巧たちは赤井たちを倒し、オールマイトはAFOを倒した。これで神野区の悪夢も終わりを迎えようとしていた。巧たちは変身を解き、その直後に緑谷と結花が駆け寄ってくる。
「たっくん!かっちゃん!」
「焦凍さん!」
しかし喜ぶのも束の間、直後、エンデヴァー、エッジショット、シンリンカムイ、その後に駆けつけてきた大勢の警察たちに囲まれた。
「動くな!」
「え!?ちょっ...!」
「未確認生命体第8号!9号!10号!11号!12号!計5体を確保!」
「大人しく降伏しろ!」
警察たちに拳銃を向けられ、巧と爆豪は警戒し、緑谷は慌てふためき、轟は結花を守るように立つ。今彼らは危険視されている存在。世間一般ではオルフェノクは未知なる存在なのだ。
「みんな...待ってくれ....!彼らは....!」
「オールマイト!無理しないで下さい!」
オールマイトは巧たちを庇おうと動き出すが、先ほどの戦いで全て力を出し切り、もはや一歩も動けない状態だった。オールマイトは警官に止められ、力なく膝をつく。
(チッ...。結局こうなるか)
この状況になれば、グラントリノも手出しはできなくなり、ただ見ていることしかできない。そんな中、エンデヴァーは轟の前にたち、震える手を前に突き出した。轟はそんなエンデヴァーに対して冷たい視線を送る。
「お前は、本当に焦凍なのか...?」
「..........」
「答えろ!」
「..........」
エンデヴァーは怒鳴り声を上げるが、尚も轟は黙ったままだった。何も答えない轟に、エンデヴァーはこれ以上の追求はしなかった。ここで何をしようが混乱を引き起こすだけだ。おそらく言い訳も聞いてくれないだろう。巧たちは黙って両手をあげて降伏した。巧たちは捕えられ、AFOも拘束。これで神野区の悪夢は終わりを迎えた。
●●●
その後、神野区で出た被害は様々なヒーローや警察たちの救助、修復により徐々にその傷が癒えていった。しかし世間ではまだあの事件の話題が尽きないでいた。平和の象徴の消失、都市伝説として巷で話題だった未確認生命体。テレビや新聞、SNSなどで様々な憶測が飛び交っている。そんな中、国会の警視庁のとある場所で各部署の責任者たちが集まり、緊急会議が行われていた。
「捕えた脳無はいずれもこれまでと同様、人間的な反応がなく新たな情報は得られそうにありません。保管されていたという倉庫は消し飛ばされており、彼らの製造方法についても追って調査を進めるしかありません」
「そもそもその倉庫というのもフェイクじゃねえのか?生体実験なぞ行える環境じゃねえし場も安易すぎる。バーからも連中の個人情報はあがってねえんだろ?」
「現在調査中です」
「大元は捕えたものの...死柄木をはじめとした実行犯らは丸々捕り逃がした...。とびきり甘く採点したとして...、痛み分けといったところか」
「馬鹿野郎、平和の象徴と引き換えだぞ。オールマイトの弱体化が世間に晒され、もう今までの〝絶対に倒れない平和の象徴〟はいない。国民にとっても、
「たった1人にもたれかかってきたツケだな...」
皆、各々の意見を述べる。平和の象徴は巨悪と共に倒れ、世間への衝撃は大きい。市民は今まで以上に不安にかられ、オールマイトにより抑圧されてきた
「馬鹿も集まりゃここまで出来ると...全員が知った。俺は恐れているよ。最初期のプロファイリングじゃ子どもの癇癪とまで言われていた主犯格、死柄木弔の犯行計画は、数を重ねるごとに回りくどく、世間への影響を見据えたものになっている。...死柄木は成長している。そして、オールマイトが崩れ以前にも増して抑圧がなくなろうとしている状況。連合は失敗する度に力をつけていく。こうも都合良く、勢力拡大の余地が残っていくものかね?」
「...こうなる事も、向こうの手の内だと?」
「結果論じゃないのか?」
「わからん。ただ一つ確実に言えるのは...奴等は必ず捕えなきゃならん。我々警察も
これから勢いが増していくであろう
「ところで、あの5人については何かわかったのか?」
「現在取り調べを行っております」
