翌日、巧と緑谷はオートバジンに乗って学校へと通学していた。昨日は二人のオルフェノクが見つかり、しかも雄英の生徒だったことが発覚した。オールマイト曰く一年程で5人も見つかるのは初めてのことらしい。もしかするとこのまま数が急激に増大していくのは時間の問題かもしれない。そんなことを緑谷は考えていると雄英の門が見えて来た。しかしそこには門を遮るように大人数のマスコミ達がいた。
「チッ」
「あんなに沢山......たっくん、ここは降りて行こう」
緑谷は巧に言うが、巧は一向に速度を落とさなかった。むしろだんだんスピードが上がって来ている気がする。緑谷は不安になり、もう一度巧に言った。
「ちょ、たっくんスピード落とさないと......」
しかし巧は聞く耳を持たず、どんどんスピードを上げていく。
「ねぇたっくん!本当にスピード落とさないとぶつかっちゃうよ!!」
緑谷の必死の制止も虚しく、オートバジンの速度はどんどん上がっていく。このままでは前にいるマスコミたちにぶつかってしまう。
「たっくーーーーーーん!!うわーーーーー!!!どいてくださーーーーい!!!!」
マスコミたちは緑谷の声に気づき後ろを振り返ると猛スピードで迫ってくるオートバジンに驚き全員道を開けた。
「「「「「ギャーーーーーーーー!!!」」」」」
巧はマスコミたちが開けた道を通り雄英の中に入って急ブレーキをかける。タイヤが地面に擦れる音が響き、タイヤの後輪が少し浮いた。緑谷は後ろを振り返るとマスコミたちが何人か尻もちをついているが怪我をしているようには見えなかった。誰もぶつからなかったことに緑谷は安心した後、巧に怒鳴る。
「たっくん!!一歩間違えればぶつかるところだったんだよ!!?」
「誰もぶつかってねぇから大丈夫だ」
「そういう問題じゃないよ!!!」
巧はさっきのことには全く反省してない様子に緑谷はため息をつく。朝から心臓に悪いことをされるとは思ってもみなかった緑谷は、オートバジンから降りてヘルメットをとり先に教室に向かった。巧はオートバジンをガレージに止めた後に教室へと向かった。
●●●
巧が教室の中に入ると全員が朝のホールルーム前のお喋りをしていた。巧が席につくと周りの生徒が挨拶して来た。
「乾君おはよう!」
「おはよう乾君!」
「おはよう乾!」
皆それぞれ巧に挨拶を交わすが、巧は無視をする。
「無視されちゃった」
「無愛想だな」
「ごめん、たっくんはいつもあんなだから」
そんな巧な態度に周りは悪態をつくが、巧は無視を決め込み、緑谷が代わりに謝った。そんなことがあってしばらく皆が喋っていると瀬呂が気になることを話し始めた。
「なぁなぁ、あの話知ってる?」
「話って?」
「最近流行ってる都市伝説だよ。ほら、死んだ人間が生き返るって話!」
「「「「!」」」」
瀬呂の発言に巧と緑谷、爆豪と轟が一斉に振り向く。
「えぇ、私こういうの苦手なんだけど......」
「う、ウチも.....」
瀬呂の言う都市伝説の話に麗日と耳朗は少し怖がる。
「あー知ってる知ってる。でもそんなありきたりな話あるわけ無いでしょ?ぜってぇ嘘じゃん」
しかしそれには反論するのは上鳴だった。上鳴はオカルト系の話は信じないタイプのようだ。
「いやいや、それがそうでもないんだよ」
瀬呂の話によるとこの都市伝説が広まったのはある事件がきっかけだった。それはとある国である男が行方不明になったという。その男の家族から捜索願いが出され、男の捜索が始まった。それから2日程して行方不明になった男が住んでいる所から30km離れたところに、首を吊って死んでいるところが発見された。近くの住人が見つけたらしい。どうやらその男は人間関係の問題で自殺したらしく、首を吊った男のすぐ下には遺書が残されていた。発見した住人はすぐに警察に連絡した後、家に帰ったそうだ。しかしここからが本題、警察は連絡を受けた後、すぐにそこに向かったが首を吊った男の遺体らしきものは見当たらなかったらしい。イタズラ電話かと思ったがその場所には首を吊る時に使うロープと遺書があった。そのロープからDNAを検出すると、行方不明になった男のDNAと一致したのだ。自殺ではなく他殺と判断した警察はもう一度捜査をするが、犯人を特定することは出来なかった。それからこの事件は未解決に終わる結果になったが、それから3年程して自殺した男を見かけたという人間が何人もいたそうだ。駅前や公園、路地裏などで見かけたなど様々だ。しかしこれだけでは終わらず、また別の国でも同じような出来事が起こったらしい。ネットにはその男の写真や動画などがアップされ、瞬く間に広がり今に至るという。今ではユーチューブやテレビなどでもこの話が取り上げられているらしい。これが最近話題になっている死んだ人間が生き返るという都市伝説だ。
