朝、轟と一悶着あったがその日は難なく授業が進んだ。最初の授業は英語で担当する教師はボイスヒーローのプレゼント・マイクだった。その授業は至って普通で少し拍子抜けしたがそれ以前に巧はずっと轟に睨まれているような気がした。巧は睨まれることには慣れているのでまだあのことを根に持ってるのかと思い呆れながらも無視をした。そんな感じで昼休みに入る。昼休みは大食堂で一流の料理を安価で食べられるというなんとも贅沢な昼食を味わうことができるのだ。そこで巧は高級料理ではなく普通の一般料理のざるうどんを食べた。巧は麺類の中ではうどん派である。巧は大食堂の席から5列目の所にドカッと座り箸を取って麺つゆの中につけてうどんを啜った。そして午後、今日一番大事な授業ともいうべきヒーロー基礎学を学ぶ。生徒たち全員が教室で待っているとオールマイトが勢いよく大声で入って来た。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!」
オールマイトが普通にドアから入って来ただけで周りの生徒は大いに盛り上がる。
「オールマイトだ....!すげぇやほんとに先生やったんだな....!」
「銀時代のコスチュームだ.....!やばい画風が違いすぎて鳥肌が.....!」
オールマイトの余りの画風の違いに鳥肌が立つ者がいたり歓喜を上げる者もいた。特にオールマイトの着ているコスチューム、銀時代のコスチュームはオールマイトが数年前に世に知られるようになったいわば平和の象徴ともいうべきコスチュームで当然緑谷も興奮を隠せずにいた。オールマイトは腰から【battle】と書かれたカードを取り出す。
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う科目だ!単位数も最も多いぞ!早速だが今日はこれ!戦闘訓練!」
オールマイトはそういうと、リモコンのような端末機を取り出してスイッチを押す。正面から見て左側の壁から棚がゆっくり出てくる。その棚には1から21の番号が貼られたアタッシュケースがあった。
「そしてそいつに伴って.....こちら!!入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた......戦闘服!!」
どうやらそのアタッシュケースの中身はそれぞれ生徒のために作ったヒーローのコスチュームのようだ。それを聞いた周りの生徒は歓喜の声を上げ、大いに盛り上がる。このコスチュームは生徒たちが個性届を出す際に自分の要望を書き込みそれを制作会社がその要望に応えて配られるというものだ。この中でただ一人巧は自分のコスチュームは事前に持っているとスマートブレイン社が雄英側に報告してある為それぞれ番号が貼られているケースがある中一つだけスマートブレイン社のマークが入ったケースがあった。
「着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!」
「「「「「はーーい!」」」」」
生徒たちはそれぞれ自分の出席番号の入ったケースを持っていく。巧も自分のケースを持って行こうとしたその時後ろから金髪の少年上鳴が話しかけて来た。
「あれ?なんか乾のだけ違くね?」
「あ?」
「だってほら、お前のだけなんか数字じゃなくてマークが付いてるし.....」
そういう上鳴に周りも少し気になったのか何人かが巧のケースを見てくる。その中で八百万が覗き込んだ。
「ほんとですわ、なんでしょうか....ってこれスマートブレイン社のマークじゃありませんか!!」
「えっマジ!?」
「まちがいありません!このマーク、確かにスマートブレイン社のものです!乾さんどうしてこれを!?」
「まぁ、ちょっとな.....」
巧は八百万の質問に軽くはぐらかす。周りが驚いている理由はスマートブレイン社というのは世界中に拠点を置く大企業なため勿論製作する商品は超一流、スマートブレイン社が製作したコスチュームやサポートアイテムなどを持っているということは相当の実力を持ったトップヒーローか、相当な金持ちぐらいだ。それを金持ちでもトップヒーローでもない巧が持っているとなると誰もが驚くのも無理はない。
●●●
「さあ!始めようか有精卵共!!!君達が来たと知らしめる時間だ!」
