雄英高校の入学式まであと数ヶ月、巧と緑谷は今日もトレーニングだ。雄英に合格したからと言ってトレーニングを怠る訳にはいかない。ランニングをしながらいつもの場所を通る。横の道路で車が走り、自転車が通り過ぎる。当たり前のような日常を巧と緑谷は走っていた。今日はこのくらいにしようと二人は家に帰る。家に着いた二人はタオルで汗を拭き取りシャワーを浴びに行く。先に巧が入りいつものごとく3分で上がり緑谷が入った。緑谷も上がり濡れた頭をタオルで拭きながら巧のところに行く。巧はまだ下着しか履いておらず扇風機で体を冷ましていた。緑谷は服に着替え巧の隣に座り巧に話しかけた。
「ねぇたっくん雄英に入ったらどんな人がいるのかな?」
「さぁな」
「仲良くできるかな?」
「どぉだろうな」
巧は緑谷の質問に対して適当に答える。緑谷もこれ以上質問することなく沈黙が続いた。すると突然電話がかかる。引子は急いで電話のところに行き受話器を取って耳に当てる。
「はい、緑谷です。はい、巧は今家にいますけど、はい........え!?スマートブレイン!?はいわかりました!!巧!あんたからよ!」
突然あのスマートブレイン社からの電話に戸惑う三人引子は受話器を巧に渡し巧は受話器を耳に当てた。
「何のようだ」
『君が乾巧君ですね?』
「誰だお前?」
『すみません、自己紹介しましょう。私の名前は
突然の社長の電話に巧は少し警戒する。ごく普通の一般人の自分と言っても人間ではないのだが、巧は村上峡児と名乗る男が一体自分に何のようだと考える。
『突然なのですが、雄英高校入学おめでとうございます。乾君』
「なんでそれを?」
『私の会社は雄英高校のスポンサーを務めていましてね、個人的な関係もあるんです。私の会社にあるサポートアイテムを使ってもらいたくて今年入学してくるヒーロー科の生徒に提供したいと思っていて君が適任だと思ったんです』
「悪りぃが、俺はサポートアイテムなんざ使わない。他を当たるんだな」
そう言って巧は電話をきろうとするが村上はそれを止める。
『まぁ待ってください、話はまだ終わっていません。君にとってとても大切な話なんです』
「........さっさと話せ」
『いいでしょう、君に提供したいサポートアイテム、実は君の死んだ両親が作ったものでしてね』
「!?」
巧は両親という言葉に少し動揺する。後ろにいる緑谷は動揺している巧を心配そうに見つめている。
『君の両親は素晴らしい人でしたよ、サポートアイテム専門の研究員で二人はずば抜けた天才でした。周りの人間にとても慕われていてね、私もかなり気に入っていました』
巧はもう火事で焼け死んでいく両親の姿しか覚えていなかった。家族と一緒に楽しい日々を過ごしたことは何も覚えていない。写真の一枚すらなかった。
『君に渡したいサポートアイテムは君の両親が生涯をかけて作ったものです。使わなくても構わない、君の両親の形見として受け取ってくれないですか?そうすれば君の両親も喜んでくれるはずです』
「.........」
巧は少し考える。家族の思い出はあの時全て焼けてしまった。両親がいない寂しさに苦しんできた巧にとって受け取る以外に選択肢はなかった。
「わかった、もらうぜそれを、父さんと母さんの形見なら」
『そう言ってくれて嬉しいです。だが君に渡す前にちょっとした条件があるんです』
「条件?」
村上からの条件とは、一体なんだと少し緊張しながら条件を聞く。
『運転免許を取得してほしいんです』
「は?運転免許?」
『そうです、バイクの運転免許です。原付じゃないですよ、普通二輪免許だから間違えないように。それじゃ明日には私の社員が届けてくれるので、首を長くして待っておいてください』
「あ、おい!」
巧が何かいう前に電話はきれてしまった。後ろの二人は何の話をしているのかと耳を澄ましていたが巧が振り返り急いで戻る。そして緑谷は何を話していたのか質問した。
「たっくん何の話をしてたの?サポートアイテムとか運転免許とか.......」
「明日には届くらしい」
