進化する人々   作:奥歯

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試験開始

巧は村上を目の当たりにしてその威圧感に包まれていた。村上は巧の方に歩いて行く。

 

「こうして顔を合わせて話すのは初めてですね乾君。ファイズギアの使い心地はいかがかな?」

 

「どういうつもりだ?一体なんのために....」

 

「根津校長が言っていた通り、あなたがどれほどまでにそのベルトを使いこなしているのか確認したいと思いましてね」

 

警戒しながら話す巧に対して村上は淡々と話す。周りもその異様な光景に目をひいていた。

 

「緑谷、乾のやつ。社長と知り合いなのか?」

 

「うん、一応.....」

 

「まじか...あいつなにもんだよ」

 

「スマートブレインの社長が相手するって....待って、社長って確か....」

 

「無個性だったよな。サポートアイテムでも使うつもりなのか?」

 

切島の言う通り、村上は生まれながらにして無個性であった。そんな男がA組の中でトップの実力を持っている巧に相手になるのだろうか。それに知り合いのように話す二人の関係に周りが驚いている中、相澤が切り替えるように村上に声をかけた。

 

「村上社長。次進んでもよろしいでしょうか?」

 

「これは失礼しました。どうぞ続けて」

 

そう言って村上は巧から離れ、教師たちの後ろの方に立った。それを見届けた相澤は続ける。

 

「本題の戻るぞ。まずそれぞれステージが用意している。11組一斉にスタートだ。試験の概要は各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ。時間が勿体無い。速やかにやれ」

 

相澤の説明が終わり、生徒と教師たちはそれぞれ別のバスに乗り込んでいった。巧と結花もバスに乗り込むと、そこには村上がいた。

 

「乾君と、長田君だったかな?改めて、あなたたちの対戦相手を務めさせてもらう村上峡児です」

 

「よ、よろしくお願いします.....」

 

「..........」

 

村上は軽く挨拶し、結花は戸惑いながらも返すが、巧は無視を決め込んでいた。村上は特に気にもせずに会話はそこで途切れた。そしてその後はお互い黙ったままで試験会場に着くまでの間、気まずい空気に包まれ、結花は冷や汗を流していた。

 

●●●

 

試験会場に到着し、巧と結花はバスから降りた後、軽い準備運動をしていた。その間に村上は試験会場内に入っていき、姿を消した。巧たちも準備運動が終わり、試験会場に入る。会場内はビルが連なり、都会の一部を再現したような場所にだった。巧は辺りを見渡すが、村上の姿がない。

 

「何処にいるんでしょうか、村上さんは....」

 

少し不安になる結花を他所に、アナウンスからリカバリーガールの声が会場全体に響く。

 

『みんな位置に着いたね。それじゃあ今から雄英高一年期末テストを始めるよ!レディイイーーー.......ゴォ!』

 

リカバリーガールの合図とともに、試験が開始する。するとビルの陰から村上がゆっくりと姿を現した。巧と結花は構えをとる。そして村上は後ろに手を組み右腕を前に出した。

 

「まずはあなたたち二人の実力がどれほどのものか確かめてみます。ファイズの力はその後です。手加減は無用。かかってきなさい」

 

「チッ...」

 

誘うように手招きをする村上の余裕そうな態度に巧は舌打ちをする。二人相手なら片腕だけで十分と言いたいのか。そして巧はファイズギアを近くの場所に投げ捨て、そして地面を勢いよく蹴った。そのままの勢いに任せて村上の顔面に向かって拳を突き出す。しかし村上は軽く右手でいなし、巧の攻撃を受け流した。その直後に後ろから結花が空中で回し蹴りを繰り出すが、村上は後ろを見ずにそのまま右手で受け止めた。受け止められた結花は距離を取る。

 

「攻撃の素早さは素晴らしいですね。しかし動きに無駄が多い。中の上といったところでしょうか」

 

村上は二人に対して自己評価する。そしてもう一度村上は右手を前に出す。

 

