進化する人々   作:奥歯

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この劇場版の主題歌のイメージは事件だッ!です


劇場版 二人の英雄
I・アイランド


人工都市、I・アイランド。世界中のヒーロー関連企業が出資し、個性の研究やサポートアイテムなどの開発などを目的とした都市。

 

『ただ今より、入国審査を開始します』

 

そうアナウンスが流れると巧の全身をスキャンする。何も危険物などを持ち込んでいないことを確認するともう一度アナウンスが流れた。

 

『入国審査が完了しました。現在、I・アイランドでは様々な研究、開発の成果を展示した博覧会、I・EXPOのプレオープン中です。招待状をお持ちであれば、ぜひお立ち寄りください』

 

ゲートが開き、巧はI・アイランドの地を踏み入る。目に入ったのは広大なエキスポ会場。その広大さに少々圧倒されるが、そんな気持ちもすぐに消え失せる。なぜかというと。

 

「いやー、まさか乾さんからお誘いが来るなんて思ってもみませんでしたよ。本当にありがとうございます」

 

「........」

 

それは発目と一緒に来てしまったということだ。前に緑谷に言いくるめられて連れて行くことになったのだが、やっぱり嫌なものは嫌なのだ。巧は大きくため息をつくと、さっさと歩き出した。発目もその後をついていく。因みに緑谷とは別の便に乗ったため、少しばかり心細かった上に、ずっとハイテンションな発目が隣にいるというここに着くまで地獄のようなフライトを味わっていた。

 

「早く行かねぇとな」

 

このI・アイランドは個性を自由に使えるらしく、それによるアトラクションなどもある。警備体制もしっかりしていて犯罪とは無縁の都市らしい。しかし今はそんなものにうつつを抜かしている場合ではない。巧の目的はスマートブレインから言われた、渡したいものを取りに来たのだ。それさえ受け取ればもうここには用はない。後は帰ってしまえばいいだけだ。そうなってくれればどれだけ楽かと考える。隣では発目が興奮気味に周りを見渡している。早く何かに興味を惹かれてどこかに行ってほしいと心から考えていた。早く一人になりたかった。そう思っていると向こうから巧を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「たっくーーん!こっちこっち!」

 

声のする方に振り返ると、そこには大きく手を振っている緑谷と、オールマイトがいた。やっと安心できる相手が現れたと巧はホッとし、走って駆けつけた。

 

「たっくんもついたんだね!」

 

「ああ.....誰だそいつ?」

 

巧は隣にいる金髪の女性の方を向く。巧の質問にオールマイトはその少女の肩に手を置いて紹介した。

 

「紹介しよう!彼女は私の古い友人の娘...」

 

「はじめまして!メリッサシールドです!あなたがあの乾博士の息子さんね!お会いできて光栄よ!よろしく!」

 

「父さんのことを知ってるのか?」

 

「ええ!昔あなたのお父さんの論文を読んだことがあるの。私はあなたのお父さんとお母さんのことを尊敬してるのよ」

 

「そうか....」

 

顔には出ていないが少し嬉しそうな巧に、隣にいた緑谷は微笑ましかった。

 

「あなたのベルトも見せてもらったわ!あのベルトどうやって作ったのかわからないのよ!ベルトの中に見たこともない原子が...!」

 

「ベルト!?あのベルトとは一体何ですか!?」

 

突然後ろから声が聞こえてくる。巧は恐る恐る振り返ると、後ろに発目がいた。驚いた巧はすぐに緑谷の後ろに隠れる。突然現れた発目にメリッサは誰なのか質問する。

 

「あの、あなたは?」

 

「申し遅れました!わたくし!発目明と申します!乾さんの友人です!よろしくお願いします!」

 

「あらそうなの!こちらこそよろしく!」

 

勢いよく手を伸ばしてくる発目にメリッサは喜んで握手を交わした。

 

「ところで!あのベルトとは一体なんなんですか!?」

 

「ああ、あれはね」

 

「メリッサ...」

 

メリッサが発目にベルトについて話そうとするが、オールマイトがそろそろ時間なのか話を遮る。

 

「そうだった!みんなついてきて!発目ちゃんも一緒にくる?」

 

「はい!喜んで!」

 

こうして巧は休暇という休暇を取るのは不可能だと諦めて、肩を落としながらメリッサについていくのであった。

 

●●●

 

メリッサに案内されてたどり着いたのはI・アイランドの中央に聳え立つ高いビル群の中で一際高いセントラルタワーの前に来た。巧は嫌な気分を紛らわせるために音楽を聴き始めた。曲はElvis Costellのwelcome to the warking week、といってもこの曲は2分も満たない曲だったが、曲が終わる頃にはもう目的地に到着していた。メリッサは「パパを驚かせたいからここで待ってて」と言って目の前にある部屋の中に入っていった。その間に発目は巧に話しかけてきた。

 

「乾さん。ベルトって一体なんですか?もしそれを見せてくれるのならば、バイクのことは諦めますよ?どうですか?」

 

「無理だ」

 

突然の交渉にはいと答えるわけがない巧。バイクを渡すのも嫌だが、両親の形見であるベルトを渡すのはもっと嫌に決まっている。その時、扉の向こうからメリッサの合図が出てオールマイトは独特なポーズで扉を開けた。

