『本日は18時で閉園になります。ご来園ありがとうございました』
色々あって日も暮れてしまい、閉園の時間となったエキスポ内の閉店したカフェの入り口で上鳴と峰田がぐったりと背を合わせて座り込んでいた。
「プレオープンでこの忙しさってことは明日からどうなっちまうんだ一体...」
「やめろ考えたくない!」
頭を抱える上鳴。このエキスポで小遣いを稼ぎ、エキスポ内を見学。できれば女の子とデートだなんて考えていたのだが、そんな考えは甘いと思い知らされるほどの忙しさだった。そんな疲れきった二人に緑谷たちがやってくる。
「峰田君、上鳴君お疲れ様!」
緑谷たちはパビリオンを見にきた後で、爆豪は一人でどこかに行ってしまい、切島はその後を追い、轟と結花はエンデヴァーの代わりに来たので顔を出さなければいけないため先に行ってしまった。
「労働よく頑張ったな!」
そう言って飯田は懐からカードを取り出して二人に渡す。
「なにこれ...?」
「レセプションパーティーへの招待状ですわ」
「パ、パーティー...?」
「俺らに...?」
地獄の労働の果てに疲れ切った峰田と上鳴の前にまさに天国とも言えるご褒美が待っていたことに目を輝かせる。
「メリッサさんが用意してくれたの」
「せめて今日ぐらいはって...」
「余ってたから、よかったら使って」
メリッサが微笑むその姿に峰田と上鳴にはまるで女神のように見えた。二人は顔を見合わせる。
「上鳴ぃ...」
「峰田ぁ...」
「「俺たちの労働は報われたぁ!」」
二人は嬉しさのあまり涙目になりながら抱き合った。
「パーティーには、プロヒーローたちも多数参加すると聞いている!雄英の名に恥じないためにも、正装に着替え団体行動でパーティーに出席しよう!18時30分にセントラルタワーの7番ロビーに集合!時間厳守だ!轟君や爆豪君たちには俺がメールしておく!では解散!」
そう言って飯田はエンジン全開で走り去っていった。
「飯田君フルスロットル!」
「じゃあまた後でね!」
「うん!」
麗日たちの宿泊するホテル前で別れ、緑谷たちもホテルに向かおうとした時、メリッサが緑谷を呼び止める。
「デク君、ちょっと私に付き合ってもらえるかな?」
「え?あ、はい。ごめんたっくん先行ってて」
そういうと、緑谷はメリッサと一緒にどこかに行ってしまった。巧は二人を見送るとさっさと予約したホテルに帰って行った。
●●●
部屋に到着した巧。オートバジンはパーティーに参加できないため、ホテルの駐車場に停めている。巧は手に持っているアタッシュケースをベッドに置くと大きくため息をついた。巧はベッドに座りアタッシュケースを開く。その中にはしっかりとファイズギアが入っている。しばらく眺めていると扉を勢いよく開く音がした。驚いた巧は前を見てまた驚く。
「乾さん先に行かないでくださいよぉ!探すの時間かかったんですから!」
巧は思い出した。今日発目と一緒にきたということを、ということは泊まるホテルも同じということだ。最初は別々の部屋にしようと思ったのだが、どこも部屋が埋まっていて一つしか部屋が開いていなかった。故に今この状況である。
「これメリッサさんが選んでくれた正装ですよ!これあなたのです!」
そう言って発目は巧の正装を渡す。巧は正装を見るなりバスルームに向かった。
「俺は風呂で着替える。お前はここで着替えろ」
流石に一緒の部屋で着替えるのは気が引けるのでお互いが見えない別々の場所で着替えることにした。巧がバスルームの扉を開けると思いの外広く、着替えるのに窮屈さはなかった。しばらくして巧は正装に着替え終わる。サイズもしっかりとあっている。白いズボンと白いジャケットに白いネクタイ、青いシャツとそして白いブーツを履いた全身白ずくめの格好で、巧はこう思った。
「やっぱこれスムーズクリミナルのマイケルジャクソンだよな...」
巧は小さくツッコむ。実は正装を選んでこの服に着替えた時も同じツッコミを入れたのだが、そういうのに疎い3人には全く伝わらなかったのはまた別の話。着崩れがないか確認した後バスルームから出てくると背中のスリッドがものすごく大胆な真っ白いドレスを着た発目がベッドに置いてあったアタッシュケースを勝手に開けてファイズギアを眺めていた。
