マンダレイたちが交戦している場所を避けながら爆豪を中心にして周りで囲い、施設まで向かっていた緑谷たち。その間に轟は緑谷にだけ聞こえるように話した。
「緑谷。お前に話しておきたいことがあるんだ、後で乾の野郎にも話すんだが...」
「どうしたの?」
「乾の持ってるファイズのベルトと似たようなもんが2つあった」
「え!?ファイズギアと同じものが2つも!?」
「ああ、名前はカイザとデルタ。俺と爆豪の目の前に突然現れてな、戦ったが、全く歯が立たなかった。かなり不味くねぇか?オルフェノクを圧倒しちまう程の強さを持つファイズが
「まさか...そんな...」
緑谷は間近でファイズの力を見てきたからわかる。人間なんて軽く一捻りで殺せてしまうオルフェノクをいとも簡単に倒せてしまうファイズの力が2つも、それも
「後、これは俺なりの考察なんだが、USJと保須でオルフェノクが現れた時、あいつら、執拗に乾のベルトを狙っていたよな」
「そう言えば...」
「実はI・アイランドに行った時、乾にしか変身できないと思っていたファイズを爆豪が変身したんだ」
「かっちゃんが!?なんで...!?」
「俺も驚いたさ。なんで爆豪が変身できたのかってな。俺はあのカイザとデルタを見て気付いたんだ。ファイズは乾だけが変身できるんじゃなくてオルフェノクだけが変身できんじゃねぇのかってな」
「そうか...!それなら上鳴君が変身できなかったのも、あのオルフェノクたちがベルトを狙ってきたことにも説明がつく...!」
緑谷は何故オルフェノクたちが巧のベルトを狙って来ているのか、何故上鳴が変身出来なかったのか今まで記憶の片隅に残っていた疑問の全てが晴れる。しかしそれと同時に不安が頭を過ぎる。
「待って...!それじゃあたっくんも狙われてるってことじゃ...!」
「ああ、かもな」
「早く助けに行かないと!」
「待て緑谷!今行っても仕方ねぇ」
焦り出す緑谷に轟は止める。それもそうだ、助けに行こうと言っても今巧はどこにいるかわからない。それよりも今は爆豪の護衛をするのが最優先事項だ。
「あいつなら心配いらねぇだろ。狙われてると言ってもそう簡単にやられるようなタマじゃねぇ。今は爆豪を護衛することだけを考えろ」
「う、うん...」
緑谷は轟に止められて巧を助ける事をやめる。しかし緑谷は膨れ上がる不安を拭うことが出来なかった。そうしているうちに障子の索敵が気配を感じとる。
「誰かいるぞ...、2人...いや、3人だ」
緑谷たちは姿勢を低くし警戒する。そして障子は茂みから顔を出すとそこにはトガとその上に跨っている麗日がいた。
「麗日!?」
「障子ちゃん!みんな...!」
麗日とは別に一緒に行動していた蛙水が髪をナイフで磔にして動けなくなっていた。トガは障子の存在に気づくと麗日を払いのけ飛び上がる。
「あ!しま...!」
「1、2...3人....。人が増えたので、殺されるのは嫌だからバイバイ」
「待っ....!」
「お茶子ちゃん危ないわ!どんな個性を持っているかもわからないわ!」
蛙水はナイフを外してトガを追いかけようとする麗日を止める。止められた麗日はトガを追いかけるのをやめ、一旦落ち着く。
「なんだあの女...」
「あの子、かなりクレイジーよ...」
「麗日さん怪我を....!」
緑谷は麗日の足から血が垂れているのに気づく。麗日は足を動かしてみるが、どうやら軽傷なようだ。
「大丈夫...全然歩けるし」
「取り敢えず無事で良かった...。そうだ!一緒に護衛に来て!僕ら今からかっちゃんを護衛しつつ施設に向かってるんだ!」
緑谷は麗日と蛙水に爆豪の護衛を手伝って貰うよう呼びかける。しかし麗日と蛙水は不思議そうな顔をしていた。
「ん?」
「爆豪ちゃんの護衛?その爆豪ちゃんはどこにいるの?」
「え?」
爆豪がいない。そう言われた緑谷は後ろを振り向く、今緑谷の視界の中には轟と結花と障子、そして気絶している円場の4人だった。緑谷はその瞬間顔が青ざめる。確かにさっきまで居たはずの爆豪と常闇が影も形もないのだ。
「悪いね。俺のマジックで貰っちゃったよ」
「「「「「!!」」」」」
突然上の方から声が聞こえ、声のする方に視線を向けると木の上にシルクハットを被りトレンチコートを見に纏った仮面の男がいた。この
「こいつぁ
「返せ!!」
「返せ?妙な話だぜ。爆豪君は誰のモノでもねぇ。彼は彼自身のモノだぞ!!このエゴイストめ!!」
「返せよ!!」
「どけ!!」
緑谷が怒りの声を上げるとその直後、轟が前に出てきて氷塊でコンプレスを捉えようとするがコンプレスは華麗な動きで避け、近くの木に片足で着地する。
