あの後、巧は一人でサンドイッチを全て食べ終え、屋上を降りて自分の部屋に帰ろうとしていた。その道中、一つ明かりのついた部屋を見つけた。誰がいるのかと中の様子を伺うと突然、部屋から怒号が聞こえてきた。
「爆豪は四日間!緑谷は三日間の寮内謹慎!その間は寮内共有スペース清掃!朝と晩!+反省文の提出!!怪我については痛みが増したりひかないようなら保健室へ行け!ただし余程の事でなければ婆さんの個性は頼るな、勝手な傷は勝手に治せ!」
「何やってんだあいつら...?」
怒号の正体は相澤だった。珍しいなと思いつつ、誰が怒られているのかともう少し顔を近づけると怒られていたのは緑谷と爆豪の2人だった。2人は何故か怪我をしており、おそらく喧嘩か何かをしたのだろう。すると後ろから覗いていた巧の視線に気がついたオールマイトが後ろを振り返る。
「乾少年...?こんな時間にどうした?」
「乾...?お前ここで何してる?」
「お前らには関係ねぇ。お前らこそそこで何してんだ?」
「お前には関係のない話だ。さっさと寝ろ。お前らもさっさと寝ろ!」
「はい...」
「...........」
しこたま怒られた様子の緑谷と爆豪は相澤から束縛布を解かれ、巧と一緒に部屋を出て行った。
●●●
部屋を出て行った巧、緑谷、爆豪の3人はリビングへと向かい、緑谷と爆豪は巧から一体何があったのかとことの詳細を聞いていた。
「それで?なにやらかしたんだお前ら」
「それは.....。なんというか.....」
「巧には関係ねぇ話だ。余計な詮索すんな」
「関係あるな。俺たちは幼馴染みなんだ。話してもらうまで帰さねぇからな」
巧の鋭い目つきに、緑谷と爆豪は巧も怒っていることがわかった。そして仕方なく何があったのかを緑谷が説明した。
「実は...。かっちゃんと喧嘩して...」
それだけを聞いた巧は大きくため息をついた。そしてどっちから喧嘩をふっかけたのかも見当がつく。巧は爆豪の方を睨みつけた。
「そんで、喧嘩ふっかけたのはお前ってわけだな」
「フンッ...」
図星だった爆豪は鼻を鳴らしながらそっぽを向く。そして巧はもう一度ため息をついて次の質問をした。
「なんで個性なんか使ったんだ?」
「え...!?なんでそれが...!?」
「怪我の具合見りゃわかる。それで?なんで使った?たかが喧嘩で個性を使うほどお前らは馬鹿じゃねぇ。個性を使ったことにも何か理由があるはずだ」
巧の鋭い指摘に緑谷は言葉に詰まり、爆豪はただ黙ったままだった。何も答えない2人に巧は爆豪の方を見て、質問をした。
「出久の個性が関係してんのか?」
「「......!」」
この質問に対して反応を見せる2人を見て、巧はそれが関係していると確信する。
「勝己。出久に個性が目覚めたことがそんなに気に入らねぇのか?それとも出久の個性になにか気になることでもあんのか?」
「..........」
それでも答えようとしない爆豪に巧は質問を諦め、巧はあることを話し始めた。
「実は、俺も出久の個性についてちょっと気になることがあるんだが....、出久が個性に目覚めたのはあのヘドロ野郎に襲われたショックで目覚めたってオールマイトから聞いたんだ」
「テメェ、オールマイトと関係あんのか!?」
「多少な。それで俺は思った。出久があの事件のショックで目覚めたのだとしたら何故増強型の個性で、あんな強力なのか?出久の両親の個性を考えても少し変だ。遺伝的なもんだと考えればそれまでだが、出久が個性を使うたびに体をボロボロになってしまって、まるで体が個性に追いついていない。実銃を撃てるように改造したモデルガンみてぇにな...」
巧の話す疑問、もとい推理に緑谷は冷や汗を流す。
「そしてあのオールマイト、あいつがあんな姿になったことにも何か関係あんのかと考えてな。以前、USJに向かう途中で梅雨のやつが出久の個性がオールマイトに似てると言っていた。そん時はなんとも思わなかったが今は違う。オールマイトの衰弱、出久に突然目覚めた個性...。出久、お前オールマイトに何かされただろ?」
「.........!」
巧の疑問に図星を突かれた緑谷は内心焦りまくっていた。巧が話したことはほとんど当たっていたからだ。
(たっくんってこんなに推理力高かったっけ!?なんか秘密がバレそうなんだけど!?)
