とある暗い一室で、モニターを見つめる者たちがいた。戸田も相澤、ブラドキングの三人だった。三人はそれぞれのチームの動向を観察し、どういったやり方で状況を切り抜けるのかを見ていた。
「今のところ順調だな。各々のやり方で状況を打開している」
戸田はモニター画面をみ見ながらそれぞれのやり方で状況を打開している姿を見て関心していた。その戸田に横槍を入れるように相澤が質問を投げかけてくる。
「ホログラムが相手じゃあいつらの為にはならんだろ。合理的とは思えないが...」
「このホログラムオブスタクルは数千通りの行動パターンと攻撃パターンが組み込まれている。そうそう動きを読むことなどできない。確かにお前の言うとおり
戸田の言う通り、いくら相手が計算で動くホログラムだからといって成長につながらないわけではない。このステージで重要になってくるのはチームワーク。1人だけの力だけではどうにもならない状況は必ず存在し、その状況をチームと乗り越えてこそに意味があるのだ。
「それに生身の人間相手との対戦ならこのステージのゴールを抜けた先にあるフィールドでの対戦がある。そこで相手の個性を見極めていけばいい」
相澤の質問に対して戸田は的確に応え、相澤はこれ以上何も言ってこなかった。
●Aチーム●
おおよそ数十人の敵に囲まれたAチームは警戒していた。ホログラムたちはAチームに銃を構え、攻撃の体制に入っていた。
「気をつけて、あの銃はくらっても死にはしないけど、骨くらいは簡単に折れるから」
西田の警告に周りはゾッとする。どうすればいいか思案していると、青沼が青山に声をかけた。
「合図を出したら撃て」
「ジェコンプリ☆」
青山は特に何も言わずに承諾する。了承を得た青沼は手を前にかざす。
スペースディストーション
すると目の前に大きな穴のようなものが現れ、Aチームを中心に合計5つの空間が現れた。ジリジリと迫ってくるホログラムにある程度の距離まで近づいてきたことを見計らった青沼は青山に合図を出した。
「撃て」
ネビルビュッフェ☆レーザー!
青山はコスチュームのベルトと肩アーマーからレーザーを断続的に発射し、そのレーザーが青沼の作り出した穴を通り抜ける。するとそのレーザーがAチームの周りにあった他の穴から現れ、周囲のホログラムを一掃した。
「やった!」
「いや、まだだ」
一掃はできたものの、まだまだホログラムの数は多い。次から次へとやってくるホログラムたちは手に持っていた銃を構え、一斉射撃をした。迫り来る弾丸に防ぎようがなさそうだったが、弾丸がAチームに直撃する寸前に神道が手を真上にあげた。
アクアウォール
するとAチームを取り囲むように水の壁が現れ、銃弾を防いだ。ホログラムはまだまだ銃弾を撃ち続けるが、しばらくするとその攻撃が止む。
「攻撃が止んだ...?」
「効かないって学んだんだ。あのホログラムは学習機能が搭載されているからね」
攻撃をしなくなったことに疑問を浮かべる泡瀬。その疑問に西田が答えた。今ここで壁を解いて外の様子を確認したいところだが、解いた瞬間に一斉攻撃をくらってしまう。安全に外の様子を確認するために、ここは甲田の出番だ。甲田は空を飛んでいる鳥に向かって話しかけた。
「お行きなさい空の使者よ...。敵の動きを探るのです」
甲田は空にいる鳥たちに命令を出し、空からホログラムの偵察をした。しばらくして偵察の終わった鳥から甲田は何が起こっているのかを説明する。どうやらホログラムは散らばって建物の中や影に隠れているようだ。向こうもこちらの動きを伺っているのだろう。
「このままじゃゴールに行けない。完全に八方塞がりですね...。一体どうすれば...」
「ここは俺に任せて」
そう言って神道は手を前に出す。
ワーテルスプラッシュ
神道は前に出した手を握ると、Aチームを囲っていた水の壁が勢いよく爆発し、飛び立った水滴が辺りのビル群を破壊していく。それと同時にビルの中に潜んでいたホログラムたちも倒していき、ある程度一掃することができた。
「まだ片付いていないね。みんな備えて」
神道の言葉に皆警戒し、攻撃に備える。それと同時に残りのホログラムたちも一斉に現れる。
「行くよ!」
神道の掛け声と共に、Aチームは一斉に駆け出し、ホログラムたちに突っ込んでいった。西田はホログラムに攻撃する直前に背後にいた一体のハウンドルーパーが変化し、一本のダガーになる。
トルーパーダガー!
西田はトルーパーダガーで迫り来るホログラムに攻撃する。その直後、後ろから別のホログラムが攻撃を仕掛けてくるが、そのホログラムにハウンドルーパーたちが飛びかかり西田を守る。
「ありがとう!俺は大丈夫だから他のみんなの援護をお願い!」
ハウンドルーパーたちは西田の命令で他のメンバーの援護に向かう。宍田は個性を発動して二倍ほどの体格の獣と化しホログラムに飛びかかる。その圧倒的なパワーで次々とホログラムを投げ飛ばしていった。そこにハウンドルーパーたちも加わりまるで狼の群れのようだった。
「「「「「ガアアアルルルルルルル!!!」」」」」
また別のところでは甲田はこのフィールドに集まっている鳥たちを集め、ホログラムたちを撹乱していた。
ヒッチコックバーズ!
