オラリオに平穏を求めるのは間違っているだろうか?   作:悪魔野郎

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帰り道は地獄道

 

「や゛っどづいだ」

 

 レベル7だろうが、オラリオからこの村まで魔法で移動するのは辛いわ! あれから三時間ほど経ったがリューは起きず、仕方がなくアストレア様がいる村まで透明状態(ステルス)や座標指定、移動速度、その他諸々の調整! 脳が焼き切れるわ! どっかの【万能者】でも【勇者】でもないんだぞ! 

 

 アストレア様がいらっしゃる家の扉にノックする。

 

「あら? ……あらあら?」

「そんな、面白いものを見るような視線で見ないでください」

 

 ニヤニヤ顔をしたアストレア様が、扉を開けて下さりそのままリューの寝室に上がり、ベットにリューを横たわらせる。

 

「で? ……何があったの?」

「めちゃくちゃ良い顔して聞くことじゃないですよ?」

 

 相変わらずだと呆れながらも用意してくださった椅子に座る。

 

「また、何かやったのかしら? いつもどこか抜けてるからね」

 

 脇腹をツンツンしてくるアストレア様。確かにまだ幼かった自分を知っているアストレア様からしたら、私のことは息子のようにおもわれているのかもしれないが、眷属(子供)の恋愛事情に首を突っ込まないでいただきたい。

 

「……いつもの通り、私のやらかしですよ。この歳で理性も制御出来ない愚か者ですよ」

「あら、いつもより重症ね。貴方が()()()()()()()()()()()かしら?」

「……よりによってその話題振ります? しかも意外と最近じゃないですか」

 

 それは私にとっては黒歴史。アストレア・ファミリアの敵になった話だ。

 

 少し前の暗黒期と呼ばれる時代。英雄が不足していた。ある意味オラリオの全盛期と呼べる時代が終わり、ゼウスとヘラはオラリオを去ってしまった。

 故に三大クエストの最後の試練『黒い終末』は未だに達成されていない。最低でもレベル8に匹敵する力を持つ者で無いと、あのクエストは達成するのは不可能に近い。

 

 だから私は裏切った。正義の風上にも置けない裏切り行為。愛する主神と家族の為に真の平穏を求めて。

 嗚呼、こんな私が正義の眷属であって良いのだろうか。

 

「駄目よ? 貴方は私の眷属(こども)です」

「……心を読まないでください」

 

 ああそういや、エレボス神は狒々爺(ゼウス)に似ていると思っていたが──ああ、そうかそうか。絶対悪も所詮絶対悪止まりか。

 確かに傷は受け継がれる。『終末の時計』を遅らせたことにも意味はある。

 

 かつての戦友。ゼルドもアルフィアも【女帝】もマキシムも、きっと何かを残して、最果てで待ってくれている。だから、私は見届けよう。世界は英雄を求めている。英雄の船(アルゴノォト)は私が居る限り絶対に沈めない。

 

 そんな事を思いながら、椅子から立ち上がる。

 

「逃げちゃだめよ?」

「うぐっ」

 

 まあ、私の船はすぐにでも沈没しそうだが。

 

「半年後には帰ってきなさい。後悔するわよ」

「半年──」

 

 次の瞬間ザインの顔色が真っ青になる。ザインだって責任から逃れようとするほど馬鹿な男ではない。むしろ、愛する女のために尽くすのならば、オラリオすら敵に回してもいいと思う程だ。しかし、子供ができる可能性を予測したことでやはり怖くなる。とゆうか、リューが色々怖い! あの目がやっぱり怖い! 

 

 恐怖と幸せな未来を予測するという、なんとも形容し難い感情になるながらも、冷静な思考は監視カメラの魔法でも仕掛けるかなどと本気で考えていた。

 

「駄目よ。ズルしたら」

「心読まないでください! てか、アストレア様が楽しいだけじゃないですか!」

「そうよ。そして、貴方の罰」

「グッ!」

 

 神としての慈愛と遊び心という、なんとも反論し難い返しをされ意気消沈するザイン。ザインはこう思った。

 

(女ってやっぱ強いよね)

 

 その日はどうにかベルの村まで帰ることができた。

 身も心もボロボロだけどネ!

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