進化する人々   作:奥歯

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煮え滾る憎悪

Bteam vs Gteam

 

BチームvsGチームの対戦エリア。このフィールドは地面、壁、天井に赤、青、黄、緑、ピンクの計5色の正方形のタイルで敷き詰められており、その様はあまりにも不気味だった。そんなステージで今、BチームとGチームが互いに点を取り合っていた。現在の点数は...。

 

Bteam2 Gteam1

 

「このままいけば僕たちの勝ちだ!みんな気を抜かないようにして!」

 

「最後の点は俺に決めさせろ!!」

 

「不安しかねぇな」

 

「んだと巧ぃ!!」

 

現在Bチームが優勢。あと一点決めればBチームの勝利となる。ここで一旦、このステージについての説明に入る。このスタージでは、赤、青、黄、緑、ピンクの5色のタイルが敷き詰められている。このタイルにはある仕掛けがあり、例えば、ボールを持った者がタイルの赤を踏んだとする。するとタイルは光る。そして同時に他の誰かが別の赤のタイルを踏んだ時、そのボールは同じ赤を踏んだ者の手に移るという仕組みだ。

 

「このまま一気に行くゼェ!!」

 

現在ボールを所持しているのは爆豪。爆豪はタイルを踏まずに爆破で空中を移動して、マトへと向かっている。こうすればタイル踏まずに安全にマトを狙うことができる。しかしGチームも黙って見ているわけではない。瞬間、爆豪の目の前に明智が現れる。

 

「あぁ!?」

 

明智は鞘から刀魂紅刃を抜き、爆豪に斬りかかる。爆豪は咄嗟に避けようとするが、明智は爆豪を斬ることはせず、刀を爆豪の方に放り投げた。爆豪は咄嗟に刀を受けとった途端、爆豪は地面に落下していく。

 

「重っ...!?」

 

爆豪は地面に激突し、ボールを手放してしまう。落下した爆豪は手の上に乗った刀を退けようとするが、びくともしなかった。

 

「んだよこれ!?重すぎんだろ!!」

 

明智はボールを拾い上げるとそのまま上条に手渡した。

 

「了解なのである」

 

上条は明智の心意を受け、ボールを持ってマトの方に走っていく。一方で、爆豪はあまりにも重すぎる刀をどうにか退けようと必死に動いていたが、全く持ち上がらなかった。

 

「クソッ...!退けよこのクソ刀!!」

 

「かっちゃん大丈夫!?手伝うよ!」

 

駆けつけた緑谷は明智の刀を持ち上げようとするが、ピクリとも動かなかった。ワン・フォー・オールを使っても持ち上がらない刀に驚く。

 

(なんて重さなんだ!あの人、こんな重い刀を軽々と持てるなんて...!)

 

重すぎる刀にモタモタする二人に太田が駆け寄ってくる。

 

「平気か?」

 

「これが平気に見えんのかよ!?」

 

「デスペラードさん!手伝ってくれませんか!?」

 

太田は緑谷に手伝って欲しいと言われると、帽子を被り直し、少し難しい顔をして答える。

 

「悪いが無理だ」

 

「え、なんで!?」

 

「テメェ手伝えや!!」

 

「まあまあ、落ち着け」

 

太田は刀の持ち主である明智の方を見る。

 

「零。刀退けてやれ」

 

「............」

 

明智は無言で近づくと、刀をヒョイッと持ち上げ鞘に納めた。二人がかりでも持ち上げられなかった刀を持ち主が片手で軽々と持ち上げる姿に、二人は唖然とする。明智は軽く一礼するとゆっくりと元いた場所に戻った。

 

「あの刀はな、零以外には持ち上げられないんだ。それ以外の人間が持とうとすると途轍もない重さになる。あいつ専用の刀だからな」

 

「そんな性質があるんだ...これは彼の精神性の表れ...?」

 

「これ以上話すと長くなる。早く戻るぞ」

 

「チッ!わかってんだよ!!」

 

一方、ボールを持った上条はただひたすらマトに向かって走っていた。当然行手を阻む者もいる。立ち塞がるのは円場。

 

エアプリズン!!