その隙にハウンドルーパーたちが飛びかかりホログラムを倒していく。また別のところでは塩崎がツタの髪でホログラムたちを拘束していく。
拘束されたホログラムたちは持ち上げられ、地面に叩きつけられ、遠くへと投げ飛ばされた。その後ろでは蛙吹がまだあの身体能力や舌でホログラムたちに攻撃しているが、後ろからホログラムが奇襲を仕掛けていたことに反応が遅れ、回避や防御ができなかったが、突然蛙吹と塩崎は何かに引っ張られるように後ろに吹き飛ぶ。吹き飛んだ先には神道がおり、2人をキャッチした。
「二人とも大丈夫?」
「はい。ありがとうございます」
「ええ、ありがとう」
神道は2人の安否を確認した後、狙いを定めるように親指を立てながら人差し指と中指をホログラムの方に向けて銃の形を作る。
ウォーターバレット
すると指先から高圧の水が発射され、ホログラムたちを撃ち抜いていく。
スペースディストーション
ネビルビュッフェ☆レーザー!
一方で青沼は周囲に穴を置き、ホログラムの集中砲火を回避し、逆にその銃弾をホログラムたちに向けて撃ち返した。その間に青山と泡瀬の2人は青沼の穴を通り抜けながら青沼はネビルレーザーで攻撃、泡瀬は溶接でホログラムの動きを封じ、ホログラムたちを撹乱していった。ある程度まで数は減らしていったものの、それでも数は多い。このままではジリ貧だと感じた神道は全員に命令を出した。
「みんな!一旦ここは逃げてゴールを目指そう!」
「え!?でも...!」
「いいから!別に全部倒さなくちゃいけないってルールはないからね!」
そう言って神道、西田、青沼の三人は攻撃をやめ、ゴールの方に向かった。他のメンバーは戸惑いながらも三人の後を追う。
●●●
しばらく走った後、大勢いたホログラムの姿も見えなくなった。上手く巻くことができたようだ。
「上手く巻けたね...」
「あの、こんなことしていいのですか?私たちはヒーローなのに...」
「一々あんな数相手してるだけ面倒くさいだろ」
塩崎の質問に青沼は面倒くさそうに答える。そういう考え方はヒーローとしてどうなのかといささか疑問だが、彼らには何か考えがあるのだろうか。
「あそこにあるタワー見える?あれがゴールだよ」
西田が指差す場所には空高く聳え立つタワーがあった。高さ的に見れば300mほどはありそうだった。
「東京タワーくらいあるな...」
「ゴールはタワーの最上階だ。そこまで行くにはかなり時間かかると思うけど、あそこまでの辛抱だ」
Aチームは周りにホログラムがいないか確認しながらタワーへと向かった。タワーの入り口に止まったAチーム。目の前には金属製の固く閉ざされた扉と、一つの看板があった。
『この最上階には人質が囚われている。救出せよ』
看板に書かれている内容は人質の救出というわかりやすい内容だった。おそらくその人質を救出すればゴールとなるのだろう。ひとまず、目の前の扉を開けることからだ。試しに押してみるが、ちょっとやそっとではビクともしなかった。
「どうやって通ればいいのかしら」
「そうだ!サレンダーの空間に穴開けるやつ使えば通れるだろ!?」
「悪いけど、俺のスペースディストーションは目に見える範囲じゃないと使えない。扉の向こう側が見えないから、通り抜けることは出来ない」
泡瀬は青沼の個性で通り抜けるのではないかと考えたが、そう簡単にはいかないようだ。どうすればいいかと頭を悩ませていると、西田が前に出た。
「ここは俺に任せて。このくらいの扉だったら俺が開けられる。みんなちょっと離れてて」
そう言って西田は扉の前に立つ。周りも言われた通りに西田から距離を取る。そして西田は手を前に出し叫んだ。
ボルコーン!
西田が叫んだと同時に地面から炎に包まれたユニコーンが現れた。その姿は全身が溶岩に包まれ、そのヒビから炎が漏れ出ており、正に地獄から現れできたようだった。遠くにいるほかのメンバーはボルコーンの熱気に顔を手で覆ってしまう。
「あの扉を溶かしてくれ」
西田の命令を受けたボルコーンは大きく頭を振りかぶって頭の角を振るう。するとボルコーンの角から放たれる炎により扉は一瞬でドロドロに溶けてしまい、ビクともしなかった鉄の扉が後も簡単に開いてしまった。西田はよくやったと褒めるようにボルコーンの頭を撫でる。
「熱くないのですか?」
「うん。俺は触っても平気だけど、他のみんなは触ったら大火傷じゃ済まないから気をつけてね」
宍田の質問に西田は大丈夫だと返した。その後Aチームはタワー内に入り、人質のいる最上階のゴールへと向かった。
●Bチーム●
木や岩に隠れていたホログラムたちに囲まれてしまったBチーム。一旦罠にかかってしまった木村と巧の2人を鎌切が腕を刃物状にし縄を切り救出する。
「すみません...。私の不注意で...」
「気をつけとけ...!」
巧は少し怒りながらも立ち上がり、木村に手を貸す。木村は「ありがとうございます」と言いながら巧の手を借りる。Bチームは待ち受けていた多勢のホログラムたちに囲まれしまい全員攻撃の体勢に入る。
「全員自分の身を守ることだけを考えろ」
徳本の言葉に全員に緊張が走る。ホログラムにはそれぞれ棍棒や弓、ナタなどの武器を持っており、当たれば大きなダメージとなるだろう。ホログラムたちがある程度の距離まで近づいた途端にBチームに一斉に襲い掛かり、Bチームは反撃を開始した。
エアプリズン!
