巧と結花がホテルに戻っている間に階段を駆け上がっていく緑谷たち、途中で見かけた監視カメラは発目のハッキングガンで無力化し、敵の目を欺きながら走る。全速力で駆け上がってはいるもののまだまだ先は長い。
「これで30階...」
「メリッサさん最上階は...!?」
流石にA組と違いあまり鍛えていないメリッサと発目はすでに息を切らしている。
「ハァ....!ハァ....!200階よ...!」
「マジか...!」
「そんなに登るのかよ...!」
気が遠くなるほどの階数に峰田と上鳴はゲンナリしてしまう。
「
八百万は弱音を吐く二人を鼓舞しながら階段を登り続ける。そして40、50、60階と登り続け、80階に来たところで緑谷たちは立ち止まってしまう。
「シャッターが!」
ここに来て立ち往生してしまう緑谷たち。轟は個性を使ってこのシャッターを破壊してみようかと尋ねてみる。
「どうする壊すか?」
「そんなことをしたら警備システムが反応して
「ならこっちから行けばいいんじゃねーの?」
峰田が見る方向にはどうやらフロアに向かう非常ドアだった。峰田はその非常ドアのハンドルに手を伸ばす。
「峰田君!」
「ダメ!」
慌てて緑谷とメリッサは峰田を止めようと手を伸ばすが時すでに遅く、峰田はハンドルを回してしまった。
●●●
緑谷が階段を登って行った少し後、巧と結花は非常階段を駆け上がっていた。80階終盤辺りまで来た時、目の前がシャッターで閉じられていたが、すぐ近くに非常ドアが空いているのが見えた。
「非常ドアが空いてる。ていうことはもう向こうにバレている可能性が高いな」
「え!?じゃあどうすれば...」
「バレてんならもう派手に動いてもいいだろ。こっからは一気に行くぞ」
そういうと巧は目の前のシャッターを思いっきり殴り、破壊してしまう。
「よし、行くぞ」
巧と結花は破壊したシャッターを通るとまたしても大量のシャッターが立ち塞がっていた。そんなものは無意味と言わんばかりの勢いで巧は次々と破壊していく。かなり頑丈な作りのシャッターを通り抜けながら突き進んでいる中で結花があることに気がついた。
「待ってください乾さん!」
「なんだ?」
巧が振り向いた先にはエレベーターがあった。それは何の変哲もないものだったが、ある違和感があった。
「エレベーターが動いています」
「電力を稼働させたか...」
巧と結花はこのエレベーターに乗っている者が一体誰なのかすでに見当がついていた。
「
「だろうな、気をつけろ。俺らがいる階に降りるみてぇだぞ」
巧と結花は目の前のエレベーターを警戒する。そしてしばらくしてエレベーターがこの階に停まった。
●●●
少し時間を遡り、緑谷たちは峰田が誤って非常ドアを開けてしまい
「他に行く方法は!?」
「反対側に同じ構造の非常階段があるわ!」
「急ぐぞ!」
飯田が急ごうとしたその時、目の前でシャッターが閉まってしまう。
「シャッターが!」
「後ろもですわ!」
後ろもシャッターが下ろされてしまい完全に閉じ込められそうになったどうすればと緑谷は考えていると、シャッターが閉まろうとしている隔壁の隙間から扉が見える。
「あれ!」
「わかってる!」
轟は隔壁が閉まる前に氷を生成して塞ぐ。
「よし!今なら!」
飯田はエンジンを全開にして隔壁を飛び越え、その先にあった扉を全速力で破壊する。
「くそ...!もう派手にやっても問題ないな...!」
「この中を突っ切ろう!」
飯田に続くように緑谷たちは扉の先に入り込んで行く。その扉の先は何と様々な植物が埋め尽くされるジャングルのような場所に来た。
「こ、ここは...!?」
「植物プラントよ!個性の影響を受けた植物の研究...」
「待って!」
耳朗がこの部屋の中心部に位置する場所に指をさし、緑谷たちは振り返る。
「あれ見て!エレベーターが上がってきてる!」
「
「隠れてやり過ごそう!」
緑谷たちは植物らの影に身を潜める。そんな中、上鳴はエレベーターを見ながら使えないか考えていた。
「あのエレベーター使って最上階まで行けねぇかな?」
「無理よ。エレベーターは認証を受けている人しか操作できないし、シェルター並みに頑丈に作られているから破壊もできない」
「使わせろよ文明の利器...!」
「発目さん。なんとかハッキングは...」