グラウンβに着くと皆それぞれ個性的なコスチュームを着ていた。中にはかなり際どい格好の者や完全に裸の者もいるが気にしていないあたりあれでいいのだろう。巧は体操服に着替えて右手にケースを持って待機していた。すると巧は全体的に緑色の兎耳のようなマスクをつけた緑谷を見つけた。
「出久、お前のそれ........兎か?」
「な!?違うよ!これ!ほらこれ!オールマイト!」
緑谷はその特徴的な2本の触覚のようなものを触りオールマイトに見立てているのだといった。確かにオールマイトのあの2本の髪と言われると分からなくもないがそうじゃなければ兎にしか見えない。すると後ろから声をかけられる。
「デク君!カッコいいね!地に足がついた感じだよ!」
後ろから緑谷のことをデクと呼んだのは麗日であった。デクというのはいつも緑谷をイジめている爆豪なのだが、彼女が何故緑谷をデクと呼んでいるのか、理由としては麗日曰くデクというあだ名が頑張れという感じがするからだそうだ。
「麗日さ...うお!?」
緑谷と巧が振り返るとそこにいたのは全身パツパツのコスチュームを着た麗日だった。その姿に緑谷は顔を赤らめて戸惑ってしまう。
「随分パツパツのコスチュームだな」
「うん、要望ちゃんと書けばよかったよ.........っていうか乾君はなんで体操服?」
「俺はこれでいいんだよ」
そう言って巧は二人のそばから離れた。自分は今の二人と一緒にいるべきではないように感じたからだ。そうして巧は部屋の壁の方にもたれかかると、隣に誰かいるのか巧は振り返る。そこにいたのは耳たぶがやけに長い耳朗であった。
「あんた....なんで体操服?」
「これでいいんだよ、俺は」
巧は耳朗の質問に適当に答えただけで耳朗の方に振り向こうともしない。そんな態度に耳朗はムッとしてそっぽを向いた。すると近くでオールマイトが生徒たち全員の注目を集めるため大声で説明をし始めた。
「さぁ戦闘訓練のお時間だ!いいじゃねぇか皆!!カッコいいぜ!ん?乾少年なぜ体操服なんだ?」
そう言うオールマイトに全員が巧の方に振り向く。全員の視線を受けた巧は嫌な顔をする。
「そういえばずっと思ってたけど、なんでお前だけ体操服?」
「もしかしてコスチュームなかったの?」
何故か巧だけ体操服のことに周りから心配の声をかけられる。全員に見られた巧はだんだん腹が立って来て声を荒げた。
「いいんだよ俺は!!」
声を荒げた巧に周りは驚いてしまう。この状況に緑谷はすかさず皆に説明をした。
「大丈夫だよ皆!たっくんのコスチュームはちゃんとあるから!ほら!ね!!」
緑谷は巧からアタッシュケースを奪い取り皆に見せた。それを見た周りはちゃんとあることに納得する。しかしまた、瀬呂から別の疑問が投げかけられた。
「じゃあ、なんで着ないんだよ?」
「いやぁ、それは....その.....」
この質問には流石に答えられないのか緑谷は黙ってしまう。なんとも言えない雰囲気に緑谷はたまらず巧に小声で話しかける。
「たっくん!なんで更衣室で変身しなかったの!?」
「あそこで変身したら滅茶苦茶眩しいし周りに迷惑だろあれ!」
「いやそうだけど!」
巧と緑谷が小声で言い合ってる姿を見ながら早く授業を進めようとオールマイトが咳払いをする。そして巧と緑谷は慌てて前を向いた。それを見たオールマイトは気を取り直し説明をすると声を聞かないとわからないほどのフル装備をした飯田がオールマイトに質問をする。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!敵退治は主に屋外で見られるが、系統で言えば屋内の方が凶悪
「ヒーローとヴィランのガチバトルか....男らしいぜ!」
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎を知るための実践さ!ただし今度はぶっ壊せばOKなロボじゃないのがミソだ!」
「勝敗のシステムはどうなります?」
「ぶっ飛ばしてもいいんすか...!」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか......?」
「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか!?」
「このマントやばくない?」
「んんん〜聖徳太子ィィ!」
生徒たちからの質問攻めにオールマイトは困惑してしまう。質問の嵐が終わり少し落ち着いたときにオールマイトはポケットから小さな紙を取り出す。
「いいかい!?状況設定は
(((((設定がアメリカン......)))))