「って言う都市伝説なんだよ」
瀬呂の話が終わると周りは静かになっていた。巧を含む3人もこの話を静かに耳を傾けていた。
「怖いね、デク君」
「そ、そうだね......」
死んで生き返った経験がある緑谷にはこの話にどう反応していいかわからなかった。この噂には恐らくオルフェノクが関係しているのは確かだ。まだ発見されていないオルフェノクがまだ世界中に潜んでいる。一刻も早く見つけて欲しいものだ。そうしているうちにチャイムが鳴り教室の扉が開く。入って来たのは担任の相澤であった。
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見せてもらった。爆豪、お前もうガキみてぇなことすんな、能力あるんだから」
「........わかってる」
爆豪は昨日の戦闘訓練の時からずっと不貞腐れている感じだ。
「で、緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か」
「っ!」
緑谷は戦闘訓練でのことを指摘されて、何も言えなくなった。腕は昨日結花が直してくれたが、反省するべきところはある。
「個性の制御...いつまでも"出来ないから仕方ない''じゃ通さねぇぞ、俺は同じことを言うのが嫌いだ。それさえクリアできればやれることは多い。焦れよ、緑谷」
「っはい!」
緑谷は今度こそ自分の個性を制御できるよう、気を引き締めた。
「それと乾、お前さっきバイクに乗って猛スピードでマスコミの中に突っ込んでいったそうだが、お前何してんだ?」
「誰も怪我してねぇ」
「そういう問題じゃねぇ」
巧は今朝の出来事を指摘され、巧は言い訳をするが緑谷と同じツッコミを受けた。
「はぁ、さてHRの本題だ。急で悪いが今日は君らに.....」
どことなく不穏な空気がA組の教室に流れ始める。一体何が始まるのかどんな過酷な試練がA組を待ち受けているのだろうか。全員が緊張している中、相澤は口を開く。
「学級委員長を決めてもらう」
「「「「「学校っぽいのきたーーー!!」」」」」
学級委員長、それはいわば雑用係のようなもので誰もやりたがらないものなのだが、それは普通の学校での話。ここ雄英では学級委員長はリーダー的存在。誰しもがやりたがるものなのだ。
「委員長!やりたいですそれ俺!」
「うちもやりたいっス」
「僕のためにある奴☆」
「リーダー!やるやるー!」
皆次々と挙手をし、殆どが手を挙げている状態だ。雄英の委員長はそれほど重要なものなのだ。皆大騒ぎしていると、突然飯田が勢いよく立ち上がる。
「静粛にしたまえ!多を牽引する責任重大な仕事だぞ....!"やりたい者"がやれるものではないだろう!相澤先生が仰っていたまずはクラスの委員長を誰であるかを見定め!そして周囲からの信頼があってこそ務まる聖務!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら.....これは投票であるべき議案!」
そう言う飯田の腕はまっすぐ上に向いていた。
「聳え立ってんじゃねぇか!何故発案した!」
「日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん」
「そんなん皆自分に入れらぁ!」
「だからこそここで複数票を獲った者こそが、真に相応しい人間ということにならないか!?どうでしょう先生!」
「時間内にやるならなんでもいい。後、別の委員長はまた日を改めてからだ、わかったな?」
飯田の必死の説明により、委員長は投票で決めることとなった。相澤は寝袋に入った為代わりに飯田が務めることとなった。
「それでは!この投票の箱に書いた紙を入れてくれ!文字通り投票が多い人が学級委員長だ!」
そういうと飯田は箱を用意して教卓に置く。皆それぞれ紙に投票する人の名前を書いていき、箱に入れていった。
