オールマイトが死柄木たちを逃がしてしまった少し前、奇襲をかけたベストジーニストたちの爆風により緑谷たちは転がっていた。
「ど、どうなっているんだ!?」
「いきなりMt.レディさんが...!」
「いっててて...」
飯田が状況を確認し用途あたりを見渡し、その状況を見ていた結花は驚きながらもそのまま伝える。爆風によって緑谷はバランスを崩し、腰を強く打ったのか、腰を抑えながら立ち上がる。外ではベストジーニスト、ギャングオルカ、Mt.レディ、虎の4人が脳無と交戦していた。
「うええ〜、これ本当に生きてんのぉ?めっちゃ勢いよく突入しましたけど、こんな楽な仕事でいんですかね、ジーニストさん。オールマイトの方行くべきだったんじゃないですかね?」
「難易度と重要度は切り離して考えろ新人。機動隊、すぐに
プロとはいえまだ新人であるMt.レディに喝を入れるベストジーニスト。繊維で捕縛しているとはいえ脳無に対してまだ警戒を解かずにいた。
「ラグドールよ!返事をするのだ!」
一方、林間合宿の時に行方不明となっていた裸体のラグドールを抱えていた虎が必死に声をかける。しかし、意識はあるのだが、まるで魂を抜かれた抜け殻のように上の空だった。
「チームメイトか!まだ息はあるのか、良かったな」
「しかし、様子が...!何をされたのだ...ラグドール!」
ヒーローたちがここに来たと言うことはもう自分たちに出来ることはない。飯田は先陣を切ってすぐにこの場を去ろうとした。
「ヒーローは俺たちなどよりもずっと早く動いていたんだ...!さぁ、すぐに去ろう。俺たちにもうすべきことはない!」
「オールマイトの方、たっくんとかっちゃんはそっちにいるのか...」
「オールマイトがいらっしゃるのなら尚更安心です!さぁ早く...!」
「すまない虎。前々からいい個性だと...丁度いいから、貰うことにしたんだ」
「「!?」」
八百万が飯田に同調してこの場からさるよう緑谷に急かそうとした時、突然一人の男の声が廃倉庫の奥から聞こえてくる。
「止まれ!動くな!」
音もなく現れた男は忠告も聞かずにゆっくりと歩いてくる。
「連合の者か」
「誰かライトを...」
「こんな身体になってから、ストックも随分と減ってしまってね...」
暗闇で姿は見えないために警戒を怠らない虎とギャングオルカ。男はそれでも歩くのをやめずにこっちに近づいてくる。ベストジーニストはすぐさまその男を拘束した。
「ちょ、ジーニストさん。もし民間人だったら...」
「状況を考えろ。その一瞬の迷いが現場を左右する。
冷静に考えてこのような危険地帯に民間人がいるはずがない。だとすれば十中八九
「せっかく弔が自分で考え、自分で導き始めたんだ。できれば邪魔はよしてほしかったな」
一瞬、そうほんの一瞬の出来事だった。緑谷たちの目の前に轟音と衝撃、それによって吹き飛ばされていく瓦礫と砂埃。緑谷たちはその場で動くことができなかった。それは今までに感じたこともない恐怖だった。男が吹き飛ばしたであろうその光景はまさに荒野と化していた。その男は黒いスーツにパイプが繋がった不気味なマスクを身につけていた。その姿に緑谷はオールマイトが言っていた名を思い出した。
(なんだよ...嘘だろ!?オールマイト...まさかじゃああれが...オール・フォー・ワン!?)
その場に佇む巨悪の名はオール・フォー・ワン。オールマイトの因縁の
「さすがNo.4!ベストジーニスト!僕は全員を吹き飛ばしたつもりだったんだ!みんなの衣服を操り瞬時に端へ寄せた!判断力、技術...並の神経じゃない!」
「こいつ...!」
ベストジーニストはこの作戦が始まる前、AFOについて話を聞いていた。その男は連合を裏で操り、そしてオールマイトの力に匹敵し、狡猾で自身が危険に晒される場合には決して表には出てこないのだが、今その男が目の前にいる。
(話が違う...!)
