進化する人々   作:奥歯

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新しい作品を投稿します。前の作品もちゃんと並列して投稿していくのでよろしくお願いします。苦手な方はブラウザバックして下さい。


プロローグ
進化 


中国で光り輝く赤子が産まれたのが始まりだった。そこから爆発的になんらかの力を持った人間たちが次々と誕生し、今では総人口の約8割を占めている。人々はそれらを"個性"と呼んだ。今ではその力はなくてはならない存在になり、社会を大きく発展させることとなった。しかしその中には"個性"とは全く別の力が密かに存在している。

 

●●●

 

子供というのは夢や希望に溢れているものだ。どんな事にも興味が湧き見て、触れ、そして知る。そんな風に成長して社会の現実を知るというのが普通ではあるが中には例外もいる。若干四歳にしてこの世の理不尽という現実を知ってしまった少年がいた。その少年の名は緑谷(みどりや)出久(いずく)、彼は無個性と診断された。それを知らされた緑谷の夢や希望は残酷にも一気に崩れ去ってしまった。それからというもの緑谷は無個性という理由で散々周りからいじめられてきた。その中で一人の少年は特に緑谷をいじめていた。彼の名前は爆豪(ばくごう)勝己(かつき)。緑谷の幼馴染みである。

 

「や、やめてよかっちゃん!」

 

「ウルセェ!!ムコセーのくせにナマイキなんだよデク!!」

 

緑谷はまだ幼いにもかかわらず、もう既に人生に絶望していた。無個性というのはこの個性社会において周りから蔑まれる対象である。個性がないということは何か空を飛んだりだとか、手のひらから何かを出したりだとか、そんなことは一切出来ない存在だ。そんな彼はこれからずっとこんな惨めな人生をおくっていくのかと考えると涙が出てしまう。そんな緑谷はいつものように爆豪とその取り巻きにいじめられていると鋭い目つきをした少年が緑谷の前に立った。

 

「おい、おまえらひとりあいてによってたかって、はずかしくねえのか?」

 

「あ?なんだおまえ?ヒーローのつもりか?ショウブならうけてたつぜ!」

 

そういうと爆豪の手のひらが爆発する。これが爆豪の個性"爆破"である。手からニトロのような汗が出てそれが爆発するという仕組みだ。世間一般ではそういう個性を"ヒーロー向きの個性"や"強個性"と呼ぶ。対して少年は握り拳を作る。すると手が歪んで見えた。彼の個性は一体どう言った個性なのかはわからない。だが見るからにすごい個性だということがわかる。今まさにお互いの個性を交えた喧嘩が始まろうとしていた。

 

「おい君たち!そこで何をやってるんだ!個性の使用は禁止されてるんだぞ!」

 

「「げっ!」」

 

しかしそれは起こることはなかった。近くを通りかかったお巡りが彼らを注意しに来た。取り巻きたちはさっさと逃げ出し爆豪と少年も逃げ出そうとするが、追いつかれてしまいお巡りに交番に連れ去られていった。

 

「はなせ!さきにケンカうってきたこいつがワルいんだ!オレはなんもしてねぇ!」

 

「はぁ!?おまえあいつをいじめてたじゃねぇか!オレはそれをとめにきただけだ!ワルいのはおまえだクソヤロー!」

 

「んだと〜〜〜!!」

 

爆豪と少年は連れ去られていく最中でも言い合いをして、交番に連れ去られていった。その姿を緑谷は遠くで唖然としながら見つめていた。

 

●●●

 

一人取り残された緑谷は家に帰っていた。さっき自分を助けてくれた少年は誰だったのだろうか、近所にはあまり見かけたことのない子だった。幼稚園にもいなかった筈だ。一体誰だったのだろうか、もしかして最近引っ越してきた子か?そんなことを考えているうちに緑谷は家に着いた。

 

「ただいま...」

 

「おかえり出久.....!どうしたのその怪我!?」

 

「だいじょうぶ...。ちょっところんだだけだから...」

 

「早く上がりなさい。絆創膏貼ってあげるから、ちょっと待ってて」

 

緑谷を迎えてくれたのは緑谷の母、緑谷引子(いんこ)である。緑谷は家に上がり引子に絆創膏を貼ってもらう。

 

「これで大丈夫ね。次ちゃんと転ばないように気をつけて帰ってくるのよ」

 

「うん」

 

すると突然電話が鳴り始めた。引子は電話の方に振り返り手をかざす。すると電話の受話器が突然浮き出し引子の手に置かれる。これは引子の個性であり、ものを引き寄せるという個性だ。引子は受話器を耳にあてる。

 

「はい、緑谷です。はい、はい........、ええ!?わかりました!!すぐに行きます!出久、お母さんちょっと用事ができたからお留守番しといてね」

 

「わかった」

 

引子は2回ほど相槌を打つと急に驚き、緑谷に留守番を頼んで家を飛び出した。一人取り残された緑谷はさっき自分を助けてくれた少年のことを考えていた。

 

(だれだったんだろうさっきのこ.....)

