進化する人々   作:奥歯

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スマートブレイン

巧が取調室から移された場所は先ほどとは打って変わって広々とした部屋であり、そこには緑谷たちがいた。巧はその部屋の中に入ると緑谷が心配そうに駆け寄ってきた。

 

「たっくん!どうだった...?」

 

「洗いざらい吐いてきた。警察の奴らは今後俺たちをどうするか考え中だとよ」

 

「....そ、そうなんだ」

 

「チッ...」

 

緑谷は俯き、爆豪は小さく舌打ちをした。

 

「私たち、これからどうなるのでしょうか...」

 

「大丈夫だ結花。何があっても俺がそばにいる」

 

結花は自分たちがこれからどうなってしまうのか不安がる中で、轟は優しく慰めた。巧は近くの椅子に座り、自分の手のひらを見る。巧は人間をオルフェノクたちから守ると決めた。その意思は揺るがない。しかし、オルフェノクという存在が人類に受け入れてもらえるのか、赤井の言うように蔑まれ、恐れられてしまうのではないか、もしかしたら自分が人類の敵になってしまうのではないかと彼の頭の中に不安として残り続けた。

 

●●●

 

場面が代わり、警察署の門前ではマスコミたちが外で群がり、巧たちのことについて知ろうと躍起になっていた。警察たちはマスコミたちが中に入らないように壁となって抑えている。そんな中、一台の黒い車が警察署の前で止まった。そしてそこからドアが開き、中から黒ずくめの男が1人現れる。その黒ずくめの男は夏なのにも関わらず、黒いスーツに黒いコート、黒い手袋をはめたいかにも怪しそうな格好をしていた。男は無表情のままマスコミたちをかき分け、警察署の門前まで来たところで、2人の警官に止められた。

 

「現在ここからはヒーローでない限り一般の方は立ち入りが認められていません。申し訳ございませんが、お引き取りください」

 

警官2人に止められた男は一枚のカードのようなものを取り出した。それはヒーローの免許証だった。

 

「私はヒーローだ。ここを通してもらうぞ」

 

警官2人はその免許証を見るとその男に道を開けた。

 

「大変失礼しました!」

 

男は免許証を懐にしまい、門を通って警察署内へと入って行った。そして入ってすぐにある受付まで歩き、受付の女性に話しかける。受付はここに入ってきたということはヒーローであろうと、ここに来た用件を聞いた。

 

「今回はどういったご用件で?」

 

「面会だ。すでにアポはとってある」

 

受付はパソコンを使ってアポの確認を取る。しっかりと確認した後、誰の面会なのかと尋ねた。

 

「面会のご相手は?」

 

「乾巧」

 

「!!」

 

受付は驚いた顔をした後、申し訳なさそうな顔をする。

 

「申し訳ございません。現在その方との面会は禁止されているように言われていて...」

 

「いや、すでに許可はとってある。スマートブレインと言えばわかるかな?」

 

「....少々お待ちください」

 

受付は少し難しい顔をすると、スッと立ち上がり奥の方へと消えていった。そして数分ほどした後、慌ただしく戻ってきた。

 

「大変失礼いたしました!面会室はあちらです!」

 

受付に案内され、男はツカツカと廊下を歩いて行く。その途中、塚内が男の前に偶然現れる。

 

「あの、あなたは?」

 

塚内は見たこともない怪しい男に少し警戒するが、男は気にせず淡々と話し始めた。

 

「スマートブレインの社長命令で乾巧君を含めた5人の釈放を命じられてきました」

 

「釈放だって!?一体誰がそんな許可を!?」

 

「政府の人間といえば納得してくださるかな?我々は彼らにここを出てもらう必要がある」

 

「しかし...!納得出来ない!そんな横暴が通るわけが...!」

 

「残念ながら通ってしまったのですよ。彼らはそうせざるを得ないほどの価値があるんです」

 

そう言って黒ずくめの男が先に向かおうとした時、塚内が呼び止める。

 

「待ってくれ!君はスマートブレインの関係者であれば!彼らのあの姿のことについて何か知っているんじゃないのか!?」

 

塚内の質問に対して、男は振り返らずに答えた。

 

「いずれわかりますよ...」

 

そう言って男は先へと進んだ。塚内まこれ以上の深追いはしなかった。

 

●●●

 