「え、何が?何が届くの?ねぇたっくん」
巧はすぐに部屋に戻っていった。何も話さなかった巧に二人は顔を見合わせて首を傾げた。
●●●
翌日の昼ごろ緑谷の家からインターホンが鳴る。引子は急いで玄関を開けるとそこには黒いスーツと黒い革靴を履いた黒尽くめの男がっていた。手には大きめの段ボールを持っており、かなり怪しい見た目をしている。
「あの、どちら様でしょうか?」
「私は昨日電話していただいた、スマートブレイン社の者でして、乾巧君のサポートアイテムを渡しに来たのです」
「あ!昨日の!どうぞ上がってください」
「いえ、すぐに別の仕事があるので結構です」
引子は家の中に入りすぐに巧を呼びにいく。少し遠くで「巧ー!降りてきなさい!」と聞こえてくる。黒尽くめの男は巧が来るのをじっと待ち続ける。しばらくして巧がだるそうな顔をしながら玄関まできた。
「それが俺のか?」
「はい、あなたに渡してもらうよう社長直々に命令が来たので届けにきました。これがあなたの両親が作り上げたサポートアイテムです。きっとあなたの役に立ってくれるはずです」
黒尽くめの男は巧に段ボールを渡す。巧は受け取ってみると大きさの割に案外軽い感じであった。中身はどんなものがあるのだろうと少し好奇心が湧く。
「中身はご自身で開けて確かめてください。では私はこれで」
黒尽くめの男はそそくさと家から離れ近くにあった黒い車に乗り込み走り去っていった。巧は去っていく車の後ろ姿を少しだけ見た後家の中に戻る。すぐ後ろには緑谷がどんなものが来たんだとワクワクした顔でこちらを見ていた。巧はリビングに行き段ボールをテーブルに置く。緑谷と引子は箱の中身がなんなのか気になっている様子。巧は段ボールに貼ってあるガムテープを外し蓋を開けると、その中にあったのはスマートブレインのマークがはいったアタッシュケースであった。
「これがサポートアイテム?」
「まさか....」
巧は恐る恐るアタッシュケースの鍵を開ける。緑谷と引子も何が飛び出してくるのか少し緊張しながら見守る。巧がゆっくりと蓋を開けるとその中に入っていたのはベルトのようなものだった。
「ベルト?」
「これ見てよ、ガラケーかな?」
「今どきガラケーかよ?」
「あっ他にもあるわよ、これデジカメ?」
「トーチライトもある」
アタッシュケースの中にあったのは生活に使いそうな日用品であった。日用品にはスマートブレインのマークがついており日用品にしては少し見た目が変だが、これが巧の両親が作ったものだと思うと少し拍子抜けである。すると緑谷が一冊の説明書のようなものを手に取るそれには"ユーザーズガイド"と書かれていた。
「説明書ね」
「これ見たら使い方わかるかも」
緑谷は早速説明書を読む。
「えーっと、このアタッシュケースの一式は"ファイズギア"って言って、このガラケーが"ファイズフォン"で、このデジカメが"ファイズショット"、このトーチライトが"ファイズポインター"、最後にこのベルトが"ファイズドライバー"だって。後はそれぞれの使い方が書いてある」
緑谷の説明によるとこのファイズギアというものはいわゆる武器の一式らしく普段の生活でも使えるが戦闘で真価を発揮する物のようだ。
「ねぇ、これ早速使ってみようよ!」
このサポートアイテムが一体どんな力を秘めているのか気になっている緑谷はアタッシュケースを持って巧を連れて外へ出た。
「ちょっとどこに行くの?」
「公園まで行くよ!何かあったらすぐ戻ってくるし!」
「そう、気をつけてね」
「わかってるよ!行こうたっくん!」
「引っ張んな!自分で歩ける!」
●●●
巧と緑谷がトレーニングのために使っていた多古場海浜公園まできた。緑谷はアタッシュケースを地面に置き開き、ベルトと説明書を持って巧の方に振り返る。
「じゃあたっくん。まずはこのベルトを腰に巻いて」
巧は緑谷に渡されたベルトを腰に巻く。巻いたのを見た緑谷は説明書を見ながらファイズショットを持った。
「えーっとこのファイズショットは左側にセットして......」
