進化する人々   作:奥歯

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後半戦

第二、三、四試合が終了し、第五試合、芦戸三奈VS長田結花。最終種目も順調に進み。リングに二人の出場者が入る。

 

『まだまだ盛り上がるぜ!あの角から何かでんの!?何か出るの!?ヒーロー科!A組の芦戸三奈!!』

 

「うぅ、緊張するなぁ〜」

 

『他種目じゃあまり目立った活躍なし!!それ故にどんな力を秘めている!?ヒーロー科!B組の長田結花!!』

 

「........!」

 

お互い緊張しながらリングへと上がり向かい合う。峰田が長田の顔を見て大盛り上がりし、耳朗に制裁を受けているところをよそに、緑谷は長田の個性について少し考えていた。

 

「うーん、長田さんの個性ってあまり戦闘向きじゃない筈なんだけど、大丈夫なのかな?」

 

「あまり結花を舐めるな。確かに結花の個性は戦闘向きじゃない。だが結花の強みは個性だけじゃない」

 

考え込む緑谷に轟が割って入る。そんな轟に巧は嫌な顔をするのであった。

 

●●●

 

「よろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしく!言っとくけど手加減はしないからね!」

 

「はい!私もそのつもりです!」

 

元気よく挨拶する芦戸に対し、結花も同じように元気よく返す。お互い位置につき、プレゼントマイクから開始の合図が出た。

 

『START!!』

 

合図の瞬間先に仕掛けてきたのは芦戸だ。芦戸は左手を前に突き出し自分の名前を叫ぶ。

 

「あ・し・ど・み・な!」

 

すると手のひらから酸が結花に向かって放出される。結花は咄嗟に右に避ける。放出された酸は地面に落ち、ほんの少し地面を溶かす。その様子を結花は見ていた。

 

「もういっちょ!」

 

芦戸は今度は結花の足元を狙って酸を放出する。結花は咄嗟に飛び上がり、空中前転をしながら芦戸の後ろに着地する。

 

「長田さん、すごい身のこなしだな」

 

「当たり前だ。結花も俺と同じようにずっと訓練を積んできたんだ。このくらいで来て当然だ」

 

どこか得意げに語る轟に巧は変なやつを見るような目で見ていた。

 

「んもぉ!すばしっこいなー!」

 

少しイラついている芦戸は連続で酸を放出する。結花はその攻撃にバク転しながら避け続ける。しかし避け続ける間に結花はいつのまにか場外ギリギリの場所に立っていた。これをチャンスと見た芦戸は酸を地面に放出し、滑べりながら迫ってくる。このまま場外へと突き落とそういうのだろう。絶体絶命結花は身構える。

 

『長田絶対絶命ーー!このままじゃ場外になっちまうぞ!』

 

『いやそうでもないだろ』

 

段々と迫ってくる芦戸に結花はただ何もせずじっとその場で構えをとっていた。そして勢いよく滑ってくる芦戸はあともう少しで結花と激突する。しかし結花は芦戸がぶつかる直前にスっと右に避けた。

 

「へ?」

 

何が起こったのか、芦戸は思わず間抜けな声が出てしまう。芦戸に見えるのは自分に迫ってくる地面だけ。理解する前に芦戸は場外になってしまった。

 

「芦戸さん場外!長田さん2回戦進出!!」

 

『芦戸の自滅で長田の勝利ー!いやー呆気なかったなー』

 

『ったく、何してんだあいつ』

 

完全な自滅に相澤は少々お怒りだ。無事勝利を納めた結花はリングから降り、芦戸に駆け寄る。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ううん全然大丈夫!それよりすごいねさっきのバク転とか空中前転!私あーゆーアクロバティックな動き憧れるなぁ」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ次頑張ってね!」

 

「はい!」

 

どうやら怪我も無いようなので芦戸はさっさと会場から出て行き、結花も会場から出た。

 

●●●

 

『まだまだ終わらねぇぜ!!第六試合!!他種目では無類の破壊力を見せつけた男!ヒーロー科乾巧!!VS万能創造!推薦入学とあってその才能は折紙付き!?ヒーロー科八百万百!』

 

「..........」

 

「..........!」

 

お互い無言で向かい合う。流石に人前に出るためか、巧は上着は着ている。じっと目が合い巧の睨みつけるかのような目に八百万は少したじろぐが、八百万も睨みに負けないように気を張る。八百万は巧に対する対策はしっかり考えている。そして開始の合図がなった。

 

『START!』

 

その瞬間巧は八百万に向かって走り出す。このまま突っ込んで場外にするつもりなのだろう。しかし既に予測済みの八百万は黒い何かを取り出し巧に向かって放り投げる。巧は何を投げたのか一瞬気になったが触るのはあまりいいとは言えない。巧は立ち止まり八百万が投げたものを見る。巧がその黒い何かを見た瞬間、物凄い光を放ち爆発した。

 

「うおっ!?」

 

巧は思わず目を瞑る。黒い何かは光ったと同時に煙を出した。目眩しのつもりだろう。まんまとハマってしまった巧は目と耳を一時的にやられてしまい相手がどこにいるのかわからなくなってしまった。

 

「これは閃光弾と発煙弾を組み合わせた物ですわ!安心してください!本物よりかなり弱く作ってありますから失明はしませんわ!!」

 

「クソっ......!」

 

八百万の声は微かに聞こえるが耳鳴りのせいでどこにいるのかわからない。とにかく巧は身を屈め、防御の体勢をとる。するとその直後巧の背中から何かが直撃した。

 

「ぐわっ!?」

 

ぶつかってきたものはかなりの威力で、よろめいてしまい、背中がジンと少し痛む。今度はモロに喰らわぬよう、意識を集中する。ようやく目と耳が慣れてきた。今は煙幕で周りが見えないが音を頼りに攻撃を交わしていけばいい。そして今度は左から何かが飛んできた。巧はすぐに反応し右手で受け止める。威力が凄いので少し後ろにのけぞるが、意識してさえいれば大したことはない。巧は右手で掴んだ何かを見る。それはゴムボールだった。

 

(ゴムボール?)