円場は吹き出した息でホログラムたちを捕縛する。その直後、木村が円場がホログラムを捕縛したエアプリズンを糸で巻きつける。
ストレッチスレッド!
「グッドです!ツブラバさん!」
「お、おう!」
円場は木村が一体何をするのか分からず、戸惑いながら答える。そして木村はものすごい力で捕縛したホログラムをハンマー投げのように振り回し、上空へと放り投げた。
「今です!ファイズさん!」
合図を出された巧は何をするのか理解し、手のひらに衝撃の球を作り出し、姿勢を低くして勢いよくホログラムたちに向かって放り投げた。
インパクトスローイング!
そして真っ直ぐと飛んだ衝撃の球はホログラムたちに当たり、ものすごい衝撃波を放った。
「スゲェ...」
「グッドですファイズさん!」
「ああ」
一方で緑谷はワン・フォー・オールで身体を強化し、迫り来るホログラムたちを迎え撃っていた。ホログラムは武器を構え、緑谷を攻撃しようとしたが、その後ろから鎌切がナイフ状にした腕でホログラムたちの武器を無力化した。そして緑谷はホログラムたちに向かって勢いよく蹴りを放つ。
SMASH!!
ホログラムたちは緑谷の放った衝撃で後方へと吹き飛んでいく。その先には徳本はホログラムたちを一掃していた徳本がいた。
「あ!」
緑谷はこのままだとホログラムたちが徳本にぶつかってしまうと思ったが、徳本は吹き飛んできたホログラムたちを避けようとはせず、逆に必殺技を繰り出した。
グラヴィティラリアット!
グラヴィティトラースキック!
グラヴィティ
グラヴィティ
徳本は次々と飛んでくるホログラムたちを一撃で倒し、最後に飛んできたホログラムの首を掴む。そして首を掴んだままそのまま地面に叩きつけた。
グラヴィティチョークスラム!
ホログラムを全て倒した徳本は緑谷の方に振り向いて注意した。
「周りはよく見ておけ」
「すみません!」
爆豪は両腕を爆破させながらホログラムをアクロバティックに攻撃していく。そして一気に襲いかかってくるホログラムたちに向かって手のひらを前に出した。
爆破の雨がホログラムたちに襲いかかる。ホログラムたちは次々と倒れていき、目の前にはもう誰も立っていなかった。
「ハッ!雑魚が!」
しかしまだ後ろにホログラムがいることに気がついた爆豪は直ぐに振り向くがすでに拳を振り下ろされており、避けることができない爆豪は咄嗟に防御をとるが、突然ホログラムは倒れてしまう。ホログラムの後ろには太田がおり、このホログラムは既に太田が倒していたようだ。
「油断は禁物だぞ」
「チッ...!」
爆豪は助けられたことが気に入らないのか舌打ちをする。太田はそんな態度を取る爆豪に少し笑みを浮かべる。そして太田は右の方を見ると取陰がホログラムと戦っているのが見えた。
射出パンチ!
取陰は必殺技でホログラムたちを攻撃するが、数の多さに押されていた。ホログラムは距離を詰めて取陰に攻撃する。取陰は咄嗟に防御を取るが、そこに太田が駆けつけ、取陰を守るように立ち、ホログラムの顔面に蹴りを入れていた。
「体制を立て直すために一旦距離を取ることも頭に入れておいた方がいい。大丈夫か?」
「は、はい...」
取陰は太田の整った顔立ちに顔を赤くしてしまう。平気そうだと感じた太田は残りのホログラムの数を見る。
「あと数体と言ったとこか...」
そう言って太田は姿勢を低くし、走る体勢に入る。
シャイニングハイウェイ
直後、太田は閃光となり目にも止まらぬ速さで次々とホログラムたちを倒して行った。太田が走った後には光の残像が残り、その速さがうかがえる。数えられないほどいたホログラムたちはあっという間にいなくなり、Bチームは一息ついた。
「デスペラード。邪魔をするな。鍛錬の邪魔になるだろ」
「悪い。だがそろそろゴールに行かなきゃだろ?」
「...それもそうだな」
徳本は太田を咎めるが、太田はゴールに行くべきだと説得する。その後、Bチームはゴールへと向かった。
●Cチーム●
「「「「「ぎゃあああああああああ!!!」」」」」
Cチームは現在、迫り来る雪崩から全速力で逃げていた。
「どうすりゃいいんだこれえええ!!」
「誰かなんとかしてえええ!!」
このままでは雪崩に生き埋めになり、最悪全員死んでしまう。そろそろCチームの体力も限界に近づき、雪崩も真後ろまで迫っていた。
「トゥルーカラー!あの雪崩をなんとかして!お願い!」
「任せて!」
犬飼は伊藤に雪崩をなんとかしてほしいと頼み、伊藤は承諾する。すると伊藤は雪崩の方に振り向くと、地面を強く叩いた。
ソリッドガス!