緑谷はファイズショットを左側のクレードルにセットし、今度はファイズポインターを持つ。
「次はファイズポインターを右側にセットする.......」
緑谷はファイズポインターを右側のクレードルにセットする。
「最後にこのファイズフォン、装着するにはえっと......コードを入力しないといけないから.....」
緑谷はファイズフォンを開き番号を入力する。
『5 5 5』
「で、最後にここを押して」
『Enter』
最後に緑谷はエンターキーを押す。するとファイズフォンから音声が鳴る。
Standing by
音声が流れた後ファイズフォンから着信音のような音が鳴り響く。少し驚いて戸惑っている緑谷に巧はじっとしながら見守る。
「えっと、このファイズファンをベルトにセットして....!」
緑谷はファイズフォンをベルトにセットし、左に倒す。
Complete
するとベルトから赤い光が身体中に駆け巡り、巧を包む。あまりの眩しさに緑谷は腕で顔を覆い目を瞑る。光が収まり目を開けるとそこには巧ではなく別の誰かが立っていた。
「たっくん.......!」
その誰かは全体的に黒く赤いラインが張り巡らされ、Φの様な文字に見える顔があり、メタリックな姿であった。それを見ていた緑谷はその誰かがすぐに巧だということがわかった。
「たっくん.......これすごいよ!変身しちゃった!ヒーローみたいだ!!」
緑谷は誰もが憧れる変身ヒーローのような姿に興奮している。巧は自分の手や体を見たり顔を触ったりして本当に姿が変わったことを実感した。緑谷は急いで説明書を読む。どうやらこの姿は戦闘用特殊強化スーツというものらしく、全身に駆け巡る赤いラインは"フォトンストリーム"というものでスマートブレインが開発した"フォトンブラット"という流体エネルギーを伝達させる経路らしい。すると緑谷は何かに気づいたのか巧と背比べをする。
「どうした?」
「いや、なんかたっくん身長高くなってるような気がして10cmくらい......」
「言われてみれば目線が高くなってるような......」
巧は自分の目線が高くなっていることに気づいて自分の体を見渡す。
「じゃあ練習してみよう、まずはこれ」
緑谷はベルトについてあるファイズフォンを指差す。巧はにファイズフォンを取り出し開くとファイズフォンのウィンドウに番号のようなものがいくつかあった。巧は試しに上から二番目のコードを入力する。
『1 0 3』
『Enter』
SINGLE MODE
音声が鳴った後巧は説明書を見ながらファイズフォンを銃の形に変形させる。巧はファイズフォンを近くあった粗大ゴミに向かって撃ってみる。するとファイズフォンのアンテナからレーザー光線のような光弾、フォトンバレットがでて粗大ゴミを大破させた。
「すごいっ........!」
緑谷がその威力に驚いている間に巧はもう一つのコードを入力した。
『1 0 6』
『Enter』
BURST MODE
また音声が鳴りゴミに向かってトリガーをひいてみると3発のフォトンバレットがでて近くのゴミを大破させた。完全に人に向かって撃っていい威力ではないファイズフォンに巧と緑谷は少し引き、ファイズフォンをベルトに戻して説明書を見る。今度はファイズフォンについてあるミッションメモリーをファイズショットとファイズポインターに取り付けて放つ必殺技の説明があったが必殺技じゃないファイズフォンであの威力ならこれを実際にやってみるのはよそうと思いやめた。
「これどうやって脱ぐんだ?」
巧はファイズフォンを取り出し色々とボタンを押してみる。最後に通話を切るボタンを押してみるとフォトンストリームが光り出し巧は元の姿に戻った。
「戻っちゃった」
巧はベルトを外してアタッシュケースに戻し、蓋をした後取手を持って立ち上がる。巧はアタッシュケースを見ながら考える。これからこのサポートアイテムを自分のヒーローコスチュームにしようと、自分の両親の形見だとしても使わないと決めていたが気が変わった。このサポートアイテムを使って自分がヒーローになってするべきことをするためにこのサポートアイテムが必要な気がした。巧は前を向いて歩き出す。緑谷も巧の後に着いて行く。もう日が傾いてきた。次は運転免許を取得しなくてはならない。巧は軽くため息をつく。