「もっと理想的なのはとある男性が家族を救うべく、マフィアのアジトに乗り込み、自らのあなたと引き換えに家族を救うってのがベストオブレスキューなシュチュエーションだな!」
(((((設定がアメリカン!!ていうかそれ映画の見過ぎでは!?)))))
思わぬオールマイトのジョークに何人かの生徒は心の中でツッコミを入れた。
「因みにコンビ及び対戦相手を選ぶのはクジだ!」
「適当なのですか!?」
「コンビを組むヒーローだっているがいつだったというわけじゃない!現場にいるヒーローと即席でチームを組むこともあるから、どんな相手だろうと息を合わせられることもヒーローになるにあたって必要なんだ!」
「なるほど!先を見据えた選出方法立ったのですね!失礼しました!」
質問した飯田は綺麗にお時間をして、オールマイトは最後に説明をする。
「最後に、A組の人数は全部で21人!このままでは一人余ってしまう!なので今回クジの中に当たりを入れた置いた!当たりを引いた者は最後の方で誰かとチームを組んで対戦してもらう!
そういうとオールマイトは箱を取り出した。この中にクジが入っているようだ。そして一人ずつクジを引く。それぞれクジを引いていく中巧の出番が来た。巧は箱の中に手を入れてボールを取る。そしてボールに書いてある文字を見ると他のものとは違った。巧が取ったボールには大きく【当たり!】と描いてあった。
「おお!当たりを引いたようだね乾少年!じゃあ君は最後に自分でチームを組む相手を決めて相手チームと対戦してほしい!」
オールマイトがそういうと巧はボールを戻し辺りを見渡した後、元の場所に戻った。それぞれクジを引きそれぞれのチームが決まった。
Aチーム 麗日&緑谷
Bチーム 障子&轟
Cチーム 八百万&峰田
Dチーム 飯田&爆豪
Eチーム 青山&口田
Fチーム 尾城&葉隠
Gチーム 上鳴&耳朗
Hチーム 蛙吹&常闇
Iチーム 芦戸&砂藤
Jチーム 切島&瀬呂
以上のチームが組むこととなった。巧は当たりを引いていたので最後に誰かと組んで戦闘訓練をしてもらう。そしていよいよ本番、オールマイトが二つの箱を持って来て生徒たちの前に置く、箱にはヒーローとヴィランと書かれていた。
「続いて最初の対戦相手はこいつらだ!Aコンビがヒーロー!Dコンビが
まず最初に対戦することとなったのはAチームの麗日&緑谷とDチームの飯田&爆豪だ。
「
オールマイトの説明が終わりAチームとDチームの4人はビルの中に入り他の生徒はモニタールームに移動した。
●●●
AチームとDチームの勝負、結果から言うとAチームの勝利であった。麗日がハリボテに触ったことで勝ったのだ。途中緑谷と爆豪が戦闘になり緑谷がかなり痛々しい怪我をおうこととなった。
「まぁつっても、今回のベストは飯田少年だったけどな!」
「ななっ!?」
戦闘訓練結果にオールマイトは飯田が一番活躍したと言った。その言葉に蛙水は質問する。
「どういうことかしら?勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」
「何故だろうな〜〜〜?分かる人いる!?」
「はい、オールマイト先生」
オールマイトのなげかけに手を挙げたのは八百万だった。
「それは飯田さんが一番状況設定に順応していたから。爆豪さんの行動は、戦闘を見ていた限り私怨丸出しの独断。そして先程先生が仰っていた通り屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様の理由ですね。麗日さんは中盤の気の緩み。そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを核として扱っていたらあんな危険な行為できませんわ。相手への対策をこなし且つ、核の争奪をきちんと想定していたからこそ飯田さんは最後反応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは訓練だからという甘えから出た反則のようなものですわ」
八百万の的確な説明にあたりはしんと静まり返る。
「(思ってたより言われた!!)ま...まぁ、飯田少年もまだまだ固すぎる節はある訳だが.....まぁ.....正解だよ!くぅ.....!」
言いたいことを殆ど言われてしまったオールマイトはなんとか自分が言えることを絞り出し震えながらサムズアップを出す。
「常に下学上達!一意専心に励まねば、トップヒーローになどなれませんので!」
八百万は得意げになって言う。流石推薦入試の四人の内一人といったところか。そんな中でずっと俯いている爆豪に巧はずっと見つめていた。
●●●
こうして順調に訓練は進んでいった。皆それぞれの個性を活かし様々な活躍を見せる。中でもBチームとFチームの対戦で轟が個性であっという間にビルを凍漬けにしてしまったことにモニターを見ていた生徒たちはかなり驚いていた。そしていよいよ巧の番、まず最初に組む相手を決めることになる。巧は周りを見渡し誰にするかを考える。少しして巧は一人の相手に近づく。
「こい」
「え、ウチ!?」
巧が選んだのは耳朗だった。そして巧は箱の前に立つ箱の中にはクジが入っておりこれでヒーローか
(((((ベルト?)))))