 

暫くして家の鍵が開く音がした。緑谷は引子が帰ってきたと思い玄関まで向かう。玄関が開くと案の定そこには引子が立っていた。

 

「おかえり」

 

「ただいま。出久あなたに紹介したい子がいるの。さぁほら、挨拶するのよ」

 

引子が後ろの方に声をかけると引子の後ろからさっき公園で助けてくれた目つきの鋭い少年が立っていた。

 

「あ!キミは!」

 

「あら、もう二人とも会ってたの?この子から名前聞いた?」

 

「ううん、まだ」

 

「そう、ほら自己紹介しなさい」

 

引子に自己紹介をするように言われたが、少年は鋭い目つきのままで黙りを決め込んでいる。

 

「もう、じゃあ私が紹介するわね。この子は(いぬい)(たくみ)君。ちょっと前にこの子のお父さんとお母さんが火事で死んじゃってね。他に預かってくれる親戚が居なかったのよ。でもちょうどこの子のお父さんとお母さんがお父さんのお友達だったから私が引き取りに来たのよ」

 

引子から自己紹介してもらった乾巧という少年はずっと黙ったままだった。そんな巧に緑谷も自己紹介をする。

 

「はじめまして乾くん!ボクは緑谷出久!これからよろしくね!」

 

そう言って緑谷は手を差し出す。巧は緑谷の差し出した手を見つめるとポケットに手を突っ込みさっさと家の中に上がった。

 

「あ!ちょっと巧君!ごめんね出久。あの子まだ立ち直れていないみたいだからこれから仲良くなれるように頑張ってくれない?」

 

「うん。がんばってみるよ」

 

ここから二人の出会いが始まった。ひ弱ないじめられっ子の緑谷出久と無愛想な乾巧の同棲生活が始まる。

 

●●●

 

「みんな集まってー!今日から新しいお友達が来たから紹介するわ。さぁ入ってきて」

 

幼稚園の先生は手招きをする。周りの園児たちはどんな子が来るのだろうとワクワクしていた。するとそこに入ってきたのは緑谷の家に最近越してきた乾巧であった。

 

「ほら、自己紹介して」

 

「..........乾巧。よろしく」

 

「あいつは........!」

 

ここの幼稚園の園児であった爆豪は巧の顔を見てあの時のやつだと思い出した。自己紹介を終えた巧は爆豪の横を通る。その時に爆豪は巧を強く睨みつける。それに気づいた巧は同じように爆豪を睨みつけた。バチバチと火花が散りそうなほどお互いを睨みつける巧と爆豪を先生は止めに入った。

 

「こらこら勝己君。この子に意地悪しちゃダメでしょ。仲良くしなさい」

 

先生に注意され、巧は爆豪から離れるがまだお互いを睨みつけていた。これがガキ大将の爆豪勝己との長い因縁の始まりなのであった。

 

●●●

 

時は流れ、乾巧は折寺中学校の三年生である。巧はいつものように緑谷と一緒に学校に向かうために通学していた。

 

「ねぇ、たっくん!今日のニュースすごかったね新しいヒーロー!」

 

「ああ、確かマウンテンレディだっけ?」

 

巧の隣にいるのは同じく折寺中学校の三年生になった緑谷出久である。巧と緑谷は最初の頃は殆ど話もしてこなかったが、10年も一緒に暮らしてきて互いに打ち解け合い、今では緑谷は巧のことを"たっくん"と呼ぶようになった。

 

「Mt.レディだね。それにしても彼女の個性はすごいなぁ"巨大化"か。今後もすごい活躍していきそうな個性だよね!けどその個性で起こる街の被害を考えると活動が制限されていくと思うからいかに被害を出さずにブツブツ......」

 

緑谷は個性の分析能力がずば抜けていて、このようにスイッチが入るとブツブツと個性を分析してしまいなかなか止まらなくなる。巧はスイッチの入った緑谷を見て呆れてため息をつく。そうしてるうちに校門前まできた。周りには様々な人たちがいて見るからに人間には見えないものもいるが彼らも立派な個性を持った人間である。

 

「乾先輩!おはようございます!」

 

「巧君おはよう!」

 

巧は後ろからやってくる他の女子生徒たちに挨拶されたが、巧は挨拶を返さない。巧は無愛想な性格のため基本的に無視をしてしまう。そんな巧に隣にいた緑谷はジト目で見つめていた。

 

「..............」

 

「なんだよ」

 

「相変わらずモテモテだねたっくん」

 

緑谷の言うように巧は女子たちにモテていた。理由としてはスタイルが良く、おまけにイケメンであるため女子たちの注目の的である。そんな巧に嫉妬する男子も多いため、違う意味で男子たちの注目の的である。教室に着いた巧と緑谷は朝のHRの時間まで他愛もない話をしていた。学校のチャイムが鳴り先生が教卓に着く。

 

「全員席についたな。え〜お前らも三年ということで、そろそろ本格的に将来について考える時期だ!今から進路希望の紙を配るがみんな!.........やっぱりヒーロー科志望だよねー」

 

「「「「「はーーーーい!」」」」」

 

「せんせぇーーーー!みんなとか一緒方にすんなよ!!俺は"没個性"共と仲良く底辺なんざいかねーーよ!!」

 

俺以外は全て雑魚と言わんばかりのでかい態度の三年生になった爆豪勝己、チンピラみたいな見た目をしているがこう見えて成績は常にトップを行き才能もずば抜けているいわば"才能マン"というやつである。爆豪は昔から巧に対してライバル視しており、事あるごとに勝負をふっかけてきた。しかし爆豪は一度も巧に勝ったことはない。巧は爆豪と同じで才能も成績もずば抜けていたからだ。そのためお互い勝ったことがない。喧嘩の時も実力がほぼ同じでいつも引き分けになるしテストの点数もほとんど同じであった。唯一爆豪が巧に勝っているものがあるとすれば、一番に対する執着心ではあるがそれだけである。巧の方も爆豪に勝っているものがあるとすれば身長か少し爆豪より高いぐらいである。