心の中で焦りまくる緑谷をよそに、巧は話を続けた。
「答えねぇならいい。ここからは俺の推測になるんだがな....。突拍子もねぇこと言うが、出久はオールマイトから個性を受け継いでいる」
「「.........!」」
「....と考えたんだ。個性が受け継がれるって何を言ってんのか分からねぇと思うが、そうとしか考えられねぇんでな」
結論から言うと、巧の推測は当たっていた。緑谷はオールマイトからオールマイトの髪の毛を食べることによって、ワン・フォー・オールを受け継いだのだ。この秘密を知っているのは雄英高校だけで言えば根津校長とリカバリーガール、そして緑谷と爆豪だけだったのだがまさかここにきて5人目の秘密を知るものが、まさか推測で当ててくるとは思っても見なかった。バレてしまっては仕方ないと緑谷はため息をついて巧に秘密について話し出した。
「たっくんの言ってることは合ってるよ。まさか推測だけで秘密を知る人がいるだなんて思っても見なかったよ」
「やっぱり当たってたのか」
「うん...。僕の個性、ワン・フォー・オールっていうだけどね...。この個性はオールマイトから受け継いだ個性なんだ」
緑谷はことの詳細を全て話し始めた。実は爆豪はかなり前から緑谷の個性の秘密を知っていた。無個性だったはずの緑谷が何故か雄英高校のヒーロー科に合格できたことに爆豪は疑念を抱いており、緑谷が咄嗟に秘密をバラしてしまったのだ。しかしその時の爆豪は聞き流していたのだが、神野区での一件で力を使い果たしたオールマイトを見て、あの話が本当なのではないかと確信に変わっていった。それと同時に自分が人質になってしまったせいでオールマイトが力を使い果たしてしまったのではないかと罪悪感に襲われ、そしてメキメキと実力をつけていく緑谷に追い抜かれ、その劣等感から緑谷に喧嘩を持ちかけ、緑谷もその喧嘩を買ってしまったらしい。
「取り敢えずお前らが馬鹿だってことはわかったぜ」
「巧。お前はなんとも思わねぇのか?」
「....まぁ、罪悪感はあるさ....。だがオールマイトがいなくなった今、助ける力を持っている俺たちの番だ。二度とあんなヘマはしねぇ。俺の全力を出し切って全てを守り切るまでだ」
そう言って巧は立ち上がり、この場から立ち去ろうとする。その前に巧は2人の方に振り返る。
「夢を守るってことはそういうことだろ?」
巧はそれだけを告げると、自身の部屋に戻って行った。残された緑谷と爆豪も、自身の部屋に戻って行くのだった。
●●●
「喧嘩して」
「謹慎~~~~!?」
もう直ぐ後期始業式が始まる頃、まだ蝉の声が聞こえたくは残暑の中で朝の教室では驚きの声が響いていた。
「馬鹿じゃん!!」
「ナンセンス!」
「馬鹿かよ!」
「骨頂ーーッ」
「ぐぬぬ...」
周りから散々バカにされる爆豪は言い返すこともせずにただ唸り声をあげるだけだった。相当怒られた証拠だ。
「えええっ。それで、仲直りしたの?」
「仲直り...っていうものでも......うーん...言語化が難しい...」
「よく謹慎で済んだものだ...!!ではこれからの始業式は君ら欠席だな!」
その直後、轟が現れこちらに向かってくるが、どこか虚な目をしており、誰にも挨拶せずにただ呆然としていた。その様子が気になった八百万は轟に話しかける。
「おはようございます轟さん。どうしたんですか?昨日と様子が違うようですが...?」
八百万の声に反応した轟は八百万の方に振り返る。まるで死人のような顔に八百万は流石に心配になってくる。すると轟は何の理由もなく涙を流し始めた。
「なんでも....ねぇ...」
「轟さん!?大丈夫ですか!?」
「どうしたんだ轟君!?」
「なんかあったん!?」
泣き崩れる轟に八百万や他のみんなも駆け寄り、何があったのかと慌てていた。その直後、次に来たのは巧だった。リビングに降りてきた巧は辺りを見ると何やら騒がしそうだなと思った。
「なんだお前ら朝っぱらから、うるせぇぞ」
「あ!乾!昨日はごめんね!」