男がとある扉の前まで来ると扉を叩き、中に入っていく。そして中では巧たちが座っており、巧たちは突然現れた謎の黒ずくめの男に驚く。巧、爆豪は警戒し、轟は結花を守るように立った。

 

「誰だお前?」

 

「君たちをここに出すためにきた男だ」

 

「ああ?ここから出すだと?」

 

「そうだ。スマートブレインの村上社長からの命令でね。君たちをここから釈放するように命じられてきた」

 

いまいち信用できない男に巧たちは警戒する中、緑谷だけは興奮気味にその男に近づいた。

 

「その黒いコート!黒い手袋!あの!あなたってもしかしてインクヒーロー"スクイド"ですか!?」

 

周りが一体誰だとキョトンとする中、黒ずくめの男ことスクイドは少し驚いた表情をする。

 

「まさか...あまり目立った活躍をしているつもりはないはずだったんだがね。いかにも、私はヒーローだ。よろしく、緑谷出久君」

 

「僕のこと知ってるんですか!?」

 

「ああ、ここにいる全員のことを知っているよ」

 

スクイドは緑谷の圧に少し引くが気を取り直し、本題に入った。

 

「さて本題だ。君たちをここから出すことについてだが、理由は二つある。一つはオルフェノクの存在が君たちによって世間に知られてしまった。これ以上オルフェノクのことを隠し通すことはできない。故に社長はオルフェノクのことを世間に公表しようと決断した。そのために君たちが必要と考えたのが一つ」

 

「公表って...!なんでそんなことを...!?」

 

「私自身あまり本意ではないが、社長の意向だ。すでに上からの承諾も得ている」

 

スクイドが言うにはオルフェノクの存在が世間に知られてしまった以上、そのままオルフェノクを隠し通しても市民への不信感が高まってしまうだけだと考えたからだそうだ。そしてスクイドはもう一つの理由を話す。

 

「そしてもう一つは、君たちのべルトについてだ」

 

「ベルト?」

 

ベルト、と言われるとファイズギアとカイザギア、デルタギアのことであろう。スクイドはそのことについての説明をし始めた。

 

「君たちにあのベルトのことについて話さなくてはならないという社長の意思。それが君たちをここから出そうと思った主な理由だ」

 

スクイドは一通り理由を話した後、巧たちの反応を見る。巧たちは少し、考えている様子でお互いの顔を見合っていた。

 

「言っておくが、君たちに拒否権はない。ずっとここにいるのも嫌だろう?」

 

そう言ってスクイドは扉を開ける。

 

「着いてこい。今からスマートブレインの本社まで連れて行く」

 

そしてスクイドはこの部屋から出て行った。静寂に包まれる中、最初にこの部屋を出たのは爆豪だった。緑谷は出て行こうとする爆豪を呼び止める。

 

「かっちゃん!」

 

「俺はこんな場所にずっといるつもりはねぇ。俺は行くぜ」

 

そう言って爆豪はスクイドの後について行った。そして次に出ようとしたのは轟だった。

 

「焦凍さん!」

 

「結花、俺は行く。だから君も来て欲しい」

 

「でも...」

 

「大丈夫だ。俺がついてる」

 

轟は結花に手を差し伸べる。結花は少し不安にするが、意を決して轟の手を取り、一緒にこの部屋から出て行った。取り残されたのは巧と緑谷の二人。緑谷は巧の方を見る。巧はただ黙ったままでそこに動こうとしない。

 

「たっくん。どうする?」

 

「.........」

 

巧は一体何を考えているのかはわからなかったが、巧は顔をあげて緑谷の方に振り向いた。

 

「俺たちも行くぞ」

 

「....うん!」

 

意を決した巧に、緑谷も承諾し皆の後についていった。

 

●●●

 

巧たちがスクイドの後に着いて行く道中、サングラスをかけた黒いスーツを着た男と遭遇する。スクイドはその男にとある命令をした。

 

「ベルトの回収を頼む」

 

「了解」

 

スクイドから命令を受けた男は警察署内へと入って行った。スクイドは迷いなく警察署内を歩く。しかし巧たちは今警察署の出口から反対方向の場所に移動していた。スクイド曰く、正面ではマスコミたちで外に出るのが困難なために裏口から出ようとしているとこだ。そしてスクイドが左に曲がったところで非常扉があった。スクイドはその扉を開けて外に出る。巧たちまたつけて外に出た。そして目の前には一台の黒い車が停車していた。スクイドはその車の扉を開ける。