巧はベルトを取り出した後、ファイズショットを取り出し左側のクレードルにセットする。そしてファイズポインターを取り出して右側のクレードルにセットする。そして最後にそのベルトを腰に巻きつけファイズフォンを取り出し、コードを入力した。
『5 5 5』
『Enter』
Standing by
ファイズフォンから音声が鳴りそして着信音のようなものが流れる。巧は勢いよく右腕を振り上げ叫ぶ。
「変身!」
そしてファイズフォンをベルトにセットする。
Complete
するとベルトから巧の全身を包むように赤い光が駆け巡る。そのあまりの眩しさに周りは目を覆い隠す。そして光が収まり周りが恐る恐る目を開けるとそこにたっていたのは巧ではなくメカメカしい見た目の男が立っていた。
「乾君変身してもうた!?」
「スゲェ!滅茶苦茶カッケェ!」
「中々スマートだね☆」
「光を纏いし漆黒の戦士......」
「てか身長変わってね?」
それぞれが巧の姿を見て周りは口々に語る。巧はさっさと行きたいのか耳朗の腕を引っ張った。
「ほら、行くぞ」
「あ、ちょっと!」
ビルの中に入った巧はハリボテの核を見て取り敢えず最上階まで持っていくことにした。そして始まる五分の間巧は地図を見た後その場に投げ捨てる。
「え、もう覚えたの?」
「ああ」
耳朗はさっきの爆豪のようにもう覚えてしまった巧に驚きつつも質問をしようとした。
「.......ねぇ、なんでウチなん..」
『さーてそろそろ時間だ!それでは屋内戦闘訓練開始!』
しかし時間が来てしまい戦闘訓練の合図がなる。巧は早速耳朗に索敵をするように言った。
「おいお前索敵しろ、相手がどこから来るか探りたい」
巧に命令された耳朗は膨れっ面になりながらも長い耳たぶの先についてあるプラグのようなものを壁に突き刺す。しかし妙な感覚があった。
「あれ?足音がしない.....でも壁から音がするような.....」
耳朗がそう呟いていると巧は二人がどこにいるのか気づいてすぐに窓の方に振り向く。すると案の定窓から瀬呂がよじ登って来て核に触れようとした。巧はすぐに反応してしりだす。そして個性を発動して右ストレートを繰り出した。だが瀬呂は間一髪の所で避け、空振りに終わってしまった。そして巧は気づいていた、これは囮だということに。すぐに巧は後ろに振り返り耳朗に言った。
「後ろだ!」
そう言われた耳朗は一瞬遅れたがすぐに振り返る。そしてそこにいたのは勢いよく飛び上がった上鳴だ。
「もらったぁ!」
上鳴がすぐに個性を発動しようとしたが耳朗がギリギリで耳たぶのプラグを上鳴に突き刺し上鳴の体の中から爆音を流した。
「ギャアアアアア!!」
自分の体の中に流れる爆音に絶叫した上鳴はそのまま地面に倒れて気絶してしまう。すかさず耳朗は上鳴に確保テープを巻き付ける。一人確保できたことを確認した巧はすぐに警戒に戻る。どこからくるかわからない瀬呂に巧はどうしたらいいか考えているとあることを思いついた。
「おい、どっかにしがみついてろ」
「え?なんで....」
「いいからさっさとしろ」
耳朗は巧に言われるがままに壁の窓にしがみつく。そして巧はしゃがみ込み地面に触れて感触を確かめた後、右拳を握りしめて個性を発動した。すると巧の手が歪み始める。そして巧は思いっきり拳を地面に突き出した。
「ハアァ!!」
突き出した拳は大きな衝撃が走り地面に巨大なヒビがはいり、そのヒビがビル全体に広がる。この大きな揺れに耳朗は必死にしがみついた。するとそこだけ地震が起こったように揺れ、その衝撃はモニタールームにも伝わった。
「うわわ!なになに地震!?」
「これほどまでの衝撃!なんて個性だ.....!」
「くらったら一溜まりもねぇぞ!」