「私もごめん!」
「ん?ああ、別にもう気にしてねぇ」
降りてきて早々、芦戸と葉隠が巧に昨日のことについて謝罪をしてくる。巧ももうそのことについては怒ってはいない。巧はもう一度辺りを見渡すと耳朗がいた。巧は耳朗に近づき、昨日のことについてのお礼を述べた。
「昨日はありがとな。お陰で腹が膨れた」
「うん...。どう、いたしまして...」
「?」
どこか恥ずかしそうな耳朗が少し気になるが、もう直ぐ時間となってきたので靴を履いて出て行き、巧は泣き崩れている轟を無理やり立たせて出て行った。
●●●
「皆いいか!?列は見出さずそれでいて迅速に!!グラウンドへ向かうんだ!!」
「いや、おめーが乱れてるよ」
「委員長のジレンマ!!」
夏休みも終わりを迎え、いよいよ後期に入る時期になった。飯田はいつものように生徒たちを列に並べさせようとするが全員すでに並んでいて、並んでいないのは飯田だけだった。
「入学式、出られやんかったから今回も相澤先生何かするんかと思った」
「まー4月とはあまりに事情が違うしね」
あの時は相澤が実施した体力テストなどで入学式が出来なかったため、今回の始業式もてっきりできないのかと思っていたが尾白の言う通り、事情が事情なため、今回はそういうことは行われなかった。そんな会話をしている矢先、A組たちが歩いている横で、1人の男が下駄箱にもたれかかっているのが見えた。
「聞いたよーA組ィィ!2名!!そちら仮免落ちが2名も落ちたんだってええ!!?」
「B組物間!相変わらず気が触れてやがる!」
もたれかかっていたのはB組の物間だった。物間はA組に2人も落第者がいたという事実に得意げな顔をしながらこちらを見ていた。
「さてはまたおめーだけ落ちたな」
「ハッハッハッハッハッ」
切島の指摘に物間は高笑いすると急に真顔になって振り返る。
「いやどっちだよ!」
「こちとら全員合格、水があいたねA組」
物間が振り向く先にはB組たちが集まっており、物間は得意げな顔で1人勝ち誇っていた。
「....悪ィ、皆......」
「いやいや、向こうが一方的に競ってるだけだから気に病むなよ」
轟は1人受かることができなかったことを気に病んで謝罪をする。その時、B組の1人である角取が顔を出してきた。
「ブラドティーチャーによるゥと、後期ィはクラストゥゲザージュギョーあるデスミタイ。楽シミしテマス!」
「へぇ!そりゃ腕がなるぜ!」
「つか外国人さんなのね」
その時、物間が角取の耳元で何か囁き始める。
「ボコボコォにウチノメシテヤア...ンヨ?」
「変な言葉教えんな!」
角取に変な日本語を教えて高笑いする物間に対して拳藤が目潰しという制裁を下した。その時、後ろの方で結花があることに気がついた轟は視線を送り、結花もその視線に気づいたのだが結花は目を逸らし、轟はショックを受ける。
(結花....。俺は君に謝らなきゃいけない。俺の意思が弱いばっかりに、危うく君を汚してしまうところだった。あんなことをしてしまった俺を許してくれ)
(焦凍さん...。私はあなたに謝らなくちゃいけません。私はあなたの苦しみの大きさを知らずに生意気に受け止めるなど軽率な言葉を使ってしまったことを許してください)
2人のすれ違いはまだまだ続きそうであり、このすれ違いはどっちかが謝罪をしないと解決しないように見える。巧はその2人の様子が気になって見ていた。いつもは轟が一方的だが、とても仲のようさそうな2人を見ていた巧は少し違和感があった。
●●●
校庭のグラウンドに集合した雄英生徒たち。ヒーロー科、サポート科、普通科、経営科の計11クラスが合計33クラスも集まっているため、校庭にはかなりの人数が集まっていた。そんな大人数の前に立つのはこの雄英高校の校長である根津校長だ。
「やぁ!皆大好き小型ほ乳類の校長さ!」
根津校長が壇上に上がって話し始めたのはやれ毛質がどうとか、やれ食事がどうとか、やれ睡眠の質がどうとかと生徒たちにとって退屈な長ったらしい話しばかりしていた。