「.....お前もこれ使ってみるか?」
「いいよ、それたっくんのだから」
●●●
あれから数ヶ月、季節は春。遂に雄英高校の入学式だ。巧はその間に運転免許を取得し、バイクに乗れるようになった。スマートブレイン社の子会社にあたるスマート・モータースが開発した"オートバジン"という一風変わったデザインのバイクが送られた。雄英にもバイク通学の許可を得ているので緑谷と二人でバイク通学だ。巧と緑谷は鏡を見ながらネクタイをむすぶが、中々上手くいかず、引子に手伝ってもらいながらネクタイをやっとむすぶことができた。忘れ物はないか色々確認しながら巧は家を出る。緑谷も慌てて巧の後について行く。巧は近くに停めてあったオートバジンにまたがりヘルメットを被り、緑谷もオートバジンの後ろにまたがってヘルメットを被った。
「出久!巧!頑張ってね!いってらっしゃい!」
「うん!行ってきます!」
引子も巧と緑谷を見送り大きく手を振る。緑谷も振り返り大きく手を振り返した。巧は後ろを見て軽く手を上げて何も言わずにエンジンをかけ、走り出す。そんな態度に引子は呆れながらも笑顔で大きく手を振り見送った。
●●●
雄英についた巧と緑谷は想像以上に広い校舎に少し道に迷ったが、なんとか"1ーA"にたどり着くことができた。教室の扉の前まできた二人は立ち止まる上を見上げてしまう程大きな扉だ、緑谷は少し緊張しているが巧はいつも通りの無表情、深呼吸をした緑谷は「行こう」と言って扉の取手を掴む。これからこの学園生活でどのようなことが待っているのだろうか、期待と不安を背負いながら胸が高鳴る。もう一度深呼吸をして緑谷は扉を開けた。扉を開けると既に何人かが教室にいて和気藹々としている感じだ。そこに誰かが言い争っているのが聞こえる。声の方に振り向くとそこにはメガネをかけた真面目そうな少年と爆豪がいた。
「机に足をかけるな!!歴代の先輩方や机の製作者に申し訳ないと思わないのか!!」
「思うわけねぇだろうが!!どこ中だこの脇役が!!」
「俺は私立聡明中学校出身!!
「聡明〜〜!?クソエリートじゃねぇか!!ぶっ殺し甲斐っ!?」
爆豪は誰かが入ってきたことに気付いて振り向くと巧と目があう。
「「チッ!」」
お互い受かっていたことに巧と爆豪は誰にでも聞こえるほどに舌打ちをする。緑谷は喧嘩が起こるんじゃないかとヒヤヒヤしたが突然後ろから声をかけられ、巧と緑谷は振り返る。
「あ!あの0ポイント敵をぶっ飛ばした人やない!?」
話しかけてきたのは顔が丸い感じの少女であった。緑谷は久しく会っていない友人に会ったときのような表情で驚く。
「知り合いか?」
「うん、試験の時に0ポイント敵から助けたんだ」
「そうそう!あの時はすごかったなぁ〜あ!でも大丈夫やったの!?あの時救急班の人達に連れてかれてたけど!」
「うん、大丈夫だよ。もうなんともないから」
「そうか、よかった〜」
巧は楽しそうに話している二人を見て自分はお邪魔かと思いその場から離れると後ろの誰かとぶつかった。
「ちょっと!どこ見てっ!?」
巧が後ろを振り向くとそこにはあの時助けた耳朗響香であった。巧は一瞬分らなかったがすぐにあの時助けた少女だと気付いた。
「あんたあの時の、A組に来たんだ」
「なんか文句あんのか?」
「別に」
巧はやけに冷たい態度に少し癇に触るがそこは堪えて押し黙る。すると横から誰かが喋り出す。
「お友達ごっこならよそへ行け。ここはヒーロー科だぞ」
その声に周りは静まり返る。浮浪者のような見た目をした明らかに怪しい男が立っている。
「ハイ、静かになるまで9秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるね」
(誰だこいつ?教師か?)
