進化する人々   作:奥歯

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職場体験

ヒーロー名の考案の後は職場体験をする事務所を選ぶ時間となった。

 

「職場体験は一週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリスト渡すからその中から自分で選択しろ。指名のなかったものは予めこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件、この中から選んでもらう。それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なる。よく考えて選べよ」

 

相澤の説明も終わりそれぞれ、どの事務所に入るか意見を出し合い考えていた。巧は分厚い紙の束を適当に見ていた。巧としては救助専門以外の事務所なら何処でもよかったので適当に見ながら分けていく。そして目に止まったのはNo.2のフレイムヒーローエンデヴァーの事務所だった。巧はすぐに決まった。どうせならトップヒーローの事務所に入った方が経験することも多いだろうと思いエンデヴァーの事務所の紙だけを取り後は適当にまとめて相澤に返した。

 

●●●

 

職場体験当日。早朝にA組の生徒たちは駅の前で確認をとっていた。

 

「コスチューム持ったな。本来なら公共の場でじゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」

 

「はーい!」

 

「伸ばすな、はいだ芦戸。くれぐれも失礼のないように!じゃあ行け」

 

A組の面々は次々と解散し、巧は事務所までオートバジンで向かうため、ヘルメットを被り、エンジンをかけてエンデヴァーの事務所まで向かった。

 

●●●

 

渋滞に巻き込まれることもなくスムーズに事務所まで辿り着いた巧は、オートバジンを事務所のガレージに止め、アタッシュケースを持って事務所の前に立つ。巧はその大きさに少し驚いた。少し体を逸らさないと上が見えないくらいに高くその上にはおそらくエンデヴァーの頭文字であるEの看板がデカデカと書いてあった。流石はNo.2の事務所だと関心する。そしていざ、その事務所に入ろうとした直後同じように事務所に入ろうとしていた者がいた。誰が来たのか巧は振り向くと何かやばいものを見るような目で驚いた。

 

「何っ.....!?」

 

「テメェ.....!」

 

その正体は轟であった。しかも隣に結花までいる。巧はこの二人に何か腐れ縁でもあるのかと、さっきまで意気込んでいたのにその気持ちも消え失せてしまう。

 

「なんでお前らがここにいんだ」

 

「それはこっちのセリフだ。なぜお前がここに来る。せっかく結花と二人でデー.....職場体験ができると思っていたのに、お前はどこまで俺たちの邪魔をする気だ」

 

「邪魔はテメェだ。目障りだからさっさと俺の目の前から消えろ」

 

出会った直後に険悪な雰囲気になり互いに殺す勢いで睨み続けるが、その間に結花が止めに入った。

 

「あの!喧嘩なら他のところでして下さい!痴話喧嘩を見るのも飽きましたし」

 

「ああ!?んだとテメェ!!」

 

「ごめん結花、さあ行こうか、こんなやつ気にする必要はない」

 

たまに入った結花に巧はキレるが轟はすんなり言うことを聞いて事務所の中に入って行った。一人取り残された巧はもうここに入る気がなかった。どうせ入ってもあの二人がいるためろくな目に合わない。さっさと帰りたかったが、もうどうしようもないのでイヤイヤ入ることにした。

 

●●●

 

「よく来たな焦凍と長田君.....そして乾君だったね」

 

事務所に入り出迎えてくれたのはフレイムヒーローエンデヴァーだった。巧に対するエンデヴァーの視線はやや冷ややかなものだった。癪に触った巧は軽く挨拶をする。

 

「どうもはじめまして、"二番手"ヒーローエンデヴァーさん」

 

「.....なんだと?」

 

巧のわかりやすい煽りにエンデヴァーは冷ややかな目から睨みに変わった。巧はエンデヴァーのことを轟と同じ相性が悪いやつだとすぐにわかった。その間に結花が割って入る。

 

「また同じようなことをするのはやめて下さい!乾さんももう少し相手に優しくして下さい!そんなんじゃいつまで経ってもひとりぼっちですよ!」

 

「........ッ!この女......!」

 

「エンデヴァーさんも、そんな顰めっ面なんてしないでもっと笑顔になったらどうですか?そんなんだからいつまでたっても"二番手"なんて言われるんですよ」

 

「.........クッ!」

 