 

「あ、そういえば爆豪と緑谷の二人は雄英(ゆうえい)志望だったな」

 

先生の発言に、辺りはしんと静まり返った。それもそのはず、彼こと緑谷出久は無個性なのである。殆どのヒーローは大体何かしらの個性を持っているはずなのだ。無個性でヒーローをやっているものはほぼ居ないと言っていい。勿論教室の中でクスクスと笑うものが現れる。巧は笑っているやつを睨みつけ黙らせた。

 

「おいおい!没個性どころか無個性のデクがぁ〜!なんで俺と同じ土俵に立ってんだ〜〜!」

 

爆豪はいつも緑谷のことをデクと呼んでいた。出久という文字そう読んでいるらしい。彼はここ10年もの間緑谷のことをデクと呼び続けている。

 

「お!そういえば巧〜お前も雄英に行く気はねぇのか?もしかしてビビってんのか?」

 

爆豪は巧を煽るように質問する。

 

「お前みたいなクソ雑魚自己中野郎と同じ高校に行かなくて済むから行かねぇ」

 

「なんだとテメェ!!誰がクソ雑魚だ!!」

 

「お前だよ!!クソ雑魚!!」

 

今でも巧と爆豪はこんな風にお互いに喧嘩を売ってボロボロになるまで続けるのだ。これは日常茶飯事ではあるので周りは慣れているのだが、危なっかしいので先生がいつも止めている。

 

「おい二人共!朝から喧嘩やめろ全く!もしやめなかったら成績に響くぞ!」

 

「チッ!」

 

「ケッ!」

 

●●●

 

放課後授業も終わり、特に学校でするもないので巧はさっさと緑谷と一緒に帰っていた。帰宅途中、緑谷はあるノートを取り出した。それは緑谷がいつも持ち歩いているヒーローノートである。そのノートにはびっしりとヒーローについての分析が書かれており、緑谷の大切なものだ。しかしそのノートは何かに燃やされた後があった。

 

「勝己の奴がやったのか?」

 

「.........うん。でも大丈夫だから」

 

「.........そうか」

 

緑谷は大丈夫と入っているが見るからに大丈夫そうじゃない。巧は後で爆豪をぶちのめしてやろうと決めた。そう思っていると緑谷が話しかけてくる。

 

「たっくん。たっくんはどうしてヒーロー科を目指さないの?そんな立派な個性を持ってるのに」

 

「それは.......」

 

巧が出久の質問に答えようとしたその時、突然マンホールからヘドロのようなものが飛び出し、緑谷に絡みついた。

 

「出久!」

 

「〜〜〜〜!!」

 

「大丈〜夫、体を乗っ取るだけさ、すぐに楽になる。ふへへMサイズの隠れ蓑だ〜」

 

このままではヤバいと思った巧はすぐに緑谷を助けるために走り出し個性を使う。すると巧の手が歪んでるように見えた。巧はヘドロヴィランに向かって拳を突き出す。拳はヘドロヴィランの中心に当たるとヘドロヴィランの体に大きな風穴が開いた。

 

「うげ〜〜〜〜〜!!」

 

ヘドロヴィランの体に穴が空いたと同時に緑谷は外に飛び出され、巧はすぐにキャッチした。今のが巧の個性"衝撃"である。手から衝撃を纏うという個性。衝撃を纏った拳はたとえ痛くない程度の勢いで殴ったとしてもヘビー級のプロボクサーのパンチほどの衝撃を繰り出すことができるのである。

 

「おい出久!大丈夫か!?」

 

「ゲホッゲホッ大丈夫......!」

 

「くそ〜〜せっかくいい隠れ蓑を見つけたのに邪魔するんじゃね〜〜〜〜〜!!」

 

ヘドロヴィランは相当怒っているようだ。巧は出久を守るために前に立つ。このヴィランをどうやって倒すか、あの力は使えない、巧は必死に考える。すると突然上から大男が拳を振り上げ落下してきた。

 

TEXAS SMASH!

 

「ギィヤアアアアアアアアアア!!!」

 

大男が拳を振り下げた時、全てを吹き飛ばしそうなほどの衝撃がヘドロヴィランを襲った。その衝撃で砂埃が舞い、あたり全体を包み込み、何も見えなくなってしまう。そして砂埃が晴れると、衝撃で吹き飛ばした大男はヘドロヴィランをペットボトルにつめる。

 

「もう大丈夫!!なぜって!?私が来たッ!!」

 

「オッオオオッオォオールマイトオオオオオ!?」

 

緑谷はまさかの人物にものすごく驚いていた。それもそのはず、何故なら彼こそがNo.1ヒーローのオールマイトであるからだ。ヒーローに全く興味がない巧でも知っている程の有名人だ。

 

「HAHAHA!!もう大丈夫だ少年たち!!怪我はないかな!?」

 

「ああ、大したことはねぇ」

 

「それはよかった!それじゃ私はこいつを警察に届けに行くからそれじゃあな!またどこかで会おう!」

 

「あっちょっと!!」

 

オールマイトは足に力を込めて勢いよく飛び立った。その時に起きた風圧で砂埃が起こり巧は砂が目に入らないように腕で覆い隠す。砂埃が晴れ、巧は凄い奴にあったなと思い、さっきみたいにまたヴィランに襲われないようさっさと帰ろうとする。