「おい!勝手に開けんな!返せテメェ!」
巧は無理やり取り上げようと手を伸ばすが、発目はベッドに登り巧は取り損ねてしまった。
「乾さん私は怒っているんです!いいじゃないですか!見せてくださいって言っているのに全然見せてくれないじゃないですか!焦らされるのは嫌いなんです!」
「焦らしてなんかねぇよ!いいから返せ!」
巧もベッドに登るとドライバーを掴み無理やり引っ張ろうとするが、発目は中々離そうとしない。巧は発目の腕を掴み引き剥がす。流石に力負けしてしまう発目引き剥がされた勢いでベッドの上で倒れてしまう。
「二度と触るな!次はマジで吹っ飛ばすからな...!....そろそろ時間だ。ほら行くぞ」
巧は壁にかけられている時計を見ると集合の時間になってきた。巧はベルトをアタッシュケースの中にしまうと、発目の腕を掴み取り敢えず外に出ることにした。
「嫌です!私は後で行きますから乾さんは先に行ってください!」
「無理だ!ほら行くぞ!」
発目は必死に抵抗するが、それでも引きずられながら集合場所まで連れて行かれてしまった。
●●●
発目を引きずりながら集合場所の7番ロビーまできた巧。集合場所にはすでに何人か集まっていた。巧と発目がついた頃には集合の時間内に間に合っていなかった。
「テメェのせいで時間ギリギリ間に合ってねぇじゃねぇか!」
「だから先に行ってくださいって言ったじゃないですか!」
発目が駄々をこねて集合場所への時間にギリギリ間に合わなかったことに巧は怒鳴る。それでもまだ駄々をこねる発目に本当にぶん殴ってやろうかと考えていた。
「まだ来ていない。団体行動を何だと思っているんだ!」
今集合場所にいるのは飯田と轟と、正装ではないウエイター姿の上鳴と峰田だ。愚痴をこぼす飯田にイラつく巧。その直後、緑谷が小走りに集合場所に来た。
「ごめん遅くなって!」
その後すぐに八百万、麗日、耳朗と結花の四人がやって来る。
「ごめん!遅刻しても〜たぁ!」
「申し訳ございません...耳朗さんが...」
「うう...ウチ、こういうカッコは...その、なんとゆーか...」
「ごめんなさい。このチャイナドレス胸の辺りがキツくて...」
大胆に可愛らしいドレスの麗日と大人っぽくセクシーなドレスの八百万、可愛らしいくも上品な耳朗、少し寸法があっていないチャイナドレスの結花、皆様になっていて上鳴と峰田は興奮しっぱなしだった。轟も結花のチャイナドレスに釘付けである。
「すごく似合ってるよ結花」
「ありがとうございます。焦凍さんもすごく似合ってますよ!」
結花に似合っていると褒められて嬉しそうな轟。そんな中で慣れない格好に恥ずかしそうな耳朗に上鳴と峰田はそれぞれ感想を述べる。
「馬子にも衣装ってやつだな!」
「女の殺し屋みてぇ」
褒め言葉になってない上鳴とあまり好みではないような峰田の発言に耳朗は耳たぶで二人に爆音を流し込んだ。
「「ぎゃーー!!」」
「黙れ」
「何だよ!俺褒めたじゃんかぁ!!」
「褒めてない」
なぜ攻撃されたのか理解できていない上鳴。不機嫌な耳朗は近くにいた巧にドレスの感想を求めてきた。
「ねぇ...乾。この格好どうかな...?」
耳朗は巧にドレス姿をまじまじと見つめられ、少し恥ずかしかった。巧は少し考えた後、ゆっくりと答えた。
「......殺し...!」
思わず峰田と同じ感想が出そうになった時、隣にいた緑谷が巧の背中を叩いて止める。首を横に振る緑谷を見て察したのか巧は適当に答えた。
「...まぁ、似合ってんじゃねぇか?」
そういうと、耳朗は少し嬉しそうな顔をする。すると耳朗は巧のスーツ姿を見てあることに気づいた。
「その格好...スムーズクリミナルのマイケルジャクソンみたい」
「同感だ...」
巧がスーツを着替えた時に思ったことを耳朗も同じように思う。その時、自動ドアからメリッサが駆け寄ってきた。
「「ひょーー!!」」
「デク君たちまだここにいたの!?もうパーティー始まってるわよ!」
「真打待ってたぜ!」
メガネを外し、華やかなドレスを着たメリッサに上鳴と峰田は興奮しまくりである。