「さあ、もう一度」

 

そして巧と結花は同時に走り出す。巧は拳を突き出し、結花は裏拳を繰り出した。村上はその攻撃も背中を仰け反らせて避ける。そして巧は右足で蹴りを繰り出すが右手で受け止め、結花の突きの攻撃には後ろに飛んで避けた。そして二人は次々と攻撃を繰り出していくが、全て受け止められ、避けられてしまった。今度巧は個性を発動して衝撃を纏った拳を突き出していくがそれも全て避けられてしまう。

 

「乾君の個性。衝撃でしたかな?聞いた話ではビル全体に衝撃が響きわたり、大型の仮装(ヴィラン)を一撃で破壊してしまう威力を有しているとか....くらってしまえばひとたまりもないですが、当たらなければ問題のない話だ」

 

そして隙ができた二人に村上は結花の腹に溝打ちをし、そして巧の顔面を殴り飛ばした。二人は殴られた勢いで地面を転がり結花は腹を抑え、巧は村上を睨みつけた。

 

「村上さん....強いですね.....!」

 

「クソッ.....!」

 

「こう見えて私はかなり鍛えていましてね。銃を持った相手でも素手で勝てる自信があります」

 

巧と結花は驚いていた。村上は無個性であるからてっきりサポートアイテムなどを使って相手してくると思っていたがまさか素手とは思わず、しかも二人がかりでも全く歯が立たなかった。巧と結花は感じていた。この男は強い。今の自分たちでは勝てないほどに強いと感じた。しかしそこで折れてしまうほど二人に根性がないわけではない。二人は立ち上がりもう一度構える。

 

「結花、行けるか?」

 

「はい....!」

 

二人は同時に走り出し、村上に向かって猛攻撃した。村上は右手を構え、攻撃を受け流していく。しかし、段々と二人の攻撃が早くなっていく。それでも村上はなんとか受け止め避けていくが、次第に少しずつ二人の攻撃が村上の体を掠めていった。そして巧の左拳が村上の顔面に向かってきた。その瞬間村上は思わず左手で受け止めてしまう。その一瞬の隙を逃さなかった結花は、村上の腹にお返しと言わんばかりの蹴りを入れた。村上はその勢いで後ろに吹き飛ばされるが、なんとか足で踏ん張る。

 

「.....少々油断してしまいましたね。なるほど、これが君たちの実力ですか.....上の上ですね」

 

そして村上はスーツについた砂埃を払いながら立ち上がるとジャケットのボタンを外し、裾を持って中を見せた。そこにはベルトのようなものが巻かれており、バックル部分にはスマートブレインの社章が刻印されていた。そのベルトを見て巧と結花は驚く。

 

「驚きましたか?このベルトはスマートバックルといって、乾君の両親が開発したファイズドライバーの設計図をもとにコストを抑えて開発した量産を目的としたベルトです。まだテスト段階ですが、この場を利用してもらいます。しかしこの状態は平等ではない。ファイズギアを取り行ってください。不平等は嫌いなのでね」

 

そう言って村上は巧がファイズギアを取りに行くまでその場で待機した。そして巧はファイズギアを取りに戻り、その場でベルトを装着する。

 

「これで対等ですね。では早速始めますよ。.....変身」

 

そう言って村上はバックル部分を横に倒した。

 

Complete

 

すると村上の全身が光り輝き、その姿が変わる。そして変身した村上はファイズによく似た姿をしていた。その姿に巧は更に驚く。

 

「ファイズ.....!?」

 

「この姿の名はライオトルーパー。先ほども言ったように、ファイズギアの設計図をもとに制作したベルトでありますから、ファイズによく似ているのは仕方のないことなのですよ。さあ、あなたも変身してください」

 

村上にそう言われ、巧はファイズフォンを開く。そして隣いた結花に言った。

 

「長田。お前は先にゴールに行け」

 

「え!?でも、乾さんは!?」

 