 

円場は空気の牢屋を作り出し上条はその牢屋に閉じ込められる。

 

「この牢獄から出るのは誰であろうと不可能だ!」

 

得意げに語る円場を他所に、上条は空気の壁を触る。強く押す程度ではビクともしない。力ずくではどうにもならないことはわかった。

 

(ふむ...。麻美の個性とよく似ているのであるな。しかし...)

 

アリババと四十人の盗賊

 

上条は大きく息を吸い、叫んだ。

 

「開けゴマ!!」

 

すると突然、円場のエアプリズンが開かれ、上条はエアプリズンから抜け出した。

 

「はぁ!!?なんで勝手に開いてんだ!?」

 

絶対に開くはずのないエアプリズンが勝手に開き、戸惑う円場の横を通り過ぎる上条。すかさず切取が攻撃をする。

 

射出パンチ!

 

切取から放たれた腕を上条はヒョイと避ける。しかしそこで更に立ち塞がるのは巧だった。しかし巧はあることに気づく。上条の手にボールがなかった。

 

(囮か!)

 

上条は円場のエアプリズンに囚われた直後、地面のタイルを押すことによって葉隠にボールを移していた。すぐにそれを察知した巧はすぐに周囲を見る。巧はオルフェノクの目ですぐにわかった。宙に浮いたボールを見つける。持っているのは葉隠だ。巧はすぐに葉隠の方に向かい、妨害しようとするが、目の前に音もなく、まるで映像を切り替えるかのように澤田が現れた。

 

「なっ...!」

 

澤田の目は激しい憎悪に包まれていた。巧は一瞬、その目に違和感を持つが、その一瞬に気を取らるが澤田の攻撃を咄嗟に衝撃の防御を取る。

 

ソニックブーム!!

 

「グッ!!!」

 

ステージ全体に広がるほど強烈な爆音と爆風により吹き飛ばされた巧は地面を転がり、周囲はすぐに視線を爆音がする場所に集中する。

 

「うぐっ...!」

 

「ファイズさん!」

 

直後、木村が駆け寄り巧の状態を見る。巧の両腕が赤黒く変色していて、明らかに腕が折れていた。木村は即座に患部を糸で固定する。

 

「亜希!!あなた何をするの!?」

 

木村は澤田の行為を咎めるが、澤田は木村を無視して巧の方に視線を向けていた。両チームはこの状況に戸惑いを隠さなかった。

 

「たっくん!!」

 

「あのヘッドホン野郎...!急に何してやがる!?」

 

「え!?え!?何々!?」

 

ステージ内がざわつく中、澤田はただ巧だけを睨みつける。

 

「テメェ...!何しやがる...!」

 

「...............」

 

巧は折れた両腕の痛みに顔を歪めながら澤田を睨みつける。対する澤田はゆっくりと巧に近づく。しかし目の前に木村が立ち塞がった。

 

「......退け」

 

「嫌よ」

 

一触即発の空気の中、誰も動くことはできなかった。太田や徳本、明智と上条はこの状況をただ黙ってじっと見つめている。そんな中で一番驚いていたのは耳郎だった。さっきまでの澤田の変わりように、理解が追いついていなかった。さっきまでの澤田を目をしていない。そして驚きと同時に感じるのは恐怖だった。

 

(アッキー....)

