てて別の客席の注文を取りに行く。
そして終わったら3人の近くの席を片付けながら耳を傾ける。
「そ、それは酷い⋯⋯ククク⋯⋯」
「ハァ⋯⋯言葉だけで危ないな」
「ですよね~」
どうやらオチが終わってしまったらしく、大事なところを聞き逃してしまい落ち込む店員。
「そうそう、今日『針伊本田と剣者の意志』って謎映画見てきたんですよ」
なにそれ、滅茶苦茶気になると思い耳を傾けるとレジの呼び出しが鳴り慌てて会計を済ませる。
すると別卓の注文が出来上がり届けに向かい3人の近くの席を片付けながら耳を傾ける。
「宇井摺⋯⋯な、なる程⋯⋯誤チェストされる程度なら剣者の意志は持って無いか⋯⋯ククク⋯⋯」
「紅蓮蛇のコケにしたらチェスト⋯⋯ハァ⋯⋯凄まじい武闘派だな⋯⋯」
誤チェストって何!?と言うかチェストって何と店員は大事なところを聞き逃しその日一日悶々と過ごす事になるのだった。
そして翌日、針伊本田と剣者の意志を見に行くのだった。
お待たせしました