雄英体育祭が開催されている中、都内のとある暗いバーで死柄木弔はテレビで体育祭を見ていた。今はちょうど巧と結花が戦っているところだっだ。
「チッ、なんでこんなもの見なくちゃならねぇんだ」
『そう言わずにしっかり見ておくんだ。よく見て備えろ。彼らは....いずれ君の障壁になるかもしれない.....』
「.....ハッ、クソみたいな話だな。....まぁ、先生がそういうなら....」
死柄木はなぜ見たくもない雄英の体育祭を見なくてはならないのか悪態を吐く。しかも今、一番嫌いな乾巧が最終種目で活躍していることに更に腹が立っていた。しかし、先生と呼ばれる男は死柄木に子供に言い聞かせるように諭す。
『それと、死柄木弔。君に渡しておきたいものがある』
「何を?」
『まぁ見てみればわかる。黒霧』
「はい」
男は黒霧に命令すると、棚から何かを取り出し、机の上に置く。その何かは二つのアタッシュケースだった。片方はかなり大きく、もう片方は対象に小さめだ。
「これって.....」
しかも驚くべきことに、そのアタッシュケースにはスマートブレインのマークが入っていた。
『私からのプレゼントだよ』
「先生、これを何処で?」
『色々あって苦労して手に入れたんだよ。しかし、プレゼントとは言ったが、まだ君に使わせるわけにはいかない』
「は?なんで」
『死柄木弔。君はまだまだ未熟だ。だが、色々なことを学んでいけば今よりもずっと強くなれるだろう。その時までお預けだ。そのベルトを使わせるオルフェノクは既に招集している』
「では先生。私は保須へ向かいます」
『ああ、頼むよ黒霧。座標はさっき知らせた場所で間違いないはずだ』
「では、私はこれで....」
そういうと黒霧はワープゲートを開きその場から姿をくらました。死柄木はテレビの方に向き直り生放送の体育祭を見る。たった今試合が終わり勝者は巧となっていた。
「チッ」
●●●
最終種目も順調に進み3回戦。ここまで勝ち進んだのは爆豪勝己と飯田天哉、そして轟焦凍と乾巧であった。いずれもヒーロー科のA組である。3回戦の対戦はこうだ。
第一試合 乾巧VS轟焦凍
第二試合 爆豪勝己VS飯田天哉
『さあさあ!準決勝始まるぜー!次は強個性同士の対決だ!!衝撃の乾と半冷半燃の轟!!今までどの種目でも最前線を突っ走ってきた強者同士だ!!』
プレゼントマイクの演説で会場はより盛り上がっていき、巧と轟がリングへ上がるとと黄色い歓声が上がる。
「ここでお前をぶちのめしてやる。二度と雄英に顔向け出来ねぇような恥をかかせてな」
「口さきだけじゃねぇってことを期待してるぜ」
お互い睨みながら煽り合う。ここでどちらかが勝てば決勝戦進出だ。そして二人は距離を取り向かい合う。ある程度距離をとったのを見計らい。プレゼントマイクは開始の合図を叫ぶ。
『START!!』
その瞬間轟は個性発動し、今までよりも巨大な氷を生成し、その氷は巧の方に迫る。巧は迫ってくる巨大な氷を前に手首をスナップし構える。そして拳から衝撃を纏い飛び上がると拳を突き出した。
「ハァッ!!」
突き出された拳は巨大な氷の塊を一瞬にして粉々にしてしまった。
『乾のやつ!自慢の破壊力で氷の山を一瞬で粉々にしてしまったああああああ!!!あの破壊力の前ではいかなる個性も無力なのか!!?』
氷を破壊した隙に巧は轟に向かって走り出し距離をつめる。轟はすかさず氷を使って足止めしようとするが、それも破壊してどんどん距離をを縮めていく。
(クソッ!あいつに右は相性が悪りぃ!!)