「我々はただ凝り固まった価値観に対し、『それだけじゃないよ』と道を示したいだけだ。今の子らは価値観に道を選ばされている」
コンプレスは時間稼ぎのためか自論を語っている。
「爆豪だけじゃない!常闇もいないぞ!」
「元々エンターテイナーでね。悪い癖さ。常闇くんはアドリブで貰ったんだよ。敵味方問わず全てを破壊し尽くしてしまいそうなほどの凶暴性。彼も良いと判断した!」
「この野郎!貰うなよ!」
「緑谷落ち着け!」
「返してもらうぞ!」
轟はもう一度コンプレスに向かって先ほどよりも大きな氷塊で捕らえようとするが、まるですり抜けるように姿を消した。
「悪いねぇ俺ぁ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ!ヒーロー候補生なんかと戦ってられるか!」
コンプレスは木々の上を飛び跳ねて移動しある程度の場所まで離れると右耳に手を当てて通信機を起動させる。
「開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!予定通り、この通信後5分以内に回収地点へ向かえ!」
コンプレスの発信に従いそれぞれ
「ダメだ...!」
「幕引き...だと!?させねぇ!!絶対に逃すな!!」
轟は声をあげて皆、姿を消したコンプレスの後を追うのであった。
●●●
コンプレスが回収地点に向おうとしている最中、突然上から何かが激突してきた。コンプレスはその落下物の下敷きになり地面に激突してしまう。それは障子と彼に抱えられた緑谷と轟だった。
「やった!作戦成功!」
この三人は麗日と蛙水と結花の三人によってここまで飛んできたのだ。しかし着地した場所が丁度
(そんな...!たっくんも...!)
爆豪と常闇だけでなく、巧までも
「知ってるぜこのガキども!誰だ!?」
「Mr. 避けろ」
荼毘は緑谷たちに向かって青い炎を放ち、すかさず轟が氷塊で防ぐ。その直後後ろから追いついてきた結花が轟の氷塊を踏み台にして飛び上がり上から荼毘に拳を放つ。
「はぁ!」
「ぬおっ!?」
荼毘はすぐに反応して避けるが顔を掠める。そして結花の方を見ると少し驚いたような顔をしてジッと結花の顔を見ていた。するとカイザに変身していた緑川がカイザブレイガンで結花を撃とうとした時荼毘がそれを止める。
「この女!」
「やめろ緑川!あいつは狙わなくていい」
「はぁ?」
何故か止められた緑川は荼毘に睨みつけられ、仕方なく攻撃するのをやめる。その直後、後ろから腕が六本生えた脳無がドリルやチェーンソーなどを装備して結花に向かって襲いかかってきた。
「しまった!結花!」
「狙うなって言ってんだろ!!」
轟が結花を助けようとした時、一体どう言うつもりなのか、荼毘の指先が伸び、脳無の胸を貫く。そして脳無は灰となって崩れた。轟は結花に駆け寄り、怪我がないか安否を確認する。
「よかった結花...!あの男、オルフェノクか...なんで結花を助けたんだ...?」
轟は荼毘の方見るが荼毘は轟の方ではなく結花の方をずっと見ていた。すると緑川が荼毘の胸ぐらを掴む。
「おいテメェ。一体どう言うつもりだ?」
「脳無の変えぐらいいくらでもいんだろ」
「真面目にやれよお前...!」
「偉そうに指図すんなよ...」
胸ぐらを掴まれた荼毘は緑川を睨みつける。その直後黒いモヤが現れ、その黒い霧から黒霧が現れる。
「合図から5分経ちました。行きますよ荼毘、緑川」
「チッ!」
黒いモヤに
「そんじゃ、お後がよろしいようで」
コンプレスも黒いモヤを通ろうとした直後、茂みの奥からレーザー光線が放たれ、コンプレスの顔を掠める。突然の思わぬ攻撃にコンプレスはビー玉を落としてしまう。それをチャンスと見た轟と障子はビー玉を取ろうとする。障子は一つ取ることができたが、轟はあと一歩で届きそうなところを荼毘がそのビー玉を拾う。
「哀しいなぁ。轟焦凍」
そう言って荼毘は黒いモヤの中に入る。
「おい大丈夫か?」
「あ、ああ」
巧を担いだ赤井は尻餅をついているコンプレスに手を貸す。コンプレスを立たせた直後、赤井は緑谷達の方に振り向く。
「それじゃコンプレスに変わって、お後がよろしいようでこれにてお終い。お友達は連れて行くぜ」
赤井もコンプレスと一緒に黒いモヤの中に入った。
「確認だ。解除しろ」
荼毘に言われてコンプレスは爆豪と常闇を元の姿に戻す。
「かっちゃん!たっくん!」
緑谷は諦めまいと手を伸ばすが、爆豪はそんな緑谷を睨みつける。
「来んな。デク」
最後にそう言って爆豪は巧と一緒に黒いモヤの中に消えていった。こうして楽しい合宿となるはずだった林間合宿は最悪の結末として幕を閉じた。