モニタールームの衝撃は足が少しぐらついてしまう程の揺れだった。周りはあまりの揺れに驚き戸惑っている。一方ビルの壁にしがみついていた瀬呂はビルが突然揺れ始め驚いてしまい掴んでいた手を離してしまった。
「うおおおお!やべぇえええ落ちるうううう!!」
瀬呂は頭を下にして真っ逆さまに落ちしてまう。このままではまずいと思ったい自分の個性、"テープ"を使ってなんとか落ちないようにしたがそれも届かずもうダメだと思った瞬間、誰かが瀬呂のテープを掴んだ。一体誰だと顔を上げると掴んでいたのは巧であった。
「た、助かったぁ」
この後瀬呂は確保テープで捕らえ、この訓練はヴィランチームが勝ちとなった。
●●●
こうして緑谷を除く全員が無事怪我もなく授業を終えた。巧は一息つくとベルトからファイズフォンを取り出し、ボタンを押して変身解除する。それを見ていた周りは「おお〜」と声をあげた。
「皆お疲れさん!!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」
「相澤先生の後にこんな真っ当な授業.......。なんか拍子抜けと言うか........。」
「真っ当な授業もまた私達の自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻り!」
オールマイトはそう言うと走って緑谷のいる保健室まで向かった。
●●●
放課後緑谷が戻ってくるまで自分の席で一人ずっと座っていた。周りはさっきの授業の反省会をしている。しばらくぼーっとしていると緑谷が戻って来た。緑谷は包帯がぐるぐるに巻いてありあの時はかなりの大怪我だったようだ。
「おお、緑谷来た!!お疲れ!何喋ってるかわかんなかったけど熱かったぜオメー!」
「へっ!?」
「よく避けたー!」
「1戦目であんなのやられたから俺らも力入っちまったぜ!」
「俺ぁ切島鋭児郎!今、皆で訓練の反省会をしたんだ!」
「私、芦戸三菜!よく避けたよー!」
「蛙水梅雨よ、梅雨ちゃんと呼んで」
「俺、砂藤!」
皆口々に緑谷に話しかけた。緑谷もこんなに話しかけられたことはなかったのでかなり戸惑っている。
「騒々しい.....」
「机は腰掛けじゃないぞ!今すぐやめよう!」
「ブレないな飯田君.....!」
「麗日今度飯行かへん?何好きなん?」
「おもち......あれ!?デク君怪我!治してもらえなかったの!?」
「あ....いやこれは体力的なアレで.....。あの麗日さん.....それよりかっちゃん見なかった?」
「あいつなら先に帰ったぞ?」
「皆で止めたんだけど黙って行っちゃったよ.....」
「っ!ごめん!ありがとう!たっくんもうちょっとだけ待っててくれない?」
「ああ」
そういうと緑谷は急いで教室を出て行った。
「どうしたんだ緑谷のやつ?」
「多分爆豪君に用があるんじゃないかな?あんな大人しい爆豪君俺は初めてで見たけど.....」
「いつもはシネェ!ってイメージがあるよね.....」
周りがそんな話をしているとふと、切島が巧に話しかけて来た。
「そういえばよ、乾って緑谷の知り合いだったんだな戦闘訓練の時も思ってたぜ」
「ああ、乾君はデク君と爆豪君の幼馴染みなんやって、なんでもデク君昔イジめられてたんやけど、その度に乾君が助けてくれたみたいで......」
「おい、余計なこと言うな」
「ご、ごめん......」
麗日は緑谷と巧の関係を語り出し、その事に巧は睨みつけ、麗日は萎縮してしまった。
「昔から緑谷のこと助けてあげてるなんて男らしいぜ!」
「怖い顔してる割には案外優しいんだね」
「チッ」
あまり褒められるのは性に合わないため鬱陶しくなってしまい巧は舌打ちをする。そしてしばらくして緑谷が戻って来た。
「ごめんたっくん。お待たせ」
早くこの場から解放されたかった巧は足早に教室を出ていった。
●●●