 

「?」

 

しかしどこか違和感があった。隣を見てみるとさっきまでいたはずの緑谷がいなくなっていた。

 

「どこに行きやがった!?まさかあいつ!!」

 

巧は緑谷がどこに行ったのか察して個性を使いオールマイトの後を追った。巧は衝撃でビルの上を飛び周り、どこに行ったのか辺りを探し回る。暫くして緑谷を見つけすぐそばで着地する。

 

「出久お前何して.......?」

 

オールマイトの足にしがみつくというとんでもないことをした緑谷を叱ろうとしたが、身の前にいる痩せ細った金髪の男を見てそれどころではなくなった。

 

「........お前誰だ?」

 

「た、たっくんこの人は.......」

 

巧は見た目と状況的に確証はないが誰なのか検討がつく。

 

「まさか、オールマイトか?」

 

「「え!?」」

 

「な、なぜわかっ.....!?」

 

痩せ細った男は自分がオールマイトだということをなぜわかったんだと聞きそうになり、思わず口が滑る。

 

「確証はなかったんだが、まさか本当だったとはな」

 

正体がまたバレたせいでオールマイトはため息をつき本当の話をする。

 

「そうさ、私がオールマイトだ。私の正体がこんな弱々しい男であることに失望したかな?」

 

「いや、秘密ぐらい誰にでもあるからな、別に失望はしてない。帰るぞ出久。もうさっきみたいな馬鹿な真似すんな」

 

「.........うん」

 

余計な詮索はしないことにした巧はさっさと緑谷を連れて帰ることにした。幸い、知らない場所ではなかったため、少し遠いが帰れない距離ではなかった。その帰路、巧はやけにテンションが低い緑谷にどうしたのかと質問する。

 

「出久、どうかしたのか?」

 

緑谷は少し黙り、ため息をついてさっきオールマイトと何を話していたのかを話した。

 

「僕、オールマイトに聞いたんだ。無個性でもヒーローになれるのかって、オールマイトは言ったんだ、個性がなくてもヒーローになれるとは言えないって........!もう僕っ......!ヒーローになれないのかなっ......!」

 

今にも泣きだしそうな緑谷に巧は黙って聞いていた。緑谷はずっとヒーローになることを夢見てきた。しかし出久の1番憧れるヒーローに個性がないとヒーローになれないと言われ、今度こそ夢を諦めかけてしまった。

 

「ねぇたっくん、どうして君はヒーローになる気がないの?」

 

妬みからなのか単なる疑問からなのか、緑谷は巧みにあの時と同じ質問をした。巧は絶望している緑谷の顔を見ながらゆっくりと理由を話した。

 

「.......俺には夢がないんだよ」

 

「.........え?」

 

「今まで大きな夢を持ってこなかったんだ。俺はヒーローには向いてるとは思わねぇし、出久ほど熱意があるわけでもない。俺には何にもないんだ。けどお前は違う、お前にはヒーローになるって言うでかい夢があるじゃねぇか。散々ヒーローになれないって言われ続けてたのに諦めなかっただろ。ここで諦めるのはお前らしくねぇ、俺はお前ほど夢に全力なやつは見たことがない」

 

「たっくん......」

 

巧は緑谷にヒーローになることを諦めさせないために自分がヒーローにならない理由を語った。それを聞いた緑谷の顔が少し晴れた。

 

「ありがとうたっくん。僕、もう一度ヒーローを目指してみるよ!」

 

気力を取り戻した緑谷を見て巧はフッと笑った気がした。突然周りが騒がしくなってきた。一体何事かと巧と緑谷は騒ぎの中心に向かう。するとそこにいたのはさっきオールマイトが捕まえたはずのヘドロヴィランがいた。

 

「あいつなんで........っ!?」

 

「僕の...........せい............!」

 

緑谷は何か思い当たる節があるのかかなり焦っている。周りにはプロヒーローがいるが中々突撃できない様子。どうやら中学生が人質になっているようだ。巧と緑谷はさっきのヘドロヴィランがいる近くに行く。なんとヘドロヴィランの人質になっていたのが爆豪であった。ヘドロヴィランは爆豪を取り込んでいるからなのか爆破を使っている。そのせいで周りに火が立ち込めて、迂闊に近づけないのだ。それを見た瞬間緑谷はヘドロヴィランに向かって走り出す。それを見ていたヒーローが緑谷を呼び止めようとする。

 

「おい!そこの君止まれ!危ないぞ!」

 

緑谷はヒーローの呼び止めに応じず爆豪を助けるために走る。巧も少し遅れて緑谷の後を追った。巧も止められたがそんな言葉は聞き入れない。ヘドロヴィランがいるところまで来た緑谷はなんとかしようと考える、そうしてる間にヘドロヴィランは取り込んだ爆豪の個性を使おうとするが緑谷の咄嗟の判断で自分の鞄を投げつける。流動体の相手には効果はないが、運良く顔に当たり怯ませることができた。その隙に爆豪を助け出す。

 

「かっちゃん!」

 

「ゲホっ!デク!なんでテメェ!?」

 

「君が助けを求める顔してた」

 

「!?」

 

緑谷は何故助けに来たんだと質問する爆豪に笑顔で答えた。今にも腰が抜けそうなほど怖いと感じるが、それでも押し殺して笑顔で応える。それがヒーローなのだと思っているからだ。それを見ていた遠くで見ていたオールマイトがなにかを感じ取り、今の自分じゃ足手まといにになってしまう無力感に自分が情けなく感じた。

 

(くそっ!どうして力が入らない!!情けない!情けない!!)

