トリステイン王子、ザナック!   作:交響魔人

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レッド・ヴァン・テュラン
帝政ゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿が作り上げたバスター・ソード。長さ1メイル60サント。刃の片方は真紅に彩られている。
飾り気はないが…腕の立つ土メイジや、剣に対して造形の深い者が観察すれば、これが業物であることを見抜けるだろう。
彼は武器というのは、耐久性が重要と考えており、剣としても高い耐久力がある。腕力自慢の亜人が粗雑に扱っても、折れる可能性は少ない。


質実剛健を旨とする彼が作り上げた剣を受け取った依頼主は、アルブレヒト三世との権力争いに敗れて失脚、塔に幽閉された。
屋敷に保管されていたこの剣は、家宅捜査を行った兵士が安物と判断して横流しした。その後、裏ルートを経てあるトリステイン人の野盗の手に渡る。


強面に似合わず小心者の彼は、馬車で移動していたある夫妻を襲撃。ロジェンヌ夫人のファイヤーボールを無効にして殺害に成功した事で、この剣の効果を知った。
しばらくたって焦げ臭いマントを羽織った男を見つけて火メイジだと判断。子分を引き連れ襲撃を決行した。


襲撃された火メイジは、顔色一つ変えず『爆炎』の魔法を放って野盗を殲滅。
野盗の首領が所持していたバスター・ソードには目もくれず、『炎蛇』と呼ばれているメイジはその場を後にする。


しばらくの間、野ざらしになっていたバスター・ソードはある日、旅人に拾われる。
彼はある開拓村に参加するが…開拓村はオーク鬼に襲われ、バスター・ソードはオーク鬼の首魁の手に渡り、暴虐の手助けをすることになる。


後に、『雪風』とフロスト・ドラゴンの主従によって回収された剣は、ゲルマニアのオークションにかけられる事となる。


進撃準備と、リッシュモン一派の処分

 神聖アルビオン共和国、王都ロンディニウム。

 ハヴィランド宮殿にて。

 

「報告します。トリステイン・ゲルマニア連合軍は新造の艦隊を合わせて60隻の戦艦を建造。諸侯軍も集結しつつあります。」

「厄介ですな。これでは攻め手が見つからぬ。」

「貴公は敵の意図も見抜けないのか!連合軍はアルビオンへの侵攻を目論んでいる!」

 

 

 レコン・キスタの初期から参加していた、というだけでこの場にいる男は、本来ならばホーキンス将軍と同席できるような才覚もない。

 

 リリーシャが恐れていたことが現実になりつつある。

 王党派との戦いでも、トリステイン軍が介入してきたら無事では済まなかった。ゆえに、戦後は「攻め込まれず、こちらから攻めれる」という状況を作り上げておきたかったが。

 

 

「艦隊決戦に敗れれば、疲弊しきったわが軍は泥沼の戦いを強要されます…。有効な防衛策を練らねばなりません。サウスゴータかレキシントンに立てこもって…」

 

「それは敗北主義者の考えだ!」

「それに、練度では我々の方が勝る!」

 

 黙って聞いていた、リリーシャは立ち上がる。

 

「私に、策があります!」

「リリーシャ護国卿?」

「艦隊決戦を行わず、敵軍をロサイスに上陸させます。」

「?!ロサイス周辺を明け渡せ、と?!」

「艦隊は敵の補給路を奇襲。陸軍はサウスゴータとレキシントンに集結させて時間を稼ぐ。補給を寸断して、疲弊させれば…」

「ふむ…。ありですな。」

 

 

 博打になるより確実に勝てる方策を示すリリーシャに、ホーキンス将軍は感心する。

 練度が著しく低下した現状では、それが最も勝算が高い。

 

 

「敵に最初から領土を明け渡すのは…」

「左様。まるで我々が無能と思われかねない。国内外からの支援も打ち切られかねませんぞ?」

「リリーシャ護国卿。貴女の策もよいと思うが…。敵軍に領土と領民を一時的にも蹂躙させることは本意ではない。それに、艦隊決戦に勝てばよいのだ」

 

 

