進化する人々   作:奥歯

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雄英体育祭
障害物競走


今日から雄英体育祭。巧たちは控室で体操服に着替え、準備をしていた。

 

「みんな準備はできてるか!?もう時期入場た!!」

 

「コスチューム着たかったなー」

 

「公平を期すため着用不可なんだってよ」

 

周りは緊張しており、精神統一や会話などで緊張をほぐそうとしている者もいる。そんな中で巧と緑谷が椅子に座っていた。緑谷はもうすぐ始まる体育祭にかなり緊張しているが巧は相変わらずの無表情で緊張のかけらもないような感じだ。

 

「もうすぐだね.....」

 

「ああ...」

 

「そう言えば選手宣誓ってたっくんがいうんだよね」

 

「ああ....ったく面倒くせぇ」

 

緑谷の言う通り今回の雄英体育祭の選手宣誓は巧がすることとなっている。巧はかなり面倒くさがってはいるが、やらなくてはいけないことなのでそこはちゃんとやるつもりではある。緑谷は緊張で姿勢を正し、手汗を握っている。巧は膝に両肘をついて楽な体勢でいる。このまま待てば体育祭が始まるのだが突然巧と緑谷の前に轟が立った。すぐに気づいた二人は目の前にいる轟の顔を見る。

 

「緑谷」

 

「轟君........、何?」

 

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」

 

「へ!?う、うん....」

 

「お前、オールマイトに目ぇかけられてるよな?別にそこに詮索するつもりはねぇが....お前にはか勝つぞ」

 

「っ!」

 

轟の宣戦布告に緑谷は固まる。それを見ていた周りも少しざわめき始めた。隣にいた巧は轟を睨みつける。

 

「宣戦布告か?テメェ出久のこと舐めてんのか?」

 

「お前は関係ねぇ、すっこんでろ」

 

「んだと....!」

 

巧はさらに睨みつけ、轟も負けじと睨みつける。一触即発誰もが見守ることしかできない中で俯いていた緑谷が顔を上げて口を開く。

 

「轟君....そりゃ君のほうが上だよ、実力なんて大半の人は敵わないと思う....。客観的に見ても....でも!皆他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって...遅れをとるわけにはいかないんだ!僕も本気で獲りに行く!」

 

「...おう」

 

言い返してくるとは思っていなかった轟は少し驚く。隣にいた巧も睨むのをやめる。そしてついにA組の入場となった。

 

●●●

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとしのぎを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらあれだろ!?こいつらだろ!?(ヴィラン)の襲撃を受けたにもかかわらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!ヒーロー科!一年!A組だろぉぉ!?』

 

この国立競技場のような場所でボイスヒーロープレゼントマイクの声が響く。そしてそこに現れたのはここにいる計21人のヒーロー科A組の面々、入場とともに大きな歓声が巻き起こった。

 

「わああ....!人がすんごい....」

 

「大人数に見られる中で最高のパフォーマンスを発揮出来るか....!これもまたヒーローとしての素養を身に着ける一環なんだな」

 

「めっちゃ持ち上げられてんな....なんか緊張すんな爆豪....!」

 

「してねぇよ、ただただアガるわ....!」

 

想像以上の多さに何人かが緊張して不安の声を漏らしたり、冷や汗をかいたりしているものがチラホラ。

 

『B組に続いて普通科C・D・E組.....!サポート科F・G・H組も来たぞー!そして経営科....』

 

続いてB組や他の科の者も入場する。しかしA組と違い余りにも盛り上がりに欠ける他の生徒たちは不満の声を漏らした。

 

「俺らって完全に引き立て役だよなぁ...」

 

「たるいよね〜」

 

そんな声を漏らす中で壇上に上がった一人の女性が立つ。

 

『選手宣誓!』

 

その女性は余りにも際どい格好をした女性であった。彼女の名前は18禁ヒーローミッドナイト。その健全な男子たちによろしくない刺激的な格好が世の男性達の支持を得ている。

 

「18禁なのに高校にいていいのか?」

 

「いい」

 

常闇の疑問に峰田はミッドナイトを凝視しながら即答する。

 

『静かにしなさい!!選手代表!1ーA乾巧!』

 

「はぁ...」

 

ミッドナイトに呼ばれた巧はため息をつきながら壇上に登る。

 

「え?なんで乾君が?」

 

「あいつ主席合格だったからな....」

 

「チッ」

 

