数日が経ち、ある程度までやって行くと段々と加減もできるようになり、安定して技を扱えるようになってきた。そろそろいいだろうと考えた巧は、次に移行することにした。巧は体育館の端の方に行くと、そこに置いてあったアタッシュケースをとる。その時、休憩に入った緑谷、麗日、飯田、切島の4人が現れた。
「たっくんも休憩?」
「いや、まだ続ける。今度はこれの特訓だ」
「ああ、ファイズか。アレすげぇよなぁ。カッケェし」
「別にそれ結構使いこなしてるやん?これ以上なんかする必要あるん?」
「念には念をだ。またこれを超えてくるやつが現れるかもしれねぇからな。この前の戦いで、こいつの技が通用しなかった奴がいたんだ」
巧は、林間合宿に現れたクロコダイルオルフェノクのことを思い出していた。あの時、巧はファイズの中で一番破壊力があるクリムゾンスマッシュで倒そうとしたが、片手で塞がれてしまったことがある。あの時はオートバジンが助けもあり、アクセルフォームで倒すことができたが、次もあのような強敵が現れた時、あの時のように上手くとは限らない。故の特訓だ。
「なるほど!これから現れる強敵に向けてどう対処するかの特訓ということだな!」
「ファイズの必殺技が通用しないオルフェノクがいるなんて...」
「そう言うことだ。じゃあ俺は戻るからな」
そう言うと巧はアタッシュケースからファイズドライバー、ファイズフォン、ファイズショット、ファイズポインターを取り出し、ファイズドライバーを腰に巻きつけ、ファイズフォンを開く。
『5 5 5』
『Enter』
Standing by
「変身!」
Complete
巧はファイズへと変身を遂げ、腕をスナップし、特訓に戻って行った。それを見送った緑谷たちは休憩に戻る。ふと、麗日が呟いた。
「そう言えば、ファイズの必殺技ってどんなんがあったっけ?」
「かなり多彩な技を持ち合わせているからな。要所で使い分ければかなりの力を発揮するだろう」
「うん。僕もお浚いしておかなくちゃ。いつか僕も使う時が来る時があるだろうし」
「あ、そうか。あのベルト、オルフェノクだったら誰でも使えるんだったな」
緑谷たちは休憩ついでに巧のファイズとしての特訓を見学することにした。訓練に戻った巧はまず最初にファイズフォンを取り出し、番号を入力する。
『1 0 3』
『Enter』
SINGLE MODE
巧はファイズフォンをフォンブラスターに変形させ、構える。そしてコンクリートの的に向かってトリガーを引いた。するとファイズフォンのマズルアンテナからフォトンバレットが発射され、コンクリートの的を一撃で砕いた。
「あれはファイズフォンのフォンブラスター「シングルモード」だね。あの状態なら遠距離でも敵を正確に狙うことができるんだ」
「ガラケーを銃にするってすげぇセンスだよな」
続いて巧は、ファイズフォンの番号を押し直す。
『1 0 6』
『Enter』
BURST MODE
巧はフォンブラスターを構え、トリガーを引く。そしてマズルアンテナからフォトンバレットが3発発射され、複数の的を破壊していく。
「あれは「バーストモード」。さっきのシングルモードとは違って命中率は下がるけど、代わりに威力が上がって、連続で光線を発射することができるようになるんだ。因みに光線の正式名称は「フォトンバレット」だよ」
「すぐに攻撃できる即効性があるんだな」
「銃だけでも使い分けとかできるんやね」
巧は次々と的を破壊していくと五回目にトリガーを引いた時、フォトンバレットが発射されなかった。
「あれ?どうしたんだ?もしかして壊れた?」
「いや、弾切れだよ。フォトンバレットの弾数は12発までだからね」
弾切れになってしまったフォンブラスターだが、巧は慌てる様子もなく番号を入力する。
『2 7 9』
『Enter』
CHARGE
番号を入力して音声が流れると、フォンブラスターにフォトンバレットが装弾される。
「弾が切れたときは、ああやって弾を補充するんだ」
「デク君なんでそんな詳しいいん?」
「まあ、一応ファイズギアの説明書を全部読んだから...」
やけに詳しい緑谷に、麗日が疑問を呈すると、緑谷はファイズギアの説明書を読んでいたらしく少し恥ずかしそうにしていた。そんな緑谷たちをよそに巧は右腰にセットしてあるファイズポインターを取り出す。
「お!いきなり必殺技か!?」
「いや、ちょっと違うようだぞ」
切島は巧がファイズポインターを取り出したところを見て、あの必殺技を想像するが、飯田が違うことに気づく。巧は取り出したファイズポインターを右足のエナジーホルスターにはセットせず、フォンブラスターにアタッチメントを取り付け、ファイズポインターをセットした。
「なんだあれ?初めて見るやつだな」
