オラリオに平穏を求めるのは間違っているだろうか? 作:悪魔野郎
■ザイン
突然だが、たまにこの夢を見る。
何も無い泥沼。地平線の彼方まで続く泥沼。私はそこに立っている。ふと空を見上げる。無限のように感じる美しい星星。
嗚呼、私はあのようになれるのだろうか。漠然とそう思いながら泥沼の中を歩く夢。
亡霊の如く、醜い姿になろうとも私は歩み続ける。
だから‥‥だからこの先で待っていてくれ。
そんな無駄な夢を思い出しながら俺は【豊穣の女主人】から脱出した。
うん。ミアが何故怒ってるのか分かっているよ?
あの【暴食】やらマキシムやらの大食漢共と一緒に飯をたかりに行った事を怒っているのは分かっているよ?
まだ、建設途中の【豊穣の女主人】に岩を落としちゃって崩壊させてしまった事を怒ってるのも理解しているよ?
‥‥はい。私が悪いです。金貨十数枚のボッタクリを取り戻すのは諦めます。
さて、ここからは私のエゴだ。
私はとある2つの墓の前にいた。
「──ッ!!」
私は躊躇なく
ステイタスの全力開放。しかしその一撃は雑過ぎて、瓶が粉々に墓の一部が砕ける程度で済んだ。
その墓は赤い紅い血のような色に染まっていた
「何故だ。何故待てなかった。私が甘かったのか? お前らに『悪』を押し付けてしまうほどに私は頼りなかったのか?」
分かる。分かっている。
例え、瀕死になっただろうが四肢を失おうがお前らがそうする理由に足りるのは理解できる。
だが、共感できるかはまた別の問題だ。
確かに俺のすべてを持ってしても彼らの延命が精一杯だっただろう。それでも、希望を捨てないでほしかった。世界に失望してほしくなかった。
「だから
自分勝手で周りに影響を与えてこっちの気も知らずに勝手に死地へ赴く。他の墓に眠る老害共も同罪だ。大人しく若者の成長を見守っていれば良いものを‥‥きっと、そう遠くない日に私はベルを‥‥いや、ベル・クラネルを嫌いになる。
「やあ、久しぶり‥‥これは酷いなぁ。掛けてしまっているじゃないか」
「神ヘルメス。私を嘲笑いに来たのか?」
「私がそんな神だと思っているのかい?」
「‥‥いや、言われない方が辛いことを理解しているのだろう? あの神ロキですら私を責めに来なかった。もしくは家族の死に意味を持たせたかったのかも知れないが」
「では、私が語ろう。ザイン──いや、【聖騎士】は【死の七日間】に
「流石だな‥‥その通り。私はオラリオを。愛する民を見殺しにした。本来ならその程度の距離、半日もかからないのにな」
「君は生まれながらの英雄。目の前の
そう言いながら神ヘルメスは祈るように墓の前に座り込む。
私は小さな花を収納魔導具から取り出し墓に添えた。
「その花は?」
「本来なら花束がいいのだろうが、こいつらにはこれで十分だろう。山奥のとある田舎に咲いていた花だ」
「‥‥ハハ。酷い嘘だな。隠す気もない」
「神なら神らしく空気を読む努力をしてくれ」
そう言って私は墓を出ようと振り返る。
「行くのかい? 君は英雄だ。このオラリオで最も尊敬されている人物と言っても過言じゃない。居場所なんて作り放題だろう?」
「だから、行くんだよ。神共には理解できないだろうが」
「ああ、そうだな。やはり君が僕には理解ができない。でも、歩み寄る努力はしたい」
身勝手な神の言葉に怒りを感じながらもオラリオの通りを静かに歩く。
オラリオは変わった。あの荒野からこのように立派な建物が娯楽があらゆる文化が栄えた。最初の英雄が誕生して千年と少し。環境は整えた。試練も継承も洗礼も全て『英雄』へ繋いできたつもりだ。
──それでも足りないというのなら
私が人を愛そう
私が人を殺そう
私が人間を辞めよう
私が‥‥私が‥‥
嗚呼、願わくば我が『正義』の前に数多の『英雄』が立ち塞がらんことを。
■???
ふと風が吹いた。暖かいでも何処か寂しいそよ風が。
「雨でも降るのでしょうか?」
私は早歩きでお店に走る。私の居場所。私の大切な家族の元へ。
そんな私の横をある男が素通りしていった。
「‥‥先生? いやでも」
その人は私の──いや皆の先生。いつも呑気な笑顔を浮かべ、迷子の子供を見つければ一緒に遊び、道を外した子供を攫っては教育と仕事という施しを与える度を越した善人。
でも、そのすれ違った男の目はいつもの先生のようなキラキラした目ではなく──泥のように濁った目をしていた。
ザインの分岐点。
ザインの『正義』は成就する?
-
しない
-
する
-
判断できない