巧は怪しい見た目の男を教師なのではないかと推測する。
「担任の
すると相澤は寝袋の中から何かを取り出す。それは体操服であった。
「早速だが体操服を着て全員グラウンドにでろ」
●●●
「「「「「個性把握テストォ!?」」」」」
相澤から告げられた事は今から個性を使った体力テストをするようだ。
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。」
相澤のとんでもないな発言に周りは唖然とする。納得いかない状況の中で、相澤は話を進めた。
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久力、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト。国はまだ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まぁ、文部科学省の怠慢だよ。....試しに主席合格の乾、お前が投げろ」
「なっ......!?」
相澤に呼ばれた巧は黙ってサークルの中に入る。近くにいた爆豪はまさか主席合格者が自分の幼なじみだとは思わず唖然としてしまう。巧はボールを取る。
「乾、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」
「67」
「じゃあ個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何したっていい。おもいっきりな。」
巧は相澤に言われた通りにボールを投げる構えをとって個性を発動させるすると巧の手が歪み衝撃の威力に乗せてボールを全力で投げた。
「オラァッ!!」
投げたボールはどんどん飛距離を伸ばして点になって見えなくなるほど飛んだ。すると相澤が持っていた端末機から数字が表示される。
「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
相澤が見せた端末機には『705.2m』と表示されていた。
「なんだこれ!すげー面白そう!」
「705mってマジかよ!?」
「個性思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!」
巧の記録を見た周りの生徒は騒ぎ始める。これまで個性を使って何かをすることは殆どなかったが、雄英のヒーロー科に入って思う存分個性を使うことができるようになったことに縛りから解放されるような気分になっていた。そんな生徒たちに相澤は呟く。
「面白そう、か.....、ヒーローになるためにこの3年間、その腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
相澤の発言に生徒たちは一瞬で静まり返った。面白そうと言った金髪の少年は俺のせい?という感じにえらく動揺している。
「よし。トータル成績最下位のやつは見込みなしと判断し、除籍処分としよう」
「「「「「はあぁ!?」」」」」
最下位の者は除籍処分という発言に生徒たちは騒然とする。
「生徒の如何は俺たちの自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
その不気味な笑みに生徒たちはこれから除籍処分回避のために全力を出してやると意気込んだ。
●●●
まずは最初に50m走、巧の出席番号は5番になるので6番の
「お互い頑張ろう」
「..........」
麗日に対して巧は何も返さず無表情で睨みつけるように見るだけ、その無言の圧力に麗日は若干たじろいでしまう。巧は腕をスナップして走る体勢にはいる。麗日は靴に手を当てて走る体勢にはいった。そして合図がなると瞬間に巧は個性を発動し、衝撃の勢いに乗せて全速力で走った。麗日は普通の走り方で走る。巧のほうはスピードを落とさず走り抜き麗日もその後でゴールした。そしてすぐに端末機から記録が出される。
乾巧『4秒13』
麗日お茶子『7秒15』
次に握力テストだ。これに関しては個性を使ってもあまり意味がないので普通の記録が出た。3種目の立ち幅跳びでは個性を使い跳び上がる。
『35m』
4種目の反復横跳びでは巧は個性を器用に使い高速で反復横跳びをした。
『132回』
次に5種目、ハンドボール投げだ。この種目で緑谷がやることになる。緑谷はこの個性把握テストであまりいい結果が出せずにいた。この種目で全力を出さなくては除籍処分とされてしまう。緑谷はボールを受け取り、投げる体勢に入る。今までの努力をここで出すんだ。緑谷はあの時のことを思い出しながら全力でボールを投げた。しかしボールは緑谷が思っていた以上に伸びず無力にもぽとりと落ちてしまった。
『46m』
「なっ......今.....使おうと思って....?」
緑谷は困惑していた。今個性を使おうとしていたのに何故か使うことができなかった。そんな緑谷に相澤がつぶやく。
「個性を消した。つくづくあの入試は....、合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう。」
相澤は目が赤く髪が逆立っていた。それを見た緑谷は思い出したかのように相澤の正体に気付く。
「消した.....!!あのゴーグル.....そうか......!見ただけで人の個性を抹消する個性!!抹消ヒーロー"イレイザーヘッド''!!」
イレイザーヘッド、その名前を聞いた時周りの反応は誰のことなのかわからない様子。巧は緑谷から話を聞いていたので名前だけは知っていた。
「見たとこ.....個性を制御できないんだろ?また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったのか?」
「そっそんなつもりじゃ.....!」
緑谷は否定しようとするが相澤にきつい言葉を浴びせされる。
「どういうつもりでも、周りはそうせざるを得なくなるって話だ。昔、暑苦しいヒーローが大災害から一人で千人以上を救い出すと言う伝説を創った。同じ蛮勇でも....お前は一人を助けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久、お前の力じゃヒーローになれないよ」
相澤に圧をかけられている緑谷に周りは少しざわつき始める中、巧はじっと見ていた。話し終えたのか、相澤は緑谷の個性を戻しボールを2回投げるように言った。覚悟を決めた緑谷はボールを持って投げる体勢に入る。巧は信じていた。緑谷はあれくらいのことで怖気付くやわな男じゃないと。緑谷は深く集中して個性を発動する。そして大声であのヒーローが言っている言葉を放った。
SMASH!!