舌打ちをした爆豪は気に食わないと言いたげな顔で巧を睨みつけていた。巧は壇上に上がるとマイク近付いき、宣誓した。

 

『選手宣誓。先生。私達、選手一同は自身の全力を出し抜きスポーツマンシップに則り戦い抜くことを誓います』

 

宣誓した巧の声はあまりにもやる気がなく生徒たちから一斉にブーイングをくらった。

 

「ちゃんとしろよコラァ!!」

 

「A組だからって調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

 

口々に言われる巧であるが、巧はどこ吹く風であった。巧は周りを見渡しながらマイクを掴むと口を開く。

 

『それと!』

 

巧の声にブーイングの嵐はやむ。何を言い出すんだろうと周りはじっと見つめていると、静かになったのを見計らい巧はもう一度口を開いた。

 

『俺はこの体育祭で一位を取る。目指すべき目標があるからな。俺はその目標のために全力を尽くす。だからお前らも全力で来い!どんな相手だろうと、俺は全力で相手するぜ』

 

そう言って巧はマイクを離し、壇上から降りた。その間にさっきまでブーイングの嵐だった会場は段々と拍手喝采の嵐へと変わっていった。

 

「男らしいぜ乾!」

 

「上等じゃねぇか.....!」

 

(そうだ....たっくんだって目標があるんだ。たっくんにとってここはただの通過点なんだ。ヒーローになるための通過点!)

 

皆巧の表明に緊張が吹っ切れたのか全員がやる気に満ちた顔になっている。そして拍手喝采が終わると、ミッドナイトが競技の説明を始める。

 

『さーて!それじゃ第一種目を始めましょう!いわゆる予選よ!!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!!さて運命の第一種目は.....これ!』

 

ミッドナイトの後ろに映し出されたのは障害物競走。

 

『計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約4km!我が校は自由さが売り文句!ウフフフフ.......!コースさえ守れば何をしたって構わないわ!』

 

突然ミッドナイトの背後の壁が組み替えられ、入り口の形へと変化する。ここがスタート地点のようだ。

 

『さあさあ....位置につきまくりなさい.....』

 

その言葉に周りはゾロゾロと位置につく巧もその辺のちょうどいい場所で位置に着くと隣に誰かに見られている気配がする。その方に振り向くと巧はギョッとしてしまった。

 

「また会いましたねぇ...乾さん」

 

「っ....!テメェあん時の.....!」

 

巧が見たのは先日、巧のオートバジンをジロジロ見ていたあの発目明であった。発目は全身にサポートアイテムらしきものを装着しており準備万端という感じだ。

 

「どうですか?私にあのバイクを渡す気になりました?」

 

「渡すわけねぇだろ....!いい加減諦めろ!」

 

発目はまだ諦めてはおらず、もう一度巧にオートバジンを貰おうとする。それに対して巧は威嚇するように怒鳴り返し、そして開始の合図が始まった。

 

『スターーーーーート!!』

 

その合図とともに生徒たちは一斉に走り出した。巧も走り出し、隣にいた発目もサポートアイテムを起動して走る、というより飛んだ。巧がその姿を見て走るというより発目から逃げるように走っていた。しかし、前の人混みが邪魔で中々前に進めない。巧は個性を発動し、飛び上がる。巧の個性である衝撃は爆豪と似たような個性ではあるが、爆豪のように長時間飛行するということはできないが、衝撃を放った瞬間なら何mもの高さまで飛び上がることはできる。巧は飛び上がった瞬間に生徒たちを踏み台にして飛びながら走る方法をとった。

 

「いてっ!」

 

「うわっ!」

 

巧はその他の生徒たちを踏みつけながら最終的にかなり前のところまで行き着くことができた。

 

『宣戦布告ボーイ!他の生徒たちを足場にして一気に詰め寄ってきたぁ!他の選手は自分にとってただの踏み台といったところかぁ!?』

 

プレゼントマイクが解説する中、前方から最初の障害物が見えて来た。

 

『ターゲット....大量!』

 

「あん時のガラクタか....!」

 

最初の障害物となったのは巧が入試の時に破壊した大量のお邪魔虫こと仮想(ヴィラン)であった。

 

『さぁいきなり障害物だ!まずは手始め....ロボ・インフェルノ!!』

 

轟はすかさず右腕を振り上げると巨大仮想(ヴィラン)があっという間に氷付にされてしまい、轟はその隙にその下を通り抜ける。他の生徒たちも下を通り抜けようとするが突然氷が崩れて来て巨大仮想(ヴィラン)が崩れてしまう。

