オラリオに平穏を求めるのは間違っているだろうか? 作:悪魔野郎
話の内容は決まっているけど時間と妄想によって内容が膨らみ過ぎてキャパオーバー中です。
■ベル・クラネル
暖かい何かが僕の頭を撫でている。優しく優しく割れ物を扱うように。
「お母‥‥さん?」
「ごめんね。私はお母さんじゃないよ」
そのやり取りを行った次の瞬間、ベルは反射で起き上がっていた。
ここはどこだ? ダンジョン内部か? それとも天国か?
混乱した思考が求めるのは情報。そのとっさの判断で──目の前にいる美女に思いっきり頭突きしてしまった。勿論、ベルもわざとではない。むしろ、ステイタスの差でベルの方が激しい痛みに襲われている。
「「ッ〜〜!!」」
言葉にならない痛み。ベッドの上でのたうち回るベル。何をされたの理解できずフリーズするアイズ。ベルの立てた音で騒ぎながら入ってくる神ロキ。その後ろからやってくる
〜少年少女‥‥あとついでに神休憩中〜
「さて、話を聞いてくれるかな? ベル・クラネル君」
「はっはい! よろしくお願いします!」
「いやいや、今回の件は僕達ロキ・ファミリアが悪いんだ」
【ロキ・ファミリア】団長フィン・ディムナ。
現オラリオの中では最高クラスの戦闘能力を誇りながらも団長として指揮を取ることができるほど頭も良い。正に女性の夢を体現したかのような男である。
そんなフィンは布袋を懐から取り出し、机にゴトっと音を立てて置く。
「僕達【ロキ・ファミリア】の遠征時、イレギュラーが起きてね。君がいた階層にミノタウロスが逃げてしまったのさ。僕本人が居なかったとはいえ団長としての責任は僕にある。先ずは謝罪から済まなかった」
「いっいえいえ。こちらこそさっさと逃げれば良かったのに余計な事をしてしまい‥‥」
「あははっ! レベル1でミノタウロスを倒してしまった君が言うと滑稽だね。
さて、僕のポケットマネーから出した賠償金だ。勿論、君の治療費は別で【ロキ・ファミリア】が負担した」
「はい。ありがとうござ──ッ! コレは多すぎですよ!」
ベルは内心、気が気じゃなかった。産まれて初めて見るような大金。現在の【ヘスティア・ファミリア】の生活ならば、数年は働かなくても良いだろう金額。
「そうかな? 一週間も冒険者活動出来なかった上に君を死にかけさせてしまったんだ。妥当だと思うけどな」
「‥‥あのー。一週間も僕寝ていたんですか?」
「うん‥‥もしかして、気がついてなかった?」
ベルは焦っていた。神様やアドバイザーのエイナさんなど心配をかけてしまっていると考えていたからだ。
「‥‥大丈夫?」
その一言で焦りは霧散した。
金髪の長髪に。その綺麗な眼に。すべての意識が持っていかれる。
体が熱くなる。見惚れてしまう。
「‥‥熱でもある?」
そう言いながら彼女は僕の額に顔を近づけ──僕の視界は暗転した。
■ザイン
ザインは走った。かの無謀無知な馬鹿な弟子にゲンコツを入れるために。
ゴォン! っと人体から出してはいけない音を叩き出す。
「‥‥失礼した。ロキ・ファミリア」
「‥‥やはり、君か。【聖騎士】」
ベルに近づいていた金髪の美少女は俺のゲンコツを見て自分の頭を擦りながら顔を青ざめているし、リヴェリアは同士を見るかのような目をしてくるし、
「さて、ベルは俺が元の場所に戻してこよう」
「待ってくれ。久しぶりなんだからお茶でもしていかないかい?」
「女性に誘われるのならまだしも、よりによって胡散臭い【勇者】殿に誘われるのはごめんだね。まあ、勝手に敷地に入った無礼を働いたのは事実。これをやるから見逃してくれ」
机に置くのは魔導具。それも俺が直々に作った代物。
「これは?」
「範囲はそこまで広くないが同じファミリア所属の人物に一方通行でメッセージを送れる代物だ」
「へぇ。確かに便利だ。そして、相変わらず戦闘に直接関わるものを作ろうとしない‥‥か」
「‥‥失礼する」