巧は帰りにオートバジンになって緑谷と帰っていた。緑谷はあの時爆豪と何を話していたのか巧は詮索する気はなかった。お互い何も喋らず巧は前を向いて安全運転、緑谷は横を見ながら次々と流れていく背景を眺めていた。小さな老舗の店、大きなビル、廃墟に入る二つの影。
「?たっくんちょっと止めて」
緑谷がそういうと巧は道路の脇にオートバジンを止めた。二人はオートバジンから降りてヘルメットを取り、廃墟の建物の前まで来る。
「出久、ここになんかあんのか?」
「うん、さっき見えた人影......轟君かも知れないんだ」
「はぁ?なんであんな奴のとこに行かなきゃいけねぇんだ。ったく....」
「ごめん、でもちょっと気になって....すぐ戻るから!」
「あ!おい!」
緑谷は轟らしき人影を追いに廃墟の中に入って行った。取り残された巧はどうしようか一瞬迷ったがため息をついて仕方なく緑谷の跡を追った。しばらくボロボロになった階段を登って屋上までくると巧は物陰に隠れている緑谷を見つけた。巧は緑谷に近づき物陰に隠れる。物陰から顔を覗かせると特徴的な紅白の髪色をした男の後ろ姿があった。どうやら誰かと話しているようだ。
「あいつ誰と話してんだ?」
「わかんない。ここからじゃ見えないな」
轟と話している誰かは丁度轟と重なってしまい顔をが見えなかった。しばらく二人が話している姿を見ていると驚くべきことを巧と緑谷は目撃した。なんと轟ともう一人の誰かの姿が変化し、灰色の蜘蛛のような怪物になったのだ。
「轟君ってオルフェノクだったの!?」
轟がオルフェノクだという事実に緑谷は驚いていると巧は立ち上がり轟の方に迫って行った。
「ちょ!たっくん!」
巧はズンズンと轟の方に近づいて腕を伸ばした。
「!?焦凍さん!」
「!?」
肩を掴まれた轟は驚いて振り返る。そこには睨みつけるように轟の肩を強く握る巧だった。
「お前.....!なんでここに.....!?」
「まさかテメェもオルフェノクだったとはな、そこのお前も」
「っ...!」
二人はこの姿を見られてしまい、元の姿に戻った。そして緑谷もあとから駆けつけ元に戻った二人を見る。
「轟君.....!それに、長田さん!?」
轟と一緒にいたのはヒーロー科のB組にいる結花であった。
「お前ら、なんでここがわかった?」
「帰りに出久がたまたまお前ら見つけたんだ。気になって来てみたらお前らがオルフェノクになるのを見たって訳だ」
轟の質問に巧は答える。お互い睨み合いかなり険悪なようだ、緑谷は直感的に二人の相性は悪いと感じた。
「えっと、あの姿はその......」
「あ、心配しないで、大丈夫だよ。僕たちも二人と同じだから」
緑谷はそう言って巧と一緒にオルフェノクに変化し、そしてすぐに戻った。
「二人も私たちと同じ.....!」
「うん、あともう一人いるんだけどね」
「まだいるのか?」
「アホの勝己だ」
轟と結花はまだ雄英に自分たちと同じような存在があることに驚いた。そして巧は二人に質問する。
「お前ら、なんでオルフェノクになった?」
「おい、その前にお前らが言っているオルフェノクって、さっきの姿のことを言うのか?」
「あ、ごめん先にそれについて説明するね」
轟の質問に緑谷は前に出てオルフェノクの存在を説明した。
「————これが僕たちオルフェノクなんだ。驚くのも無理ないよ、誰もこんな話受け入れ難いよね....」
「いえ、逆に嬉しいです。自分たち以外にも同じ仲間がいると思うと少し安心します」
そう言って結花は優しい表情を浮かべていた。しかし隣にいる轟は少し不満そうな顔をしている。
「とにかく、これから二人は政府の監視下に置かれることになる。でも生活に支障は出ない程度だから安心して」
「はい」
そのことを聞くと轟は更に不満な顔になる。
「さっきの続きだ。どうしてオルフェノクになった?」