あの5人、と言われると巧たちのことであろう。USJに襲撃してきた
●●●
とある一室、無機質な空間で窓は小さくそこには鉄格子がはられている。ここは取調室だった。取調室の中には2人の男がおり、1人は取り調べを行う刑事、その刑事には塚内直正が取り調べを行っていた。そして取り調べを受けている男は巧であった。
「乾巧君。現在の年齢は15歳。ご両親はすでに他界、現在は緑谷出久君の家で居候をしている。雄英高校のヒーロー科であり、最近では雄英体育祭で大きな活躍を見せていたね」
「........」
塚内は優しく語りかけるように巧に話しかける。巧は黙ったまま塚内を睨みつけていた。塚内はそんな巧の睨みには動じず、話しかける。
「君はUSJの
塚内は淡々と巧が今まで戦ってきたオルフェノクたちの記録を読み上げる。そしてここからが本題。塚内は真剣な表情になる。
「そして最後に神野区で君と緑谷出久君、爆豪勝己君、轟焦凍君、長田結花君が未確認生命体へと変身した」
塚内がこれまでの記録を読み終えた後、その資料を置き両手を組んで巧に質問を投げかけた。
「単刀直入に質問するが、君たちは一体何者なんだ?事件に関わってきたあの未確認生命体とはどういった関係なんだ?答えてもらうよ、乾巧君...いや、未確認生命体第8号」
「..........」
さっきまでの柔らかな表情とは打って変わり、冷たく鋭い視線を向ける塚内。取り調べとはこういうものなのかと巧は心の中で考えていた。巧は塚内の質問に対し、黙ったまま何も答えず、塚内もこれ以上追求せず、黙って巧が答えてくれるのを待った。そして数分間の静寂の中で巧は口を開いた。
「.......あんたらは、俺たちのことをなんだと思ってんだ?」
「?」
数分間の静寂の中で巧が口を開いた言葉は、塚内の質問に対する質問返しだった。塚内は少し驚いた顔をするが、少し考えて巧に対する質問を返した。
「バカらしく思えるかもしれないが、地球外生命体...。所謂、宇宙人と見ているよ」
「そうか....」
塚内のオルフェノクに対する見え方に、巧はどこか納得したような表情をし、ため息を吐く。
「それじゃ、私の質問にも答えてくれるね?」
塚内は取り調べを再開し、巧の答えを聞く。巧は下を俯いたまま黙り、そして顔をあげてゆっくりと答えた。
「黙ってても仕方がねぇしな。答えてやる...。まず、俺は宇宙人じゃねぇ、だが人間でもねぇ」
「それは一体どういう意味なのかな?」
塚内は巧が言っていることが理解できず、もう一度質問すると、巧は淡々と話し始めた。
「正確に言えば、"人間だった"だな」
「人間だった?じゃあ君は人間では無くなったということなのかい?」
「ああそうさ、お前たちは俺たちのことを未確認生命体だなんて長ったらしい名前で読んでいるがそうじゃない。オルフェノク。俺たちはそう呼ばれている」
「オルフェノク...。それが君たちの、所謂...総称...。つまり、君はそのオルフェノクという、我々と同じような生物という解釈でいいのかな?」
「ああ」
塚内は少し困惑してきた。今までオルフェノクものが、灰でできた未知なる地球外の生物だと思い込んでいたが、まさか元人間とは思っても見なかった。人類史が始まって以来、個性という超人的な力に目覚めてきた人類だったが、今度は人間ではなくなった存在が現れてくるとは思ってもみず、塚内は状況が飲み込めずにいた。巧はわざと嘘を言っているように見えない。
「それじゃあ、君は人間だったと言っていたが、どうやってその...オルフェノクという存在になったのかな?」
塚内の質問に対して、巧は少し顔を顰め、ゆっくりと質問に答えた。
「俺は死んだんだ」
「死んだ?」
「そうだ。死んだ。俺はあの火事の時に死んでオルフェノクになった」