想定外の事態にベストジーニストは臆するが、今は狼狽えている場合ではないそう思った直後、AFOはベストジーニストの腹部に向けて目視できないほどの空気砲を飛ばす。
「相当な練習量と実務経験故の強さだ。君のは...要らないな。弔とは性の合わない個性だ」
AFOはベストジーニストには興味が失せる。緑谷たちはこの現状に恐怖で体の震えが止まらなかった。迅速に対応したプロの行動でさえも、いとも簡単に打ち壊してしまう巨悪の強さ。レベルの違いに緑谷たちはただ見ているだけしかできず、冷や汗を流しながら恐怖に震えていた。
「うあぁ!ゲホッ!ちくしょう!」
「ゲッホ!くっせぇえ...んじゃこりゃあ!!」
その直後、黒い液体を介して転送されてきた巧と爆豪の2人が現れる。
「悪いね。爆豪君と乾君」
「あ!?」
「誰だお前...!」
転送された先で初めて見るAFOに巧と爆豪はすぐに敵だとわかり警戒する。そのすぐ後に死柄木たちも転送される。
「また失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。この子もね....君が大切なコマだと考え判断したからだ。いくらでもやり直せ、そのために僕がいるんだよ。全ては、君のためにある」
死柄木にかける言葉は一体どう言う意味が込められているのかは計り知れなかったが、心の底に込み上げてくる暗い何かが飛び出してきそうな邪悪さがあった。そんな中で、AFOは上空を見上げ、何者かが迫ってくることに気がつく。
「.....やはり、来ているな....」
AFOが見上げる先にはオールマイトが物凄い勢いでAFOに向かって拳を突き出し、AFOはその拳を手で受け止める。その衝撃で地面が陥没し、衝撃波が辺りに広がり、巧と爆豪、そして
「全てを返してもらうぞ!オール・フォー・ワン!」
「また僕を殺すのか、オールマイト。随分と遅かったじゃないか。バーからここまで5km余り...僕が脳無を送り、優に30秒は経過しての到着....。やはり衰えたね、オールマイト」
「貴様こそなんだその工業地帯のようなマスクは!?だいぶ無理してるんじゃないか!?」
互いに煽りながら距離を取り、戦闘体制に入る。オールマイトの剛腕を片手で受け止めるAFOは、オールマイトと同等か、もしくはそれ以上の力を持っているのだろう。
「5年前と同じ過ちは犯さん、オール・フォー・ワン。乾少年と爆豪少年を取り戻す!そして貴様は今度こそ刑務所にぶち込む!貴様の操る
「それは...やることが多くて大変だな。お互いに」
攻撃を繰り出そうとAFOに向かって駆け出すオールマイトにAFOは冷静に右手を突き出す。するとAFOの腕が膨張したかと思うと、オールマイトがギリギリまで迫ってきた直後に音よりも早く衝撃派が放たれ、オールマイトは後方に飛ばされ、後ろのビルに激突する。
「『空気を押し出す』+『筋骨
この状況であっても実験でもしているかのように楽しむAFO。このような態度だけでも彼の邪悪さが窺える。
「オールマイトぉ!!」
「心配しなくてもあの程度じゃ死なないよ。だから...ここは逃げろ弔。この子を連れてね」
その子というのは爆豪のことであろう。巧はただ残り2つのベルトの在り方を聞かれただけで後はもう用済みの存在だ。恐らくこの後殺されるのは確実だった。AFOは指を黒く鋭い形に変形させ、その5本指を黒霧に突き刺す。
「黒霧。みんなを逃がすんだ」