「どうでしょうね。このセントラルタワーのセキュリティーはかなり強固なので私のベイビーちゃんのスペックではハッキングするのは恐らく不可能かと...」
八百万は発目にハッキングガンで何とかエレベーターを使えるかと考えるが流石にコンピューターのスペックに差がありすぎるために発目は不可能だと断言した。そうこうしているうちに、エレベーターがこの階で止まる。エレベーターから出てきたのは細身の男とかなり小柄な男だった。
「あの服装!会場にいた
緑谷の発言で
「ガキはこの中にいるらしい」
「面倒なところに入りやがって...」
「見つけたぞ!クソガキ共!」
「ああ!?今何つったテメェ!」
「「「「「!?」」」」」
その聞き覚えのある声に緑谷は茂みから顔を出す。何とそこにいたのは集合場所に来なかった爆豪と切島がいた。
「お前らここで何をしている?」
「そんなの俺が聞きてぇくらい...」
「ここは俺に任せろ!な!?」
「あのー俺ら道に迷ってしまって...レセプション会場ってどこに行けば....?」
「道に迷ってなんで80階に来るんだよ...?」
道に迷ったせいでここまで来てしまったことに真っ当なツッコミを入れる峰田。そんな最中、緑谷はあることに気がついた。
「かっちゃんが持ってるの、あれファイズギア!?」
「え!?」
麗日たちも爆豪の方を見ると確かにアタッシュケースを右手に持っていた。
「爆豪君があれを持ってるってことは...」
「今イヌイ君手ぶらってこと...?」
爆豪がファイズギア持っているならば今ごろ巧と結花はないことに気がついて慌てて緑谷たちの後を追いかけているに違いない。なぜ爆豪がファイズギアを持っているのかはわからないが、今はそんなことを考えているよりどうやってこの状況を切り抜けるか緑谷は考えていた。切島の方は言い分も当然信じてもらえるわけもなく細身の男の右手の手袋が破れる。
「見え透いた嘘つくんじゃねぇぞ!」
「!?個性を!?」
「切島君!」
緑谷は切島を助けようとして飛び出そうとした瞬間、切島の目の前に巨大な氷が現れ、切島の盾となった。突然現れた氷塊に驚いた切島は尻もちをつく。
「この個性は...!!」
「轟!?」
咄嗟に轟が氷を生成して間一髪で塞いだのだ。しかし、氷塊の向こうでは氷を突き破ろうとする音が響く。
「チッ!俺たちで時間を稼ぐ!上に行く道を探せ!」
轟は地面に手をつくと氷を作り出し、緑谷たちを上に持ち上げる。
「轟君!?」
「君は!?」
「いいから行け!ここを片付けたらすぐに追いかける!」
緑谷たちは轟の言葉に強く頷き先に進んでいった。切島はイマイチ状況が理解できず、轟に説明を求めた。
「みんなをここに...?どういうことだよ轟!」
「放送聞いていないのか?このタワーが
「ええ!?」
「んだと...!?」
「詳しい説明は後だ。今は
そう言っているうちにすでに氷塊には大きな穴が開かれてしまい、そこから細身の男と小柄な男が氷塊から現れる。
「何だあの個性...!」
「油断すんなよ」
「うっせ!わーっとるわ!」
轟と爆豪は戦闘態勢に入り、
「ガキどもが...!つけ上がってんじゃねぇぞおおお!!」
突然小柄な男は雄叫びを上げると体の色が変化し、まるで獣のような姿になる。轟は舌打ちをし、氷を生成し先制攻撃を仕掛けるが、獣の男に軽く破壊されてしまう。獣の男は雄叫びお開けて襲いかかり拳を振り下ろす。轟と切島は咄嗟に左右に避け、爆豪は爆破で宙に飛ぶ。そしてすかさず獣の男の背後を取り、背中に向かって爆破した。
「死ねぇええ!!」
獣の男背中を直接爆破されてしまったためか、かなり痛がっていたが、すぐに着地した爆豪を攻撃を仕掛けた。
「爆豪!」
避けきれない爆豪を切島は咄嗟に突き飛ばし全身を硬化させ防御をとるが、獣の男の力が凄まじく吹き飛ばされ、壁に激突してしまう。
「ガァああ!!」
「切島ぁ!」
「避けろ!」
吹き飛ばされた切島の方に振り向く爆豪に轟は避けるように呼びかける。爆豪は爆破で宙に飛び避けるが、今度は細身の男が飛びかかって来る。こっちも何とか避けるが避けた部分に空間に穴が空いたようになった。轟もすかさず氷を生成し、攻撃するが、細身の男は怯むこともなく右手で氷塊を削り取る。着地した爆豪と轟は背中合わせになるように
「お前ら、ただのガキじゃねぇな?」
「何者だ!?」
「答えるか!