●●●
投票数は
緑谷出久 五票
八百万百 二票
爆豪勝己 一票
常闇陰踏 一票
障子目蔵 一票
尾白猿夫 一票
切島鋭児郎 一票
芦戸三奈 一票
砂藤力道 一票
蛙吹梅雨 一票
青山優雅 一票
瀬呂範太 一票
上鳴電気 一票
耳朗響香 一票
葉隠透 一票
峰田実 一票
このような結果になった。緑谷が五票、八百万が二票、他一票。
「ぼ、僕五票〜!?」
「なんでデクに....!誰が....!」
「0票....!わかってはいた!流石に聖職と言ったところか.....!」
「他に入れたのね......」
「お前もやりたがってたのに....何がしたいんだ飯田....?」
飯田は自分に票入れず他の生徒に入れたが、誰も自分に入れなかった為0票という結果になり、膝から崩れ落ちた。
「じゃあ委員長緑谷、副委員長八百万だ....」
「うーん悔しい、流石ですわ」
「マママママママジで、マジでか.......!」
三票の差に八百万は悔しがり、委員長になると思っても見なかった緑谷は緊張の余り体が震えていた。
「緑谷なんだかんだアツいしな!」
「二人ともガンバ!」
周りからの応援に緊張していた緑谷は照れ臭そうに頭を掻く。しかしその結果に飯田は納得できない様子だった。
●●●
お昼になり巧は大食堂へと向かった。大食堂にはかなりの人数がいる。ここ雄英にはヒーロー科以外にも普通科、サポート科、経営科などの生徒たちも集まっている為、混雑してしまうのは日常的なのだ。巧はその人だかりを見て軽く苛つくが、なんとかき分けて席に座る。今日頼んだのはすき焼きうどんだ。猫舌である巧にとってすき焼きうどんは食べずらいものにも感じるが、毎日ざるうどんだと流石に飽きてしまうのでたまには熱い食べ物を我慢して食べている。すき焼きといえば生卵をかけるのが主流。巧は普段鍛えているので必然的にタンパク質を取る為、家ではゆで卵をよく食べている。しかし毎日ゆで卵を食べているせいですぐに卵がなくなり引子にいつも怒られていた。その為卵が無くなれば巧が必ず買いに行かなくてはいけないというルールができてしまった。巧はお椀に生卵を入れてかき混ぜる。お椀の中が黄色一色になったら、鍋からうどんと一緒に牛肉やネギ、糸こんにゃくなどを入れていく。巧はうどんを箸で掴み、しばらく息を吹きかけて冷ましていると、誰かが巧の前の席に座った。誰だと顔をあげてみると座っていたのは昨日の長田結花であった。
「.......なんのようだ」
「あの、ただ一緒にお昼を食べようかなって思いまして、同じ仲間として」
結花はただ普通に巧と一緒にお昼を食べようとここに来たようだ。しかし巧はあって間もない相手と一緒に食べるというのは嫌いなため追い払おうとする。
「だったら他をあたれ、俺は一人で食いたいんだ。昨日お前と一緒にいた.....轟だったか?あいつと一緒に食べればいいだろ」
「私も最初そう思いましたけど、何処にもいなくて.....」
巧は席を移ろうと周りを見渡すが殆ど席が空いておらずここにいるしかなかった。巧はため息をつき、仕方なく一緒に食べることにする。結花が今食べているのは、フレンチトーストだ。半分に切った食パンに卵と牛乳と砂糖を混ぜたものにつけ、バターで引いたフライパンで焼いたものだ。
「あの、乾さんでいいですか?」
「どっちでもいい」
「えっと、乾さんの個性って一体なんですか?」
「...........衝撃、両手に衝撃を纏う。それが俺の個性だ」
「へぇ、カッコいいですね。私の個性は......」
「修復、だろ?肉体や物体の壊れた部分を直すことができる。昨日聞いた」
「はい、そうです。今は骨折したところまでを直すことが出来るんですけど......、あの緑谷さんは今どこに?」
結花は緑谷がどこにいるのか巧に尋ねる。巧は箸を置いて親指で右の方向を指した。結花がその方を見ると緑谷がA組のクラスメイトと一緒に食べているところを見つけた。
「乾さんも一緒に食べないんですか?」
「さっきも言ったみてぇに、俺は一人で食べる方がいいんだ」
「寂しくないんですか?」
「ねぇな」
ここで会話が途切れる。結花は頑張って巧と話そうとするが巧はそれを嫌がり話そうとしない。そして結花はあることを考える。
「乾さん、私は今からこのお昼の時間一緒に食べましょう。どうですか?」