直後、雪崩はCチームを飲み込み全身に突き刺さる冷たさが走るが、押し潰されそうな重圧感は感じなかった。雪崩はCチームを通り過ぎていき霧のように散布していった。
「トゥルーカラーナイス!」
「これぐらいヨユーヨユー!」
伊藤の活躍によりことなきを得たCチーム。かなりの距離を走ったため、皆息を切らしている。ふと、切島があるものに気がついた。
「みんなあれ見ろよ!」
切島が指をさす方向に皆視線を向けると、極々小さな灯りのようなものが見えた。それを見たCチームは喜びに包まれる。
「よっしゃ!ゴールだ!」
「早く行こうぜ!」
「「「「「おお!」」」」」
Cチームはゴールが見えたことで完全に油断してしまい、皆急いでゴールへと向かった。
●●●
ゴール付近まで近づいたCチーム。ゴール目前で全員の足が一斉に止まる。その理由はゴール周りに武装したホログラムたちが待ち構えていたのだ。ゴールである山小屋は鉄の壁と大量の罠。戦車や武装ヘリコプターなど、映画の出てきそうな軍事基地にCチームは絶望感に包まれた。
「何あれ...」
「嘘だろおい...。前はこんなのなかったのに...」
「いつのまにかレベルアップしてやがる...」
こんなはずではなかったと予想外の出来事に唖然としてしまう。ふと、目の前にある看板のようなものが見えた。その看板に書いてある文字を読んでみると、どうやらあの山小屋には軍事兵器が隠されており、それの回収することがこのステージのゴールとなるらしい。
「なんか色々とアメリカンだな...」
「どうやって行くのこれ...?」
あの様子から見て、正面突破をするのは賢い方法ではない。どこかに抜け道などを見つけてそこを通って敵を欺き兵器を回収してゴールへと目指すのが適切な方法だろう。
「行くぞお前らあああああああああああああ!!!」
「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
「「「「「「えええええええええ!!?」」」」」」
しかしそんな思考回路は有していない流星塾生の3人は犬飼の掛け声とともに全速力で正面突破をしかけた。
ブースト
イグニスパグナス!!
高宮と犬飼は個性を発動し、高宮の体がオレンジ色に発光し、犬飼の右拳が炎に包まれる。そして2人は飛び上がり、高宮が左拳、犬飼が右拳を突き出して鉄の扉をぶち破り大爆発した。当然ホログラムたちにバレてしまい、大量のホログラムたちがCチームに迫ってくる。あまりにも無計画な行動に雄英生たちは唖然としてしまう。
「ゴールできんのかコレ」
「さぁ...」
こんなメンバーがいて本当に大丈夫なのかと心配になってくる。しかし、こんなところで突っ立っていても仕方がないので自分達も行動するしかない。
「とにかく俺たちも行くぞ!負けてらんねぇ!!」
「正面突破!男見せるぜ!」
「ちょっ!お前ら!あーもー俺たちも行こう!」
「こーなったらヤケクソだぁ!!」
鉄哲と切島は自分たちも負けてられないと三人の後をついていき、その他も流されるように後に続いた。迫り来るホログラムたちは銃を構え、撃ってくるところに伊藤が前に出る。
ガスソリッド!
すると目の前の空気が固体化し銃弾を弾いてしまう。その右後ろから芦戸が、左後ろからは角取が現れる。
アシッドショット!
THUNDER HORN!
芦戸は手から酸を出して武器を溶かして無力化し、角取が四本の角を飛ばし、ホログラムを倒していく。
「やったやった!みんなハイターッチ!」
「「「イェーイ!」」」
上鳴はホログラムに向かって電気を放ち、吹出は自身が放ったオノマトペでホログラムたちを感電させていた。
ターゲットエレクト!
ビリビリ!
「おお電気か!じゃあ俺も!」
2人の様子を見ていた犬飼は突然、赤かった髪と右目が青色に変色する。そして手のひらに青い電気が迸っていた。
エレメントトニトルス!
この姿は犬飼が電気の力を発揮するときになる姿である。そして犬飼は左手に小さな電気の塊を作り、右手に雷でできた短剣のようなものを作り出す。
トニトルスフラグメント!
トニトルスグラディウス!
犬飼は遠くから攻めてくるホログラムたちに左手に持った雷の塊を投げる体勢に入る。
「チャージズマ!コミックマン!さっきと同じ技を出してくれ!3で行くぞ!」
「おう!」
「わかった!」
上鳴と吹出は合図を待ち、犬飼はタイミングを合わせるために数え始める。
「1!2の!3!」
ターゲットエレクト!
ビリビリ!