 

「私がぁああ!再会の感動に震えながら来たぁ!」

 

突然現れたオールマイトにメガネをかけた男性、メリッサの父親であるデヴィットシールドとその助手であるサムは目を見開いた。

 

「トシ....オールマイト...!?」

 

「ほ、本物...!?」

 

「HAHAHA!わざわざ会いに来てやったぜデイヴ!」

 

オールマイトはテンションを上げてデヴィットに駆け寄る。まだ唖然としているデヴィッドは言葉も出ない様子だった。

 

「どう?驚いた?」

 

「あ、ああ....驚いたとも....」

 

デヴィットは驚きながらもオールマイトの再会に少し微笑む。

 

「お互いメリッサに感謝だな。しかし何年ぶりだ?」

 

「やめてくれ、お互い考えたくないだろ。年齢のことは」

 

「HAHAHA!同感だ!」

 

他愛のない会話に二人の仲の良さがひしひしと伝わってくる。

 

「会えて嬉しいよ、デイヴ!」

 

「私もだ、オールマイト」

 

そう言って二人は拳を合わせる。二人のやりとりが一通り終わった後、オールマイトは巧たちにデヴィットを紹介した。

 

「緑谷少年!乾少年!そして発目君!紹介しよう!私の親友デヴィットシールド...」

 

「知ってます!デヴィットシールド博士!ノーベ...」

 

「ノーベル個性賞を受賞した個性研究のトップランナー!オールマイトのアメリカ時代の相棒で...」

 

「オールマイトのヒーローコスチューム"ヤングエイジ" "ブロンズエイジ" "シルバーエイジ"そして"ゴールデンエイジ"!それら全てを制作した天才発明家!」

 

「本物に会えるだなんて乾さんに着いてきてよかった!」

 

「「感激です!」」

 

興奮気味に話す緑谷と発目。息のあった解説にメリッサは微笑み、巧は興味がないのか視線が別の方に向いている。

 

「紹介の必要はないようだね」

 

「あ、すみません!何か...」

 

「いや、構わないよ」

 

咄嗟に緑谷は謝るが、デヴィットは気にしていない様子だった。するとデヴィットは巧の方に振り向く。

 

「乾巧君だったかな?君が啓太郎(けいたろう)真里(まり)の息子だね」

 

「ああ、そうだ」

 

デヴィットは巧に握手をしようと手を出す。巧はポケットに手を突っ込んだままで手を出そうとしなかったが、緑谷に軽く背中を叩かれ、巧はデヴィットと握手を交わした。

 

「会えて嬉しいよ乾君。君のベルト拝見させてもらったよ」

 

そう言ってデヴィットはアタッシュケースを取り出して巧に渡す。巧は中身を見るとちゃんと揃っていた。隣で見ていた発目は初めて見たファイズドライバーを触ろうとするが、巧に手を叩かれてしまう。

 

「そっくりだなその顔、ケイタロウによく似ている。目の色はマリ譲りみたいだけど」

 

「知り合いなのか?父さんと母さんの」

 

「ああそうさ。彼らと出会ったのは君が生まれるずっと前、私がオールマイトの相棒を務める前のことだ。私はこのI・アイランドで彼らに出会ったんだ」

 

デヴィットは少し懐かしむように昔話を始めた。当時、若き天才科学者として名を馳せていたデヴィットは知人の紹介でとある二人の研究者に会って欲しいと言われた。デヴィットは最初、研究が忙しいという理由で断ろうとしたが、知人は2人に会ってくれと熱心に頼み込み、その熱意に負けて会うことにした。

 

「私は最初、若気の至りと言うべきか、若き天才科学者とチヤホヤされて調子に乗っていたんだ。自分が一番優れていると思っていた。けどすぐに違うと気付かされたよ。彼らが研究していた実験資料を見た時、度肝を抜かれた。そしてすぐに確信したんだ。二人は私以上の天才だと、上には上がいるってね」

 

デヴィットは笑顔混じりに少し悔しそうな顔をしながら話す。

 

「彼らと私はすぐに意気投合したよ。二人と一緒にいて飽きなかった。毎日驚きと発見の連続さ.......。二人のことは残念だ。辛かったろう。目の前で両親を失うことは」

 

「昔の話しだ」

 

デヴィットは巧に同情の心を向けるが、巧は気にしていない様子だった。

 

「そういえば、君に渡したいものがあるとスマートブレインから聞いているね?実はまだ完成していなくて、あとは調整をするだけなんだが、それまで待っていてくれ。君の両親が私に託した最後の形見だ。必ず完成させて、君に受け取ってもらいたい」

 

「ああ」

 

「コホ、コホ」

 

「!」

 

小さく咳をするオールマイトにいち早く気づいたデヴィットは巧たちに話す。

 

「オールマイトとは久しぶりの再会だ。すまないが、積もる話をさせてくれないか」

 

「?ああ」

 

「メリッサ、ミドリヤ君とイヌイ君とハツメ君にI・EXPOを案内させなさい」

 

「わかったわ、パパ」

 

「え、いいんですか!?」

 

「未来のヒーローとご一緒できるなんて光栄よ。さ、いきましょう!」

 

巧たちはメリッサに連れられてI・EXPOを案内するために部屋から出ていった。

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