進化する人々   作:奥歯

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衝撃と修復

第1回戦が終了し、休憩に入る。巧は催涙ガスのせいかまだ目が痛む。トイレに行き手洗い場の水で目を洗い流す。多少楽になりトイレから出るとまたしても緑谷が誰かと話しているところを見つけた。誰と喋っているのか、かなり大柄な男だった。個性の影響か、顔の部分が燃えており、勇ましさがある。彼こそはオールマイトに次ぐNo.2フレイムヒーローエンデヴァーだ。しかし巧は....。

 

(誰と話してんだ?出久のやつ)

 

ヒーローにこれっぽっちも興味のない巧は顔はなんとなく覚えてはいるが、誰なのか全くわからなかった。今回巧は何を話しているのか聴く気はなかった。試合に集中したいために、余計な心配事を増やしたくないからだ。そして巧は後ろを振り返り会場まで歩いて行った。

 

●●●

 

『さあ!小休憩は終わったな!?始める前にまずは現在の結果をご覧いただこーう!!』

 

プレゼントマイクが観客の視線を集めさせるとモニターから次のトーナメントが映し出される。

 

第一試合 緑谷出久VS轟焦凍

第二試合 乾巧VS長田結花

第三試合 塩崎茨VS飯田天哉

第四試合 切島鋭児郎VS爆豪勝己

 

『次の試合は勝ち上がったこの8名!!一体全体誰が勝ち上がるかー!!さあ、そろそろ始めていこうか!!エヴィヴァディヘイセイ!!』

 

『『『イェーーーーイ!!』』』

 

プレゼントマイクのコール観客は大声で答え、プレゼントマイクは気分がよさそうだった。そして、第2回戦が始まる。

 

●●●

 

結果から言うと、第一試合の勝者は轟となった。轟は開始早々氷を生成し、一気に終わらせようとしたが、緑谷は右手の指で氷を破壊。緑谷の指はこれ以上ないほどに赤く腫れ上がっていた。そしてしばらくの間轟は氷で緑谷を攻撃、緑谷は指で氷を破壊し応戦する。そして何を思ったのか轟は左側の炎を使い緑谷と激突。せめぎ合いの末、緑谷は吹き飛ばされ場内となり、轟の勝利となった。巧はその試合を見た後タンカに乗せられ運ばれて行った緑谷が心配になり、保健室に向かう。保健室の前まで来た巧はドアを開けようとすると、その向こう側から大声をあげて泣いている緑谷のが聞こえた。巧は入ることをやめ、後ろを振り返り、その場を去った。

 

●●●

 

『どんどんいくゼェーー!!第1回戦じゃ会場全体を衝撃の渦に巻き込んだ力のA組乾巧!!VS!!そのアクロバティックな動きで相手を翻弄した技のB組長田結花!!』

 

「.........」

 

「よ、よろしくお願いします....」

 

結花も八百万と同様に巧の無言の圧力に気圧される。しかし、結花はB組の全員の期待を背負っている。ここで負けるわけにはいかないのだ。そしてプレゼントマイクから開始の合図が出る。

 

『START!!』

 

合図の直後に結花は巧に突っ込む。結花は攻撃に入る前に相手の行動を予測する。巧の個性からして拳を突き出してくるのは確実。ならば右からくれば屈んで鳩撃ち、左からくれば右に避けて左脇腹を狙えばいい。あとはうまく回避するだけだ。巧は手首をスナップし、走ってくる結花を迎え撃つ。あともう少しでお互いの射程距離に入る。そして入った瞬間、巧は右拳を突き出した。予測通りの行動に結花は身を屈めて巧の腹に一撃を入れた。

 

「ぐっ!」

 

そして続けざまに顎に掌底をくらわした。

 

「がっ!」

 