 

「クソオオ!あともう少しなのに邪魔すんなぁ!」

 

怒ったヘドロヴィランは攻撃を繰り出す。緑谷は咄嗟に爆豪を突き飛ばしヘドロヴィランの攻撃をモロにくらってしまい、吹き飛ばされてしまう。

 

「デク!!」

 

やっと屋上に辿り着いた巧はすぐに吹き飛ばされた緑谷のところに駆け寄る。

 

「おい!しっかりしろ出久!」

 

巧は緑谷を抱き上げ安否を確認するが抱き上げた瞬間緑谷の背中が濡れているように感じた。巧は緑谷の背中に触れた手を見て驚愕した。なんと巧の手には血がべったりとついていた。緑谷はヘドロヴィランに吹き飛ばされた時に瓦礫の破片が胸に突き刺さってしまい、それが心臓まで到達していたのだ。巧は必死に緑谷に呼びかけるが、大量の血を流している緑谷の意識はだんだんと遠のいていく。

 

(あれ?僕何してたんだっけ?そうだ、かっちゃんを助けるために........なんだか寒いな........すごく眠い.........いや........寝ていられない。かっちゃんを助けないと、あれ?なんだこの赤いの?血?誰のだろう?ああ、僕のか、ヴィランに吹き飛ばされた時に.........僕ここで死ぬんだ。やっとヒーローをもう一度目指そうと思ったのに、ここで終わるんだ。嫌な人生だったなぁ.......なんでこんな人生だったんだろう、僕、神様に嫌われてるのかな.........)

 

緑谷の目から光が消える。巧は察した、緑谷は死んだのだと、緑谷の命はここで尽きたのだと、巧は助けられなかった自分に対する怒りと無力感を感じ、悔しさを露わにする。

 

「出久........!クッソオオオオオオオオオオ!!!」

 

巧が怒りの雄叫びを上げる。どうしてこうなったんだ。もっと早く着いていれば、こうならずに済んだのにと、もう取り戻せない命に叫び声をあげる。その時だった、緑谷の指が少し動いたように見えた。

 

「!?」

 

見間違いか?巧はもう一度緑谷の指を見る、やはり動いている。緑谷は生きてるのだ。

 

(こいつ!もしかして!)

 

巧は何かを察し、緑谷を見る。すると緑谷は大量の血を流していたにもかかわらずむくりと立ち上がると、一瞬目が白く光っているように見えた。

 

「僕が.......助けないと.......」

 

緑谷はそう呟いて足を引き摺りながら、ヘドロヴィランの元に行く。

 

「あぁ?まだいやがったのか?さっさとうせやがれ!」

 

緑谷は立ち止まり顔を上げ、雄叫びを上げる。

 

「うおおおおおおおおおあああああああ!!!!」

 

すると緑谷の体に模様のようなものが浮かび上がり、そして緑谷の体が変化する。その姿は人型の馬に西洋の鎧を着せたような灰色の怪物の姿だった。

 

「なっなんだこの化け物は!?」

 

ヘドロヴィランは馬の怪物に変身した緑谷に攻撃する。攻撃は馬の怪物に直撃し、やったかと思ったが煙が晴れるとそこに立っていたのは無傷の馬の怪物であった。馬の怪物はヘドロヴィランの攻撃など効かないとお構いなしに近づく。そして馬の怪物はヘドロヴィランを殴り飛ばす。しかし流動体の体には効かない様子、しかし今度は剣を出現させヘドロヴィランを切りつける。それはヘドロヴィランの体を切断した。

 

「ぎゃあああああああああ!!!」

 

流動体ではあるので直ぐに元に戻るが、馬の怪物は何度も何度も何度も繰り返して剣を振るう、ヘドロヴィランも切断されては元に戻るを繰り返す。そうしている内にヘドロヴィランはへばってしまったのかかなり息が上がっている。馬の怪物はその隙をついて剣を心臓があるあたりに目がけて突き刺そうとする。

 

「出久!やめろおおおおおお!!」

 

巧は出久が人を殺すのを止めるために走り出す。そして体から模様が現れ、体が変化する。そして人型の狼のような灰色の怪物が現れた。狼の怪物は馬の怪物を後ろから羽交締めする。

 

「落ち着け出久!やめろ!」

 

「うああああああ!!!」

 

狼の怪物は必死になって馬の怪物を食い止める。それを見ていた爆豪は何が起こっているのか理解が追いつかず困惑していた。突然緑谷が馬の怪物に変身したと思ったら今度は巧が狼の怪物に変身して馬の怪物を必死に止めている。何が何だかわからなかった。夢なんじゃないかとも思い始める。その隙にヘドロヴィランは逃げ出そうとした。あんな怪物が二体もいたら殺されてしまうと思うのは必然。さっさと逃げ出そうしたその時、上空から誰かがヘドロヴィランめがけて落ちてくる。

 

DETROIT SMASH!!