巧の質問に二人は一呼吸入れて説明をし出した。最初は結花である。結花はごく普通の家族であったそうだ。結花の母親は轟の母親の妹であるため轟とはいとこの関係である。そして2年前の冬、結花の家族はドライブに出かけていた。その日は大雪で、気をつけなければすぐにタイヤがスリップしてしまうほどだった。近くには崖があり一応ガードレールはあるものの、結花の父親は安全運転で走行していた。しかしそこで悲劇が起きた。突然後ろから車が衝突して来て車が横転ガードレールを突き破り崖へと落ちてしまったのだ。衝突して来た車の運転手は飲酒運転をしていたためこの事故が起きたとのこと、運転手は即死だった。崖から落ちた結花とその両親のうち両親は即死、結花は奇跡的に助かったと言われているが実際は違う。あの時既に死んでおりあの時結花はオルフェノクになったのだ。それが結花の経緯である。経緯を説明した後結花は少し悲しそうな目をしていた。そして轟は巧の方を強く睨みつけていた。そんな轟には気にせず巧は続ける。
「今度はお前だ」
睨みつけていた轟は少し嫌そうな顔をすると話し始めた。それは何があったわけでもない、2年前の冬だった。その日は大雪で気をつけないと足を取られてしまいそうな程地面が凍っていた。轟はその時学校の帰りであった。雪が降っており轟は傘をさして帰りに通る階段を降りていたそうだ。その時に足を取られてしまい転落。打ち所が悪かったせいで頭から血を大量に流して、死んだ。それが轟がオルフェノクになった経緯である。巧はため息をついてスマホを取り出した。
「今から政府の人間を呼ぶ。動くなよ」
そう言って巧は取り出したスマホで電話をかける。その間結花は緑谷の腕を見るていた。
「腕、怪我してるんですか?」
「え?ああ、うん。今日の授業でちょっとね....」
結花は包帯がグルグルに巻いてある緑谷の腕をしばらく見た。
「腕を出してください」
「え?」
緑谷は言われるままに腕を結花の前に出す。すると結花は緑谷の腕に優しく触れる。すると緑谷は驚いた。だんだんと自分の腕の痛みが消えていく感覚があった。
「これでいいはずです」
「あれ!?痛くない!これ、これ君の個性!?」
「はい、私の個性は修復、物や人の体の部分を直すことができるんです」
「ありがとう長田さん!すごい個性だ、これなら人命救助の時に怪我をした人を助けられる。けどどこまでを修復出来るかによってブツブツ.....」
緑谷はいつものスイッチが入ってしまいブツブツと結花の個性を分析し、それを見ていた結花は少し引いていた。その後しばらくして一人の痩せ細った男が屋上に来た。
「初めまして、私の名は八木俊典、政府の関係を持つ人間だ。今から轟少年と長田少女にはさっきも説明されただろうが君たちは政府の監視下に置かれることとなった。もし街中などでオルフェノクの力を使うようなら即刻処分することになる。そこは覚悟してもらいたい。もし何かあったらここに連絡してくれ。それでは私はこれで、くれぐれも気をつけて帰るように」
八木は最後にそういうと屋上から降りて行った。そして巧も帰ろうとする。
「出久、もうこいつらには用はねぇさっさと帰るぞ」
「待ってたっくん!ごめん二人とも邪魔しちゃって」
そう言って緑谷は巧の後を追いかけた。そして取り残された二人もしばらくしてここから降りていった。
●●●
巧と緑谷は廃墟から降りてくると八木、もといオールマイトが待ち構えていた。
「オールマイト」
「乾少年、緑谷少年連絡ありがとう。また二人もオルフェノクを発見した。こんなことは殆どない、良くて5年に一人というところなのだが、こんなに早く見つけてしまうとは、正直少し嫌な予感がする。また何かあったら連絡してくれ」
「はい」
オールマイトはそういうと何処かに行ってしまった。残った二人はオートバジンに乗り、そのまま家に帰った。