間合いに入った巧は轟の顔面に向かって右拳を突き出した。轟は咄嗟に拳をいなし、右手でカウンターを決めようとするが左手で受け止められる。お互い両手が塞がった状態となったが、巧は勢いよく轟の頭に頭突きをした。
「ぐあっ!」
怯んだ隙に巧は轟の腹に向かって蹴りを入れる。吹き飛ばされた轟は転がりながらも立ち上がり今度は炎を巧に向かって繰り出す。流石に避けれない巧は両手を前に突き出し衝撃を纏って防御をとる。しかし、炎の勢いが凄まじく防御し切れずに吹き飛ばされてしまった。
「うおっ!」
吹き飛ばされた巧は両手を後ろに向けて勢いを殺し着地する。そしてもう一度轟に向かって走り出した。対する轟も走り出す。轟の氷は巧とは相性が悪いが、左の炎なら勝てるチャンスがある。しかし殆ど使ってこなかった炎は加減の仕方が分からず余分な力まで使って無駄な体力を消耗してしまう為、むやみやたらに使うことはできない。ここは接近戦に持ち込むのがベスト。炎は温存する。轟は走りながら作戦を立てた。
『流石は天才ボーイズ!どの試合よりもレベルの高ぇ戦いを繰り広げていやがる!!めちゃくちゃ盛り上がってきたああああ!!』
『見た感じ轟の氷は乾の衝撃とは相性が悪いみてぇだが、炎の方はまだ勝てる可能性はあるようだな。この勝負は互いの個性がどこまで通用するかで勝負が決まるな』
相澤の解説中に巧と轟は間合いに入ると互いに回し蹴りを繰り出し、同時にぶつかる。そして巧は右拳を突き出すと、轟も右拳を突き出しこれも同時にぶつかった。ぶつかった瞬間に轟は巧の右腕を掴むと自身に引き寄せ、巧の顔面に裏拳をくらわした。
「ぶはっ!」
裏拳をくらった巧は仰け反りながらも轟が手を離す前に腕を引っ張り同じように裏拳を顔面にくらわした。
「ぐはっ!」
そして巧は轟の胸ぐらを掴むと何度も轟の顔面を殴りつける。巧は轟を殴り飛ばすと、轟は地面を転がりうつ伏せになる。その隙に巧は轟の腹を思いっきり蹴り上げた。
「オラァッ!!」
「うがぁっ!!」
とてもヒーローらしいとは言えない戦い方に会場はざわめき始める。
『オイオイオイ!!乾のやつ!?やり方がただのチンピラだぞ!!』
『........』
「乾のやつやりすぎじゃねぇか!?」
「デクくん。あれが普通なの?」
「うん。あれが普通だよ。たっくんはね......」
「うわぁ、対戦相手じゃなくてよかったぁ」
周りが巧の戦い方にドン引きする中、エンデヴァーは巧と轟の対戦をただジッと見ていた。巧はうつ伏せで倒れている轟に近づき、無理やり立たせる。その瞬間轟は巧の腹に溝打ちをくらわす。
「うぐっ!?」
「やってくれるじゃねぇか......!」
轟は巧の後頭部を掴むと巧の顔面に思いっきり膝蹴りをする。巧は反動で倒れると同時に轟は馬乗りになり何度も殴りつけた。巧はなんとか拳を受け止め、轟を投げ飛ばし距離をとる。もうお互いボロボロになっており血だらけだ。
「これで終わらせてやる」
そういうと轟の左半身から炎が噴き出し、右半身から冷気が噴き出る。
「ああ、俺もそのつもりだ」
対する巧も両拳に衝撃を纏う。どうやらここで勝負を決めるようだ。二人は動かず、ただ自身の全力を繰り出すために力を集中させる。そしてその力が最大まで達したと感じ取った二人は全力で走り出した。
「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
ギリギリまで距離をつめた二人は同時に両拳を突き出しぶつかり合う。その瞬間、何度目かもわからない衝撃波と熱風が会場全体を包み込んだ。その物凄い衝撃波からリング全体にヒビが入りそのヒビは観客の席にまで届いた。最後に大爆発が起き、何かにつかまってないと飛ばされてしまいそうな突風が吹く。
「もう何回目だよこれええええ!!」
「ちょっとは周りのことも考えてよおおお!!」