巧は最初に結花にあった時、緑谷と同じタイプのやつかと思っていたが、思っていた以上に相手に対してズケズケとものを言う肝の座ったタイプというか妙に毒舌なところが巧は苦手だった。それはエンデヴァーも同じことだった。エンデヴァーは言い返そうとしても言い返したら負けなような気がして言い返せず、仮に言い返したとしても結花にぞっこんな轟にさらに嫌われてしまう。故に我慢するしかなかった。エンデヴァーは気を取り直すために軽く咳払いをする。

 

「お前たちも知っているだろうが最近保須にヒーロー殺しが現れている。先日はインゲニウムがやられた。そこで俺たちは保須に出張することとなった。お前たちにもついてきてもらう。ヒーロー殺しを捕まえるのを見ておけ、バーニン!すぐに市に連絡を!お前たちも早く荷物をまとめろ!のんびりしている暇はない!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「それとお前たちにはヒーロー殺し以外の(ヴィラン)を捕まえる手伝いをしろ、お前たちの実力がどれほどのものか確かめてやる」

 

その後に巧たちはすぐに荷物をまとめ、轟と結花はコスチュームに着替える。巧のコスチュームはベルトなので使う時にしか使わない、なので私服のまま保須に向かうこととなった。エンデヴァーたちは車で保須に向かい、巧はオートバジンに乗ってその後ろをついていくことにした。巧はもうずっと一人でいたい気分だった。あんな地獄のような場所にいては一週間も持たないだろう。そうしているうちに保須市に到着した。そして早速パトロールが始まる。

 

「早速だが行くぞ、(ヴィラン)がどういう所にいるのか、何処が一番多いのか、そこをしっかりと見ておくんだ。お前たちは俺の監視下でないと個性は使えないが、場合によっては個性の使用を許可する。今の間だけはヒーロー名で呼ぶからな」

 

巧たちはエンデヴァーについていく形で初のパトロールをした。その道中で結花は巧に質問をした。

 

「あの、乾さん。どうして私服なんですか?」

 

結花はなぜ巧が私服の姿でいるのか質問をした。因みに結花のコスチュームは白い袖なしのワンピースにローブを羽織っており首には白いチョーカーをつけ、黒いタイツを履いていて、少しセクシーな格好をしていた。ヒーロー名は"クレイン"で、鶴の英名である。

 

「説明は面倒だから気にすんな」

 

結花の質問に、巧は説明をするのが面倒なので無理やり流した。その代わりに巧は結花に質問をした。

 

「そんなことより、なんでお前らがここに来たんだ?」

 

「それは、焦凍さんがエンデヴァーさんの息子ですから、ここに来たっていうか....」

 

「あいつが!?どうりで......焦凍と同じ揃ってムカつく目してるわけだ」

 

巧は轟がエンデヴァーの息子であることに驚くが、すぐに納得した。すると早速事件が起きた。

 

「泥棒ーーー!!!」

 

(ヴィラン)はいつ何処で現れるかわからないとは言うが、思っていたよりすぐに見つかった。(ヴィラン)は二人組でバイクに乗っている。どうやらひったくりらしい。

 

(ヴィラン)か、ヒーローがいる前で窃盗とは度胸があるな!よしお前たち!個性の使用を許可する!俺についてこい!」

 

そういうとエンデヴァーは個性を発動すると、炎をロッケト噴射のように放出し、あっという間に姿が見えなくなった。轟は氷を生成すると結花と一緒に滑っていった。巧もオートバジンに乗り、後を追いかけた。一番遅かったとはいえオートバジンであっという間に三人を追い越し、バイクに乗った二人組の(ヴィラン)を追い越し、ドリフトでバイクの前輪を引っ掛け二人組の(ヴィラン)を転ばせる。転んだ二人を取り押さえようと巧は近づくが突然猛スピードで2台のトラックが突っ込んでくるのが見えた。巧はギリギリなところで避ける。トラックは急停車すると中から大勢の(ヴィラン)が降りてきた。どうやら二人組の仲間らしい。

 

「まじか!」

 

巧は体勢を立て直し構えをとる。数はざっと数十人しかも銃火器まで持っている。

 

「俺たちは"ヒーロー殺し"だ!!ヒーローは残らずぶち殺してやる!!」

 

そういうと(ヴィラン)の一人が空に向かって銃を撃った。銃声が響くと周りにいた市民たちは叫び声をあげて逃げていく。ひったくりはただヒーローを誘き寄せる作戦だったようだ。

 

「おい、こいつただのガキだぞ」

 

「関係ない!撃ち殺せ!!」

 

そう言って(ヴィラン)たちは巧に向かって銃を向けた。この人数では流石の巧も勝てない。そして(ヴィラン)が引き金を引こうとした瞬間に上空から炎が放たれた。

 

