「それでは授業を始める。まず、オルフェノクとはどういったものだと認識しているのか雄英生徒たちに少し質問したい。そこの君。泡瀬洋雪君はどういう認識かな?」
戸田は雄英生徒たちの中で、B組の泡瀬に質問をした。泡瀬は自分が当てられるとは思っていなかったため、少し緊張した様子で立ち上がる。
「えっと...。進化した人間...。ですかね...?」
「まぁ、ニュースで見たならそういう認識だろう」
辿々しく答える泡瀬に、戸田は軽く頷いた。
「確かに彼の言う通り、オルフェノクとは進化した人間だ。まぁ生物学の観点で見れば変態と言った方が正確なのだが...。どうやって進化するのかはニュースを見た者ならわかると思うが改めて説明しよう。人間がオルフェノクに進化するのは、本人の死が起因している。例えば事故や病気、殺人など...。明確な死に直結するものが進化の引き金となっている。そしてその成功率は約0.1%未満だ」
「低っ!」
「それほど稀なことなんだな...」
そもそも進化というものはある日突然起こるものではない。長い年月をかけてゆっくりと体を変化させていくものなのだ。巧たちがオルフェノクに進化したのは奇跡と呼ぶに相応しいだろう。
「そしてその他にも、死以外の方法でもオルフェノクは進化をする。それを使徒再生と呼ぶ」
「死と再生?」
「デク君知ってる?」
「いや、僕も知らない...」
あまり聞き馴染みのない言葉に、雄英生徒の頭には頭に疑問が浮かぶ。巧たちも、オルフェノクになるには死ぬこと以外にないと思っていたため、わからなかった。
「わからなくて当然だ。専門用語だからな...。さて、使徒再生とは一体ななんなのか、それはオルフェノクのエネルギーを直接心臓に流し込むことによって相手をオルフェノク化する行為だ。この使徒再生は死によって進化する方法よりも成功率は高いのだが、それでも約3〜5%だ。そこで使徒再生がどういったものでやるのかを見せよう」
「実践っすか?」
「違う。実際にやるわけないだろうバカ者。乾君。前に来るんだ」
「?」
戸田は巧を呼びかけて、巧は教壇の前に立つ。
「すまないが、上着を脱いでくれないか?」
「は?」
「いいから脱ぐんだ」
巧は怪訝な顔をしながら言われた通りに上着を脱いで、上半身裸になる。巧が裸になったことで少し顔を赤くする雄英の女子が何人かいるが、流星塾生はその巧の体に関心の目を向ける。
「おお、いい筋肉」
「相当鍛えてるな」
上半身裸になった巧に一気に視線が集中し、巧は少し恥ずかしさを感じていた。そんな巧を他所に戸田は巧にあることを聞いた。
「あれの出し方はわかるな?」
「まぁ...」
あれと言われて巧はなんのことか分かってはいるが、一体なんなのかと周りは気になっていた。巧は少し深呼吸をして体に力を込める。すると巧の背中から何本かの灰色の触手が現れた。
「うわ!?なにこれ気持ち悪い!」
「触手?」
いきなり巧の背中から触手が現れ、周りは気持ち悪いものを見る目でみる。巧は少々イラッときたが、授業中であるため我慢をする。
「この触手が使徒再生の役割を担っていて、そのほかにも生殖器としての役割もある。基本的に生殖器は身体の下部についている。例外もあるが...。ここの先端を見たまえ、性別が男である場合、このように先が尖っている。人間で言うところの陰茎だな。逆に性別が女の場合は先に穴が空いていて、人間でいうところの膣口だ。あとは説明しなくても大体はわかるだろ」
戸田の説明の最中、流星塾生の何人かがニヤニヤしていたのを戸田は見逃さなかった。戸田は睨みをきかせると塾生は慌ててニヤけた顔を戻す。一方巧は自分の見せた触手が所謂陰部であることを知り、少し顔を赤くして戸田を睨みつけながら触手をしまい。上着を着た。
「先ほどの触手の正式名称はあるのだが、そこまでは知らなくていい。そして触手以外の使徒再生もあり、例えばこのように指先を伸ばしたり...」
「うわ!」
「もっと気持ち悪い!」