「あれは確か、フォンブラスターにファイズポインターを取り付けた形態だったはずだよ」
緑谷が説明を続ける中、巧はファイズポインターを取り付けたフォンブラスターをシングルモードにして構える。
『1 0 3』
『Enter』
SINGLE MODE
狙う先は障害物に阻まれた的。障害物に阻まれているせいで、直線的な動きしかできないフォトンバレットではあの的を狙うことはできない。しかし巧はそのまま構えた状態でトリガーを引いた。放たれたフォトンバレットはこのまま障害物にぶつかる。しかしフォトンバレットは突然まるで生きているかのように障害物を避け、その後も次々と障害物を避けていき、最後に巧が狙った的に命中した。
「光線が障害物を避けた!?」
「あんなこともできんのかよ!」
「あの状態でフォトンバレットを撃つと、狙った的に確実に命中するんだ。しかも威力も格段に上がる。これはシングルモードでもバーストモードでも使用できるんだ」
「自動追尾弾ってことやね!」
緑谷が説明した通り、あの形態でフォトンバレットを発射すると、ファイズポインターが狙った的を捉え、確実に撃ち抜くことができるのだ。続いて巧はファイズフォンの番号を入力する。
『5 8 2 1』
『Enter』
Auto Vajin
Come closer
巧はファイズフォンでオートバジンを呼び出す。そして約30秒程でオートバジンが巧のもとに駆けつけた。
「お、あれ乾のバイクか」
「オートバジンだったな。彼には俺も助けられた」
飯田はIアイランドの出来事を思い出す。
「バジンちゃんは乾君の大事なパートナーやからね!」
「うん。オートバジンはたっくんがピンチの時に必ず駆けつけてくれるからね」
オートバジンはファイズ専用の可変型バイク。バイク形態のビークルモード。人型戦闘形態のバトルモードの二種類があり、それぞれの姿でファイズをサポートする。巧はオートバジンにあるファイズの顔に似たボタンを押す。
BATTLE MODE
するとオートバジンは人型戦闘形態のバトルモードに変形する。
「あの変形いつ見てもカッコいいな」
オートバジンはバトルモードに変形した後、巧の命令を待つ。
「オートバジン。あの的壊せ」
巧が指を指す方向にある的にオートバジンはバスターホイールを構え、弾丸を発射する。発射された弾丸は的だけでなくその周囲のものまでを撃ち抜いてしまう。
「あんまり命中率は高くないんやね」
「ガトリングガンだからね。複数体相手か体の大きい相手にだったら効果的だろうけど」
巧はオートバジンのバスターホイールの性能を確認し、ミッションメモリーを抜き取り、オートバジンの左グリップのスロットにセットする。
Ready
巧は左グリップを引き抜き、そこからファイズエッジを取り出した。
「武器らしいやつ出てきたな」
「ファイズエッジだね。あの赤い刀身、「フォトンブレード」って言うだけどね。濃縮したフォトンブラッドが流れてて、どんなものでも切り裂いてしまうんだ」
巧はファイズエッジを振り、コンクリートをまるで豆腐を切るかのように切り裂いていく。切られたコンクリートの断面はあまりにも綺麗で、ファイズエッジの切れ味を物語っていた。
「すごい切れ味だな。刃が鋭いわけでもないのに」
「確かになぁ。警備棒みたいな形してるのにな」
「警備棒って...。そんなことたっくんに聞かれたら怒られるよ」
「聞こえてるぞ!」
「「「「..............」」」」
切島がさりげなく言った言葉に緑谷は巧に聞こえてしまうと注意するが、巧には丸聞こえだった。おそらく今までの会話も聞こえていたのだろう。緑谷たちは黙ってしまい、巧の特訓を見守った。巧はファイズエッジのパワースロットルを引く。するとファイズエッジのフォトンブレードが先ほどよりも強く光る。
「乾君今何したんやろ?なんかさっきより光って見えるけど」
「あれはファイズエッジのパワースロットルを引いたんだよ。あれを引くとファイズエッジのフォトンブレードの出力が変わるんだ。ファイズエッジの出力には「ロー」「ミディアム」「ハイ」「アルティメット」の4段階があるんだ。多分、今はミディアムだろうね」
巧はファイズエッジでコンクリートを切り裂く。するとコンクリートは先ほどとは違い、切り裂くよりかは、叩き切るようにコンクリートを切った。先ほどよりも破壊力が上がった証拠だ。続けて巧はパワースロットルを引き、ファイズエッジの出力をハイに上げ、フォトンブレードは更に光る。そしてファイズエッジを振り、コンクリートを切り裂いた。しかし、切り裂くと言うよりかはコンクリートを破壊した。ハイにまでなると、破壊力も段違いになっている。
「もう切るって言うより、叩き壊してんじゃねぇか」
