進化する人々   作:奥歯

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これをいうのはあまりにも遅すぎたかも知れないですが一応あけましておめでとうございます。


事件後

ここは薄暗いバーの中、そこから黒いモヤが現れてくる。そのモヤから出て来たのは手のオブジェクトをつけた死柄木弔と黒いモヤの男、黒霧であった。死柄木は苛ついており、自分の首を掻き毟る。

 

「あのクソガキ.....!オールマイトが来る前に脳無を倒しやがって!それに仲間も殺された!あいつも同じオルフェノクだってのによおお!!」

 

死柄木はバーのモニターに映る人物に話す。するとモニターの人物は死柄木に話しかける。

 

『どうかしたのかな?死柄木』

 

「先生.......あのクソガキに脳無をやられたんだ.....!それに.....仲間も殺された....!」

 

するとモニターから老人らしき声が聞こえてくる。

 

『どうして脳無とオルフェノクがやられたんじゃ?脳無はワシと先生の共作じゃぞ』

 

『もしかして、その少年はベルトをつけていたのかな?』

 

「ああ、あのベルトだ。あいつはファイズ変身して脳無を倒したんだ。あれは俺のベルトなのに....」

 

『どうりで.....流石はスマートブレイン社じゃな。悔しいが、技術力は奴らの方が上のようじゃ』

 

「そういやぁ.....一人オールマイト並のパワーを持った子供がいたな....」

 

『...........へぇ』

 

「あいつがいなけりゃ、あのガキを殺せたのに.......!ガキが.......ガキィ.......!」

 

死柄木は緑谷のことを思い出しまた怒りを露わにしていた。すると先生と言われている男が手を叩く。

 

『悔やんでも仕方ない!脳無の実験データも充分取れたし、無駄ではなかったはずだ。精鋭を集めよう!ベルトを奪うのはいつでもできる!じっくり時間をかけて!我々は自由に動けない!だから君のようなシンボルが必要なんだ。死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!」

 

●●●

 

USJに駆けつけた雄英のヒーローたちよって(ヴィラン)達は拘束された。その後にオールマイトが駆けつけたが全てが終わっており頭を地面に打ち付ける勢いで生徒たちに謝罪した。

 

「済まない!本当に済まない!No.1ヒーローである私が救ってやることができなくて......これじゃヒーロー失格だ!」

 

「いや良いんですオールマイト!そんなに謝らなくても!みんな無事だったんですし.....」

 

「そうだぜオールマイト!確かにやばい事だったけど、自分らでなんとかきりぬけたしよ!な!」

 

「うんうん!特に乾なんてすごかったんだから!」

 

生徒たちはオールマイトを責めてはいなかった。しかしオールマイト自身は自分自身を許せずにいたが、生徒たちが必死に擁護していた。そんな中で巧は相澤と向き合っている。

 

「お前、全員無事だったとはいえ、死んでいたとこなんだぞ.....」

 

「.............」

 

巧は何も言い返せなかった。相澤の顔は相変わらず浮浪者のような顔しているが、声には怒りが混じっていた。

 

「はぁ、俺も人のことは言えねぇが、自分の命は大切にしろ。でなきゃ守れるもんも守れねぇ」

 

最後に相澤はそう言って巧を行かせた。巧は酷く暗い顔をしていた。相澤に怒られたことではなく、あの時のオルフェノクの事だ。巧はオルフェノクをスパークルカットで倒した後、オルフェノクは灰になって崩れ去った。それは死んだということ、オルフェノクは人間を超越した新人類、元は人間なのだ。巧は生まれて初めて人を殺してしまった。そのことがずっと心の中に居続けている。緑谷はそんな巧が心配であった。声をかけようかと思ったがどう声をかければいいかわからなかった。

 

●●●

 

場面は変わりUSJ内その中では警察達が捜査を進めていた。その中の一人にスーツの上から茶色のコートを着た男、塚内直正はセントラル広場であるものを見ていた。それは灰の山であった。塚内は以前、ヘドロヴィランが謎の失踪をした事件で留置所にあった灰の山を思い出していた。

 

(またあの時の灰だ。山岳ゾーンにも同じものがあった。あの時の灰を調べたら、ヘドロヴィランと同じようにDNAが検出されている。これは灰色の怪物の灰だそうだが......こいつと何か関係が.....?山岳ゾーンにいた生徒たちから聞いた話によれば、その怪物は普通の人間の姿をしていて、そして怪物の姿になったら一人の(ヴィラン)を灰にして殺したらしい。ヘドロヴィランを殺したのもこいつか....?回収された脳無という奴も関係があるかもしれない。兎に角、捜査を進めねば.......)