「やべーよ峰田!俺どーにかなっちまうよどーしよ!」
「どーにでもなれ」
●●●
しばらく待っているが、一向に爆豪と切島が来る気配がなかった。心配になった飯田は電話をかけてみるが繋がらない。
「ダメだ。爆豪君と切島君にもどちらの携帯にも繋がらない」
「ほっときゃいいだろ迷子やろうなんてな」
「いや!委員長としてクラスメイトを放っておくわけにはいかない!」
巧は爆豪と切島のことは放っておこうというが、飯田はそれを否定する。巧はめんどくさくなったのか、壁にもたれかかる。その時、突然I・アイランド全体に警告音が鳴り響いた。
●●●
「おい、本当にこの道で合ってんのか?」
「多分そうだと思うけど...」
「多分だぁ?」
「いやぁ、実は携帯忘れてちゃってさ...」
爆豪と切島は絶賛迷子中だった。爆豪も道がわからないので切島に任せているのだが、その切島自身も道をわかっていなかった。
「ていうか爆豪。本当にいいのかそれ?」
「あ?」
切島は爆豪が手に持っていたものを指さしながらそんなことを言う。爆豪が持っているのはスマートブレインの社章がついたアタッシュケースだった。何故爆豪が巧のアタッシュケースを持っているかというと、実は巧が泊まっていたホテルは爆豪と同じホテルの同じ階だったのだ。爆豪と切島が集合場所に向かう途中で鍵の閉め忘れた半開きの扉を見つけ、気になって覗いて見るとその部屋がまさかの巧の部屋だったということだ。部屋に入った時、爆豪は何を思ったのかそのアタッシュケースを勝手に持ち出して今に至る。
「人のもん勝手に持ち出したらダメだろ?」
「減るもんじゃねぇだろ。借りるだけだ」
身勝手なことばかりする爆豪に切島は呆れながらもあっているのかもわからない廊下を進んでいくのであった。
●●●
警告音が鳴り響いた瞬間、全ての窓にシャッターがおろされ、巧たちは閉じ込められることとなった。
『I・アイランドは現時刻をもって厳重警戒モードに移行します。島内に住んでいる方は自宅または宿泊施設に。遠方からお越しの方は近くの指定避難施設に入り待機してください。なお、今から10分以降の外出者は、警告なく身柄を拘束されます。くれぐれも外出は控えてください。また、主要システムは警備システムによって強制的に封鎖されます』
轟は携帯を確かめるが電波が完全に遮断されてしまい電話をすることができなくなっていた。
「携帯が圏外だ。情報関係が全て遮断されちまったらしい」
「マジかよ...」
完全に閉じ込められたことに絶望してしまう峰田。
「エレベーターも反応がないよ!」
「マジかよおお!?」
耳朗はエレベーターのボタンを押してみるが反応がなかった。そして更に絶望する峰田。この異常事態に発目はメリッサに質問した。
「メリッサさん。爆発物が発見されただけでここまで厳重な警備態勢になるんですか?」
「いいえ、それだけでここまで大ごとにはならないわ。一体どうして...」
爆発物が見つかっただけで厳重な警備態勢になるのはあまりにも不自然だ。巧たちは誰かが仕組んだ罠ではないかと疑い始める。しかし、牢獄タルタロス並みの警備システムを誇るI・アイランドでこうも簡単に爆発物を持ち込めることができるのかと疑問が残る。
「飯田君、パーティー会場に行こう」
「何故だ?」
「会場にはオールマイトが来てるんだ」
「オールマイトが!?」
「なんだ、それなら心配要らねーな!」
オールマイトがいるとわかると安堵する麗日と峰田。実際緑谷も、オールマイトのところに行けばどうにかなるのではないかと考えていた。
「メリッサさん。どうにかパーティー会場には行けませんか?」
「非常階段を使えば会場の近くに行けると思うけど」
幸い非常階段のシャッターは降ろされておらず、ここから会場まで登って行ける筈だ。
「案内お願いします!」
「わかったわ!みんなついてきて!」
皆が非常階段を使おうとした時、巧は緑谷に話しかける。
「出久、なんだか嫌な予感がする」
「うん。僕も感じてる。注意していこう」
「ああ」
巧と緑谷はこの事件に妙な胸騒ぎを感じていた。今はまだ何もないが、これから起こり得る出来事には最大限対処していこうと心掛けなければならないと二人は感じた。