進化する人々   作:奥歯

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表彰式

「それではこれより!表彰式に移ります!!」

 

ミッドナイトの合図で体育祭の終了を知らせる花火が打ち上げられた。会場の真ん中に一年生が集められ、表彰台には巧とずっと黙ったままの爆豪と少し機嫌の良さそうな轟が立った。会場はその三人に向かって拍手を送る。

 

「3位には爆豪君ともう一人飯田君がいるんだけどちょっとお家の事情で早退になっちゃったのでご了承下さいな」

 

「メディア意識.....!?」

 

「飯田ちゃん張り切ってたのに残念ね」

 

ミッドナイトは飯田がいないことのウインクをしながら説明をし常闇はツッコミ、蛙水は飯田に対して情けを送った。緑谷は浮かない顔をして空を見上げていた。

 

「さあメダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのは勿論この人!!」

 

ミッドナイトは声を上げて会場のドームの上を指差す。ミッドナイトが指し示すその先にはオールマイトが立っていた。そしてオールマイトは飛び上がり表彰台の上に着地する。

 

「私がメダルを持って来...!」

 

「我らがヒーローオールマイトォ!!」

 

「あ.........被ったっ.......」

 

着地と同時に決め台詞を言ったオールマイトだったがミッドナイトの紹介と被ってしまい少し気まずくなってしまう。気を取り直してオールマイトは続けた。

 

「轟少年3位おめでとう。君の個性と格闘術の組み合わせには恐れ入ったね。しかし真正面からぶつかりに行っても個性との相性で負けてしまうこともある。そういう時は搦め手を使うのも有効だぞ!!」

 

「はい、ただ......」

 

「?」

 

「緑谷のお陰できっかけをもらって、もっと自分の個性を使ってみようと思いました。自分が思い描いてた姿。あなたのようなヒーローになりたかった。乾のクソ野郎をぶっ潰せなかったけど、悔いはありません」

 

「そ、そうか、まぁ励みたまえ!!3位おめでとう轟少年!!!」

 

轟の言葉を聞いて途中何かおかしかったが、オールマイトは聞かなかったことにし、3位のメダルを轟の首にかけた。今度は爆豪の方に向かう。爆豪はずっと俯いたまま拳を振るわせ黙っていた。

 

(俺が負けた.....?巧のやつに......負けたのか?俺.......)

 

オールマイトは爆豪に近づき悔しさで震えているのが見てとれた。

 

「2位おめでとう爆豪少年。まあ、次は.....」

 

「関係ぇね、俺は巧に負けたが、次だ!次こそは巧に勝ってやる!!」

 

「立ち直り早........そうだな、これは次の励みとなる傷として受け取りたまえ!」

 

爆豪の目には涙が溜まっていたが、すぐに吹っ切れたようで励まそうとしたオールマイトはさっきから空ぶっているような気がしていた。オールマイトは2位のメダルを首にかけた。そして最後は巧の番となった。

 

「乾少年。1位おめでとう。君のファイトスタイルには驚かされたが、何はともあれ優勝おめでとう!!」

 

そう言ってオールマイトは巧の首に1位のメダルを首にかけた。

 

「下の二人が弱すぎて話しになんなかったけどな」

 

「「んだとテメェ!!」」

 

「け、喧嘩は止めたまえ.....」

 

表彰式でも尚仲が悪い三人にオールマイトは少々疲れ気味になっていた。三人にメダルを渡したオールマイトは整列している生徒たちの前に立つ。

 

「さぁ!今回は彼らだった!しかし皆さん!!この場の誰もここに立つ可能性はあった!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!てな感じで最後に一言!みなさんご唱和ください!!せーの!」

 

「「「「「Plus U.....」」」」」

 

「お疲れ様でしたぁ!!!」

 

"ご唱和ください"その言葉の次に出てくるのは当然あの言葉のはずなのだが、オールマイトから出た言葉は労いの言葉だった。この雰囲気に相応しくない言葉にオールマイとは生徒たちから一斉にブーイングをくらった。

 

「そこはプラスウルトラでしょオールマイト!!」

 

「ああいや....!疲れたろうなぁっと思って....」

 

こうして雄英体育祭は幕を閉じた。体育祭以外にも様々な試練がヒーローの卵たちに待ち受けていることだろう。しかしそんな苦難を乗り越えてこそヒーローなのだ。

 

●●●

 

「お疲れっつうことで明日、明後日は休校日だ。プロなどの指名などをこっちに休み明けに発表する。ドキドキしながらしっかり休んでおけ。以上!」

 

雑にHRが終わり皆それぞれ帰る準備に入った。巧はもう帰る支度を済ませており、緑谷を呼ぶ。

 

「おい出久。帰るぞ」

 

「あ、うん。じゃあねみんな」

 

「おう、じゃあな緑谷」

 

「また明日〜」

 

みんなにさよならを告げて、巧と緑谷はオートバジンに乗って家に帰った。

 

●●●

 

明け方の時間。誰も歩いていない通りでバイクが一台雑居ビルの前で止まった。バイクに乗っていた男はビルの中に入る。男はヘルメットを被って裸の上からコートを着ており、かなりだらけた格好をしている。コートの男は扉を開けると目の前に広がっていた状況に少し驚いた。