戸田は手を前に出すと人差し指が突然生きているかのように伸び始めた。それを見た周りは驚きの声を上げる。巧は薄々感じていた戸田の正体に確信を得る。そんな中で部屋の端に座っていた相澤はなんとも言えない表情をしていた。
「やっぱりあんたもオルフェノクか...」
「言う必要もなかったからな...。そしてオルフェノクにはそれぞれ武器を持っていて...」
そう言って戸田の右手が変化し、腕が灰色になる。そこから突然棍棒のような武器が現れ、その棍棒の先から黒いスミのようなものが垂れていた。
「そこからオルフェノクエネルギーを流す事も可能だ。因みにこの武器は出せる者と出せない者に分かれている。乾君は...」
「無理だ」
「そうか...。もういい席に戻れ」
戸田は巧を席に戻るよう指示し、巧はやっと終わると安心して、イラつきながら席に戻った。
「実はオルフェノクというものは死によってになる者と使徒再生によってなる者と名前に違いがある。死によってオルフェノクとなる者は"オリジナルオルフェノク"と呼び、使徒再生によってオルフェノクとなる者は"使徒再生オルフェノク"、通称"AR"だ」
「あの...」
「なんだ?」
戸田が説明を続けている中、雄英生の麗日が恐る恐る質問をした。
「なんで使徒再生の通称がARになるんですか?」
「ああ、それは使徒再生をそのまま英語にすると、
「へぇ〜。ありがとございます」
麗日の質問にも答えた後、戸田は説明続けた。
「そしてその見分けかたは...。緑谷君、前に来るんだ」
「あ、はい!」
突然呼ばれた緑谷は、慌てて前に出る。一体何を言われるのか身構えていた。
「変身しろ」
「え...は、はい!」
緑谷は戸田に言われた通り、オルフェノクへと変身を遂げる。初めてその変身を見る者は何人か驚いた表情をみせた。
「基本的にオルフェノクの肉体は見ての通り灰色だ。この肉体は銃火器を受け付けないほどに強固であり、伸縮性に優れている。オルフェノクの身体能力は通常の人間の数百倍の強さを誇り、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚などの機能も発達している。そして肝心の見分け方だが、腹部の方を見てほしい」
戸田が指を指す方に全員が視線を向け、緑谷も自身の腹部を見る。
「この部分だ。この模様が刻まれた部分がオリジナルとARの見分け方だ。この模様をオルフェノクの記号と呼ぶ。この記号の色が白くなっているのがオリジナルの証拠。逆にARの場合では記号の色が灰色だ。因みにオリジナルとARには特別大きな違いはない。どっちが強いとかはないがオリジナルの方が優れてはいるな。強いて言うならば進化の仕方が違うくらいだ。もういい元に戻れ」
「はい...」
緑谷は元の姿に戻り、席に戻った。生徒たちはある程度オルフェノクのことについて理解し始めていた。
「大体のことは説明したが、何か質問のある者はいないか?答えられる範囲で答えてやる」
戸田は生徒たちに視線を向け、質問がないか聞く。何人か手を挙げるものがおり、戸田はその中の1人である蛙吹に指を指した。
「オルフェノクはどうしてみんな動物みたいな見た目をしてるのかしら?」
「あ!確かに!」
「緑谷は馬みてぇだし、乾は狼みたいだもんな」
蛙吹の質問に、周りは確かにと疑問に思う。緑谷は馬のような見た目をしており、巧は狼、爆豪は蛇、轟は蜘蛛、結花は鶴のような見た目をしている。
「いい質問だな...。そのことについては諸説あるんだがその一つを挙げると、本人の潜在的な生命のイメージからきていると言われている」
「生命のイメージ?」
戸田の言う生命のイメージという言葉に、周りはあまりピンと来ていなかった。そんな中で、戸田は説明を続けた。
「生命のイメージ...。オルフェノクを見たものならわかると思うが、全て特定の生物と似たような姿をしたものがほとんどだ。わざわざ動物の姿をしなくてもいいのにだ...。これに、生命に対する本人のイメージによって反映されているのではないかと言われている。まぁ説でしかないからこれが絶対というわけではない。他に質問するものは?」