「ちょ!あなた!彼やられて気絶してんのよ!?よくわかんないけど、ワープを使えるならあなたが逃してちょうだいよ!?」
「僕のはまだ出来たてでね。転送距離は酷く短い上、彼の座標移動と違い僕の元に持ってくるか、僕の元から送り出すしかできないんだ。ついでに、送り先は人。馴染み深い人でないと機能しない」
すると黒霧から何か引きちぎるような音が聞こえ始めると、黒霧の頭から黒い霧が立ち込め、ワープゲートが開かれる。
「さあ行け」
「先生は...」
死柄木が何か言う前にオールマイトがビルから飛び出してAFOの方に迫ってくる。
「逃がさん!!」
「弔...常に考えろ。君はまだまだ成長できるんだ」
そう言ってAFOは飛び上がり、向かってくるオールマイトの拳を受け止める。そして死柄木たちに被害が及ばぬようオールマイトを空中に誘導し、激闘を繰り広げる。その様子を唖然として見ていた死柄木たちだったが、我に帰ったコンプレスが気絶した荼毘をビー玉状に圧縮する。
「行こう死柄木!あのパイプ仮面がオールマイトを食い止めてくれる間に!コマ持ってよ!」
コンプレスの言葉に
「勝己」
「わーっとるわ」
巧と爆豪は構え、
「うぐ...!さっさと捕まれよ!クソガキ!!」
「ウルセェ!捕まって欲しけりゃ力ずくできてみろ!そして死ね!」
巧の方ではマグネが棒を振りまわし、巧に連続攻撃をするが全て避け、マグネの棒を掴み胸にドロップキックをかまし、マグネの棒を奪う。そしてその棒を使って迫り来るトガのナイフを受け止め、腕を絡めてナイフを手から落とすと顔面にに向かって棒をぶち当てた。かなり効いたのか、トガは顔を抑えて膝をつく。その直後にマグネがトガの元に駆け寄る。
「大丈夫!?ちょっと!レディの顔を傷つけるのはルール違反よ!!」
「正当防衛だ」
「隙あ...ガバァ!」
マグネの抗議に対して至極真っ当な反論を返す巧。その直後スピナーが攻撃を仕掛けてくるが、腹に棒を突き立て吹き飛ばした。そして死柄木が巧に向かって両手を突き出してくる。巧は棒で受け止めるがすぐに棒は崩壊し、死柄木はもう一度巧に向かって手を突き出すが巧は死柄木の手首を掴みなんとか堪える。
「乾、俺はUSJの時からお前が嫌いだ。今から思い返してみても、やっぱりお前が嫌いだ」
「奇遇だな...。俺もだ!」
巧は死柄木の手首を振り解き、死柄木の顔面に向かって衝撃を纏った拳をくらわし、死柄木は吹き飛ばされ、地面に倒れてしまう。しかし次から次へと攻撃を仕掛けてくる
「クソッ!埒があかねェ!」
「チィッ!」
爆豪がトゥワイスの軍団に押されている中、隙を見て横から割り込んできたコンプレスに気付くのに遅れてしまいあと数cmのところで手が触れそうになった瞬間、爆豪の襟を巧が引っ張り後ろに投げ飛ばした後、コンプレスの顔面を蹴り飛ばした。
「お前は下がってろ!こいつらは俺がやる!」
「んだと...!」
「下がってろって言ってんのが聞こえねぇのか!!」
「!」
巧に守られることが癪に触った爆豪は前線に戻ろうとするが巧の怒声により動きが止まる。
「勝己...!俺は昔からお前のことが嫌いだ...!大嫌いだ!けどな...!お前は...!俺の幼馴染みで、友達なんだよ!だから!守らせろ!それが...!なにも無ぇ俺にできることだ...!」
「巧...」
巧は爆豪を安全な場所に移した後、目の前の
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一方、緑谷はこの状況で巧と爆豪を救い出す作戦を考えつき、それを飯田たちに話していた。