 

「あれ?もしかしてお取り込み中?」

 

「ハァ.....。客か?」

 

「あ!お前新入りか!早く助けろ!」

 

コートの男が見た状況では、死柄木が忍者のような風貌の男に押さえつけられナイフを突きつけられており、黒霧は手から血を流していた。コートの男は何か面倒くさいことになっているなと思いながらも死柄木を助けることにした。

 

「おいおいおい、ちょっと落ち着きなよ忍者君。その物騒なやつ人向けないの」

 

コートの男は適当に忍者風の男を宥めようとするが効果はなく忍者風の男はコートの男に斬りかかる。刀を振り下ろしもうあともう少しで届きそうになった瞬間その刀は肉と骨を断つような音ではなくガキンと何か金属と金属がぶつかり合ったような音が響くだけだった。その直後に忍者風の男は驚き距離をとった。男の目の前に立っていたのはコートの男ではなく象のような見た目をした灰色の怪物であった。そう、このコートの男はオルフェノクであった。象のようなオルフェノク、"エレファントオルフェノク"は嘲笑うように話す。すると明かりで出来たエレファントオルフェノク影から青白い裸のコートの男が現れる。

 

『だから人に向けんなって言ったでしょ?ま、俺は人じゃないんだけどさ』

 

「ハァ.....,。それがお前の個性か?」

 

「いんや、個性なんて陳腐なもんじゃない。俺は人知を超えた存在。人類の上位種だ」

 

「人知を超えた存在.....?」

 

「彼はオルフェノクの言う人間が死ぬことによって進化するとても稀な存在なのです」

 

忍者風の男に対して、黒霧はエレファントオルフェノクについて説明する。そしてエレファントオルフェノクは忍者風の男に向かって指をさす。

 

「それじゃ、死んでもらおうかな」

 

その言葉に対し忍者風の男は危険を感じる刀を構えた。しかし、そこに黒霧が待ったをかけた。

 

「待ってください!彼は"ヒーロー殺し"です!」

 

「へぇ、あの巷で有名なヒーロー殺しステインさんですか」

 

エレファントオルフェノクはヒーロー殺しと呼ばれる男を殺すことはやめ元の姿に戻る。ヒーロー殺しことステインは刀を鞘に戻した。そしてステインはコートの男に質問をした。

 

「お前はどっちだ.......?偽物か.....本物か......それとも......徒に力をふりまく犯罪者か......?」

 

「どっちでもないよ。俺はただこの力を世のため人のために使ってんだ」

 

「.......どういうことだ?」

 

コートの男の回答にステインは理解できなかったが、すぐに黒霧が説明をする。

 

「彼の力は人間をオルフェノクにする力を持っています。それを"使徒再生"と言って、その力でオルフェノクになる確率はだいたい3〜5%、殆どの場合は死に至ります」

 

「まぁそういうこった。これからよろしく」

 

コートの男は握手を求めて右手を出すが、ステインは代わりに刀を突きつけた。

 

「やはり貴様は力を振りまく犯罪者......殺しておく」

 

「だから刀を向けんなって、と言ってもそんなもんで俺を殺すことは無理だけどな」

 

ステインはコートの男を睨むがコートの男はずっとニヤついた顔のままだった。するとさっきステインに押さえつけられていた死柄木がステインに話す。

 

「そいつはやめとけ、殺そうとしたところで所で人間のお前じゃこいつには勝てない。返り討ちにあって殺されるだけだ」

 

「そうそう、やめておいた方が身のためだ」

 

死柄木はコートの男はやめておけとステインを諭す。ステインは刀をコートの男に向けたままだった。

 

「信念だったか?んな仰々しいもんないね....。強いて言えばオールマイトだな。あんなゴミが祭り上げられてられているこの社会を滅茶苦茶にぶっ潰したいなぁとは思ってるよ!」

 

「それがお前か.....。お前と俺の目的は対極にはあるようだ。だが....."現在を壊す"。この一点に於いて俺たちは共通している」

 

「それじゃあ、こいつも俺と一緒に仲間に入れるってことでいいのかな?」

 

「俺は嫌だね。こんなイカれ野郎がパーティーメンバーなんて」

 

「死柄木弔!彼が加われば大きな戦力になる!交渉は成立した!」

 

死柄木はステインが仲間に入ることを嫌がるが黒霧はそれはできないと死柄木の反対を押し切った。その後、黒霧はステインを保須市に連れていき、バーの中では死柄木とコートの男だけが取り残された。

 

「......それで、俺はどうしたらいい?」

 

「あ?ああ、お前はベルトをあのガキから奪ってこい。殺してでもな。いや、殺して奪ってこい。それぐらいお前にもできるだろ?」

 

「......わかった。見つけ次第殺して奪ってくるよ」

 

そう言ってコートの男はバーから出て行こうとするが、一度振り返る。

 

「なぁ、前払いとしてその酒一本だけ持ち帰ってもいいか?」

 

「好きにしろ」

 

「どうも」

 

コートの男は棚から一本だけまだ開けていない新品の酒を持ってバーから出て行った。

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