 

『1ーA!轟!!攻略と妨害を一度に!こいつぁシヴィー!!すげぇな!一抜けだ!あれだな、もうなんか....ズリぃよな!!』

 

解説者として良いとは言えない感想を述べるプレゼントマイクをよそに、負けじと巧も巨大仮想(ヴィラン)の目の前までくる。

 

『ターゲット.....』

 

「何度やっても同じだぜ。またあん時みてぇにぶっ壊してやる!!」

 

そういうと巧は個性で飛び上がり、巨大仮想(ヴィラン)の頭の部分までくると大きく振りかぶって右拳を突き出した。

 

「ハァ!!」

 

巧の右拳は巨大仮想(ヴィラン)の頭部を一瞬で破壊し、巨大仮想(ヴィラン)はゆっくりと崩れ落ちる。その間に巧は巨大仮想(ヴィラン)を踏み台にして大きく勢いを上げ、自身の前にいた者を上から追い越し、あっという間に先頭目前まできた。

 

『同じくA組の乾!入試の時と同じように巨大ロボを一瞬で破壊し、更にそれを踏み台に先頭に大きく距離を縮めたぁ!!流石は主席合格者!!』

 

『あいつの個性、衝撃は一撃に相当な威力がある。しかも連続で繰り出せると来た。あいつの才能と途方もない訓練から出せるものなんだろうな...』

 

勢い付いた巧はそのまま全力疾走し、前方にいる轟に追いつこうとした。

 

●●●

 

『第一種目は障害物競走!!この特設スタジアムの外周を一周してゴールだぜ!ルールはコースアウトさえしなけりゃなんでもありの残虐チキンレースだ!各所に設置されたカメラロボが興奮をお届けするぜ!!』

 

『おい俺いらないだろ』

 

解説がほぼプレゼントマイクの独占状態の中、その状況に相澤はツッコミをいれる。そして巧たち以外の者も、第一関門を次々と突破していく、そして次なる障害物が挑戦者たちを待ち構えていた。

 

『オイオイ第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーーーール!!』

 

前方に現れたのは底が見えない巨大な落とし穴。そこには一本のロープが張られており、渡るにはこのロープをつたるしかない。轟は個性を発動すると、氷の足場を作り出しその上を渡った。後ろの生徒たちもその氷の上を渡ろうとするが、そう簡単には行かせない轟。生徒たちが氷の足場を踏み込んだ瞬間、氷があっという間に崩れ落ちてしまった。生徒たちが巨大な落とし穴から立ち往生している隙に、巧は個性を使って一気に飛び越える。

 

『やはり乾には第二関門も屁でもないみてぇだな!!一気に飛び越えて先頭と更に距離を縮める!!さぁて先頭は難なく一抜けしてんぞ!!』

 

第二関門も突破した巧は遂に轟の横まで来ることができた。轟は左側にいる巧を見ると睨みつける。

 

「テメェ....!」

 

「予選で俺が苦戦するとでも思ってたのか?勝つのは俺だ」

 

巧と轟、今先頭を走っている二人の勝敗を決める戦いが始まろうとした。が....。

 

『おおっと!ここでA組の爆豪が二人に追いついて来たぁ!!』

 

「クソがっ!」

 

「あいつ調子上げて来たな、スロースターターか....」

 

轟は隣にいる巧と後ろから追って来ている爆豪を食い止めるために地面を凍らせて走り抜ける。巧はすぐに反応し、足を取られないようにジャンプして避け、轟との横を保ったままであった。

 

●●●

 

『先頭が一抜けて下が団子状態!!上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せず突き進め!!そして早くも最終関門!!かくしてその実態はーーーーーー.....一面地雷源!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と足酷使しろ!!ちなみに地雷の威力は大したことねぇが、音と見た目は派手だから失禁必須だぞ!!』

 

『人によるだろ』

 

何もないように見える場所だが、少し地面が凸凹しているように見える。轟はそのまま気をつけて進んでいくようにしている中、巧は素早く踏まないように避けて走る。

 

『ここで先頭が変わったぁーーーー!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だああ!!A組の乾!!忍者の如く地雷を避けて走っている!!轟も負けじと乾を追いかける!!先頭二人がリードかぁ!?.....いや!まだ後ろにいるA組の爆豪が追いついて来たぁ!!』

 