 

そして澤田が一歩前に踏み出した時、木村も指から糸を出して攻撃しようとした時、突然アナウンスが流れ始める。

 

『そこまでだ』

 

アナウンスから流れてきたのは戸田の声だった。その声で澤田と木下の動きが止まる。

 

『この試合は無効試合だ。澤田。今は戦闘訓練をしているのではない』

 

「.............」

 

戸田の指摘に澤田はただ黙って聞いていた。暴力騒ぎにならなかったことに何人か安堵する中、戸田のアナウンスは続く。

 

『両チームはすぐにこのステージから出ろ。澤田は俺のところに来い。そして乾君はすぐに保健室に行くんだ。木村。案内しておけ。以上だ』

 

アナウンスが終了すると突然両チームは光に包まれる。そんな中で耳郎は今まで見たことがない澤田の憎しみのこもった目と、両腕を折られ、緑谷に支えられながら苦しそうな顔をしている巧を見ていた。耳郎は追いつかない理解と恐怖と疑念で感情がごちゃ混ぜになりながらも、両チームはこのステージから姿を消した。

 

●●●

 

ステージから出てきた両チームはすぐにラウンジに集まった。そこにはすでにEチームに負けたAチームがそこにいた。その1人である西田がモニター越しに対戦していたBチームとGチームを見ていた時に、何かあったのかと、近くにいた太田に何が合ったのかを聞く。

 

「何があったの?」

 

「かくかくしかじかあったんだよ」

 

「...そうなんだ」

 

太田は適当にはぐらかし、西田もこれ以上詮索はしなかった。皆それぞれ椅子やソファなどに座り、誰も話さずに静寂だけが流れた。その静寂を破るように緑谷が口を開く。

 

「さっきの人、どうしてたっくんを...」

 

「あのヘッドホン野郎...。すげぇ殺気だったな」

 

澤田は巧に対して異様なまでの殺気を放っていた。過去に巧と何かあったのではないかと考えるが、思い当たる節はここにいる全員にはなかった。そこで飯田が緑谷と爆豪に質問をする。

 

「緑谷君と爆豪君は、乾君の幼馴染みだったね。澤田君のことは知っているのか?」

 

「いや、僕は何も...。たっくんも知らないと思う」

 

「会ったこともねぇ」

 

2人は澤田のことについては何も知らなかった。昔の記憶でも澤田という男に会った記憶はなかった。続いて飯田は太田たちにも質問する。

 

「君たちも何か知らないか?」

 

「いや、俺にはさっぱりだ」

 

「真吾。果物はいるか?なのである」

 

「いらん...。やっぱり頂戴」

 

「これ以上考えたところで意味はない。あとのことは教師たちに任せろ」

 

徳本の一言で全員黙ってしまう。そこで耳郎が何を思ったのか、先から立ち上がる。

 

「耳郎くん?どこに行くんだ?」

 

「ちょっと、トイレ...」

 

飯田は耳郎を呼び止めるが、耳郎は適当にはぐらかしてラウンジから出た。

 

●●●

 

木村に案内されて保健室までやってきた巧は近くのソファに座る。そこにすぐに保健室にいた医師が駆け寄ってくる。

 

「容態は?」

 

「両腕が折れていて、一応患部を固定しています」

 

「わかりました。では糸を外していただいても?」

 

「はい」

 

木村はすぐに糸を外して患部を露出させる。巧は腕の痛みに顔を歪め、脂汗をかく。先ほどよりも腕の状態が赤黒くなり、ダメージも大きそうだった。

 

「乾さん。安静にしていてくださいね」

 

「ああ...」

 

ベッドで仰向けになり、治療を受ける巧は先ほどのことを思い出した。澤田のあの目。あの憎悪のこもった目。巧自身には全く心当たりはなかった。しかしあの目つきに何かあることは確かだった。しかし考えても何もわからないため、巧は治療に専念した。

 

「ごめんなさい。あんなことになっちゃって...」

 

「お前が謝ることじゃないだろ」

 

「でも...」

 

木村としては巧に対して申し訳なさがあった。理由はわからないが、澤田が巧に怪我をさせたのだ。その責任はこちら側にもある。しかしそんな木村に巧は怒るようなことはしなかった。

 

「逆にお前に感謝するぜ」

 

「え?」

 