 

塚内は引き続き捜査を進めた。

 

●●●

 

翌日、今日は臨時休校となった。緑谷は目覚めると、巧は先に起きており、窓の外を眺めていた。先に起きていたというよりは、寝ていなかったと言った方が正しい。巧は昨日の夜も同じように窓を眺めていたのだ。緑谷は心配そうに巧を見る。巧は何も言わずに青空を見ている。緑谷は巧に近づき話しかけた。

 

「大丈夫?たっくん.......もしかして、寝てないんじゃ......」

 

「..............」

 

緑谷が話しかけても巧は何も言わなかった。ただずっと外の景色を眺めている。緑谷はあのことを気にしているのかと思い巧に言った。

 

「し、仕方ないよ、たっくん........もしたっくんが倒さなかったら、みんな大変なことになってたかも.......だし.......」

 

「............」

 

緑谷はこれ以上何も言うことができなくなった。巧はまるで聞いておらず向こうを向いたままで、どんな顔をしているのかわからなかった。昼頃になり、昼食の時間となった。今日は簡単な鱈子マヨネーズのパスタ、緑谷と引子は席に着くが、巧は2階から降りてこなかった。引子は心配になり巧を呼ぶ。

 

「巧!もうお昼よ!」

 

しかし巧は一向に降りてこなかった。仕方なく二人だけで昼食を食べることになり、しばらく食べていると階段から巧が降りてくる音が聞こえてくる。緑谷は気づいて巧の方に向かうと、巧は玄関の前にいて外に出ようとしていた。

 

「たっくんどこ行くの?」

 

「.........ちょっとな」

 

そう言うと巧は家から出た。緑谷もまだ食べている途中なのにも関わらず、慌てて巧を追いかけて行った。

 

「あっ!ちょっと出久!.......まだ食べ終わってないじゃない」

 

●●●

 

緑谷は巧を探す。巧はオートバシンで行った為、見失ってしまった。緑谷は巧がいそうな場所を中心に探しているとあの公園に着いた。それはかつて緑谷が雄英の試験を受けるためにオールマイトと巧でトレーニングをした多古場海浜公園であった。そこは相変わらずゴミが多かったが、あの時と比べるとかなり綺麗になっていた。行かなくなって数ヶ月程度だが、緑谷は少し懐かしいと思いながらも巧を探していた。そしてその海辺の近くに巧が座っているのを見つけた。緑谷はすぐに駆け寄り巧に話しかけようとすると、先に巧が話し始める。

 

「.......出久、ここでお前を雄英に合格させる為にオールマイトとトレーニングしただろ」

 

「うん........」

 

「お前の個性が目覚めて、やっとヒーローになるって夢を目指せるようになって、俺もお前の夢を後押しするために手伝って来た」

 

「そうだね.......」

 

「俺はさ、ヒーローになるなんて大それた夢、持ってなかった.....ヒーローに興味なかったし....今だってそうだ。だけどな、お前が夢に向かって頑張ってるところ見てたら、こういう奴の夢を守っていけたらいいなって思ったんだ。だから俺はヒーローを目指そうって思った。雄英に受かって、これからだって時に(ヴィラン)が来て、そんであのオルフェノクを殺してしまった。俺あの夜の間、ヒーローになる為に雄英に来たのになんでこんなことしちまったんだって思ったんだ。確かにあいつは(ヴィラン)だったけどさ、あいつにもあいつの人生がある筈なんだ。俺はその人生を奪った。それってヒーローって言っていいのか?結局誰かの夢を守るなんてこと、俺には無理なんじゃねぇかって......思ったんだ」

 

巧は悔やんでいた。一人の人生を奪ったことに、どんな人間にも、人生はある。それが(ヴィラン)であっても、同じことなのだ。緑谷は巧の隣に座る。どう声をかければ良いかまだわからなかったが、緑谷は真剣な顔になって話し始める。

 

「たっくん.......僕は、正直に言うとたっくんの気持ちはわからない。でもこれだけはわかる。たっくんはみんなを救ったんだ。皆の夢を救ったんだ。ヒーローとして正しい事をしたんだって、僕はそう思うよ」

 

「出久........」

 

緑谷は知っていた。巧はいつも口が悪くてムキになりやすく、どんな状況でも動じないような人間だけど、すごく繊細で優しい人間だということを知っていた。巧は緑谷の言葉に曇っていた心が少し晴れた気がした。すると突然いつからいたのか、後ろからオールマイトが現れる。