 

「乗るんだ」

 

巧たちは言われるがままに車に乗り込み、スクイドも車に乗り込んだ。そして車は走り出し、スマートブレイン本社まで走って行った。道中、緑谷はスクイドに質問をした。

 

「あの、公表についてなんですが...、オルフェノクのことを公表してそんな簡単に信じてもらえるんでしょうか?」

 

「先ほども言ったように、信じてもらうために君たちが必要なのだ。代表としてね。そして、我々に敵意はないことを示さなくてはならない。社長は人間とオルフェノクの共存を願っている。そのためには、人間たちに我々のことを理解をしてもらわなくてはいけないのだよ」

 

「我々?ってことはあんたも...」

 

「..........」

 

スクイドの説明を受け、緑谷はこれ以上質問をしなかった。巧はスクイドの発言が気になったが、スクイドはその質問には答えなかった。そしてしばらく車を走らせること約2時間。その間、誰一人として喋らず、異様な空気感が漂っていた。その空気がかなりこたえる緑谷と結花は冷や汗を流していた。

 

●●●

 

そうこうしているうちに巧たちは巨大なビル群が建ち並ぶ都会の中心にまできた。今巧たちは東京にいる。そしてビル群の中を通り過ぎた後、車は東京湾まで進んだ。その東京湾には一本の大きな橋があり、その向こうには一際大きな高層ビルがあった。ここが世界最高のサポートアイテムを開発し、そのほかにも、医療、流通、製造など多岐にわたる。今や経済界の中心を担うサポート会社スマートブレインの本社である。本社は東京湾にできた人工島の上に立っており、ここに来るための場所はこの橋しかない。車はその橋の前で止まると、検問所の警備員が近づいてくる。

 

「IDを見せてください」

 

運転手は言われた通りにIDを警備員に手渡した。警備員はそのIDに何か光のようなものを当てた。

 

「IDを確認しました」

 

IDを確認した警備員は検問所の門を開ける。車はその門を通り、長い橋を渡った。そしてスマートブレイン本社の前に止まる。車から降りた巧たちは今までに見たことがないほどの高さのあるビルにあっけに取られているが、スクイドは気にせずに本社へと入っていき、巧たちもその後についていく、すると目の前に女性が1人立っていた。

 

「みなさんお待ちしてました♪」

 

「あ、この人CMの人だ...」

 

目の前に立っていたのはスマートレディだった。緑谷はスマートレディを見るとCMでよく見る人だと気づいた。スマートレディは社長の秘書意外にもスマートブレインの広告塔も勤めているのだ。

 

「私の役目はこれで終わりだ。スマートレディ、彼らを社長室まで案内してくれ」

 

「はーい♬じゃあみなさん着いてきてくださーい♪」

 

スクイドはスマートレディに巧たちを社長室に案内するよう頼み、どこかへ行ってしまった。巧たちは黙ってスマートレディの後についていく。その間、巧たちはスマートブレイン本社内部を見渡した。周りにはいかにも優秀な科学者たちや最新技術が勢揃いしており、Iアイランドで見たI・EXPOにも引けを取らないほどだった。緑谷はそのサポートアイテムたちを見て目を輝かしていた。巧も自分の両親が生前働いていた場所なのかと少し興味があった。

 

「ここがたっくんのお父さんとお母さんが働いていた場所かぁ...!あの!ここの研究って...!」

 

「企業秘密です♩」

 

食い気味に答えられた緑谷は押し黙ってしまう。そしてすぐ後に結花が質問をした。

 

「あの、この本社は何階建の高さなんですか?」

 

「本社はアラブ首長国連邦のドバイにあるブルジュ・ハリファを超える170階。高さ約850mを誇るんですよ♫」

 

「そんなに...」

 

てっぺんが点に見えるほどに高いビルだと思ってはいたがまさかそれほどの高さがあるとは思いもしなかった。そうしている内にエレベーターの前に止まった。そしてスマートレディはエレベーターのボタンを押した直後に扉が開いた。

 

「今から社長室に向かいまーす♪さぁみなさん乗ってくださいね♫」

 