 トリステインとゲルマニアの連合軍ゆえに連携は取れていないだろうが、それに数が少なく練度も大きく下がったアルビオン空軍が勝てるという保証がない。

 アルビオン人の自尊心もあり、クロムウェルと他の閣僚は難色を示す。

 

 

「クロムウェル閣下。評決を仰ぎます。」

「な、何?」

「負ければ泥沼になる艦隊決戦をするか、あえて上陸させて補給路を寸断するべきか。共和主義である以上、評決で決めるべきでしょう。」

「少し、休憩を挟もう。」

 

 

 クロムウェルは使い魔をつれて、私室へ行く。

 「使い魔」の「主」に指示を仰ぐために。

 

 

―――――

 トリスタニアにて。

 

 

「連合軍ゆえに、ゲルマニア空軍との連携に不安が残りますが…。数は上回るかと。アルビオン空軍の練度は大きく下がっています。」

「いまこそ艦隊決戦で勝利し、アルビオン上陸を果たした軍として、ハルケギニアの軍学史に金字塔を打ち立てるべきです!」

 

 

 血気盛んなトリステイン軍上層部を、ザナックは見渡す。そう、艦隊決戦に勝てば、あとは疲弊しきったアルビオン陸軍。

 5つの火竜騎士隊のうち一つは、王党派残党との戦いで壊滅。もう一つはタルブ戦役で殲滅した。

 風竜騎士隊もいるが…かなり欠員が目立ち、新人を多く採用しているという。

 

 

「一つだけ、疑念がある。アルビオン空軍が、素通しする可能性はないか?」

「陛下!さすがに練度が下がったアルビオン空軍でも、我々を素通りさせてはくれませんぞ。」

「左様。艦隊決戦に敗れればすべては水泡に帰しますが…。勝つしかないのです。」

 

 

 ラ・ラメー伯も、ウィンプフェン伯もその可能性に思い至りすらしない。

 リ・エステーゼ王国で育ったザナックだからこそ、その『可能性』にだとりついた。

 

 

「アルビオン空軍が我々をロサイスにあえて上陸させ、その補給路を寸断する可能性だ!」

「…は?」

「…へい、か?」

 

 絶句する文官達。

 

 

「落ち着いてください、陛下!アルビオン軍人は、一度も敵軍に乗り込まれたことがないという歴史に誇りがあります!作戦としても、領土を明け渡すという発想ができるはずがありません!」

「…陛下、それを敵がしてくるのであれば、上陸と同時にロンディニウムへ進撃するしかありませんぞ。補給はすべて現地調達、糧食も『錬金』で作るしかなくなります。」

「錬金の食事など食事とは呼べぬ。兵士の不満が爆発するぞ!」

「我らも兵士と混ざって食事をすれば不満は減る」

「あれを食せというのか?!」

「勝利のためだ。私はやる」

 

 途端に、暗雲が立ち込めたことでトリステイン王国軍の上層部の顔色が悪くなる。

 

 

 

「…ゲルマニアの、サルバトール侯爵に書状を送る。それと、アルビオンの『手筈』はどうなっている?」

「そちらは滞りなく。『空賊の長』が戻ってくるとなるという事で士気は高いです。」

 

 その報告を聞いてザナックは笑みを浮かべる。

 

 

「士官候補生の教練も順調です。書生という事で軽く見ていましたが…。根性はあります。」

「そうでなければ困る。さて、ほかの案件も処理するとしよう…。」

 

 

 扉がノックされ、衛兵が入ってくる。

 

 

「ザナック陛下!ギンメル卿が面会を求めています。」

 

 

 

―――――

 入ってきたギンメルは、一礼する。

 

「陛下。包囲網をかいくぐった、エリクとディミの兄妹を拘束されたとか。」

「ああ。リッシュモンの関係者は処刑だ。」

「お願いです。エリクとディミだけは助けて頂けませんか?」

 

 

 嘆願書を出され、目を通したザナックは訝しむ。

 

 