「はぁ?勝手に決めんな。俺の話聞いてねぇのかお前?」
それは一緒にお昼を食べようという提案だ。勿論巧は否定する。だが結花は諦めずに続ける。
「一緒に食べた方がきっと楽しいです。誰だって一人なんてことはあり得ないんですから。同じ仲間として友達になりましょう」
結花は優しい笑顔で巧に話す。巧は結花の美しい顔に少し釘付けなってしまい、黙って見ているとまた誰かが結花の隣に座った。
「俺は嫌だぞ。こんな奴と友達になるな。必ず悪いことが起きる」
巧と結花が声のする方に振り返ると座って来たのは轟だった。
「焦凍さん.....どこに行ってたんですか?」
「少し用事がってな。すまない.......そんなことより乾、お前は何故、結花と話しているんだ?お前のような奴が関わるのはこっちは迷惑なんだ」
「ちょっと焦凍さん!」
「話かけて来たのは長田の方だぜ」
「結花の名前を気安く呼ぶな!大体なんでお前がA組いるんだ。本当だったら結花がA組にいるはずだったのに.....!」
轟はその恨みから巧を睨みつける。巧からしてみればただのとばっちりであるため腹が立ち、轟を睨み返す。
「焦凍さん。私は自分の意思で雄英の試験を受けたんです。推薦を進めてくれたのはうれしかったです。けど自分の力で雄英に挑みたかったんです。そしてヒーロー科に入ることができた。B組でしたけど、私に悔いはありません」
結花は轟を鎮める為に雄英の試験を受けた経緯を話す。それを聞いた轟は落ち着き、黙る。
「私はただ乾さんと友達になりたいだけなんです。私がいなくなったりなんかしません。だから安心してください」
轟は結花の優しい笑顔に強張った顔が、だんだんと穏やかになっていった。そして意を決したように顔を上げ巧に言う。
「知り合い程度ならゆるしてやる。それ以上は認めねぇ。勘違いするな、俺は結花の為に許してやったんだ。そこだけはっきりとさせてもらう」
そういうと轟は席を立ち上がる。
「焦凍さん、お昼は?」
「もう食べた」
轟はそのままどこかに行ってしまった。その後ろ姿を巧は変なものを見るような目で、結花は困ったような目で轟を見ていた。すると突然サイレンが鳴り始める。その災害が起きた時に流れるようなやかましい音に周りはパニックになってしまう。
『セキュリティ3が突破されました』
『生徒たちは速やかに屋外に避難してください』
「誰か入って来たのか?」
「兎に角、避難しないと」
結花の言葉に巧は頷く。まだ食べている途中だったすき焼きうどんを見ながら出口まで向かった。しかし出口には大量の人だかりができており通るのは無理な状況であった。巧は一旦立ち止まり結花を引き止める。
「今ここを通るのは危ねぇ、仕方ないが、もう少し後から行くぞ」
今ここを通ると人混みに呑み込まれて怪我をするかもしれない。しばらく人がいない食堂の隅にいると轟が後からやって来た。それをみた巧はあからさまに嫌な顔をする。
「結花!大丈夫か!?」
「はい、怪我はないです」
「よかった」
轟は結花に怪我がなく、安心する。そして巧の方に振り向いた。目が合った巧はさっきのことがあり轟を睨む。
「なんだよ?」
「お前、結花に何もしてないだろうな?」
「してねぇよ」
睨み合う二人に間にいた結花はどうして仲良くできないのだろうと呆れてしまう。すると誰かが出口の方まで飛び上がり着地する。
「皆さん....大丈ーーーーーー夫!!」
それは眼鏡が特徴的な生真面目な少年、飯田であった。飯田の一声に大騒ぎしていた生徒たちも静まりかえり、飯田の方を見る。
「ただのマスコミです!何もパニックになることはありません!大丈ー夫!ここは雄英!最高峰に相応しい行動をとりましょう!」
その言葉に周りの生徒たちは落ち着いていき、圧迫していた出口は徐々に緩んでいった。後から警察たちが来てマスコミたちは撤退していった。どうやら防犯用の壁が壊されていたらしい。しかしどうやって壊したのか、マスコミたちが壊せるようなものでも無いはず。誰が壊したのかはわからないが、今そんなことを考えていても仕方のないことだ。そのまま巧は午後の授業に移った。
●●●
後日HRが始まり、委員長の緑谷と副委員長の八百万が指揮を取る。これから他の委員長を決めるのだ。
「ほら、委員長始めて」