三人はタイミングを合わせて、電気を放つ。その電気はホログラムたちに感電し、動きを封じる。その瞬間、犬飼は手に持っていたトニトルスグラディウスを構えて雷神の如く走り出した。
トニトルスヴェナートル!
犬飼はホログラムたちを一瞬で切り裂いていき、あっという間に全てを倒してしまった。
「見たか俺の力!まさに雷神!それは
ホログラムを倒した犬飼は気分がいいのか軽く駄洒落を言って見せる。その直後に上鳴と吹出が駆け寄ってきた。
「お前すげぇな!っていうかさっきまで髪の毛赤かったのに青くなっちまってるし、なんか火じゃなくて電気出してたしお前どういう個性なわけ?轟みてぇだな」
「こんなもんまだまだ序の口よ俺の力は。
一方、高宮は自身の個性で強化した身体能力でホログラムたちを次々と薙ぎ倒していく。その時、後ろから強い風が吹き、振り返るとそこには武装したヘリコプターが高宮の方に攻撃を定め、ミサイルを撃ち込んできた。高宮はそのミサイルを軽々と避けるが、まだまだミサイルの攻撃は止まない。高宮はどうしようかと思っていると、切島と鉄哲の2人が見えた。高宮は2人に近づく。
「二人とも!ちょっと力貸せ!」
「「おお!!」」
「じゃあ腕をこうして!」
2人は理由も聞かずに承諾すると高宮に腕を頭の上で交差してほしいと言われ、理由もわからずその体勢に入る。そして高宮は二人の背中を触ると個性を発動した。
ブースト
すると切島と鉄哲の体に力が漲る。今まで感じたこともない力に、二人は訳も分からなかったが、テンションが高まっていた。
「なんかわかんねぇけど力が漲るぜ!!」
「うおおお!今ならあのヘリぶっ壊せそうだ!!」
そう言って2人は個性を発動し、肉体を硬質化、スチール化させる。
「あれ!?動けねぇ!!」
「体が重い!!」
「お前らそのままでいろよ!!」
なぜか2人の体がいうことをきかず、高宮に言われた体勢のまま動けなくなってしまった。そして高宮は右手に切島、左手に鉄哲を持つ。そして高宮は2人を持ったまま高速回転し、武装ヘリに向かって思いっきり投げた。
「くらえええええええええええええええええ!!!」
「「ぎゃあああああああああああああああ!!!」」
投げ飛ばされた二人は物凄い勢いで武装ヘリにぶつかり大破した。爆破の中で切島と鉄哲は先ほどと同じ体勢のまま落下していき、雪の上に突き刺さる。高宮はその2人を地面から抜き取り高笑いする。
「ハハハハハハ!!2人ともいいぶっ飛びだぜ!!」
「「...........」」
かなりの数を撃破したCチーム。見たところもうこっちに向かってくる敵はいなかった。全て倒してしまったのだろう。
「ゴールはすぐそこだ!行くぜみんな!」
「「「「「おお!!」」」」」
●Dチーム●
Dチームは何もない暗い洞窟の中を歩き続けていた。罠があるわけではなく、ホログラムも姿を現さない。ただ長く暗い道を歩くだけだった。そんな中で常闇が質問をした。
「いつまで歩けば、この静寂の暗闇から解放されるのだ?」
「さてね。運が良ければ数分。運が悪ければ何日も出られないかもね」
常闇の質問に淡々と答える百瀬。運が悪ければ数日は出られないと言われた周りは少し不安な顔をする。
「まあそれは銃吾がいなければの話。銃吾がいれば時間はかかるけど、絶対に出ることはできるよ」
百瀬の説明に周りは安心する。その直後、先頭を歩いていた響が突然足を止めた。響が足を止めたのを見て、全員足を止めた。響が足を止めた理由は目の前に瓦礫の壁があったからだ。
「行き止まりじゃねぇかよ!もしかして道間違えたか!?」
「いや、ここであっている。ただここの瓦礫が邪魔なだけだ」
砂藤は道を間違えてしまったのではないかと思い、焦ってしまうが響は否定する。そして響は隣にいた新井の方を向いた。
「ストレンジャー、頼めるか?」
響は新井に瓦礫を退けるように頼む。新井は何も言わずに前に出た。
「みんな。少し下がった方がいい」
響は周りに注意を出し距離を取る。新井は瓦礫を前にして少しだけ深呼吸をすると、全身に刻まれた刺青が青く光り輝く。そして新井は両足を開き、右手に握り拳を作って腰に添え、左手を前に出す。空手でいう正拳突きの体勢になった。そして新井は目を見開くと、勢いよく正拳突きを放った。すると目の前の瓦礫が一瞬で吹き飛び、その風圧が伝わってくる。
「つまんねぇ...。このステージ嫌いなんだよ」
「文句を言うな。もうすぐゴールだぞ」
●Eチーム●
「このステージは一体どこなんですか?地下にしてはかなり広いように感じるのですが...」
毒ガスが満ち溢れる通路を通っている最中、八百万はふと、このステージについて質問をしてきた。その質問に阿部が答えてくる。
「それは...。その、なんて言うのかしら...。空間の広がり...?って言うか...。次元の...。えっと...ヘルプ...」
阿部は必死に説明をしようとしているが、いまいち理解できない。阿部は説明をするのを諦め、木下に助けを求めた。