「飯田君、みんな!」
「ダメだぞ...緑谷君...!」
「違うんだよ!あるんだよ!決して戦闘行為にはならない!僕らもこの場から去れる!たっくんとかっちゃんを救け出せる方法が!」
「緑谷、言ってみてくれ」
緑谷の考えた方法に轟は耳を傾ける。この状況で戦わずに救い出せるは方法があるのならば、他とはそれが危険な掛けであったとしてもやるべきことだと轟は確信していた。
「うん、けどこの作戦は僕だけじゃきっと成功しない。だから切島君に協力して欲しいんだ」
「俺が...?」
「たっくんは多分、かっちゃんを守るために前線で戦ってるんだと思うんだ。今かっちゃんは誰にも襲われていない状況、たっくんと
緑谷の作戦に飯田は黙り込んだまま考える。今飯田の中には、巧と爆豪を助けたいという気持ちと、法を犯したくないという自身の掟の葛藤が蠢いていた。その葛藤の中、飯田はゆっくりと口を開く。
「...博打ではあるが、状況を変えれば俺たちへのリクスは少ない...。何より成功すれば、状況の半分かそれ以上が好転する....やろう」
もしこの作戦が成功すれば、オールマイトの負担がかなり軽減されるはず、飯田はそう考えた上で緑谷の作戦に同意した。
●●●
「頑張るねぇ、この人数相手に1人で...」
「ハァ...!ハァ...!テメェらが弱ぇだけだろ...!」
煽ってくる死柄木に煽り返す巧。しかし、今の巧はかなり限界に近かった。善戦しているとはいえ、体力の限界が近い。それは死柄木たちも気づいていた。このままでは爆豪が
(ちくしょう...!このまま長引いたら確実に負ける...!勝己だけはどうにかして逃がさねぇと...!)
もはや打つ手は無い。死ぬ覚悟を決めた巧は両手に衝撃を纏い、構えをとる。そしてゆっくりと迫り来る
「来いっ!」
「バカかよ...」
手を伸ばす切島に爆豪が飛び上がり、死柄木が前に出るが、それを巧が死柄木な顔を殴り飛ばし阻止する。爆豪が切島の手を取った直後、緑谷が巧に手を伸ばした。
「たっくん!」
巧も緑谷の手を取ろうとして飛び上がる。作戦は成功した。巧の手を緑谷が取れば後は安全な場所に向かうだけ、後もう少しで巧の手を掴みそうになった時、何者かが巧の左腕を撃ち抜いた。銃弾をくらった巧はバランスを崩し、地面に落ちてしまう。
「切り札は最後まで残しておくもんだぜ」
巧の腕を撃ち抜いた者の正体は赤井だった。今まで遠くから眺めていたこの男はこの状況を見計らってファイズフォンで巧の左腕を撃ったのだ。
「そんな...!ダメだ!たっくん!!」
「緑谷君!もうこれ以上は無理だ!!」
緑谷はもう一度手を伸ばし、巧を助けようとするが飯田に止められてしまう。このままでは緑谷も落ちてしまい状況がさらに悪くなるだけだった。
「爆豪君!俺の合図に合わせて爆風で...!」
「........!」
「爆豪君!」
「......!ウルセェ!テメェが俺に合わせろや!」
「張り合うなこんな時にぃ!」
飯田は爆豪に爆破で推進力をつけるよう呼びかけ、爆豪は怒鳴りながらも飯田の言う通りにし、爆破の推進力で遠くまで飛んだ。緑谷は巧の方をみる。その時に見えた巧の顔はいつもの睨みつけるやような目つきの悪い顔をしていなかった。とても穏やかな顔で優しく微笑んでいた。
「じゃあな、出久...」
「.......!たっくーーーーーん!!!」
緑谷は巧を助けたい思いで手を伸ばすが届くはずもなく、そのまま遠くへと姿を消した。