二撃もくらった巧はよろめきながらも構えをとり、結花も同じように構えをとる。今度はお互い動かず、ジリジリと距離を保ちながら相手の動きを伺っていた。先に動いたのは結花だ。左上段蹴りを巧の顔面に向かって繰り出すが巧はすかさず右腕で防ぐ。そして今度は右回し蹴りを繰り出すが、巧は体を後ろに逸らし回避した。それでも結花の猛攻を止まらず、右正拳突きを繰り出し、巧は左に避ける。巧は突き出した結花の腕を掴むと場外に向かって投げ飛ばす。しかし空中で体勢を立て直した結花はバク転しながら着地する。

 

「お互い一歩も引かねぇな。あの長田って奴、めっちゃ美人だけど乾相手に中々やるな」

 

「でも乾のやつもなんか変じゃねえか?ヤオモモの時も思ったけど、いつもの感じじゃないっていうか......」

 

試合を見ていた切島は、いつもと様子が違う巧に対して疑問を抱いていた。

 

「うん、たっくんっていっつも喧嘩ばっかしてたからこういうのに負ける筈はないのは確かなんだけど、女の子相手とは一度も喧嘩したことないから....」

 

「あーやりずらいってことか」

 

切島の言う通り、巧は少し攻めあぐねていた。八百万の時もそうであったが、巧は今まで女子と相手したことがなかったためどうしたらいいかわからなかった。爆豪のようにストレートに殴るというのも気が引ける。それに相手は結花だ。もし傷つけたりしたら轟が黙ってはいないだろう。轟に絡まれては巧としてはかなり面倒なことになる。それも含めて中々攻め入ることができないのだ。

 

『お互い様子を伺っているのか一歩も動かねぇ!ジリジリ詰め寄ってる感じが達人感あって迫力ある〜!!こういうのでいいんだよ!こういうので!』

 

『私情を挟むな。乾の衝撃と長田の修復......個性的にいえば乾の方が圧倒的に有利だが、長田のあの身のこなしに翻弄されているな。乾の奴、妙に攻めあぐんでいるがどういうつもりだ?』

 

相澤の指摘に巧は多少イラつくも、今は目の前のことに集中する。どうやって怪我をさせずに勝利するか。ギブアップを狙うか、場外にさせるか、この二択しかないであろう。しかし手加減はしない。巧を腕をスナップさせて構えをとる。その直後に結花は話しかけてきた。

 

「乾さん。私はこの体育祭で、B組のみなさんの期待を背負ってこの場所に立っています。あなたはこの体育祭で1位を取るためにここまで来た。全力でこいと言いましたよね?なら言葉通りに全力で、手加減なしで相手していただきます。必ずあなたに勝利する!」

 

「........」

 

結花の勝利宣言に巧は何も答えない。応えるまでもなく全力で相手するつもりだがなのだろう。そして結花は間合に入り、巧の首に狙いを定め手刀を繰り出すが巧はその腕を掴み、体制を崩そうと腕を大きく捻るが、結花は回転して体制を保つ。すかさず結花は掴まれていた腕を引っ張り巧は近くまで引き寄せると右手で正拳突きを繰り出すが左手で受け止められる。両手が使えなくなった結花は足を使おうとするが、巧が押さえつけるため足を使った攻撃ができない。押さえ込まれないようになんとか踏ん張るが、流石に力負けしてしまう。

 

「うっ......くっ......!」

 

これ以上踏ん張ってもどうにもならない、しかし結花は咄嗟に巧に背を向けると同時に背負い投げをし、地面に叩きつけ逆に抑え込んだ。

 

「ぐっ.....!」

 

なんとか抜け出そうともがくが、なかなか離さない。このままギブアップを狙っているのだろうか。しかしここで負けるわけにはいかない巧は両拳を握ると、個性を発動し衝撃で結花を吹き飛ばした。

 

「きゃ!」

 

巧の衝撃で吹き飛ばされた結花だったが、突然空中でピタリと止まったと思うと空中を物凄いスピードで移動した。

 

「何!?」

 

『なんだなんだ!?長田のやつ!空を飛んでやがるぞ!!』

 

長田の個性は全く関係のない挙動。一体どういう原理で空を飛んでいるのか目の前にいた巧も、観客たちも理解できていなかった。しかし、これにいち早く気づいたのは相澤だった。