「いいから行け!......今のお前じゃ足手纏いだ。後で追いつく」

 

そう言って巧はファイズフォンの変身コードを入力する。

 

『5 5 5』

 

『Entar』

 

Standing by

 

「変身!」

 

Complete

 

そして巧はファイズに変身し構える。結花は最初は巧の提案を拒否したが、この状況を考えるに今の自分では足手纏いだと判断した。しかし巧を置いて自分だけゴールしてしまうほど薄情ではない。結花は一旦距離をとって巧を見守ることとした。巧は結花が遠くに行ったことを見届けるともう一度村上に向き直る。

 

「これで邪魔は無くなったな。サシで勝負だ」

 

「自分のことよりもペアのことを気にかけるとは、流石ヒーローの卵ですね」

 

「ゴチャゴチャうるせぇぞ。さっさと構えろ」

 

そう言って巧は手首をスナップして構えを取ると村上も構えを取る。ジリジリとお互い距離を詰め寄り、相手の様子を伺う。そして同時に動き出し巧は拳を突き出した。そして村上は顔を右に逸らし逆に巧の顔に拳打ち込んだ。巧は少しよろめくがなんとか踏ん張り、もう一度村上に攻撃するが避けられてしまう。巧は猛攻撃するが、全て避けられてしまい隙をつかれて腹に一撃をくらった。

 

「ぐっ.....!」

 

巧はよろめいて腹を抑えていると村上は左大腿部に装着されている。コンバットナイフ型の武器。アクセレイガンを取り出し、ブレードモードからガンモードに切り替え立ちあがろうとする巧に向かってバーストシューティングモードでアクセレイガンを撃つ。

 

「ぐああ!!」

 

モロにくらった巧は吹き飛ばされ、ビルの壁にぶつかる。村上はもう一度アクセレイガンを向け、巧に向かって狙い撃つが、巧はギリギリなところで転がり避け、その間にファイズフォンにコードを入力する。

 

『1 0 6』

 

『Entar』

 

BURST MODE

 

巧はファイズフォンを構え、村上に向かって撃ち。村上は左に避けつつアクセレイガンを撃つが、巧は咄嗟に避ける。その時撃たれたフォトンバレットは後ろのビルの壁に直撃し、破壊してしまう。巧と村上は並走しながら互いに撃ち合う。二人は走りながら避け続け、そのフォトンバレットは次々とビルや地面などのコンクリートを破壊していく。キリがないと感じた村上はアクセレイガンをバーストシューティングモードからライフルシューティングモード切り替える。巧は咄嗟にファイズフォンにコードを入力し、シングルモードに切り替えた。

 

『1 0 3』

 

『Entar』

 

SINGLE MODE

 

そして巧と村上は同時にトリガーを引き、光線がぶつかり合い、相殺する。これではキリがないと判断した村上はアクセレイガンをガンモードからブレードモードに切り替え、巧に斬り掛かった。巧は右に避け、もう一度斬り掛かった瞬間に受け止める。村上は踏ん張るが流石にファイズの力の方が勝ったために押し返される。村上は腕を振り解き、斬り裂き火花を散らす。

 

「がはっ!」

 

そして村上は何度もアクセレイガンで斬る。腹や胸、腕と足を攻撃していき最後に回し蹴りで吹き飛ばした。

 

「強えぇ....!」

 

「ここで倒れてもらうのはいただけませんね。まだ本領発揮ではないはずですが....?」

 

巧はフラフラになりながらもファイズフォンを取り出しコードを入力する。

 

『5 8 2 1』

 

『Entar』

 

Auto Vajin

Come closer

 

巧はファイズフォンでオートバジンを呼び出し、その隙に村上は斬りかかったが巧は左に避けそして何度も攻撃するが、巧はギリギリのところで避け続けた。するとアナウンスからリカバリーガールの声が聞こえてくる。

 

『報告だよ。条件達成最初のチームは轟、八百万のチームだよ!」

 