「でっでは、他の委員長決めの執り行って参ります!......けどその前にいいですか!」
しかし緑谷は始める前に何か言いたいことがあるそうだ。緑谷は飯田の方を見る。
「委員長は、やっぱり飯田君の方が良いと.......思います!」
「!」
「あんな風にカッコよく人をまとめられるんだ、僕は....飯田君がやるのが正しいと思うよ」
委員長は飯田の方が適任だという緑谷に飯田は驚く。
「あ!いいんじゃね!!飯田、食堂で超活躍してたし!緑谷でも別にいいけどさ!」
「非常口の標識みてぇになってたよな!」
「適した者こそ指揮をするに相応しい.....」
皆、飯田が委員長になってくれることに賛同し、飯田は感動していた。
「何でもいいから早く進めろ....時間が勿体無い」
「ひ!!」
さっさと進めてほしい相澤は睨みつけ周りはその目つきにびびってしまう。
「委員長の指名なら仕方あるまい!」
「任せたぜ非常口!」
「非常口飯田!しっかりやれよー!」
「頑張れ非常口ー!」
あの時非常口のポーズでいた飯田は周りから非常口と呼ばれるようになった。
●●●
午後、今からやる授業はヒーロー基礎学。しかし先日のマスコミの事件からヒーローは相澤とオールマイト、そしてもう一人のヒーローで行うこととなった。
「ハーイ!何するんですか!?」
瀬呂の質問に相澤は徐ろに"Rescue"と書かれたカードを取り出した。
「災害水難なんでもござれ....レスキュー訓練だ」
「レスキュー....今回も大変そうだな」
「ねー」
「バカおめー!これこそヒーローの本分だぜ!?鳴るぜ!腕が!」
「災難なら私の独壇場。ケロケロ」
「おいまだ途中.....」
口々に話す生徒に相澤は髪が浮き上がり、全員静かになった。
「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を制限するコスチュームもあるだろうだからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗って行く。以上、準備開始」
相澤はリモコンを操作してロッカーから各自のコスチュームが入ったケースを取り、更衣室まで歩いて行った。巧と緑谷は体操服に着替える為1番にバスへと向かった。しばらくして他の生徒もコスチュームに着替えて来た。
「ん?デク君体操服や。コスチュームは?」
「戦闘訓練でボロボロになっちゃったから......修復をサポート会社がしてくれるらしくてね。それ待ちなんだ。この辺は買い直し」
全員から集まり委員長の飯田が指揮をとった。
「バスの席順でスムーズに行くように番号順に二列で並ぼう!!」
飯田の指揮に全員言われた通りに二列に並びバスの中に入っていく。しかしバスの中はニ列ではなく、前者半分が向かい合って座るようになっていた。
「こういうタイプだった、くそう!!」
飯田は指揮をとった意味がなかった為、悔しさをあらわにした。全員乗り込みバスが発車する。その途中で緑谷は蛙吹に話しかけられた。
「私、思ったことをなんでも言っちゃうの。緑谷ちゃん」
「あ!?はい!蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで」
これまでの人生殆ど女子に話しかけられてこなかった緑谷は突然話しかけれ戸惑ってしまう。
「あなたの個性オールマイトに似てる」
「!!」
緑谷は蛙吹の発言に緑谷は冷や汗をかき始める。緑谷の個性はオールマイトから授かったワン・フォー・オール。これは誰にも話すことはできない緑谷とオールマイトだけの秘密なのだ。
「そそそそそそそうかな!?いや、でも、僕は、その、えー....!」
緑谷は動揺してしまい、どう言い訳したらいいか分からず言葉が詰まってしまう。
「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我しねぇぞ。似て非なるアレだぜ」
すると近くにいた切島が蛙吹の言葉を否定する。その言葉に緑谷は心の中でホッとする。
「しかし増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来ることが多い!俺の硬化は対人には強ぇけど、いかんせんじみだからなぁー」
「僕は凄くカッコいいと思うよ!プロにも十分通用する個性だよ!」