 

「その通りだ緑谷少年」

 

「オールマイト.....!」

 

「お前いつからそこにいたんだ?」

 

「ついさっきだ。乾少年が心配でね。ここにいるかもと思ったんだ」

 

オールマイトは少し笑いながら隣に座り、そして巧に真剣な声で話し始めた。

 

「乾少年、君は一人の人生を奪ってしまった。しかし、君は緑谷少年の言うように、正しいことをしたと、私は思っているよ。乾少年、君はこれからあのオルフェノクの分まで生きていかなくてはいけない。その命を背負っていかなくてはいけない。怖いかもしれない、しかしそれが命を奪ってしまった者の責任だ。私もかつてそうだった。一人のオルフェノクの命を奪ってしまい、私はその命を背負う責任を持っている」

 

オールマイトは巧に命を奪った者の責任を教えた。巧は俯く。自分はこれから一生あのオルフェノクの命を奪った責任を背負って生きていかなくてはいけない。巧は顔を上げて立ち上がった。

 

「いつまでもクヨクヨしてちゃダメだな」

 

その顔は晴れやかな顔ではなかったが、どこか吹っ切れた顔をしていた。巧は振り返りオートバジンの方に向かう。その後ろ姿を緑谷とオールマイトは見ていた。そして緑谷は立ち上がり巧の後についていく。

 

「ありがとうございました!」

 

緑谷は振り返り巧の代わりに感謝の言葉を伝え、巧の方に向かった。オールマイトは頷き返し、その後ろ姿を見ながらサムズアップした。

 

(頑張れよ!二人とも!)

 

●●●

 

翌日の学校。

 

「皆ーーー!朝のホームルームが始まるぞ!席につけーー!」

 

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

飯田は委員長らしく教卓で指揮を取るが、全員席に着いており自分だけ着いていないことを指摘されて席につく。そしてチャイムがなると同時に教室の扉が開き、相澤が入って来た。

 

「おはよう。2日前の(ヴィラン)の襲撃に遭って、俺たちはそれを退けたが、まだ戦いは終わってねぇ」

 

相澤の言葉に生徒たちは騒然とする。

 

「戦い?」

 

「まさか......!」

 

「まだ(ヴィラン)がー!?」

 

そして騒々しい中相澤は口を開く。

 

「雄英体育祭が迫っている」

 

するとあたりは静まり返る。相澤の言葉に一瞬理解できなかった。しかしすぐに理解するとまた違う意味で騒がしくなる。

 

「「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!」」」」

 

それは年に一度の雄英で行われる体育祭であった。

 

●●●

 

USJ事件から翌日の話。雄英の会議室で先日のUSJ襲撃事件による調査結果を塚内は教師陣に報告し、それによる会議が行われていた。 

 

「死柄木という名前.....触れたものを粉々にする個性.....20〜30代の個性登録を洗ってみましたが、該当無しです。ワープゲートの方、黒霧という者も同様です。無戸籍且つ偽名ですね.....個性届けを提出していないいわゆる裏の人間」

 

「何もわからねぇってことだな.....早くしねぇと、面倒なことになるぞ」

 

「それに、灰色の怪物.....」

 

塚内が資料を見せる。監視カメラから撮られた、おおよそ人間には見えない灰色の怪物の写真がホワイトボードに貼られる。その写真の下には未確認生命体と書かれていた。スナイプはその姿を見て塚内に質問する。

 

「異形系の個性か?」

 

「私も最初はそう思いました。この怪物、今から未確認生命体と呼称します。生徒から聞いた話では人間の姿だったようなのですが、突然このような姿に変わり、そして(ヴィラン)を灰にして殺害しています。以前、ヘドロヴィランが行方不明になった事件がありましたが....」

 

「ニュースにもなってたわね。確か突然姿を消したと.....」

 

「表向きはそうですが、実際は殺人です。ヘドロヴィランがいた留置所で灰の山があったのですが、その灰を調べるとヘドロヴィランのDNAが検出されました」

 

「じゃあヘドロヴィランを殺したのはこいつということか?」

 

「その可能性が高いです。そして、問題はここから、この未確認生命体が個性によるものではない可能性が浮上しました。その事実を裏付けるものがあります。それはこの未確認生命体の死に方です」

 

塚内はホワイトボードに灰の山の写真を貼る。ブラドキングは貼られた写真に対して質問する。

 

「この灰の山は?」

 

「未確認生命体の遺体です」

 

「これが!?」

 

塚内の発言にプレゼントマイクは驚き、塚内は続ける。

 

