誰が出てくるかはお任せします
とある安いアパート、そこには顔は良いのに貧乏性な男が住んでいた。
職業は消防士、とある先輩に憧れてこの業界に入ったのだが顔が良いからかよくポスターのモデルになっている。
その男は今日、非番であり朝からシャツにジャージとだらけた格好で生活している。
いま、その男は台所でフライパンを熱していた。
「朝は手軽に済ませるか」
少し九州訛りのある言葉遣いで料理の準備を始める。
使うのはもやし、ソース、そして少量の塩であった。
熱したフライパンに油を敷き、もやしを投入して火を通すと塩を軽く振り水分を出す。
そしてソースをかけて全体的に味を行き渡らせたら皿に盛り、マヨネーズをかけて完成だ。
「お好みもやし完成」
この男かなりの貧乏性であり、家の近所のスーパーではもやしが20円で買えるからよく使っている。
そしてソースは、そのスーパーのプライベートブランドの焼きそばが3玉105円なのだが、それが3玉で粉ソース2個が丁度いい濃さだからと常に一袋残しているのだ。
勿論、使ったソースはこの余った粉ソースである。
そしてマヨネーズもプライベートブランドのであり、200円少々のを使用している。
茶碗に米を盛るとお好みもやしをおかずに朝食を取り始める。
徹底した安上がり飯である。
「濃い目の味が米によう合うたい」
気を抜くと方言が出てしまうからか、普段から気をつけるのだが……やはり食事中はどうしても出てしまうらしい。
朝食を食べ終えると、すぐに準備して近くのスーパーに自転車で向かう男。
到着するなりすぐに精肉コーナーへ向かった。
そこには前日の売れ残りだからか値引きされた肉が並んでおり、鶏むね肉の細切れを購入。
お値段は何と218円だ。
家に帰ると小鍋に水を入れ熱していく。
そして温まるとそこに買ってきた鶏むね肉を投入しもやしを入れ、出汁入り味噌を溶かしていく。
「これで昼飯も完成、後はのんびりしようか」
勿論この味噌もプライベートブランドの安いやつで、大き目な一梱包が200円少々の安いやつだ。
何故こんなにも節約してるのか、それは彼は別にそこまで贅沢に興味が無いからだ。
ただ食べて動ければいい、ある種の抑制されて生きてきた結果食への贅沢をする必要が無いと割り切ってしまっているのだ。
そして昼になると先程の味噌汁をおかずに米を食い、手軽に昼を済ませて昼寝をする。
おやつ時を過ぎた時間、スマホが鳴りそれに起こされた。
着信らしい。
「もしもし〜」
「俺だ」
「あ、先輩ですか〜どうしました?」
「暇か?」
「まぁ、暇ですけど」
「なら飯に行くぞ、いいな?」
どうやら職場の先輩からの電話であり、食事に行くとの誘いであった。
彼は二つ返事で了承すると身支度を整える。
服を変えるだけで貧乏性男とは思えない程にきらびやかなオーラを放つとは、この手の男は相当しなければダサくはならないだろう。
1時間後、スマホが鳴り出ると到着したと言われ表に出ると愛車のタントに乗った先輩が待機していた。
「何処に行くんですか?」
「うむ、今日は変な居酒屋を見つけたからそこに行くぞ」
この先輩、たまにこうして彼を連れ出しては興味を持たせようとやたらと変わった店を紹介するのだ。
ついたのは何とも言えない古い感じの個人営業の居酒屋であった。
中に入ると店主らしき老人と、その息子?と女性二人。
恐らく二人の奥方だろうか?がゆったりと動いていた。
「此処は二部構成の店でな、昼は定食屋で夜が居酒屋だ」
「へ〜……なんか懐かしい感じの店ですね」
適当なテーブル席に座るとメニューを見るのだが……海鮮系が得意だからか刺身や天ぷら、寿司といった物がメインに据えられていた。
その中の一つが彼の目を惹く。
「ナマズの天ぷら?」
「珍しいだろ、此処はそういったモノも扱っているぞ」
「はぁ〜先輩詳しいですね」
思わず出てしまう言葉だが、先輩は気を良くしたからか生ビールと天ぷら盛り合わせ、そしてナマズの天ぷらを注文した。
少しするとタイミングを合わせたからか天ぷらと生ビールが同時に出てくる。
「「かんぱーい」」
二人はジョッキをぶつけ乾杯する。
半分程飲んでから天ぷらに箸を伸ばす。
「うっま!?」
彼が食べたのはナマズの天ぷら。
サクサクとした衣としっとりとした身、クセが無いからか優しい味わいが何とも言えない絶品である。
塩でも良し、つゆでも良し、つけなくても良しと、グイグイとビールが進む絶品である。
二人はどんどんと飲んでいき、気づけば寿司まで注文し大量に食べ進めていた。
会計は食べた量から見れば妥当な金額であり、これまたリーズナブルな店と彼は思うのだった。
そして酔っ払った先輩は彼を掴み少し離れたラーメン屋に向かう。
「良いか高見〜……俺達はなぁ〜民間人を守るヒーローなんだぞ
とにかく食って体を作るのが大事なんだからな〜」
「わかってますよ轟先輩
取り敢えず代行呼んでおきますから締めのラーメン食べたら帰りますよ」
「前楽園の味噌ラーメン大盛り餃子にチャーハンだ!」
「はいはい、騒がないで早く行きますよ」
高見啓悟、元の世界では鷹見啓悟、プロヒーローホークスとして働いていた男はこの世界では先輩である轟炎司に振り回されている苦労人であった。
高見啓悟
この世界に転生してきた元プロヒーロー
特に食へのこだわりは無いが、先輩である轟炎司に誘われると普通についていくタイプ
何となく彼がエンデヴァーであると心の何処かで感じている