「中々の破壊力だな」
巧はもう一度パワースロットルを引き、アルティメットまで出力を上げた。ここまで来るとフォトンブレードがかなり強い光で光っていた。そして巧はファイズエッジ横に振る。するとフォトンブレードから赤い斬撃が複数のコンクリートを破壊した。
「おお!斬撃が出たぞ!」
「なるほど、アルティメットにまでなると斬撃を放つことができるのか。見た感じ範囲は5mほどみたいだし、これは周囲の敵を一気に攻撃する際に役に立つな。でもその場合....ブツブツ」
「デク君またスイッチ入っちゃった」
緑谷はファイズエッジの斬撃を見て、その効果を分析する。スイッチの入った緑谷に麗日は慣れた様子で見守る。ファイズエッジの機能を確認した巧は最後にファイズフォンのエンターキーを入力した。
『Enter』
Exceed charge
「おお!ついに必殺技がでんぞ!」
ファイズエッジにフォトンブラッドが流れ、エネルギーがチャージされる。巧はファイズエッジを構え、コンクリートに向かってスパークルカットを放った。コンクリートは今までよりも凄まじい威力で破壊された。
「あの必殺技は「スパークルカット」。あの技はファイズエッジで切り裂く技と、斬撃で切る技と、相手を斬撃で捉えて切り裂く技の三種類があるんだ」
「あの技でUSJのオルフェノクを倒したんだよね」
巧はファイズエッジからミッションメモリーを抜き取り、そのミッションメモリーをファイズショットにセットした。
Ready
「次の必殺技だぞ」
巧はエンターキーを入力し、ファイズショットにエネルギーをチャージする。
Exceed charge
巧はファイズショットを構え、コンクリートに向かってファイズショットを放った。そしてコンクリートは簡単に粉々になり、巧はファイズショットからミッションメモリーを抜き取った。
「すごい威力やなぁ」
「USJの時、あの脳無を倒したからね。衝撃吸収、超回復の二つの個性を持ち合わせていた脳無を一撃で倒してしまったんだから、かなりの威力だと思うよ」
巧は最後にファイズポインターにミッションメモリーをセットした。
Ready
「ファイズポインターにセットしたってことは「クリムゾンスマッシュ」だ!ファイズの一番強力な必殺技だよ!あれをくらって倒れなかったオルフェノクはいないくらいだよ!」
「「「おお!」」」
巧はミッションメモリーを差し込んだファイズポインターを右足のエナジーホルスターにセットし、エンターキーを入力する。
『Enter』
Exceed charge
そして巧は姿勢を低くし、右膝に右肘を置く。そして目の前の標的に向かって走り出し、ある程度の距離まで近づいて飛び上がる。そして空中前転をして両足を突き出し、ファイズポインターのソリティックレンズから円錐型のポインティングマーカーが射出され、目の前の標的を捉える。そして巧は右足を突き出し、飛び蹴りの体勢に入り、そのままポインティングマーカーに突入し、標的を貫いた。そして巧はその標的の背後に光となって現れて着地する。標的は崩れ去ってしまった。
「すげぇ迫力だよな。あんなのくらったら一溜まりもねぇぜ」
「それほどまでにファイズの力というものは強力なのだろう。たしか、ほかにも同じような物があったな」
「そうだね。カイザとデルタ。二つともたっくんのお父さんとお母さんが作ったベルトなんだ。あの二つにもきっとまだまだ隠された力があるはず」
(赤、黄、白....。ケーブルカラーや!)
緑谷はファイズ以外のカイザ、デルタにも秘められた力がどんなものがあるのか気になっていた。そんな中、麗日はファイズ、カイザ、デルタのフォトンブラッドの色にテレビのケーブルの色を思い出していた。その直後、必殺技を放った巧が変身を解いてオートバジンとともに緑谷たちの方に戻ってくる。
「たっくんお疲れ。オートバジンもお疲れ」
「ああ、少し疲れた」
巧は疲れた体を伸ばし、オートバジンは緑谷に向けてサムズアップする。
「ファイズの力も上手く使えていけば、これから現れる強い相手にも太刀打ちできるかもしれないね」
「そうだな。そのために、俺自身も強くならねぇと。夢を守るために、ヒーローになろうとしてるんだ....。休憩してくる」
巧は自身の拳を握り締め、己の決意を確かめる。それは緑谷たちにも伝っていた。巧はオートバジンと一緒に休憩しに行き、巧の後ろ姿を見守る緑谷たちは、ヒーローになるための意味を再確認する。
「俺たちも頑張らないとな!」
「おう!やる気湧いてきたぜ!」
「私も負けてられへんな!」
「うん!たっくんにも負けないように僕たちも強くなるんだ!」
そう言って緑谷たちは必殺技の特訓へと戻って行った。ヒーローに一歩でも近づくために。