「俺のことを助けてくれたからな。お前がすぐに俺を守ってくれた。それで十分だ」

 

「そんなの...。当たり前のことをしただけです」

 

木村は優しく笑い、少し空気が柔らかくなったところで木村は立ち上がる。

 

「それじゃあ私はラウンジに戻ります。ちゃんと休んでおいてくださいね」

 

そう言って木村は保健室から出て行った。

 

●●●

 

ラウンジから出ていた耳郎は、案内板を確認しながら通路を歩いていた。すると微かに声を聞き取った。耳郎はイヤホンジャックで耳を澄ませると戸田の声が聞こえてきた。

 

『澤田。お前と乾君に何があったのかは知らない。余計な詮索をする気はないが、お前がしでかしたことの責任はしっかりとってもらうぞ』

 

『............』

 

『まずは謝罪だ。怪我をさせた乾君に対する謝罪をしてもらう。そしてチームに対する謝罪だ。お前の行動がチームに迷惑をかけたんだ。そして雄英への謝罪だ。わざわざこの場所に来てもらった雄英に対して無礼を働いたことに対する謝罪だ。俺も一緒に謝る。お前の責任は管理を怠ったこの俺の責任でもあるからな』

 

『.............』

 

『お前に拒否権はない。わかったな』

 

壁の向こうでは冷静にしかし怒りのこもった戸田の声が聞こえてくる。その時、後ろから突然声をかけられた。

 

「あの...」

 

「ひゃっ!?」

 

耳郎は後ろを振り返ると木村が立っていた。

 

「あの、どうしてここに?」

 

「え!?あ!ちょっ...!ちょっとトイレ探してて...!」

 

耳郎は慌てて咄嗟に嘘をつく。なぜこんなところにいるのか疑問に思う木村だったが、とりあえずトイレの場所を教えた。

 

「なら、あっちにありますよ」

 

「ありがと!!」

 

「?」

 

●●●

 

驚いた拍子に逃げてきてしまった耳郎は、一息つく。そしてあたりを見渡してみると、気がついたら知らない場所に来てしまった。

 

「ここどこ...?」

 

しばらく周囲を見渡してみると、保健室が見えた。耳郎はそれを見てここに巧がいると考え、恐る恐る近づいて保健室の扉をゆっくり開ける。視界に入ったのはベッドの上で寝転がっている巧だった。

 

「乾?」

 

「....耳郎か?」

 

耳郎の声に気づいた巧はすぐにベッドから起き上がる。耳郎は巧の腕を見る。巧の両腕は包帯とギプスで固定されていて、しばらく生活は困難になりそうなほどだった。

 

「それ、大丈夫なの?」

 

「ああ、後20分したら治るらしい」

 

「は?そんなすぐに治るの?」

 

「ああ」

 

「スマートブレインの技術力ってやつかな...」

 

アレほど痛々しかった腕の骨折が後20分で治るとなるのはかなりの医療技術であることが伺える。その時、耳郎は澤田のことをポツリと呟いた。

 

「...澤田は、アッキーはウチの幼馴染みなんだ」

 

「...そうなのか」

 

「うん。前に話したことあるだろ?昔一人いたって、音楽仲間。アッキーがそうだったんだ」

 

「そうか...。あいつが」

 

巧は顔には出していなかったが、内心驚いていた。どういう運命の巡り合わせなのか、世間は狭いというには偶然がすぎるような気がした。

 

「あいつ。なんで俺を攻撃したんだ?」

 

「ウチにもわかんない。アッキーはあんなことするような奴じゃない。何か理由があるはず...」

 

耳郎も澤田がなぜあんなことをしたのか分からなかった。耳郎の知っている昔の澤田はあんな殺意の塗れた目なんてしていなかった。その時、巧は耳郎に聞いた。

 

「あいつのことについて、教えてくれないか?お前とあの男が出会った話を」

 

「.....うん」

 

耳郎はゆっくりと澤田との出会いを話し始めた。

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