「名乗るほどの者じゃねぇ」
●●●
少し時間を遡り、巧と結花の場面に移る。二人はエレベーターの前で身構え、エレベーターがこの階に停まるのを待っていた。そしてエレベーターが止まった瞬間扉が開く。そこには男が一人。ウォルフラムだった。巧と結花は扉が開いた瞬間に同時に拳をウォルフラムに向かって突き出した。
「!?」
突然の攻撃にウォルフラムは驚くが、何とか自分に向かってくる拳を両手で受け止めてた。
「まさかまだ二人いたとはな...」
「くそっ...!」
「くっ...!」
巧と結花は押し返そうとするが、ウォルフラムはビクともしなかった。
「ガキが...あまり大人を舐めるんじゃない」
そういうとウォルフラムの顔に模様が浮かび上がったかと思えば体が変化していき、灰色の怪物。オルフェノクとなった。その姿は遥か昔の地球に生息していたと言われる海の古代生物。アノマノカリスのような姿をしていた。
「コイツ.....!」
「オルフェノク...!」
巧の予感は的中し、セントラルタワーを占領した
『安心しろ。すぐに楽にしてやる』
オルフェノクの影からウォルフラムの姿が青白く映し出される。だんだんと強く首を絞めるウォルフラム。人間とオルフェノクの力には圧倒的な差がある。振り解くことは不可能だ。しかしこの二人は違う。この二人もまたウォルフラムと同じ存在なのだ。
「結花!」
「はい!」
巧は結花に合図すると顔に模様を浮かび上がらせ、オルフェノクに変化した。
「何っ!?」
ウォルフラムが驚いた隙に二人は渾身の力を込めて振り解く。そして距離をとって構えた。
「まさか貴様らも俺と同じ、選ばれた者か...。どうだ?同じ仲間ならここはひとつ...」
「クソ食らえだ」
「お断りします」
「...まぁそうだろうな」
ウォルフラムは巧と結花が同じアルフェノクとわかると仲間に入れさせようとしたが、食い気味に断られてしまった。そうとなれば答えは一つだ。
「なら...、ここで死ね!」
「行くぞ!」
「はい!」
突っ込んでくるウォルフラムに巧と結花も同時に突っ込む。結花は上に飛び上がり、巧はそのまま突き進んで攻撃する。ウォルフラムは巧の攻撃を受け止めた直後、上から結花が羽を飛ばして攻撃するが、もう片方の腕で全て弾かれてしまう。巧はもう片方の腕で塞がれた腕を振り解き、鉤爪を使って連続で攻撃するが避けられてしまう。結花も上から頭に向かって踵落としを繰り出すがそれも塞がれるが、間髪入れずに巧も衝撃を纏った拳でウォルフラムの胸を殴った。ウォルフラムは吹き飛ばされるが何とか足で踏ん張り勢いを殺す。
「チッ、痛ぇなクソ...!」
相当効いていたのか、胸を抑えるウォルフラム。その隙に結花は突撃し手刀で攻撃し、ウォルフラムも避け続けるが、最後の攻撃が腹に直撃する。その直後上から巧が鉤爪を使って切り裂こうとし結花が手刀で突こうとした瞬間、ウォルフラムの目の前に黒い何かが現れた。それはシャッター金属片だった。ウォルフラムを巧の視界から一瞬だけ消える。しかしこのまま攻撃を止めるわけにはいかず、巧と結花はそのまま拳を突き出した。そして金属片は簡単に砕けてしまう。その金属片の視界の先にはウォルフラムがおらず、どこにいるのかと辺りを見渡そうとした瞬間、下に屈んでいたウォルフラムに気付かず巧と結花は首を掴まれ地面に叩きつけられた。
「ぐあ....!」
「あぐ...!」
「よそ見をするとは何ともマヌケだな!」
ウォルフラムは巧の首を掴み持ち上げると結花の腹を踏みつける。苦しそうにもがく結花だが、力が強いため、中々振り解けない。そしてウォルフラムは結花の腹を蹴り飛ばした。
「キャァアア!」
蹴り飛ばされた結花は壁を突き破ってどこに行ってしまった。
「分かり合えると思ってたんだがな。だがまだ最後のチャンスがあるぞ?」
「クソ野郎....!」
巧はウォルフラムに苦し紛れの暴言を吐く。最後のチャンスを拒否されたウォルフラムは拳に力を込めると拳が青い炎に包まれた。そして巧の腹に顔面に向かって全力で殴り飛ばした。
「フンッ!!」
「ぐぁあああああああああ!!」
吹き飛ばされた巧は壁を何層も突き破り、最終的にタワーの外にまで放り出されてしまった。
「乾さん!」
何とか壁から這い出てきた結花はウォルフラムを無視し吹き飛ばされた巧を助けに行った。一人残ったウォルフラムは人間の姿に戻る。
「じゃあな。残りの人生を楽しめ」