「ど素人が語ろうとするんじゃないよ全く...。いいか?ここは簡単に言えば人工的に作られた次元だ。アーティフィシャルディメイションとも言う。まぁ短く人工次元とでも呼べばいいさ。この人工次元は時間と空間と意思とエネルギーと物質の中間でもある次元だ。全てが相対的な関係なんだ。歯車のように組み合わさった関係と言った方がわかりやすいかな?」
「「「「「?」」」」」
「この人工次元内は本来あるエネルギーによって満ちている。そのエネルギーが物質に変化し、物質がエネルギーに変化したりと循環が常に行われている。その性質を利用するためにこんな場所を作りたいという意思、つまり電気信号を送ることによってこんな研究所みたいな空間を自由に作り出すことができるんだ」
「「「「「???」」」」」
「さっき説明した意思によってエネルギーと物質の循環を制御する方法。だがこの人工次元は時間でもあり空間でもある。つまりこの人工次元に人間と同じ電気信号を再現してそれを送れば空間に歪みが生じ、同時にこの空間と時間、エネルギーと物質が性質を変えて歪む。その原理を利用してお前らは山の中から太平洋のど真ん中に一瞬で移動したんだ」
「「「「「?????」」」」」
「すごいだろ!?これを発見したのは俺じゃねぇけど、発見した科学者はマジでノーベル賞モンだぜ!いや!ノーベル賞じゃ物足りないくらいだ!これは世紀の大発見!マジにヤベェだろ!!」
「「「「「???????」」」」」
木下の説明に、周りは全く理解できなかった。人工次元やら時間と物質が相対的な関係やら全く意味がわからない。その反応を見た木下は少しため息をつく。
「結構噛み砕いて短めに説明したつもりだったんだがな.........。ほんと低脳どもに話合わせんのは疲れるぜ......」
「ヤオモモ、さっきの説明わかるか?」
「いえ、私にはさっぱりですわ」
瀬呂は木下の説明が一つも理解出来ず、八百万に助けを求めるが、八百万も理解できていなかった。そうしてしばらく歩いていると周りに充満していた毒ガスが晴れていき、Eチームは毒ガス通路から抜け出すことができた。棟宮はヒーリングシールドを解く。ガスが晴れたいる場所は相変わらず無機質な機械まみれの広々とした空間だったが一つ違う点があった。
「扉が3つあるな」
それは扉の周りに別の扉があったことだった。真正面と左右に扉があり、この扉のどれかに入らなければいけない様子だった。
「どの扉を通ればいいんでしょうか?」
「わからん。だからここは三手に分かれよう。9人だから丁度いいだろ」
木下は三手に分かれて扉を通ろうとする。確かに全員同じ部屋に入ってもその扉がゴールでなかったら、チームは全滅してしまうだろう。皆、木下の意見に納得している様子だったが、峰田が反論を出した。
「なんだよそれ!?もしこの3つ扉の内ゴールが1つしか用意されてなかったらどうすんだよ!?」
峰田の意見も当然の意見だ。もしこの扉の中にゴールへの道が一つしかなかった場合、他の6人はどうなってしまうのか。未知への不安による反論だった。そんな峰田に、木下は見下すようにそして憎たらしい顔をしながら答えた。
「あのさぁ。お前みたいなポコチン野郎の意見なんか聞いてないんだよねぇ。黙って俺の指示に従えばいいんだよ。な?」
木下の憎たらしい顔に峰田は頭に血管が浮かぶ。木下すぐに真顔になるとEチーム全員に向いた。
「よしじゃあ三手に分かれるぞー。そこの痴女。こい」
「え?私...って誰が痴女ですか!?」
「お前以外に誰がいるんだよ。そんな格好して痴女じゃないって言い張る気かお前?」
八百万は自分が痴女だと侮辱され、怒りが込み上がる。木下はそんな格好をしているお前が悪いと言いたげな顔をしていた。八百万は顔を真っ赤にしながらも木下のチームになる。そして次に木下は回原に指を指した。
「そこの一番パッとしないお前。黒髪でダセェコスチューム着たお前だ。こい」
回原は自分のことを言っているのかと言いたげな顔をして木下の方に来る。そして残ったチームは木下が指図し始めた。
「そこのポコチン野郎と金髪のヘナチン野郎はバーンと一緒に行け。そして地味なやつの次に地味な黒髪のお前と地味でもダサくもない1番面白くない女。レイレディレイの方に行け」
あまりにもあんまりな侮辱的な発言に木下に対する周りの好感度は地に落ちていった。そして阿部はそんな木下に呆れて頭に手を置く。そして3チームに分かれたEチームはそれぞれ別々の扉に入っていった。
●Fチーム●
日差しが突き刺してくる砂漠の中、Fチームは山吹が作り出した星の橋で地雷の海の上を渡っていた。Fチームは河内が作り出した布で日差しを防ぐことはできているが、熱までは防げないのでかなりの汗をかいていた。このままでは脱水症状で全員倒れてしまう。そんな不安の中、結花があるものを見つけた。
「あの、あそこに何かありませんか?」