「プロなー!しかし派手で強ぇつったら乾と爆豪と轟だよな!」
「乾と轟ってモテそうだよなー。どっちもイケメンだし、チクショウ」
「乾君が不良系で轟君がクール系って感じ!」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」
「んだとコラ!!出すわ!」
そんなことを言っている間に目的地が見えて来た。
「もう着くぞ。いい加減にしとけよ.....」
「「「「「はい!」」」」」
目的地に着いたバスは停車し、ゾロゾロと生徒たちが出てくる。中に入るとそこは巨大なアトラクションのような場所だった。
「「「「「すっげーー!!USJかよ!?」」」」」
そのUSJのような場所に生徒たちは驚いていた。そこに現れたのは宇宙服を模したコスチュームを着たヒーローだ。
「水難事故、土砂災害、火事、etc.....あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も、
(((((USJだった....)))))
「スペースヒーロー13号だ!災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
「わー!私好きなの13号!」
相澤の言っていた3人目のヒーローは13号という主に救助活動を行うヒーローである。
「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが」
「それが、どうやら通勤時制限ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で休んでいます」
「不合理の極みだなオイ。....まぁ、仕方ない始めるか」
相澤はオールマイトの不合理さに苛立つも、すぐに離れる。そして13号が前に立ち片腕を上げ指を開く。
「えー、始める前にお小言を一つ二つ......三つ.....四つ.......」
(((((増える.....)))))
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性はブラックホール。どんな物でも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!」
緑谷の説明に麗日は力強く頷く。
「えぇ、しかし簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう個性があるでしょう」
13号言葉に生徒たちの表情は固くなる。個性というものは使い方次第では人を助けることができるし、人を殺してしまうことだってできてしまう。13号は続ける。
「超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。しかし一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで自身の秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では....心機一転!人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう!君達の力は傷付ける為にあるのではない。助ける為にあるのだと、心得て帰ってくださいな。....以上、ご清聴有難うございました。」
13号の説明が終わると拍手喝采が巻き起こった。
「そんじゃあ、まずは.....」
一括りつき、相澤は授業を始めようとする。しかし何か違和感を感じた相澤は広場の噴水の方に振り返る。するとそこから黒いモヤのようなものが浮き出てその中から生々しい手のオブジェクトを身体中につけた男が出現した。
「一塊になって動くな!」
生徒たちは突然のことに戸惑うも、何かやばいことが起きたことを感じとった巧はすぐにアタッシュケースからベルトとファイズフォンを取り出す。
「13号!生徒を守れ!」
「なんだありゃ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン!?」
状況が呑み込めない生徒たちは何が起こったのか分からずパニックになる。手の男を筆頭に次々と人が現れる。
「動くな!あれは...