 

「ギィヤアアアアアアアアア!!!」

 

オールマイトが渾身の必殺技を繰り出し、ヘドロヴィランを倒した。その時に起きた風圧で狼の怪物と馬の怪物は吹き飛ばされる。爆豪も飛ばされないように必死になって瓦礫にしがみいた。オールマイトの振り下ろした拳の風圧で上昇気流が発生して雨が降り出した。この気候をも変えてしまう程のオールマイトの圧倒的な力に人々から尊敬され、ヴィランからは恐れられているのだ。これがNo.1ヒーローの実力である。

 

●●●

 

吹き飛ばされた狼の怪物は元の巧の姿に戻る。巧はすぐに起き上がり馬の怪物の安否を確認する。

 

「出久!出久!起きろ!」

 

「う......ん.......」

 

巧の必死の呼びかけに馬の怪物は起きる。

 

「たっくん!?か、かっちゃんは!?」

 

「安心しろあいつは無事だ」

 

「そうか........よかっ.........!?」

 

馬の怪物もとい緑谷は爆豪が大丈夫だということに安心し下を向き、自分の体を見て驚愕する。

 

「なっ何これ!?どうなってんの!?僕の体が!!」

 

「落ち着けって出久!まずは深呼吸だ」

 

パニックになっている緑谷を巧は落ち着かせる。パニックになっていた緑谷は一度深呼吸をして落ち着く。

 

「よし、じゃあ体の力を抜くんだ」

 

緑谷は言われた通りに体の力を抜く。すると緑谷の体が元の姿に戻った。緑谷はペタペタと自分の体を触り何もないことを確認する。安心した緑谷はさっきの姿がなんだったのか巧に質問した。

 

「たっくん、今の姿って.......なんなの?」

 

「.........」

 

「ねえ!たっくん!」

 

緑谷はさっきの姿に対して巧に質問するが巧は何も答えなかった。

 

「早く戻るぞ。色々絡まれたら面倒だ」

 

緑谷は混乱していたが、今考えても仕方がないと思い取り敢えずビルから降りることにした。ビルから降りた後、巧と緑谷はヒーローたちからこっぴどく叱られ、病院に連れて行かれた。巧と緑谷は検査を受けたが、どういうわけかヘドロヴィランから受けた攻撃は綺麗さっぱり消えていて、特に怪我はなかった。病院から連絡を受けた引子はすぐに病院に来て巧と緑谷の怪我ないことに安心して倒れそうになった。怪我はなかったが、何があるかわからないから少し病院で安静にしていろと医者に言われ、今日一日だけ病院に泊まることにした。巧と緑谷は病院の椅子に座って休憩している。緑谷はさっきのあの姿を考えていた。もう自分は人間ではないのか、もう元の生活はできないのか、もうヒーローにはなれないのか、そんな不安がよぎる。そんな時、一人の痩せ細った男が緑谷の前に立った。巧と緑谷は男の顔を見る。男はあのオールマイトであった。

 

「オールマイト........」

 

「緑谷少年と乾少年だね?実は君たちに話があるんだ。少し時間をくれないかな?」

 

緑谷と巧はオールマイトの話を聞くために場所を移し、屋上へと向かった。オールマイトは誰もいないことを確認すると、早速話をし出した。

 

「あの姿、君たちは"オルフェノク"のようだね」

 

「!なんでそれを!?」

 

「.........私はずっと前からオルフェノクの存在を知っていた。ヒーローになってまもないころだ....。私はオルフェノクに遭遇した。オルフェノクの存在は世界でも一部の人間と私を含めた何人かのヒーローしか知らない。政府と私はずっとオルフェノクの存在を隠してきた。もし存在が知られてしまったら世界中がパニックになってしまう。だからこのことについては誰にも喋らないでほしい。もちろん家族にもね」

 

巧は何か知っているような感じだったが、緑谷は自分のあの姿がオルフェノクという名前であるというこを知った。オールマイトもなぜオルフェノクの存在を知っているのかも話しさらに驚く。緑谷は全くついていけなかった。

 

「オルフェノク。その数は発見しただけでも数千人程だ。それはある才能を持った人間が死ぬことによって覚醒する人類が進化した姿なのだ。要するに君たちはもう人間ではないということだ」

 

「え?」

 

人間ではない。その言葉に緑谷は頭が真っ白になった。まだ理解が追いついていないのに今度は自分が人間ではなくなってしまったという事実に何かしらの虚無感を感じた。緑谷は助けを求めるように巧の顔を見る。巧は無表情のままで何も言ってこない。

 

「君たちは今日から政府の監視対象になる。生活に支障はないが、もしオルフェノクの力を使うのなら君たちを即刻処分しなくてはならない」

 

緑谷はオールマイトの話しが聞こえてこない。緑谷はもうどうしていいか分からない。これからどう生きればいい?自分の存在を隠し通せるのか?もしバレてしまったら?そんな不安が入り混じり今にも叫びたくなる。すると巧は緑谷の肩に手を置く。緑谷は巧の顔を見る。巧は相変わらず無表情のままだったがその目はどこか優しさがあった。今まで見たことがない目をした巧に緑谷は少し安心し落ち着いた。

 

「後、緑谷少年。私は君に謝らなくてはならない」

 

「え、僕?」

 

「君は私に無個性でもヒーローになれるのかと聞いた時に私は個性がないとヒーローになれないと言った。しかし君のあのヘドロヴィランに勇敢に立ち向かった姿を見て気付かされたよ。ヒーローになるにおいて最も大切なのは個性なのではなく勇気なのだと、私は愚かであった。あの時の発言を許してほしい」

 

オールマイトは緑谷に対して頭を深々と下げた。緑谷は少し困っており、おどおどとしてしまっている。

 