塚内は横に置いていた資料を手に取り、巧に関する記録を読む。そこには11年前に巧が原因不明の火災により両親が他界したものの、巧だけは一命を取り留めたと書かれていた。しかし実際はあの時に巧は死に、オルフェノクへと覚醒していたのだ。そのほかにも、爆豪は去年のヘドロヴィランの事件の後で親子を庇いトラックに轢かれたが一命を取り留め、轟は2年前に階段から転落し、頭を大怪我する事故にあい、結花は2年前に交通事故で崖から転落しが一命を取り留めたと書かれており、どれも命の危機に陥った事件を経験している。塚内は最近、都市伝説として有名だった死んだ人間が生き返るという話を耳にしていたが、まさかあの話が本当だったとは思いもしなかった。
「つまり、君たちがオルフェノクという存在になるには死がトリガーとなっていると...!?」
「ああ、出久のやつも、あのヘドロ野郎に殺されてオルフェノクになった。だが誰でもオルフェノクになれるってわけじゃねぇ。選ばれた者、素質のあるものだけがなれる存在だ」
「そんなことが...!それじゃあ君たちと同じような存在がこの日本だけでなく、世界中に存在しているということなのか!?」
「何人いるかは分からねぇが、確実にいる」
「.......すこし、頭を整理させてほしい」
塚内は信じられないような真実が立て続けに頭に入ってきて、頭がパンクしそうになっていた。そしてしばらくして、塚内小さくため息を吐く。
「それじゃあ、君が交戦してきた相手は君とは何の関係もないということでいいんだね?」
「ああ、そういうことだ。質問は終わりか?」
「...いや、まだ終わりじゃないよ」
塚内はそういうと、取り調べ室から出てしぼらくしてからとあるものを持ち出してきた。それはスマートブレインの社章が書いたアタッシュケースだった。塚内はアタッシュケースの蓋を開けて、その中身を巧の方に見せた。そのアタッシュケースの中にはファイズギア一式が入っていた。
「君がスマートブレインから貰い受けたこのサポートアイテム。確か君のご両親が作ったものだそうだね?」
「........」
「このサポートアイテムは、神野区で現れたオルフェノク。未確認生命体第13号こと、尾針勝之が使っていたものだよ。私はこのサポートアイテムが非常に気になってね、君はオルフェノクと交戦するとき必ずこのベルトを使っていた。このベルトとあと二つのベルトは一体なんなんだ?」
「それに関しては俺も詳しくは知らねぇ。俺が言えることはこのベルトはオルフェノクしか使えないことと、オルフェノクを倒すために作られたものっていうことだけはわかる」
「オルフェノクを倒すためのベルト?それはつまり、同族を殺すことになるんじゃ...!?どうしてそんなことを!?」
オルフェノクにしか使えず、オルフェノクを倒すために作られたものであるとすれば、それは同族を殺すということ、それはあまりにも非人道的と言える行為であった。
「俺たちオルフェノクはあんたら人間とは違うんだ。オルフェノクは人間よりも遥かに凶暴で、遥かに凶悪で、遥かに強力な奴らだ。そんな奴らを刑務所にぶちこむだけじゃどうにもならない。人間を守るためには命を奪う覚悟で戦わなくちゃいけないんだ」
巧の鬼気迫る視線に、塚内は冷や汗を流す。そして目を瞑って一呼吸おき、目を開く。
「よし、君たちのことはよくわかった。つまりこのベルトを作った君のご両親がいたスマートブレインもオルフェノクについて知っているということだね...。今日はここまでにしよう。君の言っていることは嘘ではなさそうだしね。しかし、まだまだ問題は山積みだ。君たちのことを今後どうするか考えなくてはいけないからね」
そう言われた巧は取調室から出された。今後巧たちがどういったことになるのか、いつもの生活に戻れるかどうかもわからなかった。巧は赤井が死ぬ間際に放った言葉を思い出す。
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これからしんどいことになるぜ。お前らの選択が間違っていたことがすぐにわかるさ
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赤井が言ったあの言葉はいつか本当のことになるのだろうか、巧はそんな考えが頭をよぎるのだった。