フィンのその言葉に少し苛立ちを感じながらも素直に去ろうとベルを抱えて扉に向かう。
「待ってください」
「‥‥ああ、あの精霊の。大きくなったな。それでどうした? 用事があるならさっさと言ってくれ」
「どうして‥‥どうしてその子は強いんですか?」
アイズ・ヴァレンシュタイン。悲しき哀しき女の子。彼女の目線はベルに向いていた。
嗚呼、やはりこの子は──
「君が単純な戦闘能力な話ではなく、誰かを救い、誰かを笑わせ、誰かの心を動かす者を指すのならば──いや‥‥それは自分で見極めるべきだ」
言葉にするのは簡単。しかし、理解するのはまた別。故に語る資格もない──今はまだ。
私は歩いていた。ベルは教会に置いてきた。メモも置いていったし、オラリオでは手に入りづらい刀も新しいのを与えた。流石にすぐに壊すことは無いだろう(フラグ)
さて、とある酒場の前で立ち止まる。
店の名は【豊穣の女主人】ここのオーナーには色々と迷惑をかけているのでお詫びでもないが高い酒を買いに来た‥‥ふっかけられるんだろうな。
「いらっしゃいませー」
可愛らしい店員さんが挨拶してくるが正直内心焦っていた。
血が殺せ──考えるな。思考を止めろ。
己の思考を塗りつぶす。理性が叫ぶ。
目を閉じ、深呼吸する。周りから見たら美少女の香りを嗅いでいる変態にしか見えないだろうがお構い無しに己を落ち着かせ、無理やりオーナー【
「やあやあ。お久しぶ──「死ね!」」
‥‥どうやら、私の命はオラリオではかなり軽いもののようだ。
■フィン・ディムナ
「良かったのがフィン。確かにあの程度ファミリアから見れば端金だろうが、個人的に見れば十分大金じゃろ」
「いいや。その価値はあったよ」
そう言って、ガレスに
「片方は今さっき、【聖騎士】から貰ったものだろうがもう一つはなんじゃ?」
先程、ザインから貰ったものである通信機ともう一つ杭が僕の手元にあった。
「ああ、落とし物だよ。誰のかは分からないけどね」
「‥‥性格が悪いぞ。フィン」
「アハハ。知っているだろう?」
そう、この杭はベル・クラネルの所持品。それも魔剣に匹敵する──いや、それ以上の代物。
基本的にザインは攻撃的な魔導具を作らない。例え信頼するファミリアの仲間たちでも防御系の魔導具しか渡さない程だ。
故にこれは破格。その防御系の魔導具ですら深層の魔物に余裕で対抗しえる代物なのにそれが攻撃に転換されるならばどうなるだろうか?
「まあ、見たところ。そこまで強い魔導具ではないようだけど。やはり、破格。なんたって劣化魔剣を無制限に数時間おきに使えるのだから」
「──ッ! 本当か? フィン」
「ああ、昔酔った勢いで本人から聞いた」
魔剣よりも弱い力とはいえノータイムでそれも壊れる心配がなく使えるのだから、あの程度の出費から見ればかなりのものだ。
「後はそうだな。コネクションを作る為だね」
「コネクション?」
「ベル・クラネルは確実に強くなる。これは確実に僕らのレベルへ至ると言えるほどに」
「流石に過大評価し過ぎではないのか?」
「ザインがそういった。理由はそれだけで十分だ」
フィンはザインを尊敬している。冒険者としては三流もいいところだが、団長としての側面は尊敬している。
基本的にザインは【アストレア・ファミリア】の団員の行動に制限をかけない。命令をしない。だが、
『正義』を冠する女神のファミリアの団長でありながら、嘘と混沌を撒き散らし考えさせる。弱いも強いも関係ない。
故に彼は【聖騎士】。オラリオ最後の砦にしてオラリオを護り見守る者。
そんな彼がベル・クラネルを弟子と呼んだ。それ以上の理由は必要ない
「さて、ベル・クラネル。君の活躍を期待しているよ」
フィン「ザインの関係者だな。コネ作っておこう」
↓
「思ったよりも大収穫だった」
今回は殆どフィンの一人勝ち。ベルはアイズに興味を持ってくれたのでマシだけど、短時間で2回も死を感じるザインはなぁ