「この未確認生命体の死に方、おおよそ人間の死に方ではない」

 

「おいおいもしかして宇宙人とかじゃねぇだろうな!?」

 

「そんなSFな話しなわけないだろ」

 

「いや、それも否定できません。地球外から来た知的生命体の可能性も充分にあり得ます。何よりこの灰を調べても、何も出て来ませんでした。本当にただの灰なんです」

 

「灰で出来た地球外生命体......もしそれが本当なら、まだこの仲間が潜んでいる可能性は高いな」

 

皆がこの会議室が沈黙に沈む。そしてその沈黙を破るように鼠の姿、もとい本当に鼠の根津(ねず)校長が口を開く。

 

「こちらもセキュリティを強化していかなくてはならない。まずは生徒の安全が第一だ」

 

「こちらも、警備を強化し、捜査網も広げていきます」

 

こうした会議が終わり、皆会議室から出ていく中、根津校長は冷や汗をかいていた。

 

(まずいことになったのさ。このままでは、オルフェノクの存在が世間にバレてしまうのも時間の問題だ。この学校にも、オルフェノクの生徒が5人もいる。彼らは大丈夫だろうか.....)

 

●●●

 

時間は戻り、A組の教室。ここでは雄英の体育祭で盛り上がっていた。

 

「体育祭....!」

 

「クソ学校っぽいの来たあぁ!!」

 

「待って待って!(ヴィラン)に侵入されたばかりなのに大丈夫なんですか!?」

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す....って考えらしい。警備は例年の5倍にするそうだ。何より雄英の体育祭は....最大のチャンス。(ヴィラン)ごときで中止していい催しじゃねぇ」

 

「いやそこは中止しよう?体育の祭りだよ?」

 

「峰田君.....雄英体育祭見たことないの!?」

 

「あるに決まってんだろ。そういうことじゃなくてよーー......」

 

あまり乗り気ではない峰田をよそに、相澤は説明を続ける。

 

「ウチの体育祭は日本のビッグイベントの一つ!!かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。今は知っての通り規模も人口も縮小し、形骸化した.....。そして日本に於いて今、かつてのオリンピックに代わるのが雄英体育祭だ!」

 

「当然全国のトップヒーローも観ますのよ。スカウト目的でね!」

 

「だから知ってるてば......」

 

「資格習得後はプロ事務所にサイドキック入りがセオリーだもんな」

 

「当然なのあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限。プロに見込まれれば、その場で将来が拓けるわけだ。年に1回.....、計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。資料を渡すから目を通しておけ、以上」

 

相澤の説明も終わると同時にチャイムがなり、ホームルームが終わった。

 

●●●

 

放課後、巧たちは帰りの支度をして教室を出ようとしたところだった。するとその教室の前にはたくさんの人だかりがいた。その多さに麗日は驚く。

 

「うおぉお!!何事だあぁあ!?」

 

「出れねぇじゃん!何しに来たんだよ!」

 

「敵情視察だろ。ザコ」

 

「......!!?」

 

「峰田くん、あれがニュートラルなの......」

 

爆豪が言うようにUSJ事件を生き抜いたA組たちがどんな奴らなのか視察をしに来て、教室の前がいっぱいになっているのだ。その状況に巧は少しイライラしていた。

 

(ヴィラン)の襲撃を耐え抜いた連中だもんな、体育祭の前に見ときてぇんだろ。意味ねぇからどけ、モブども」

 

「知らない人のことを取り敢えずモブっていうのやめなよ!」

 

飯田が爆豪の発言に注意しているとき、一人の男が大衆をかき分けて爆豪の前に立つ。その男はどこか死んだような目をしている男であった。

 

「どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」

 

「あぁ!?」

 

男に煽られた爆豪は怒声をあげてその男を睨みつける。かなり険悪なムードになってきて、周りはざわつき始める。本格的に面倒なことになってきたことに巧はしびれを切らし、緑谷を連れて帰ろうとする。

 

「チッ、帰んぞ出久」

 

「あ、ちょっと」

 

腕を引っ張られた出久は戸惑いながらも一緒に歩く。巧は人混みをかき分け早くこの面倒な状況から抜け出そうとした。しかしあの男に呼び止められ、動きが止まる。

 

「ねぇ君、俺みたいな普通科の奴らはみんなヒーローの試験に落ちたからここにいるんだよね。知ってた?」

 

「何が言いてぇ?」

 

巧は男の挑発的な態度に対して少し癪に触る。男は続ける。

 