投げたボールはグングンと点になって見えるほど遠くまで伸びて最後にぽとりと落ちた。
『705.3m」
「先生.....!まだ...動けます!!」
「こいつ....!」
緑谷の指は痛々しいほどに真っ赤に腫れている。しかし緑谷はその痛みをグッと堪えていた。それを見た相澤は驚きと共にその顔には笑みがあった。
●●●
「705m!?」
「やっとヒーローらしい記録でたよー!!」
「指が腫れ上がっているぞ!入試の時といい.....おかしな個性だ.....」
「スマートじゃないよね」
緑谷の記録に周りは口々に語る。すると突然爆豪が怒りを露わにして緑谷に言い寄ろうとする。
「どーいう事だコラッ!訳を言え!デクてめぇ!」
「うわああ!」
爆豪が緑谷に掴みかかろうとすると、誰かが爆豪の腕を掴む。爆豪は振り返ると腕を掴んでいたのは巧であった。
「テメェ....!」
「高校に入っても何も変わんねぇな、お前は」
お互い睨み合い巧の手が歪み始め、爆豪の手が爆発する。今まさに喧嘩が始まろうとしたその時、巧と爆豪の個性が消え布のようなもので拘束されてしまう。
「なんだ.....!外れねぇ.....!」
「ぐっ......!!んだ、この布、固っ......!!」
「炭素繊維に特殊合金の銅線を編み込んだ捕縛武器だ。ったく、何度も個性を使わすなよ.....、俺はドライアイなんだ!」
(((((個性凄いのにもったいない!!)))))
取り敢えず落ち着いた二人を見て相澤は布を解き、両目に目薬を指していた。
「時間が勿体無い次準備しろ」
相澤の言葉に生徒たちは返事をして次の準備に取り掛かる。
●●●
残り3種目、持久走と上体起こし、最後に長座体前屈だ。まずは最初の持久走、巧はこれまでの個性把握テストで全てにおいて爆豪と同じ記録になっている。爆豪もそれに関してイラついており、この持久走で差をつけてやるとお互い意気込んでいた。巧と爆豪は前に立ち走る体勢にはいる。そしてスタートを告げる合図がなりみんなは一斉に走り出した。巧と爆豪は同時に走り出し全速力で走り出した。
「「うおおおおおおおおお!!!!!」」
全力疾走の二人は個性を使って全力で一位を取ろうとしたが
「んじゃパパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明するのは時間の無駄なので、一括開示する」
1位 八百万
2位
3位 乾巧 爆豪勝己
4位 飯田天哉
5位
6位
7位
8位
9位
10位 麗日お茶子
11位
12位
13位
14位
15位
16位
17位 耳朗響香
18位
19位
20位 緑谷出久
「1位...当然ですわ」
「「なんでこいつと同じ順位なんだ.....!」」
「俺...あのナルシストに負けたのか....」
「あっぶねぇ...ギリギリセーフだぜ...」
「ケロ...私もまだまだね...」
以下の順位となった。この順位に安堵していたり、納得できない者がちらほらといた。しかし一人だけこの世の終わりのような顔をしているものがいた。緑谷出久である。周りは絶望している緑谷に哀れみの目で見たりしている者もいた。巧はどうすれば緑谷を除籍処分から助けることができるのか考えを巡らせていると相澤が一言つぶやいた。
「ちなみに除籍は嘘な」
「「「「「!?」」」」」
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「「「「「はああああああああああ!?」」」」」
何人かの生徒を除いて驚きの声を上げる。巧の方も顔には出さなかったものの少し驚いていた。緑谷は驚きのあまり魂が抜けたように顔が真っ白になってしまった。
「あんなの嘘に決まってるじゃない.....ちょっと考えればわかりますわ」
(嘘.....というには結構マジな目だったな......あれは本気だった.....もしかすると全員.....)