巧たちは言われるがままにエレベーターに乗り込み、扉が閉じる。そしてスマートレディが社員証を取り出すと、社員証をエレベーターのタッチパネルの下にある読み取り部分のような場所にかざす。そしてタッチパネルに社長室に向かう階数を入力する。階数は最上階の170階だった。そしてエレベーターが動き出すと思った直後、扉が開いた。

 

「え!?」

 

「さあ、みなさん着いてきてくださーい♬」

 

緑谷はまさかもう最上階に着いたのかと思い、エレベーターから出て近くの窓を眺めると、海や巨大なビルの屋上が見え、人や車がアリほどの大きさに見えるほどに小さく見えた。巧たちは一瞬でこの場所に来たのだ。その事実に皆驚きを隠せない。緑谷は一体どういう技術なのかと気になりスマートレディに質問した。

 

「あ...!」

 

「企業秘密でーす♩」

 

やはり食い気味にはぐらかされた緑谷は肩を落とし、黙ってスマートレディのあとに着いて行った。しばらく長い廊下を歩くと、目の前に社長室と書かれた扉があった。スマートレディはその扉を開く。目の前には広々とした空間が広がっており、そこには一つの机が置かれていた。ここが村上が座る場所なのであろう。しかし、本人の姿が見られなかった。

 

「村上社長は現在お仕事でもう少ししたら帰ってくるので、ちょーっとだけここで待っていて下さいね♪」

 

そう言ってスマートレディは社長室から姿を消した。社長室にしてはあまりにも広すぎる部屋に巧たちは辺りを見渡す。

 

「ここ本当に最上階か?にしては広すぎる気がするが...」

 

「一体どういう技術なのでしょうか?さっきのエレベーターといい、スマートブレインの技術力は想像を超えますね」

 

轟はそのあまりの広さに違和感を覚え、結花も同様にスマートブレインの技術力に関心する。

 

「たくっ...、こんなとこまで連れてきておいて社長の野郎はここにいねぇってどいうことだぁ?社長だからって調子に乗りやがって...!」

 

「そんなこと言ってもあの人もきっと忙しいだろうし...」

 

「テメェの意見なかんか聞いてねぇよ!!」

 

イラつきを隠せない爆豪に緑谷はフォローを入れるが爆豪に怒鳴られる。さっきから食い気味に答えられてばかりの緑谷はさらに肩を落とした。

 

「黙って待っときゃいいだろ。いつまでも小学生みたいにしやがって」

 

「んだと巧ぃ!」

 

睨み合う2人に緑谷は仲裁に入らずに黙っていた。仲裁に入ったところで意味がないと理解しているからだ。そして巧と爆豪の方も、睨み合うことはやめずにお互い席に座った。

 

●●●

 

場面が変わり、巧たちがここに来た一時間後、スマートブレイン社の前に一台の車が止まった。その車から1人の男が降りてくる。その男の正体は村上峡児だった。村上は本社の中に入り、その中では何人かの社員たちが左右に整列し、頭を下げて村上社長を出迎えた。

 

「社長、スクイドが例の5人を連れてきました」

 

「そうですか。ちょうどお昼ですし、彼らに食事を用意して差し上げなさい」

 

「かしこまりました」

 

「ベルトの方は?」

 

「全て回収しております」

 

「ご苦労。ではそれぞれ持ち場に戻りなさい」

 

社長の一言で整列した社員たちは表情一つ変えずにそれぞれ持ち場に戻って行った。村上は1人巧たちが待つ自身の部屋まで向かった。

 

●●●

 

緑谷たちがこの場所に来て約一時間が経過したころ、時刻はちょうど12時になろうとしていた。5人は黙って座ったまま、村上がここに来るのを待っている中、後ろの扉が開いた。巧たちは一斉に振り返るとそこには村上が立っていた。

 

「申し訳ない。ずいぶん長い間お待たせしましたね。みなさんお久しぶりです。最後に会ったのは確か...雄英高校の期末試験の時以来でしたね。乾君、長田君あの時は対戦させてありがとう。改めて感謝します」

 

「いえ、こちらこそ...」

 

「...........」

 

村上が期末試験のことについて改めて感謝すると、長田は頭を下げ、巧は睨みつける。村上は自身の椅子に座り、巧たちと向かい合う。この村上の堂々とした態度が巧は気に食わなかった。それは爆豪も同様に感じ、村上を睨みつけるが、村上には全く気にしない様子だった。

