二人のヘリオ   作:てすん†G.NOH

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♘ 決意 ♞ 〜 ♞ 重賞挑戦 ♞

 二人は録画してあったレースとウイニングライブを眺めていた。

 眩く輝くステージの上。ヘリオシースはスポットライトから外れた後ろで踊っている。入着できなかったバックダンサーとして。

 

「次はあの真ん中に立ちたい」

 

 ヘリオスシースはつぶやく。

 

「タキオンと勝負して勝てるかわかんないけど、あの真ん中で歌って踊りたい」

「あなたならできるよ」

 

 ——私には無理だけど。

 

 その言葉は飲み込んだ。ヘリオシースが立つかどうかの話に、自分は関係ない。ヘリオシースが立ちたいというのなら、自分は応援するだけだ。この子相手に僻み根性なんて出したくない。絶対に。

 こっそりと握る拳を、ヘリオシースがそっと上から握る。

 

「シース?」

「あたし、スフィアが頑張ってるの知ってる。だから、きっとGⅢだって狙えるはず。だからあたしも諦めないし逃げない。絶対、あそこに立つ」

 

 そしてヘリオスフィアを向き、まっすぐな瞳で約束する。

 

「だから頑張ろ、一緒に。スフィアが応援してくれるように、あたしも応援してる」

「シース……」

 

 お互い、全く別の存在だ。能力も違うしたどり着けるところも違う。でも、チャレンジャーであり続けることは同じなのだ。目標は「行けるところ」まで。

 ヘリオシースの手を強く握り返す。挑戦を続けるという決意とともに。

 そして、一月と二月のオープン戦をヘリオスフィアは制し、二月のGⅢクイーンカップをヘリオシースは制した。

 

 

 三月になり、交流重賞JⅢ名古屋大賞典。

 地方所属のウマ娘たちとの熾烈な戦いが繰り広げられ勝利したのは地方所属のウマ娘のゴールドヘッド。二番人気だった彼女は好位から追走し、走りなれた名古屋で勝利を収めた。

 ヘリオスフィアは三番人気に推されていたもののコーナーがきつく直線の短いコースに手間取り五着。初の重賞挑戦で手痛い洗礼を受けた。

 

「悔しくないって言ったら大嘘になる。でもまぁ、次がある。大丈夫、次は上手くやるわ。手応えはこれでも感じたから」

 

 レース後、二人は電話で話すのがお決まりのパターンになっていた。レースの報告、気づいたことの共有、そして決意。次を走る相手への声援。

 同じ週のレースでなければ戻れば嫌でも会うというのに、真っ先に声が聞きたかった。声を届けたかった。

 ヘリオシースのレースは次週。GⅡフィリーズレビューである。

 

『阪神レース場はこれで三度目だからね、走り方はもうわかった。スフィアの教えてくれた作戦も練習してみるよ。絶対いい結果持ち帰るからね、待ってて』

 

 そして有言実行。レディブロンドを破り、一番人気に応え見事にGⅡを制した。

 

 三月の最終週。

 中山レース場、GⅢマーチステークス。

 一八〇〇メートル、十六人のウマ娘で行われるダート重賞。一番人気はファストフレンド、ヘリオスフィアは三番人気に推された。

 ヘリオシースはゴールの近くに陣取り応援してくれている。

 

 ——今日こそは。

 

 そう、今日こそは。なんとしても勝ちたい。そう思って頑張ってきた。

 ファンファーレが鳴り響く。それに合わせて轟くような手拍子。初めは苦手だったそれももう随分となれた。 

 あとはゲート入りして、ヨーイドン。様子を見ながら

自分に一番いい位置で飛び出し、勝つ。それだけだ。

 

『各ウマ娘、ゲートインが完了しました。いよいよ発走です』

 

 そしてスタート。勢いよく飛び出すライバルたち。ヘリオスフィアは後ろから無理せずついていく。

 

 ——ペースは速すぎず遅すぎず。これなら置いていかれることもない。

 

 ヘリオスフィアは考えていた。中山の直線は短い。いつ飛び出すかのタイミングとともに、最終コーナーの処理の仕方がポイントになる。

 

 ——できるだけスピードと体力を維持しやすい綺麗なバ場を狙いたいところだけど……。

 

 ダートにはその癖にあった走り方に合わせてパワーが要る。乾いてパサついたバ場であれば尚更だ。

 ヘリオスフィアは小柄なだけに非力だ。だから荒れたバ場は能力を活かせないばかりか不利に働く。

 十六人ものウマ娘たちが走って荒らせば一層その傾向は強くなる。それは今までに嫌というほど経験してきたし、研究してきた。そしていろいろ試してきた末に得られた結論は——外!

 

『さぁ、第三コーナーを各ウマ娘、回っていく!

 先頭は以前アリゾナウッティ!

 ヘリオスフィア、ここで飛び出してきた。大外から並びかける!

 しかしファストフレンド!

 ファストフレンドだ!

 ファストフレンドが上がってきた!

 短い直線の追い比べ!

 ヘリオスフィア、届かないか!

 先頭はファストフレンド、二番手は——』

 

 ヘリオスフィアは速力の差をカバーしきれず、三着。何よりも響いたのは、最後の坂だった。

 スピード、瞬発力、そしてパワー。作戦だけでは乗り越えられない壁が、そこにはあった。

 

 四月、二人揃って阪神の重賞を走る。

 ヘリオシースはアーリントンカップ、ヘリオスフィアはアンタレスステークス。

 ヘリオシースは危なげなく勝利を飾り、ヘリオスフィアは二番人気ながら惜しくも四着に敗れた。

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