「
先ほどとは打って変わり、根津校長の態度がガラリと変わる。
「柱の喪失、あの事件の影響は予想を超えた速度で現れ始めている。これから社会には大きな困難が待ち受けているだろう。特にヒーロー科諸君にとっては顕著に表れる。2・3年生の多くが取り組んでいる
「
「職場体験の発展系のようなものかしら....?」
「暗い話はどうしたって空気が重くなるね。大人たちは今、その重い空気をどうしようか頑張っているんだ。君たちは是非ともその頑張りを受け継ぎ発展させられる人材となってほしい。経営課も、普通科も、サポート科も、ヒーロー科も、皆社会の後継者であることを忘れないでくれたまえ」
そう言って根津校長は壇上を降りた。その後は生徒指導のハウンドドッグが注意事項を話していたのだが猛犬が吠えるような言葉しか喋らず、生徒たちは何を言っているのかさっぱりわからなかったが、代わりにブラドキングが「昨晩喧嘩した生徒がいました。慣れない寮生活ではありますが節度をもって生活しましょう」と通訳をし、何故ハウンドドッグが壇上に上がったのか分からなかった。
●●●
始業式が終わり、生徒たちはそれぞれの教室に戻って行った。A組たちも教室に戻ると、早速相澤がHRを始める。
「じゃあまァ...今日からまた通常通り授業を続けていく。かつてない程に色々あったが、うまく切り換えて、学生の本分を全うするように。今日は座学のみだが、後期はより厳しい訓練になっていくからな」
「話ないねぇ...」
芦戸が蛙吹にポツリと呟いた言葉に相澤はすぐに反応し、睨みつけた。
「何だ芦戸?」
「ヒッ!久々の感覚!」
「ごめんなさい、いいかしら先生。さっき始業式でお話に出てたヒーローインターンってどういうものか、聞かせてもらえないかしら」
「そういや校長が何か言ってたな」
「俺も気になっていた」
「先輩方の多くが取り組んでらっしゃるとか...」
芦戸や蛙吹だけでなく他の生徒たちもヒーローインターンについて気になっていたようだ。相澤は頭をかきながらそのヒーローインターンについて説明し出した。
「それについては後日やるつもりだったが...そうだな、先に言っておく方が合理的か...。平たく言うと校外でのヒーロー活動。以前行ったプロヒーローの下での職場体験...その本格版だ」
「はぁ〜...そんな制度あるのか.....」
職場体験とは別にもっと本格的に活動を幅広く行えるようになるものらしい。関心している中で、何かに気づいたように麗日が立ち上がった。
「体育祭の頑張りは何だったんですか!!?」
麗日の言うように、ヒーローインターンというものがあるのであれば、雄英体育祭でのプロに対するアピールや指名などの努力が無駄だったと思える。
「まー落ち着けよ、麗かじゃねぇぞ」
「しかしぃ!」
麗日はあの時の努力が無駄になってしまうことが悔しいのかものすごい形相になる。その様子を見て相澤は説明を続ける。
「
「早とちりしてすみませんでした...」
少し勘違いしていた麗日は相澤の説明を受けて納得してくれた様子で席に座った。
「仮免を取得したことで...より本格的・長期的に活動へ加担できる。ただ1年生での仮免取得はあまり例がない事。
本来ならば2年から始めるのが普通なのだが今年は異例中の異例で、
「もっとも....。まァ.....体験談なども含め、後日ちゃんとした説明と今後の方針を話す。こっちも都合があるんでな。じゃ...待たせて悪かったマイク」
「一限は、英語だーー!!すなわち俺の時間!!久々登場俺の壇場待ったか ブラ!!!今日は詰めていくぜーー!!!アガってけー!!イエアア!!」
相澤がプレゼント・マイクの名を呼ぶと突然教室からプレゼント・マイクが勢いよく現れた。生徒たちはいつものテンションMAXなプレゼント・マイクには慣れているので普通に返事をしたのだった。
●●●