「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ.....。敵情視察?少なくとも普通科(おれ)は調子乗ってっと足元ごっそり掬っちゃうぞーっつー、宣戦布告のつもり」

 

巧はその男を睨みつける。またしても険悪な雰囲気が漂い、このまま行ったら何が起こるのか、周りの人間はなんとなく理解した。しかしそうはならず、巧はクルッと振り返りそのまま去っていき、緑谷もそのあとを追った。

 

●●●

 

巧と緑谷は雄英の外に出てオートバジンが止めてある駐車場まで向かっていた。そして緑谷は巧みに話しかける。

 

「たっくん、僕体育祭がちょっと不安になって来たんだけど........」

 

緑谷は不安を漏らすが、巧は何も答えずただ歩き続けていた。こう会話が続かないことには慣れている緑谷はこれ以上質問せず、巧の横を歩く。しばらくして駐車場が見えて来て、巧はどこに停めておいたか見渡すとオートバジンを見つけた。

 

「ん?」

 

しかしそのオートバジンの前に誰かが立っていた。後ろ姿的に女性だろうか、自分たちと同じ学生に見える。髪の色ピンク色だ。舐め回すようにオートバジンを見ているピンク髪の少女に巧はさっきのこともあって腹が立ち、その少女に怒鳴りつけた。

 

「おい!俺のバイクに何してやがる!?」

 

声に気付いていないのか、少女は振り返らずオートバジンを見ていた。無視された巧はさらに腹が立ち、その少女に近づき肩を掴んだ。やっと気づいたのか、肩を掴まれた少女は振り返り巧の顔を見る。そして待ってましたと言わんばかりの満面の笑顔で巧に質問し始めた。

 

「これ!あなたのバイクですか!?これスマートモータースのバイクですよね!?どこで手に入れたんですか!?どんな機能が搭載されてるんですか!?私のドッカワイイベイビーの参考になればいいと思ってるんですけど!少し私に貸してもらってもいいですか!?いいですよね!?ありがとうございます!」

 

振り返ったと思ったら少女は突然、怒涛の質問攻めをし、巧は驚いた。そしていつのまにか自分のバイクがその少女のものになりかけていることに気づいた巧は反論する。

 

「なんのつもりだお前!!俺のバイク勝手にジロジロ見やがって!貸して欲しいだと!?誰がテメェみたいな奴に貸すかよボケ!!」

 

巧は少女に怒鳴りつけるが当の少女は全く動じない。すると後ろにいた緑谷はその少女に質問した。

 

「あの.....、君は......」

 

「あ!申し遅れました!私、サポート科の発目(はつめ)(めい)と申します!」

 

その少女こと発目明は自己紹介をした後、なぜ巧のバイクであるオートバジンを見ていたのかその経緯を話した。

 

「実はですね、一昨日の昼過ぎに私はドッカワイイベイビーのために忙しい日々を過ごしていました。私はたまたまこの駐車場を通り、そこで私のドッカワイイベイビーの部品になるものはないか物色していた時でした!」

 

「ちょっと待て、お前何してんだ?」

 

さっき聞き捨てならない発言を聞いた気がしたが、発目は構わず続ける。

 

「そこに一際目立つあなたのバイクに私は運命を感じ、そのバイクに近づこうとしたんです。するとなんと!バイクが勝手に動き出したかと思うと颯爽と、USJの場所まで行ってしまいました。自動運転付きですよ!車ならまだしも二輪車であるバイクが完璧なバランスで走行するなんて相当な技術力がないと不可能です!」

 

(ああ、あの時の.....)

 

緑谷はUSJ事件の時に突然現れたオートバジンのことを思い出していた。

 

「一体どこのバイクかと思ったらスマートブレインのマーク!まさに運命!この私のために作られたと言っても過言ではありません!だからあなたのバイクを私にください!」

 

発目の猛烈なアプローチに流石の巧もたじろぐ。いつのまにかオートバジンを自身のものにしようとしていることになっていることに巧は拒否する。

 

「誰がやるか!さっきから聞いてりゃ偉そうに!何が私のためだ!俺のために作られたんだよこのバイク!!」

 

そいうと巧は緑谷を連れ出しバイクに乗り、ヘルメットを被る。緑谷も後ろに乗ってヘルメットを被った。

 

「二度と俺らの前に現れんじゃねぇ!!俺のバイクにも近づくな!!わかったか!!」

 

そう言った巧は走り出す。その後ろ姿を発目は見送り大きく手を振った。

 

「いつかそのバイク貸してくださいねーーー!絶対ですよーーー!」

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