八百万の発言に巧は心の中で否定するが、何より緑谷が除籍処分されることにはならなかったことに巧は安堵した。
「今日はこれにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類あるから目ぇ通しとけ。
緑谷、
「はっはい....ありがとうございます」
相澤は緑谷に保健室利用書の紙を渡して校舎裏に去っていった。残された生徒たちは口々にぼやきながら更衣室に向かった。巧は保健室に向かう緑谷を見ながら更衣室に向かった。
●●●
それから2日目、巧と緑谷はオートバジンに乗って学校へと登校していた。学校に着いた二人は教室へと向かう。
「ほんとに昨日はどうなることかと....」
「そうだな....」
二人は昨日のテストのこで肝を冷やしたことを話していた。するとよそ見をしながら歩いていたせいで巧は誰かとぶつかってしまう。
「きゃ!」
その拍子で相手は尻もちをついてしまった。
「わ、悪りぃ大丈夫か?」
「あ、いえ、大丈夫です....」
巧は倒れてしまった相手に手を伸ばすが相手は大丈夫と言って自分から立ち上がった。立ち上がると相手は髪の長い少女だった。その少女の顔を見ると、容姿端麗でどんな人でも魅了してしまいそうな程に美しかった。しかしこれ程までに綺麗な顔の少女なら一度見たら忘れないはずなのに昨日は一度も見た記憶がない。少し気になったのか緑谷がその少女に尋ねる。
「あの、もしかしてヒーロー科の人?」
「あ、はい、えっとB組の方ですけど....」
「あ!どおりで....」
どおやらその少女はB組の生徒で、なんでもその少女にはA組の方に知り合いがいるらしい。そんな話をしながらその少女の右手を見てみると少し血を流していた。
「あ!やっぱり怪我してる!」
「うおマジか!ほんとに悪い!」
「早く保健室に!」
「いえ!ほんとに大丈夫ですから!」
二人は慌ててしまい保健室に連れて行こうとすると後ろから誰かが声をかける。
「
「あ、焦凍さん」
振り返るとそこには赤と白の半々の髪色をしている轟焦凍であった。
「結花、こいつらに何かされたのか?」
「いえ、なにもされてないですよ」
この少女の名前は結花という名で、どうやらA組の知り合いというのは轟のことだったらしい、轟は結花に何かあったのかと尋ねると結花はなんでもないと右手で手を振る。すると轟は結花の怪我した右手を見ると、怒りの形相でこちらに掴み掛かった。
「テメェら!結花になにしやがった!?」
「うお!なんだお前急に!」
「うわわ!ちょっと落ち着いて!」
「ちょ、ちょっと焦凍さん!この人たちはなにもしていませんよ!ただ右の人と....」
「お前が結花を傷つけたのか!?」
「だから違いますって!」
轟は巧が方に標的を変え掴み掛かった。結花は必死に止めようと轟に説明しようとするが轟は全く話を聞かず巧に睨みつけていた。
「テメェよくも....!」
「だから何もしてねぇって!人の話聞けよ!」
「嘘をつくな!」
轟は怒りのまま拳を振り上げ巧の顔面を殴りつけようとしたその時、轟の振り上げた拳を結花が両手で受け止める。
「結花....」
「焦凍さん!この人は何もしてないんです!ただこの人とぶつかって転んでしまっただけで......」
「...........」
轟はやっと落ち着いたのか巧から手を離し振り上げた拳もおろした。
「......悪い、勘違いしてしまった」
「まったくだぜこの野郎、朝から騒ぎやがって」
轟は勘違いしてしまったことを謝り、巧は襟を正す。
「本当にごめんなさい、こんなことになってしまって」
「いや、大丈夫だよ」
一時はどうなることかと思ったがなんとか収まり緑谷は安堵する。
「それじゃ、私はB組なので私はこっちに行きますのでそれじゃあ...えっとお名前は...?」
「あ、僕の名前は緑谷出久」
「乾巧だ」
「そうですか、それじゃ私も...
そういうと結花は小さくお辞儀をする。
「焦凍さん、くれぐれも人を傷つけることはしないようにして下さい」
結花は最後にそういうとB組の教室へと向かった。取り残された三人はA組の方なのでA組の教室に向かう。その途中、巧はずっと轟に睨まれていた。