オラリオに平穏を求めるのは間違っているだろうか?   作:悪魔野郎

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筆が遅い。才能がほしい。サボってすみませんでした。


ベル・クラネル

 

 ベル・クラネルは大馬鹿者だ。

 

 師匠であるザインに何度怒られただろうか。致命傷になりかけるほど修行をし、時に毒草を薬草と間違えてつんできてしまったりと調子に乗っているときほど何かしらやらかす傾向がある。

 

 さて、ベルは現在──迷宮の五階層にて死闘を繰り広げていた。相手は本来、レベル二相当の冒険者がようやく倒せるモンスターであるミノタウロス。

 ミノタウロスにレベル1が立ち向かえば確実に殺される。それが当たり前。迷宮の最初の難関の一つ。それがミノタウロス。

 

 その死が確定したはずの戦いの中で──ベルは笑っていた。

 

 きっと、何処かで気がついていたのだろう。僕は一度も冒険をしたことがないと。

 子供が近くの森に一人で入っていく。それだけでも、十分冒険と言って差し支えないもののはずなのにベル・クラネルにはそれがなかった。理由は簡単。保護者が居たからだ。

 例え、腕が飛ぼうともすぐさま回復できる魔法すら持っているザインが常にスキルと魔法を併用して監視してるのだ。そんな状況ではどんなことをしたって常に安全なシナリオを走らされているのに等しかった。

 だが、今はどうだ。ザインは娘がもう少し大きくなったらオラリオに来ると言っていない。

 確実な死。ベル・クラネルという人物の人生(シナリオ)終止符(ピリオド)をつける冒険(ミノタウロス)が今、目の前にいる。

 

 ──嗚呼、これが冒険か。

 

 産まれて初めての冒険。きっと、この奥にある未知はこれ以上の冒険を冒険者に与えるのだろう。それを思考したベルはまるで初めて玩具を買ってもらった幼子のように──そして、一匹の獣の如く駆け出した。

 

『一眼二足三胆四力。東方にて私の師が教えてくれた言葉だ。眼よりも足が。足よりも胆力が。胆力よりも力が先に肥える事はない‥‥まあ、冒険者にとっては力は簡単に上がってしまうだろうが。話が逸れたが眼はどんなにステイタスが低かろうが肥える事は出来る。レベル八の動きを一般人が眼で追う事が理論上出来るはずだ。実際我が師は大気を掴み、岩を切り裂くような化け物だったが私は眼でその動きを追う事だけは出来た(当時のザインはレベル1相当)

 ベル。君は単純な力では格上どころか同格にだって負けてしまうだろう。だが技の威力は速力✕筋力だ。瞬間的に与える力を極限まで高めろ。一切の無駄なく力を伝達させろ。それが出来たなら──私が‥‥いや、神々すらも称える奥義の末端に触れることが出来る』

 

 力む必要はない。恐れる必要はない。ただ──「その首を狩る」

 この時の目撃者は運命の女性のみ。ただ、運命の男は目の前の運命に執心しているので気が付かない。

 勝負は一瞬。時が止まったかのような世界に入ったベルの最初の行動は()()()()()()事だった。

 体格も負け、速さも同格ギリギリ。力にいたっては比較すらおこがましい。故に一瞬でもいい。隙が必要だった。

 ならば、刀を振るう腕ではない腕は不要──()()()それがベル・クラネルの差し出す代償。その見返りはミノタウロスにとってはほんの一瞬。されど、致命的な一瞬。

 ベル・クラネル最速、最大威力の奥義。武神が見たのならば称賛を言うだろう奥義の名は

 

「自刀」

 

 肉体を刀の一部と見なし、刀の反りとしての役割を肉体でも行うも言う技。外せは致命的な隙が生まれるまさに決死の必殺技。奥義と語るには無骨だが確かにその一端に触れる必殺技。

 勝者は決まった。血の雨が降る。白い髪は血で紅く染まり、持っている刀は跡形もなく崩壊する。されど、勝者は雄叫びを上げる迷宮(冒険)に己は生きてるぞと伝えるが如く。その声はその階層に響き渡った。本来、恐怖や理性などが殆ど無いはずのモンスター達が恐怖するほどの雄叫び。

 目撃者はただ一人。運命の女性──アイズ・ヴァレンシュタインのみ。彼女は分からなかった。モンスター達同様に恐怖を抱くわけでもなく、素晴らしい冒険のクライマックスを見られた感動でもなく、それでも確かに存在するこの高揚が何からくるものなのか。

 

「名前は?」

 

 彼女も何故問たか分からない。でも知りたいと思ってしまった。ただそれだけ。だから、英雄は応える。

 

「ベル・クラネル」

 

 己の名を誇らしげに。

 

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