「ギャーーー!!!」

 

「ついてこいとは言ったが、単独行動は関心しないな」

 

巧は上の方を見るとエンデヴァーが駆けつけていた。エンデヴァーの炎に当たらなかった何人かの(ヴィラン)は銃をエンデヴァーに向けるが突然氷の塊が襲い、氷漬けにされてしまった。今度は轟が駆けつけてきて、その後ろにいた結花が3人の(ヴィラン)の所に向かい武器を蹴り上げた後、右は溝打ち、左は回し蹴り、そして最後に真ん中はサマーソルトキックをくらわした。

 

「........ッ!クソッ!」

 

最後の一人はどうにもならず逃げ出そうとするが逃げようとした先には巧が立っていた。

 

「もう逃げられねぇぜ」

 

「ヒッ......!」

 

それを最後に巧は(ヴィラン)の顔面に向かって渾身のパンチを繰り出し、(ヴィラン)は吹き飛ばされトラックに激突し、そのまま気絶してしまった。後に全員拘束され、幸い負傷者もおらず、被害も最小限に済みことなきを得た。奴らはヒーロー殺しとは言ってたが、事件の犯人とは無関係の(ヴィラン)だった。

 

「ショートは少し右に頼りすぎだ。このままではすぐにバテるぞ、今はまだ慣れないかもしれないが、左の方も積極的に使え。そしてクレイン。君は.....慌てず的確な行動をしている。上出来だ。それとファイズ。君は単独行動が目立つな。今回は俺たちが早く駆けつけられたから良かったとはいえ、次はそのようなことはないと思え、いいな?」

 

一通り終えた後エンデヴァーのアドバイスを受けた三人は引き続きパトロールを続けた。その間、エンデヴァーは轟に話しかけていたが、轟は無視をして結花とずっと話していた。その後ろを巧がついていくように歩く。除け者にされているように見えるが、巧としてはこの方が気楽なため、正直ずっとこのままでいたかった。

 

●●●

 

職場体験が3日目に来たところ、もう殆ど(ヴィラン)に遭遇することもなく、出会ったとしても大して強くもないため、少々退屈していた。

 

「ヒーロー殺し、中々出てきませんね.....」

 

「そんなすぐ出てくるわけねぇだろ」

 

そんなことを言っていると、突然巧と轟の携帯電話から着信が来た。

 

「位置情報.....緑谷からだ」

 

巧は位置情報を確認すると、保須市を指していた。ここでは最近ヒーロー殺しがいるとの情報があった場所だ。ここからだとそれほど遠くではない。ただ事ではないと察知した巧はすぐにオートバジンのエンジンをかける。すると後ろに轟が座った。

 

「テメェ!降りろ!」

 

「俺も連れてけ!加勢は多い方がいい!さっさと出せ!」

 

巧は後ろに乗ってきた轟に降ろそうとするが、今は言い合ってる暇はないので巧はエンジンをかけて走り出そうとしたその時、突然ビルが爆発し、その中から脳無が二体現れた。一体はUSJの時にいた黒い脳無によく似ており、もう一体は翼の生えた白い脳無だった。

 

「あいつら!また新しいのか!」

 

「クッ........!ショート!ファイズ!お前たちはあの白いのをやれ!俺は黒いのをやる!クレインは市民を避難させろ!」

 

「はい!」

 

「悪いが俺は緑谷のところに向かう。脳無ならお前がやれ、あのベルトがあればなんとかなるだろ。できればプロの応援を頼む。場所は江向通り4-2-10の細道だ。あと、結花を怪我させたら承知しねぇからな」

 

「あ!おい待て!クソッ.......!」

 

轟は緑谷が示した位置情報の場所まで向かい、巧は止めようとするが脳無の相手をしなくてはならない。巧はオートバジンの後ろに括り付けてあるアタッシュケースォ開け、ファイズドライバーとファイズショット、ファイズポインターをそれぞれセットしてファイズフォンを取り出し、ファイズドライバーを腰に巻き付ける。そしてファイズフォンを開くと変身コードを入力した。

 

『5 5 5』

 

『Entar』

 

Standing by

 

そして巧はファイズフォンを高く掲げ叫ぶ。

 

「変身!」

 

そしてファイズフォンをファイズドライバーにセットした。

 

Complete

 

するとベルトから赤く光るフォトンストリームが巧の全身を包み込み光り輝く。光が収まるとそこにいたのは巧ではなく仮面の戦士、ファイズであった。

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