授業が終わり、生徒たちも帰る準備をしていた。久々ということもあって、生徒たちは授業のことに対する会話をしている。そんな中、1人巧も帰る準備をしていたところふと、朝からずっと一人っきりで死んだ目をしていた轟に目が入った。轟は授業中の時でも上の空で、巧は心配などしてはいないが、目に余るので鬱陶しく思っていた。その時、教室の扉の方から気配を感じ、巧はその方向に振り返るとそこに結花が立っていた。
「あの、乾さん...」
結花は巧に対してこっちにきて欲しいと手招きをしており、巧はめんどくさいと思いながらも結花の方に近づいた。
「何しにきた?」
「実は、その....。焦凍さんいますか?」
「あそこだ」
巧は親指で轟がいる方を指を指す。結花は轟の方を見ると、意を決したように轟の名前を呼んだ。
「焦凍さん!」
結花が轟の名前を呼ぶと教室にいた全員が結花に視線を送る。轟も結花の声に反応して振り返っていた。結花は教室の中に入ると、轟の目の前に立った。周りはなんだなんだとざわめき始める。
「焦凍さん...。私はあなたに謝りたいんです」
「なになに?轟喧嘩したの?」
「結構仲良かった風に見えてたんだけど...」
周りは口々に語りながら何があったのかと気になり、耳をそばだてる。
「私は焦凍さんの力になれるかどうかわかりません。焦凍さんが受けてきた苦しみを受け止め、理解するのは難しいことです。ですが!私は諦めません!焦凍さんが笑顔で生きていけるように私は最後まで支えていきたいのです!」
結花の誠意の込めた気持ち。心からの気持ちを轟に伝えた。轟の苦しみを理解するのは誰にもできることではない。だが轟の気持ちに寄り添うことはできる。ただそれだけでも、精一杯やり遂げると結花は伝えたいのだ。
「結花...」
轟はその結花を気持ちを聞いて結花の心からの気持ちを感じ、そして結花は昨日の出来事について怒っているのではないと理解し、轟は安堵するのであった。
「なんかよくわかんねぇけど、仲直りした感じ?」
「とりあえずよかったね轟君!」
「よかったよかった!」
A組たちは一体どんな理由で2人が喧嘩をしていたのかはさっぱりわからないまま仲直りできたことに皆拍手をした。そんな中で、一体何があったのか気になった巧は結花に何があったのかを質問する。
「お前ら喧嘩したのか?お前らに限ってそんなことねぇと思ってたんだが...」
「はい、実は恥ずかしながら、私は焦凍さんの気持ちも考えずに心無いことを言ってしまったんです。怒った焦凍さんは私を押し倒して...」
「「「「「!!!!!?????」」」」」
その時、教室に気まずい空気が流れる。巧はまずいことを聞いてしまったと後悔する。女子全員は顔を真っ赤にし、男子はドン引き、轟本人は大量の冷や汗を流していた。
「でも私が悪いんです!私があんなことを言わなければ...!」
「もういい、もういいから...。帰ってくれ...」
「え?」
「いいから帰れ...!」
「....えっと?失礼しました?」
巧は結花を遮り、帰るように促した。結花は何がなんだかわからない様子で教室を出て行った。静寂の教室の中で1人冷や汗を流しまくる轟。教室内では今、なんとも言えない地獄の空気のせいでどう反応すればいいのかわからなかった。
「轟....押し倒したって...」
「マジで...!?」
「マジかよ轟...!」
後ろを振り返ることができない轟はなんと言い訳すればいいのかわからなかった。もはや言い訳する余地もなかったかもしれない。そんな轟に対し、肩を掴む者と足を掴む者がいた。轟は恐る恐る後ろを振り返ると、肩を掴んでいたのは薄ら笑いを浮かべる上鳴だ。そして下の方をみると、目から血を流しながら轟を睨みつける峰田だった。
「轟。押し倒したって何?」
「轟ィ...。テメェモテるからって調子こいてんじゃねぇぞ。モテるお前でもまだ俺たちと同じ童貞だってとこだけが、お前とクラスメイトでいられる理由だったのに...。抜け駆けは許せんなぁ...!!」
「............」
「「表でろやゴラァああああああああああ!!!」」