結花が指を指す方向に全員が目を向けると、確かに黒い影のようなのがあった。
「ほんまやな。なんやろあれ?」
「おお、水源じゃないの。この地点で水源があるんだよなぁ」
あの黒い影が水源だと言う河内。この日差しが強いステージで水源を見つけたとなれば、すぐにでも向かった方がいいだろう。何人かは体力の限界に近づいていた。
「この辺りはもう地雷は見当たらない。そろそろいいだろう」
「あーよかった。ちょっと疲れちゃった」
三原はこの辺りに地雷がないことを確かめ、山吹は個性を長時間使い続けたせいか少し疲れていた。
●●●
水源についたFチームは水源の周りに生えたヤシの木の木陰の下で一息ついていた。この辺りでは地雷は埋まっていない。皆安心して休憩していた。そんな中、三原は水源の水質を確かめていた。
「よし、飲めるぞ。ジ・エンド。水筒を人数分作ってくれないか?あと、ポリタンクを三つほど頼む」
「了解」
三原に頼まれた河内はその場にある砂で人数分の水筒と三つのポリタンクを作った。そして三原は水筒の中に水を入れていき、ポリタンクの中にも水を入れていく。
「全員水分補給をしておけ!今の内にな!」
「はぁ、よかった〜」
「喉カラカラ」
皆、水源に集まり水を飲んだ。渇きかけた体に水を流し込んで潤していった。朦朧としていた意識が回復していき、水を被って体を冷やした。
「人数分の水筒だ。待て」
三原は水の入った水筒を全員に配っていく。そして全員準備ができ、早速出発と言ったところで尾白があるものに気づいた。
「ん?なんだこれ?」
尾白は自分の足元に砂を踏む感触と違う、もっと硬い鉄のようなものを踏んでいるような感触がし、足元を見る。尾白は屈んで砂を払うとそこにはとってのついた鉄の扉のようなものがあった。
「みんな!これ見てよ!」
尾白は全員を呼ぶと皆鉄の扉を見る。
「なんだこれ?」
「こんなの前からあったかしら?」
「いや無い。新しく作られたんだろうな」
Fチームはこの謎の空間に繋がる扉を黙って見つめていた。少しの沈黙があり、河内が口を開いた。
「行ってみるか?」
「そうねぇ」
河内の提案に山吹は少し考える。その時、この提案に三原が待ったをかけた。
「おい、中に何があるのかわからないのに無計画に行くのか?少しは考えろ」
「おいペーシェンス。このステージがどんなのかお前わかってるよな?かなり広いんだぞ?この水源が見えたってことはまだ1/4しか歩いていないってことだ。しかも水源はここしかない。このままじゃゴールまで歩くまでに全員ぶっ倒れちまう。お前も経験しただろ。ゴールまで歩いて死にかけたこと」
「待って、このステージそんなにやべぇの?」
骨抜はこのステージの恐ろしさを知り、他何人かの顔が青ざめる。
「もしかしたら近道かもしれないだろ?なぁ頼むよ。暑すぎて頭回んねぇんだ」
河内は三原に懇願し、三原も少し考える様子を見せる。すると三原は懐から何かを取り出した。それはチューインガムであり、三原は目を閉じてチューインガムを食べ、何度か咀嚼するとガムを風船のように膨らました。そして膨らんだガムが割れた瞬間。三原は目を開いた。
「行こう」
「よし!そう来なくっちゃあな!」
河内は嬉しそうに扉を開いた。中は案の定空洞で、光がないせいで全く見えない。冷たい空気が流れてくるのを感じ、暑さもあってか気持ちがいい。河内は警戒もせずに飛び込んでいき、他の者も続いて降りて行った。
●Gチーム●
ぬかるみの中を歩くGチーム。その間、明智が隣にいた葉隠を黙ったままジッと見ていた。視線を感じていた葉隠は少し恥ずかしそうにしていた。葉隠はジッと見てくる明智に話しかけた。
「えっと、どうかしたの...?」
「..........」
「もしかして私の顔に何かついてる?」
「.........」
「ねぇ聞いてる?」
「.........」
葉隠は何度も話しかけるが一向に返事がこない。諦めて前に進もうとしたその時、ずっと黙ったままだった明智が突然口を開いた。
「....その格好。裸なのか?」
「え!?...う、うんそうだよ」
「.....恥ずかしくないのか?そんな格好をして。そういう趣味なのか?寒くないのか?それがコスチュームならば冬はどうするんだ?誰かこのことを指摘していないのか?さっきの大雨でずぶ濡れじゃないか。体温を奪われて体が震えている。どうしてこの状況を想定していなかったんだ?」
「え、えっと...」
急にベラベラと話し始める明智に周りは視線を向け、葉隠は戸惑っていると、前にいた上条が顔を出した。
「サブスティテュート。コスチュームを貸してやれば良いではないか?である」
「.....そうだな」
上条の提案に明智は頷くと、指にはめていたナノリングをとる。すると明智のコスチュームの格好から私服の姿に変わった。明智は自身のナノリングを葉隠に渡した。
「ダメだよそんな。人のコスチュームなんて着られないし。それにサイズだって合ってないし...」