いやってほど突風を浴びたクラスメイトからは文句の声が出る。しばらくしてその突風も止み、リングは砂埃で見えなくなっていた。その砂埃も少しずつ晴れ始めると、リングの上に一つ人影が見えてきた。そこに立っていたのは血だらけになりながら息を切らした巧であった。轟は吹き飛ばされ、壁に激突していた。
「ハァ......!ハァ.......!」
「と、轟君場外!乾君!決勝進出!!」
勝者が決まった途端会場から一斉に歓声が上がる。今の巧はこの歓声が頭に響くため鬱陶しくて仕方がなかった。壁に激突した轟は気絶しており担架に乗せられて保健室まで連れて行かれた。轟を見送った後、巧はリングから降りた。
『泥試合の末決勝戦を勝ち取ったのは乾巧だあああああああ!!!次の勝負で決勝が決まるぞおおお!!はあ、この衝撃全然慣れねぇよ』
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決勝戦進出を果たした巧は保健室の所まで歩いていた。頭から血を垂れ流してはいるが、こういう経験は何度かしている為なんともなかった。しかし、頭から血を垂れ流しているだけではなく、さっきの全力で個性を使った緑谷のように指が折れ、腕が腫れ上がり紫色に変色していた。重症なのは違いないので今保健室まで向かっているのだ。その時、巧の目の前に大きな影が現れた。巧は視線を上げると目の前にいたのはエンデヴァーだった。
「あんた。出久と話してた男か」
「そうだ。君は...乾巧君だったな。実は君に話が...」
「悪いが後にしてくれ...。全身が痛くて仕方がねぇ。あのクソ野郎。顔面が変形するまで殴っておけばよかった...」
エンデヴァーは体を引きずりながら横を通り過ぎていく巧の後ろ姿を一瞥した後、この場所を後にした。
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保健室まで着いた巧は扉を開けるとそこには気絶している轟がベッドで寝ており、その隣には結花がいた。
「お前.....」
「あ、乾さん」
「ああ、そういえばあんたら知り合いだったねぇ、この子はよくやるいい子だよ。私の個性よりもずっといい、完全に傷を治しちまうからね。私の仕事が無くなっちまうよ」
「すみません。仕事の邪魔ですよね.....」
「いいのよ、おかげで助かるから。全く、そんなになるまで全力出すなんて本当に男ってのは馬鹿しかいないのかね。早く見せな」
巧は言われるがままに両腕をリカバリーガール見せる。リカバリーガールは両腕に触ると個性を発動し、みるみるうちに傷が治っていった。彼女の個性は治癒。相手の傷を癒す個性ではなく、相手の治癒力を上げる個性である。故に巧のような重症であれば完全に直せる訳ではないのでそこは本人の治癒能力次第である。
「これでいいかね。結花ちゃん。こいつのは治さなくていいからね。反省させるためにもね」
「......はい」
「チッ、リカバリーババァが.....」
「なんか言ったかい?」
「べつに...」
完全に治してもらえないことにリカバリーガールに悪態をつく巧だが、それを聞き取られていたようで咄嗟に言い訳をした。
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巧はある程度傷を治してもらい、保健室から出て会場に向かう。着いた頃にはすでに試合は終わっていた。
爆豪勝己VS飯田天哉
試合開始直後に飯田の高速移動で翻弄しようとするが、なんと爆豪は爆破の勢いで飯田と同じく小回りのきく動きで逆に翻弄し、最後は爆破で吹き飛ばして場外にしたことによって、爆豪の勝利となった。
これで決勝の相手が決まった。これも何かの因縁か、そうなるだろうと予想していた巧はあまり驚かなかった。恐らく爆豪もだろう。何はともあれ、次の試合で優勝者が決まる。リングにいた爆豪は巧の方を見るといつも勝負を吹っ掛ける時の目をしていた。巧もその勝負を受けて立つ時の目をした。