その直後、鉄哲が手を挙げた。
「先生はなんの動物なんすか?」
「....イカだ」
「イカか〜」
鉄哲の質問に戸田は少々呆れた様子を見せるが、その時、飯田が勢いよく挙手をした。
「質問よろしいでしょうか!?」
戸田は飯田に指し、飯田は立ち上がった。
「オルフェノクは一体いつからいたのでしょうか!」
飯田の質問に周りは少し気になる。オルフェノクはいつからいるのか、スマートブレインが存在を隠し通してきたと言っていたあたり、かなり昔からいたのではないかと予測する。飯田の質問に戸田は答えた。
「そうだな...。オルフェノクの存在が確認されたのは、おおよそ紀元前3000年ほど前と言われている。神話や文献、壁画などにそれらしきものが書かれていた。実際に確認されたのはつい最近だがな」
「ありがとうございます!」
「結構前からいたんだ」
「そうだ。最近ではオルフェノクと個性の関連性について研究が進んでいてな。その研究結果の一つには、オルフェノクの状態になると個性が通常より強力になるという研究結果が出されていた。身体能力が通常の人間よりも強化されていると考えれば当然だがな。他には?」
次に挙手をしたのは八百万だった。
「オルフェノクは生態系にどういった影響を与えているのでしょうか?」
八百万の質問に戸田は少し間を置いて説明した。
「.....それはわからない。オルフェノクは何故現れたのか、生態系などのように影響するのか...。そもそも進化というものはその環境に適応することであり、オルフェノクの進化もそれらと同じものと考えてもいいのだが、一体何に対する適応なのかもわからない。これは個性にも同じことが言えることかもしれないな。この質問に対する答えは『まだわからない』だ」
戸田の言うように、巧たちはどうしてオルフェノクという存在になってしまったのか深く考えていなかった。進化したということはそれなりの理由があるはずだ。次に手を挙げたのは拳藤だった。
「生まれた時からオルフェノクだった人もいるんですか?」
「それもまだわからない。事例がないからな。ただ片親がオルフェノクだった場合や、両親がオルフェノクだった場合だと、その子供がオルフェノクになる可能性は高いと言われている」
オルフェノクは怪物のような見た目ではあるもののれっきとした生物である故、繁殖するための能力もある。そこから生まれてきた子供というものは初めからオルフェノクかと言われれば些か疑問が残る。巧たちも両親のどっちかがオルフェノクではないため、この質問に対する答えにはならないだろう。
「これが最後の質問だが、他に誰かいないかな?」
戸田は質問したい生徒がいないか周りを見渡す。すると一人手を挙げる生徒がいた。戸田はその生徒に視線を向ける。手を挙げていたのは巧だった。
「こいつらもオルフェノクなのか?」
巧は流星塾生たちを指差し、流星塾生たちは巧の方を見る。この流星塾という場所に来て、巧はなんとなく察していた。謹慎中のはずの緑谷と爆豪がここに連れてこられたのにも、何か理由があったはずだ。スマートブレインが関係しているとなると、巧はこの流星塾生たちも自分達と同じオルフェノクなのではないかと考えたのだ。流星塾生たちは巧をじっと見た後、急に朗らかな顔になる。
「よくわかったな!お前の言うように俺たちもお前らと同じオルフェノクだ!」
そう言うと、流星塾生たち全員の体から模様が浮かび上がる。その姿に雄英生徒たちは驚いた。
「マジか!?」
「全員かよ...!」
雄英生徒たちが驚いている中、戸田が流星塾生に注意する。
「おい。無闇に人に見せるんじゃない」
「いいじゃないっすかぁ〜。もうバレたんだからさー」
「気にしすぎ気にしすぎー」
なんとも呑気な雰囲気に戸田はため息をつき、そして戸田は時計を見た。授業を開始してから結構たち、そろそろ時間になってきていた。
「そろそろ時間だ。早く次に行くぞ」
そう言ってこのオルフェノクの授業は終わってしまった。戸田は何も言わずに教室を出て行き、生徒たちは席から立ち上がって戸田の後について行ったのだった。