 

「君たちがオルフェノクに変身した姿を、私はテレビでみましたよ。オルフェノクの姿を世間に見せてはいけないという規則でしたが、あの状況は致し方なかった。今後の対応については我々が対処しましょう。それでは早速、話をしたいところですが、食事をしながら話しましょう」

 

その直後、別の扉の方から何人かのウェイターたちが現れ、巧たちと村上の前に食事を用意した。その料理は肉汁が溢れる厚いステーキに鮮やかなオレンジ色のカボチャのポタージュだった。経済界を牛耳る大手の会社にしては意外と一般的な料理だった。とは言っても、この料理に使われている食材は最高級の食材であることには違いないだろう。村上はナイフとフォークをとって黙々と料理を口に運び、巧たちもそれに見習い、料理を食べていく。村上は非常に品のある食べ方をし、轟と長田もそれなりに裕福な家の育ちであるため食べ方は綺麗だが、それ以外の余りこういう料理を食べたことがない巧、緑谷、爆豪の三人は別だった。猫舌の巧はナイフで切ったステーキに息を吹きかけて冷ましながら食べ、緑谷は上手くステーキが切れず苦戦し、爆豪はしっかり切って食べるものの、少し乱暴な食べ方をしていた。

 

「スクイド君から話は聞いていると思いますので、オルフェノクを全世界に発信することにつきましては説明は省きます。なので今から話すことは、ベルトのことについてです」

 

その時、巧たちの手が止まる。このことについては巧が一番知りたいことだ。巧は村上の方を向いて質問をした。

 

「それじゃあ聞くが、俺と勝己が(ヴィラン)連合に捕まった時に聞いた話だ。俺はあの時、赤井の奴に残りのベルトはどこにあるのかって聞かれた。どういうことだ?ベルトはファイズギアだけだじゃねぇのか?残り二つのベルトってなんだ?」

 

巧の質問に村上は手を止め、ナプキンで口を拭き少しため息をつく、そさてそれに対する質問に答えた。

 

「君たちは、10年前のあの事件についてご存知ですか?」

 

「10年前といば、スマートブレインの襲撃事件!何者かによる襲撃によって多くの社員が犠牲になった大事件ですよね。たしかその事件の犯人はいまだに捕まっていないとか...」

 

「その通りです。その時は私はこの会社の社長になったばかりでした。あの事件の凄惨さを今でも鮮明に覚えています。話を戻して、君の両親はファイズギアの他にカイザギアとデルタギア、そして残り二つのベルトを作りました。それは勿論、オルフェノクから人間たちを守るために作ったものです。そのベルトが、あの事件により盗まれてしまった。我々は必死の捜索によりファイズギアを発見することはできましたが、残りの四つを見つけることはできませんでした。まさか(ヴィラン)がその内の二つを持っていたとは...。そして次に、まだここにないその二つのベルトのことについて、その二つのベルトの名は天のベルトと呼ぶサイガドライバー、そして地のベルトと呼ぶオーガドライバー。我々はその二つのベルトを帝王のベルトという通称で呼んでいます」

 

「帝王のべルト...」

 

村上が呼ぶサイガドライバーとオーガドライバーの二つ。帝王と名付けるだけあってそれほどまでに強大な力を秘めているのだろう。

 

「その2本のベルトは5つのベルトの中で特に強力なベルトでしてね。オルフェノクでも扱える者はごく僅かです。そのベルトが敵の手に渡ってしまえば、たとえ今持っている3つのベルトであっても勝てる見込みはない。といっても、扱えればの話ですがね。それで?ベルトについての質問はないですか?」

 

一通り話し終えた村上は巧たちにまだ質問はないかと聞くが、巧たちはこれ以上聞くことはなかった。村上はもう一度食事に戻った。

 

●●●

 

全員が食べ終えた頃、村上は巧たちの方を見る。

 

「昼食を終えたら、あなたたちのために用意した部屋に案内しましょう。公表は明日ですから、今日はその部屋で過ごしてください」

 

するといつからいたのか、巧たちの後ろから突然スマートレディが現れる。

 

「じゃあみなさん着いてきてくださーい♬」

 

巧たちは言われるがままに立ち上がり、スマートレディについていく。すると後ろで村上が最後に一言だけ巧に告げた。

 

「乾君。君の両親が残した功績は、我々にも、オルフェノクたちにも、この世界にも大きな影響を与えた。君は両親を誇りに思うべきだよ」

 

「............」

 

巧は村上の言葉に何も返さず、そのまま歩き続けた。村上はその様子を見送る。

 

(君の両親はとても偉大だよ。あまりにもね...)