「いいからつけろ」
明智は無理矢理ナノリングを葉隠の指にはめると、葉隠に明智のコスチュームが身についた。しかも葉隠のサイズにピッタリと合っていた。
「すごい!私のサイズにピッタリ!どういうこと!?」
「このナノリングには様々な機能が備わっているのである。ナノリングをはめた人物の体型に合わせて自動的にサイズを変化させることも可能であり、通気性、耐熱性、防水性に優れ、さらには銃弾を防ぐほどの防御性にも優れているのである。しかも軽くて伸縮性も抜群。動きやすいはずである」
葉隠は新感覚に興奮し、軽く飛び跳ねたりしていた。しかも、徐々に体が暖かくなっていくのを感じる。まるでこたつの中にいるような感覚があった。
「これすごいね!なんかすっごくあったかい!」
「ヒーター機能付きでありますからな。寒い冬にはこの機能を使うのである。夏は冷却機能もついているのである」
「ずいぶん多機能的ノコね」
「これを作ったと言っていた木下というものはかなりの才能があるのだな。あまり良い印象を受けなかったが...」
他の者はあまりの機能性の高いコスチュームにかなり感心をしている。これを作ったと言っていた木下は相当の技術力があるのだろうと思っていた。
「翼は性格に難があるものの、ものづくりの才能だけは目を見張るものがあるのである。我々もかなり役立てさせて貰っているのである」
上条の説明に皆感心している中、私服の姿のままの明智に葉隠が話しかける。
「ごめんねコスチューム借りちゃって。すぐに返すから」
申し訳なさそうにしている葉隠に明智は黙ったまま赤い刀身の刀を葉隠の前に出した。一瞬葉隠はヒヤッとしたが、明智は彼女を斬るわけではなく、ただ見せているようだった。その刀はまるで血のように真っ赤であり、微かに音叉のような音が響いていた。不気味さと同時に息を呑んでしまうほどの美しさがあった。
我が刀
刀魂紅刃
我が鎧
明智はそれだけを言うと、
「ねぇあんた。前どこかで会った?」
「..........」
耳朗は澤田に対してどこか既視感を感じており、質問を投げかけるが、澤田は無視を決め込んでいるのか何も答えなかった。しばらく道なりに進んで、このままゴールに着いてしまうのではないかと考えていた矢先、Gチームはある場所で止まった。
「なんだこれ...」
Gチームが止まった前には寂れた廃墟が建っていた。どこもかしこもボロボロであり、落書きや散乱するゴミなどがある。いかにもホラー映画に出てきそうな外観に、ホラーが苦手な耳朗は顔を顰め、対照的にホラーが大好きな柳は顔を輝かせていた。
「今からここはいるの...?」
「うわぁ、いかにも出そうってかんじ」
「楽しみ...!」
「ずいぶん嬉しそうノコね」
「この廃墟。誰か潜んでいるのか?」
「マジで勘弁して...」
みな口々に話す中、澤田が近くに立ってあったボロボロの立て看板に目をつけた。
「精神病院か...」
「今回はその設定なのか?である」
「え?毎回変わるの?」
「その通り。この前は洋館だったのである」
このステージのコンセプトはホラーなのかと周りは思っていたその時、上条がこのステージについて説明し始めた。
「まず言っておくのは、この廃病院の中には必ず1体のホログラムが潜んでいるのである。この1体のホログラムは我々を発見次第自動的に追跡を始め、我々を捕まえようとするのである。そうなる前にゴールに辿り着かなくてはいけないのである」
「ねぇこれ、何を想定したステージなの?」
「そしてもう一つ」
「無視しないで!?」
上条の説明にますますホラー映画じみた設定だなと周りは思い、葉隠の真っ当な疑問に上条は無視をして説明を続けた。
「この廃墟はおそらく迷路のように複雑かつ広大である。トラップなども多く仕込まれている故、単独行動は危険である」
「ってことは散らばらずに集団で行動すれば良いよね」
「確かに。その方が安全だろうな」
Gチームの作戦では、集団で行動すること、中に一体のホログラムはどこにいるかわからず、しかも罠が多いとなると、単独行動は危険すぎる。そうと決まれば、Gチームはこの廃墟の中に入っていく。しかしただ1人、耳郎だけがその場で動かずにいた。それに気づいた澤田は耳朗に近づく。
「ごめん、ちょっと待ってて...!後で追いつくから!」
「..........」
澤田は耳郎の様子を見ると明らかに震えている様子に澤田は小さく答えた。
「単独行動は危険だ。一緒に来い」
「いや、本当に大丈夫だから!心配しなくても...!」
耳郎は恐怖を隠すために気を張って誤魔化しているが、澤田にはそんな誤魔化しは通用しなかった。すると澤田は震える耳郎の手を取った。
「大丈夫だ。俺が付いてる」
「え...」
耳郎はこの時、澤田が言ったこの言葉に聞き覚えがあることを思い出した。そして2人は手を繋いだまま廃墟へと入っていく。その間、耳郎の体の震えはいつのまにか収まっていた。