「おや?もう合格者が現れたのですか。流石は雄英の生徒。あなたもこれくらいの実力を見せてほしいものですがそれはそうと、さっきの動きは一体何をしたのですか?」

 

「そんなことテメェにベラベラ話すわけねぇだろ」

 

「ふっ.....確かにそうですね」

 

軽い雑談のようなものを交わした後、村上はアクセレイガンで斬りかかろうとしたその時、何処からともなくオートバジンが飛び出し、その前輪を村上にぶつける。突然の出来事に村上は反応できず、吹き飛ばされてしまう。

 

「これは、またしても油断してしまうとは。こういうところで気を抜いてしまうのが私の短所のようだ。こういった状況でもプロのヒーローなら難なくこなせるのでしょうね。見習わなくては....」

 

村上は少しよろけながら立ち上がり、その間に巧はミッションメモリーをオートバジンの左グリップに差し込む。

 

Ready

 

そしてファイズエッジを引き抜き村上に向かって走り出した。村上はアクセレイガンを振り上げ、そして巧もファイズエッジを振り上げぶつかり合い火花が散る。そして巧は怒涛の猛攻撃を繰り出し、村上はそれを全て防ぐが徐々に押されていく。そして最後の一撃だと言わんばかりの攻撃を繰り出すが村上は下に屈み逆に巧の腹に一撃を入れた。

 

「アグッ....!」

 

巧は地面を転がりうつ伏せになる。かなり効いたのか腹を抑えたままでなかなか立ち上がれないでいた。

 

「危ないところでした。リーチの長さはあなたに軍配があがる。流石にアクセレイガンでは不利ですね」

 

「クッソ.....!」

 

巧はなんとか起き上がり構えを取るが、すでに足元がふらつき今にも倒れそうな状態であった。このまま負けてしまうのは目に見えていた。そんな絶体絶命の状況で突然声が聞こえてきた。

 

「乾さーーん!!」

 

巧と村上は声のする方向に振り付くと結花がこっちに走ってきていた。それをみて巧は驚く。

 

「テメッ....!なんでここに来んだ!!すっこんでろって言っただろ!!」

 

「乾さん!地面を殴ってください!」

 

「はぁ!?」

 

「いいから早く!」

 

急に現れた結花に巧は怒鳴り散らすが、急に地面を殴れを言われ言われるがままに衝撃を纏った拳で地面を思いっきり殴る。その衝撃で地面はひび割れ陥没し、大量の砂埃が衝撃波で舞い散り、村上の視界を一瞬だけ遮った。するとその瞬間村上の胸に何かが攻撃し、火花を散らす。

 

「ぐっ!?」

 

村上は吹き飛び地面を転がる。そしてすぐに立ち上がったが、巧と結花の姿は何処にもなかった。

 

「出し抜かれましたか....これほどまでの注意力の無さとは、致命的ですね。負けを認めるしかないようだ」

 

村上は追いかけもせずにその場に立ちすくみ負けを認めた。

 

●●●

 

巧と結花はオートバジンでゴールのまだ向かっていた。巧はオートバジンを運転しながら後ろにいる結花に話す。

 

「お前すっこんでろって言ってたのになんで飛び出すんだ。それにオルフェノクに変身して、バレたらお前殺されるところだぞ!」

 

「そこは安心してください。バレなきゃ問題ないんですから。それに乾さんが村上さんに一方的にやられているところを見てられませんでしたし」

 

「一方的じゃねえ!ただ今日は調子悪かっただけだ!」

 

強がる巧に結花は微笑む。因みにさっきの結花の行動はこういう作戦であった。まずは自分が前に出て村上が油断した後、巧が個性で地面を殴り砂埃で視界を遮った直後に結花がオルフェノクに変身し、光の羽で攻撃。怯んだ隙にオートバジンでゴールに向かうという作戦だった。作戦というにはかなり運任せなところはあるが、結果的に成功したのでよしとする。巧と結花はそのままゴールを抜けた。

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