 

●●●

 

スマートレディに連れられて、巧たちは無機質な廊下を歩き、とある扉の前に立った。その扉は先ほどとは打って変わり、とてもレトロな雰囲気のある扉だった。スマートレディはその扉のドアノブに手をかけ、扉を開け、部屋の中に入る。するとその扉の向こう側は、とても豪華な飾りで飾られた部屋で、レトロとモダンのハイブリッドのような部屋だった。5人が暮らすには十分過ぎるほどに広く、部屋の中は見たこともないほどに大きなテレビやソファ、ベッド、テーブルなど、とにかく豪華で大きいというしか他ないほどだった。

 

「皆さんはしばらくここで過ごしてくださいね♪もし何かあれば、手前にある受話器から呼んでくださーい♫」

 

そう言ってスマートレディは扉を閉めた。取り残された5人はそれぞれ別の行動をした。爆豪はソファに座りテレビをつける。テレビではどの番組でもオールマイトの特集や巧たちのことについての考察や見解についての番組ばかりだった。爆豪はそれを見て舌打ちをし、テレビを消した。轟と結花は爆豪と同じくソファに座った。緑谷はこの部屋がどのくらい広いのか、探索しようと思い、あちこち探し回る。巧も緑谷と同じようにあたりを探索していると、とあるものを見つけた。巧が見つけたものは蓄音機だった。

 

「蓄音機か...」

 

蓄音機を見つけた巧は落ち着くために音楽を聞きたかった。巧は音楽を流すためのレコードがないか辺りを見渡すと、すぐ横に大量のアルバムが収納された棚があった。巧はすぐに棚の中を見ると、様々な音楽があった。巧はその中から一つ取ると、QueenのThe Worksだった。これは巧が一番好きなアルバムだ。巧は早速そのアルバムからレコードを取り出し、蓄音機にのせる。そして音楽をかけるとRadio Ga Gaが流れる。巧は目を瞑り、リズムに合わせて足を動かし、大きく息を吸い、音楽に合わせて歌い出した。

 

 I'd sit alone and watch your light

 My only friend through teenage nights

 And everything I had to know

 I heard it on my radio

 

 You gave them all those old time stars

 Through wars of worlds invaded by Mars

 You made 'em laugh you made 'em cry

 You made us feel like we could fly.

 

 So don't become some background noise

 A backdrop for the girls and boys

 Who just don't know or just don't care

 And just complain when you're not there

 You had your time, you had the power

 You've yet to have your finest hour

 Radio.

 

 All we hear is Radio ga ga

 Radio goo goo

 Radio ga ga

 All we hear is Radio ga ga

 Radio blah blah

 Radio what's new?

 Radio, someone still loves you!

 

 We watch the shows - we watch the stars

 On videos for hours and hours

 We hardly need to use our ears

 How music changes through the years.

 

 Let's hope you never leave old friend

 Like all good things on you we depend

 So stick around cos we might miss you

 When we grow tired of all this visual

 You had your time - you had the power

 You've yet to have your finest hour

 Radio - Radio.

 

 All we hear is Radio ga ga 

 Radio goo goo

 Radio ga ga

 All we hear is Radio ga ga

 Radio goo goo

 Radio ga ga

 All we hear is Radio ga ga

 Radio blah blah

 Radio what's new?

 Radio, someone still loves you!

 

 Radio ga ga

 Radio ga ga

 Radio ga ga

 

 You had your time, you had the power

 You've yet to have your finest hour

 Radio

 

最後まで歌い終わった巧は一息つき、多少のストレスを発散できたと思った時に視線を感じた。巧はその方に振り向くと、緑谷たちが巧様子を伺っていた。少し気まずそうな緑谷と音楽が趣味なのかと興味津々な結花、冷めた目をした爆豪と轟。巧はものすごく恥ずかしくなり、顔を真っ赤にした。

 

「あああああああああああああああああ!!!!!」

 

恥ずかしさを誤魔化すための巧の声が部屋中に轟いた。その日の夜は巧は部屋の隅で寝た。

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