 

『これは修復の個性の応用だな』

 

『え?どういう意味だ?』

 

そして次に気づいていたのは轟だ。轟はこの原理ついて解説する。

 

「結花の修復は。壊れた物体を修復させると磁石みてぇに引き寄せられる性質がある」

 

『つまり、その引き寄せられる性質を利用して吹き飛ばされずにこうやって空中をものすごいスピードで移動しているということだ』

 

「なるほど!そんな個性の応用があっただなんて!!」

 

轟の解説に緑谷は興奮気味にノートにメモを取る。その間、結花は勢いをつけた状態で巧の元に迫っていた。そして結花が間合いに入った瞬間に巧に向かって飛び蹴りを放つ。

 

「はぁ!」

 

巧は咄嗟に避けようとするが、間に合わず、胸部にモロに蹴りを喰らってしまった。

 

「グハァッ!!」

 

巧は吹き飛ばされ、地面を転がる。しかし結花の猛攻は止まらず、さらに修復の力を利用して勢いを乗せて巧の頭部、腹部、胸部、脚部を的確に狙う。

 

「たっくんが押されてる...!」

 

「勝負ありだな」

 

「フンッ...」

 

結花は膝をついている巧の方を見る。これが最後の一撃だ。

 

「私の勝ちです!!」

 

結花は走り出して飛び上がり、最後の一撃を巧に向かって放つ。これで勝負は決まると思った時、突然巧は両手を勢いよく叩く。するともの凄い衝撃波が会場全体に響きわたり、結花を場外へと押し出した。巧はタイミングを見計らっていた。結花が直接攻撃する瞬間を待っていた。そして密かにまとった衝撃を解き放ち、結花を場外まで吹き飛ばしたのだ。

 

『うおおお!!また乾のスーパーインパクトが炸裂だああああ!!』

 

『また力技か。合理的じゃないぞ乾』

 

場外まで押し出された結花は負けを認めた後、しっかり着地する。

 

「長田さん場外!乾君!3回戦進出!!」

 

3回戦進出した巧はリングに降りると結花につ近づく。結花は悔しさで涙を溜め込んでいる。しかし、その涙を拭うと巧に向き合った。

 

「B組のみなさんの期待には応えられませんでしたけど、次は負けません!乾さんも頑張って下さい!」

 

結花はそう言って一礼をし、会場から出て行った。

 

●●●

 

2回戦目に勝利した巧は休憩に入ろうとする。しかし目の前から轟が巧に向かって歩いてくるのが見えた。巧は大きく溜息をつき、無視しようとするが阻まれ、胸ぐらを掴まれる。

 

「お前は結花を泣かした。次でお前を殺す」

 

「あいつはちゃんと負けを認めてたぞ」

 

「そういうことじゃねぇ、結花は全力で相手してお前に負けた。ムカつくがこれは認めなきゃならねぇ。だが、結花を泣かしたのは別問題だ。お前に負けた結花のためにも、お前を完膚なきまでにブチ殺す。今度は両方の力でな」

 

目だけで殺してしまいそうなほど睨みつけてくる轟に、巧も睨み返す。しばらくした後、轟は手を離し巧から離れていった。

 

●●●

 

第二試合が終了し、第三、第四試合を見ていこう。

 

第三試合 塩崎茨VS飯田天哉

この試合では塩崎の茨で、飯田を捉え場外にしようという作戦に出たが思いの外小回りの効いた飯田の動きに翻弄され、なかなか捕まらず、最後に飯田のタックルによって逆に場外にさせられ、飯田の勝利となった。

 

第四試合 切島鋭児郎VS爆豪勝己

切島は硬化で爆豪の爆破に耐え切るという切島なりの作戦で挑んでみたが、想像以上に爆豪の勢いが凄まじく後退りながらもなんとか耐え続ける。しかし場外ギリギリになってようやく爆豪の腕を掴んだと思ったが、切島はその時点で白目をむいて気絶。爆豪の勝利となった。

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