「頭を上げてください。いいんですよそんなこと言われるのは、慣れてますから」

 

「しかし........」

 

「僕は大丈夫です。僕は無個性だからヒーローにはなれないかもしれない、けど夢を諦めるつもりはありません。これからもずっと夢を追い続けます。そう気付かされたんです」

 

緑谷は隣にいる巧の顔を見る。巧は相変わらず無表情な顔をしていた。

 

「............そうか、では緑谷少年、君にはまだ話したいことがある。すまないが乾少年、席を外してくれないか?」

 

「ああ」

 

巧は理由も聞かず緑谷とオールマイトから離れた。

 

●●●

 

しばらくして緑谷が巧の元に戻ってきた。緑谷は少し思い詰めたような顔をしていたが、巧は理由を聞かないことにした。緑谷はソファーに座り体の力を抜く。

 

「............」

 

「............」

 

しばらく沈黙が続いた。その間に時間が過ぎていく。巧はずっと何考えているのかわからない。緑谷は周りの景色を見つめる。そこには色々な人達がいる。足を怪我して松葉杖をつく人、事故のせいか車椅子に乗っている人、それを押す看護師、風邪をひいて母親と一緒に来ている子供。色んな人たちがいるが、それらは共通して人間である。その中で緑谷は孤立しているような感覚があった。周りから見れば普通の人間だが、実際は灰色の怪物だ。緑谷は下を向く。ふと、緑谷は巧がオルフェノクになった経緯を聞いた。

 

「.......ねぇ、たっくんはいつからオルフェノクになったの?」

 

「............」

 

質問された巧はずっと黙ったままだった。緑谷はこの話をするのはまずかったと思い、すぐに謝罪する。

 

「ご、ごめん、この話は忘れて」

 

「........10年前だ」

 

「え?」

 

「10年前に俺は死んだ。お前に出会う前、俺の両親は火事で死んだって引子さんから聞いてただろ。俺もその火事に巻き込まれたんだ。俺は目の前で父さんと母さんが焼け死んでいく姿を見た。今でも鮮明に覚えてる。その時の火事で崩れてきた屋根に押し潰されたんだ。俺はその時にオルフェノクとして覚醒した」

 

緑谷は巧が何故オルフェノクになったのか、その壮絶な過去を聞き緑谷は驚く。巧は話し終えた時どこか悲しそうな目をしていた。その時だった。何か外が騒がしい感じがする。何事かと巧と緑谷が覗き見る。すると遠くから医者や看護師たちが慌ただしく担架を運んでいた。誰かが事故にあったのか?病院の関係者たちがが巧と緑谷の横を通り過ぎる時、巧と緑谷は驚愕した。なんと担架で運ばれてきたのはさっきヘドロヴィランに人質にされていた爆豪であった。

 

●●●

 

ヒーローに保護された爆豪はさっさと家帰ろうとしていた。帰路に着いた爆豪は考えごとをしていた。さっきの巧と緑谷のあの姿を、あれはなんだったのか、緑谷にも個性があったのか?しかしそう考えると巧のあの姿に説明がつかない。もしあの姿が個性によるものなら巧の個性が二つあることになるし、灰色の怪物になるという個性が偶然二つもあるものなのか?世界には色々な個性がある。世界の総人口の約8割は個性を持っているものだ。その中にも似通った個性は沢山ある。しかしあの個性はあまりにも似すぎている。いや、個性ではないのかもしれない。個性とはまた別の何かかもしれない。明日巧と緑谷に問いただそうと決めた爆豪は信号が青になったので渡る。自分の前には親子らしき二人が歩いていた。すると突然親子の横から猛スピードでトラックが突っ込んできた。

 

「あぶねぇ!!」

 

親子はトラックに気づくが驚いてその場から動けなくなる父親は子供を守ろうとトラックに背を向け守る。その時爆豪は走り出し親子を突き飛ばした。そして目の前に猛スピードで突っ込んで来たトラックが爆豪の目の前まで迫る。爆豪は反応出来ず、そのまま轢かれてしまった。トラックはそのままビルの壁に激突してしまう。

 

「きゃあああ!!」

 

「誰か轢かれたぞ!!」

 

「誰か救急車を呼べ!!」

 

爆豪は今何が起こったのか少し理解が遅れた。

 

(今何が起こった?そうだ、親子を助けるためにトラックに撥ねられたんだ。クソが、いてぇ、こんなに血が流れてる。俺、死ぬのか?ここで終わり?クソッ嫌だ...。俺はここで終わる男じゃねぇ、絶対に俺は1番のヒーローに...........)

 

ここで爆豪の意識が途切れた。

 

●●●

 

次に目覚めると目の前には白い天井が見えた。爆豪はここが病院であることにすぐに気づいた。自分はトラックに轢かれてしまってそのまま意識が消えてしまった。そこまでは覚えている。妙に体が軽いが、今はそんなことは気にならなかった。爆豪は横を見ると爆豪の両親爆豪(まさる)と爆豪光己(みつき)であった。

 

「勝己!よかったあんたがトラックに轢かれたって聞いてもう心配で心配で......!」

 

「よかったな勝己!」

 