「はっはぁー!!地雷なんざ関係ねーー!!おい巧!!一位になるのはこの俺だ!!そこどきやがれええ!!」

 

爆破で空中を飛びながら移動している爆豪にはこの地雷の海は難なく通れる。そして爆豪は巧と轟に並ぶ。爆豪は右、轟は左、その間に巧が走る。

 

「巧ぃ!お前全力でこいって言ったよなぁ!?お望み通り!全力でぶっ殺してやるぜ!!」

 

「お前はここで落ちてもらう。優勝のためにはお前が邪魔なんだよ」

 

「来るなら来い!!」

 

その瞬間に、爆豪の左手が爆発し、轟の右手が凍りつく。そして巧の両手が歪み始めそして両腕を交差させる。そして爆豪は巧に向かって拳を繰り出し、轟も拳を繰り出す。それと同時に巧も交差した両腕をいきよいよく開き、爆豪の拳と轟の拳とぶつかり合う。力と力のぶつかり合いで、勝負に勝ったのは巧であった。巧の両拳が二人の小競り合いの末、爆豪と轟の拳を弾いた。

 

「チィッ!!」

 

「クッ.....!!」

 

拳を弾いた巧は次の瞬間、地面を見て少し盛りあがっている部分を見つける。その中には地雷源がある。そして巧は何を思ったのかその地雷を踏み抜いた。するとスイッチが入った地雷は大きな爆発音と煙が上がる。

 

『あーーー!!ここで乾!まさかの地雷を踏んじまったーー!!このままでは轟と爆豪に大幅に越されてしま....』

 

プレゼントマイクの解説中巧が踏んだ地雷から出た煙の中から出て来たのは巧であり、そしてその一歩後ろに爆豪と轟がいる。

 

『は!?なんで乾がリードしてんだ!?』

 

『わざと地雷を踏んで、一瞬怯んだ隙に爆風を利用して二人の距離を開けたようだな』

 

巧は全速力でゴールまで走り抜ける。後ろの二人も負けじと追い抜こうとするが、距離が縮まらない。巧が独走状態となるのか、もうすぐゴールが見えて来た。このまま走りぬければ、巧の勝利となる。しかし、次の瞬間後ろから爆発音が聞こえた。誰かが踏み抜いてしまったのだろうか、3人は後ろを振り返る。なんと地雷の爆発の正体は緑谷が巨大仮想(ヴィラン)の破片をボード代わりにして地雷の爆発の威力で一気に3人の頭上を通り越した。

 

『後方で大爆発!?なんだあの威力!?偶然か、故意かーーー!?A組緑谷、爆風で猛追ーーー!!?つーか!抜いたーーーーー!!』

 

「デクァ!俺の前を行くんじゃねぇーーー!!!」

 

「やるじゃねぇか出久....!」

 

「後ろ気にしてる場合じゃねぇ....!」

 

緑谷に追い越されてしまった3人は最早他の周りを気にしている暇がない。ここでラストスパート、現状1位は緑谷、2位が巧、同率3位が爆豪と轟という状況。爆風で飛んだ緑谷は少しずつ勢いが落ちてくる。今がチャンスと3人は一気に走り出すが、緑谷はすかさず破片を使って埋もれている地雷に向かって投げる。その破片は見事に地雷に命中し、爆発が起きた。

 

「っ!!」

 

「うおっ!!」

 

「どわっ!!」

 

3人はその爆発に怯んでしまい、緑谷はその爆風を使ってさらに勢いを増す。そして最後に緑谷は地面の着地に上手く受け身を取りながらゴールを潜り抜けた。

 

『緑谷、間髪入れずに後方妨害!なんと地雷原即クリア!!イレイザーヘッド!!お前のクラスすげぇな!!どういう教育してんだ!!』

 

『俺は何もしてねぇよ、奴らが勝手に火ぃ付け合ってたんだろ』

 

『さぁさぁ序盤の展開から誰が予想できた!?』

 

『おい無視か』

 

興奮状態のプレゼントマイクは相澤のコメントを無視し、実況を続ける。

 

『今一番にそのスタジアムに帰って来たその男ーーーーー.........緑谷出久の存在を!!』

 

緑谷の名前が呼ばれたと同時に客席から大きな歓声が上がる。1位にゴールした緑谷は肩で息をしながら周りを見渡しその歓声に包まれる感覚を覚えた。緑谷はオールマイトを見つけるとお互い笑い合った。

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