 

ゴムボール如きでは巧には大したダメージにはならない。一体どういうつもりか、巧が疑問に思っているうちにまた何かが巧に向かって飛んでくる。またゴムボールだろうと巧は左手で受け止めると同時に爆発した。

 

「うっ!(ゴムボールじゃねぇ!しかも.....!)」

 

爆発した瞬間に巧の目が猛烈な激痛に襲われ、涙が止まらなくなる。

 

(催涙弾か!クソッ!目が!)

 

また目をやられてしまった巧はまたしても暗闇の世界に入ってまう。そして間髪入れずにゴムボールが巧の右肩に直撃する。流石に目が見えない状態で反応できない巧は大きく後ろによろけてしまう。そして今度は左脇腹に直撃し、また大きくのけぞる。そうしているうちにいつの間にか場外ギリギリまで追い詰められてしまっていた。

 

『おいおい!アッという間に追い詰められちまったじゃねぇか!!』

 

『油断しすぎだ』

 

巧は少し反省していた。相澤の言っていた通り油断しすぎたのだ。巧という男はこれまで喧嘩ばかりしてきたので考えるよりも先に拳が動くという癖が染み付いていた。今までならゴリ押しで行けばなんとかなったが、それが逆に仇となりこの状況に至る。だが、今ここで作戦を考えてこの状況を打破しようなんて無理な話だ。巧にその選択肢はない。一度ついた癖はずっと直らないのだ。

 

(よし!作戦通りこのままいけば、私の勝ちですわ!)

 

八百万は勝利を確信した。それもそのはず、誰がどう見ても八百万の勝ちに見えた。

 

「乾君、負けそうやね」

 

「これはヤオモモの勝ちじゃない?」

 

「いや、まだいける。まだたっくんならいける」

 

「デク君どういうこと?」

 

A組の面々もこの勝負は八百万の勝ちだろうと確信していた。だがただ一人、緑谷だけはそうはていなかった。それはどういうことか、隣にいた麗日が質問し、それに便乗するように峰田も質問する。

 

「どういうことだよ緑谷?どう見たってヤオモモの勝ちだろ?こっからどう勝つっていうんだよ?」

 

真っ当な疑問だった。峰田の言う通り巧は今場外ギリギリの状態。この状況からの勝利など何度も言うが無理なのだ。

 

「いや、いける。たっくんなら、いける。絶対に」

 

「いやだからどうやって....」

 

「気合いと!根性と!!力技で!!!」

 

「気合い...!」

 

「根性!」

 

「力技ぁ!?」

 

突然らしくない台詞を吐く緑谷に、周りは驚く。そんな中でリング上に変化が起きた。

 

『なんだ!?乾のやつヤケクソになったか!?突然走り出したぞ!』

 

プレゼントマイクの解説するように何を思ったのか、巧は場外ギリギリで突然走り出した。八百万は呆気にとられ、ゴムボールを補充するのを忘れてしまう。そして巧はリングの真ん中あたりまでくると飛び上がり、衝撃を纏った拳でリングを殴りつけた。その直後、リング全体に罅がはいり、会場全体にものすごい衝撃が轟く。

 

「うわー!!あいつ滅茶苦茶だーー!!」

 

「どっからこんな威力でんだよ...!乾の奴....!」

 

『ぎゃーー!体がビリビリする!!』

 

『相変わらずすごい威力だな....!』

 

あまりの衝撃に観席の方にも影響が出ている。それほどまでに巧の個性が強力ということなのだろう。一番近くにいた八百万もあまりの衝撃に防御しきれず吹き飛ばされてしまい、そのままリングの外まで落ちてしまった。

 

「や、八百万さん場外!乾君!2回戦進出!!」

 

『勝者乾巧ーー!!まさかのゴリ押しで逆転勝利!!まだちょっと体が痺れる!!』

 

『力技での勝利は合理的じゃないが、こういうのもありか』

 

勝利を手にした巧はリングから降りると八百万に近づき手を差し伸べる。負けた悔しさからか俯いている八百万は巧に気づくと手を取った。

 

「......しっかり作戦を立ててきたのに土壇場で逆転されてしまいました。乾さん、すごいですわね」

 

「お前も大したもんだよ。俺もお前の作戦にまんまとハマっちまったしな」

 

「.......次も頑張って下さいね!乾さん!」

 

「ああ」

 

言葉を交わした二人は会場から降りた。

 

●●●

 

第五、第六試合が終わり、残りの試合を見ていこう。

 

第七試合 鉄哲徹鐵VS切島鋭児郎

硬化とスティールという似たような個性同士の勝負。この勝負は小細工無しの純粋な殴り合いになった。そしてこの勝負の決め手となるのは気合いと根性。どちらかが倒れてしまうまで殴り続けるまさに漢と漢の勝負となった。結果は両方気絶、先に倒れたのは鉄哲だったため切島が勝利を納めた。

 

第八試合 麗日お茶子VS爆豪勝己

勝負は一瞬で決まると思われていたが、麗日はリング上の殆どの瓦礫を無重力化し、それを解除してダメージを喰らわそうという作戦で思っていた以上に粘った。しかし才能の差と言うべきか、この勝負は爆豪の勝利となった。

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