光己と勝は涙を浮かべながら爆豪に抱きつく。爆豪は少し困惑しているが、今はこのままでもいいかと思った。しばらくして光己と勝は明日は早いからと家に帰っていった。爆豪は窓の外を見る。外はもう夜になっていて月が輝いている。ビルには明かりがついて車たちがライトを照らし道路を走る。都会の景色は光と暗闇による美しい絵になっていた。爆豪は外を眺めながらあのときのことを思い出す。緑谷と巧のあの姿を、すると誰かが扉を開ける音がした。爆豪は振り向くと、そこには巧と緑谷が立っていた。巧と緑谷は爆豪のそばによる。

 

「かっちゃん、トラックに轢かれたって聞いて、心配してたんだよ?」

 

緑谷は爆豪が心配でここに来たらしい、巧は嫌そうな顔をしている。勝己はあの時のことを問いただそうと巧と緑谷に質問する。

 

「............おい、あん時の姿はなんだ?」

 

「え?あの姿ってなんのこと?」

 

「とぼけんじゃねぇ、俺はあんときあの場所でお前らが灰色のバケモンになってたのを見た。あれはなんだ?」

 

「俺たちは何も知らねぇ、お前の見間違いだろ。下らねぇ質問をするな」

 

「あれは見間違いじゃねぇ、俺ははっきりと見た。あの姿はなんなんだ!?答えろ!」

 

爆豪は巧に掴みかかり睨みつける。巧は表情を崩さない。緑谷はどうすればいいか分からずおどおどしていた。その時だった。爆豪の体から模様のようなものが浮かび上がる。

 

「「「!?」」」

 

爆豪は驚き自分の体を見る。急に浮かび上がった模様に戸惑い、模様を消そうとして必死に体を擦る。

 

「なんだよこれ!?どうなってんだ!!」

 

「かっちゃん!落ち着いて!」

 

パニックになった爆豪に緑谷は落ち着かせようとするが爆豪のパニックはおさまらない。その時、巧は勝己を殴る。殴られた爆豪は巧を睨みつける。

 

「何すんだテメェ!!」

 

「お前みたいなやつは殴られないと黙らねぇだろ」

 

突然殴られた爆豪は巧を睨みつけるが少し冷静になる。落ち着いた爆豪を見て巧と緑谷は話すことにした。オルフェノクという存在と巧と緑谷がオルフェノクになった経緯を。

 

「—————これが僕たちオルフェノクなんだ。混乱するのも無理はないよ。僕も最初はそんな感じだったから、このことは誰にも言わないことを約束してくれないかな?」

 

爆豪は混乱していた。突然自分の体に模様が浮かんで、それがオルフェノクという人類が進化した姿ということに爆豪は信じることができなかった。しかしいくら信じられなくてもこれは紛れもない事実なのだ。頭がパンクしそうな爆豪に追い討ちをかけるようにまた誰かが部屋に入って来た。

 

「オールマッ.........!」

 

緑谷は突然入ってきたやせ細ったオールマイトに思わず名前を呼びそうになった。

 

「誰だテメェ」

 

「すまないが話は聞かせてもらった。はじめまして、私の名は八木(やぎ)俊典(としのり)、私は政府と関係を持つ人間だ。突然だが君は緑谷少年と乾少年と同じように政府の監視対象になった。監視と言っても生活に支障はほとんどないから安心したまえ、しかしもし人前や街中などでオルフェノクの力を使ってしまうのなら君を処分させてもらう。そこのところは注意してもらいたい」

 

「...........お前ら出て行け」

 

爆豪は頭と気持ちの整理のために3人を部屋から出した。一人になった爆豪は自分の手を見つめる。そして意識を集中してみるすると体から模様が浮かび上がり体が変化する。顔には2本の大きな牙のようなものが生えておりジャケットのような服を着ている蛇のような怪物だった。爆豪は元の姿に戻りもう自分は人間ではないことを理解した。

 

●●●

 

爆豪の部屋から出た巧は廊下の壁にもたれかかる。緑谷は部屋に戻り、廊下に残っていたのは巧とオールマイトだけであった。お互い喋らず、ずっと沈黙が続いていた。そして最初に口を開いたのはオールマイトだ。

 

「乾少年。君に話したいことがある」

 

「?」

 

「実は私は雄英の教師になることになってね。そしてある理由で緑谷少年をヒーローにするためにトレーニングをさせたいと思っている。それに君も手伝って欲しいのだ。緑谷少年に戦い方を教えてほしい」

 

「なんで俺が?これから教師になるオールマイトがやればいいだろ」

 

「いっいや実は私は人に物を教えるのが大の苦手でね。だから手伝って欲しいのだ」

 

「なんだよそれ.........」

 

教師になる男が教えるのが大の苦手とは教師として致命的ではないかと巧は心の中でツッコんだ。

 

「無理を承知で頼む。お願いだ。緑谷少年のために手伝ってくれ」

 

オールマイトはあの時と同じように頭を深々と下げる。巧は少し嫌そうな顔をする。人に物を教えるのは自分にはあまり性に合わない。しかし緑谷のためだと思って承諾することにした。

 

「わかった、手伝うぜ。まぁ教えると言っても戦い方じゃなくて喧嘩の仕方だけど」

 

「ありがとう乾少年では明日から頼む。ではおやすみ!またな少ねガバァ!」

 

大きな声を出したオールマイトは血を吐いた。巧は少し心配したがオールマイトは大丈夫だと言って病院を出た。これから巧は緑谷を鍛えるために明日から訓練が始まる。




いやぁ、めっちゃ長くなりましたこんなに長く描いたのは初めてです。次回は少し短めになるかも、わかりませんが次回も楽しみに。
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