「…リッシュモンの正妻、カロリーナの甥っ子と姪っ子の助命を、何故貴公が求める?血縁関係はないはずだが。」

「先日面会したところ…エリクはザナック陛下の街道整備事業を鑑み、今後は流通業の需要が増すと判断しておりました。馬ではなく、ガーゴイルを車の形に加工したモノに引かせる。動かすのにメイジの精神点を消耗しますが、馬に比べれて、食料も水もはるかに少なく済みます。」

「メイジであれば動かせる、か。」

「現在、流通業は慢性的な人手不足です。量産を行えば物資輸送について、かなりの改善が見込めます。」

「だがギンメル卿。わからないことがある。貴公の本音はなんだ?」

「…エリクとディミの母親のロジェンヌは、私にとって初恋の相手です。他人の妻になり、夜盗の襲撃で殺されてヴァルハラへ旅立っていても。彼女と過ごした燃え上がるような日々はかけがえのない物。お願いします、陛下。寛大な処置を。」

「包囲網を搔い潜ったのは、どっちだ?」

「妹のディミです。」

「そっちは処刑だ。」

 

 余計な手間を取らせたほうは処刑、とザナックは冷酷に告げるが。

 

 

「待ってください、お兄様。」

「何だ?妹よ。」

「リッシュモンはこの兄妹を前々から疎ましく思っており、冷遇していたようですわ。お兄様の敷いた包囲網を搔い潜って逃げおおせた機転は使えます。妹を処刑するより、生かして恩義を与えれば兄の離反を防げます。」

「それでもなお裏切ったらどうする?」

「ここまで温情を掛けたうえで裏切るようなら、私は庇いだてしません。」

 

 アンリエッタから目を向けられ、ギンメル卿もうなづく。

 

 

「陛下。二人が何かをしでかせば、私も責任を負います。」

「…わかった。その双子の兄妹は生かしておくとしよう。」

 

 

―――――

 ゲルマニア帝国空軍司令部。

 トリステインの10倍の国土を持つ帝政ゲルマニア。故に空軍もトリステイン空軍より質と量で圧倒している…訳ではない。

 もとは都市国家だったゲルマニアは一つの国家となったが、設立直後から陸軍の増強が急務だった。

 そのしわ寄せは、空軍と海軍に押し寄せられた。

 

 だが、この陸軍重視の方針により魔法大国ガリアの陸軍に匹敵する軍事力を獲得したこともまた、事実である。

 

 

 この日も、森から切り出した木材を集積場に集め、そこから工廠に送ってフネを建造し、ゲルマニア空軍の港湾施設に送り……

 という一連の作業の報告書と、現場におけるフネの進捗状況に関する報告書をアーナルダ皇女は確認するはずだった。

 

 

 来訪者が来る、という知らせと来客の名前を確認した直後、彼女は空軍司令部の清掃を命じた。

 ここでいう清掃とは掃除だけではなく、警備レベルの引き上げも含めている。

 

 

 何せ来たのは、ゲルマニア帝国の大貴族。それが、内密に話があるといわれては最優先にせざるを得ない。

 

 

 

 

 

「アーナルダ皇女殿下、これをご覧ください。」

「ザナック陛下からの…。」

 

 ふと、違和感を覚える。書簡ではあるが開封済みだ。というよりあて先が。

 

 

「サルバトール侯爵宛てではありませんか。」

「…ゲルマニア空軍司令として意見を求める。」

 

 老練なサルバトール侯爵が、重々しい空気を漂わせている。

 さて、自分の好みからかけ離れたあの王子様…今は国王だが、は何と言ってきたのか…。

 

 

 

 一度読み終えたアーナルダは、目を閉じて深く深呼吸をして、もう一度読み直す。

 水を一杯、一気に飲んでからもう一度読み直して…サルバトール侯爵に目を向ける。

 

 

「…冗談にしては、まったく笑えませんね?」

「可能性は否定できない。何せ、不可侵条約を一方的に破ってきた政権だ。」

「上陸軍は、最短でサウスゴータかレキシントンを奪取して物資を確保するしか活路が無い!カースレーゼに!」

 

 

 アルビオン空軍が、艦隊決戦を行わずに素通し。その後、補給路寸断に乗り出した場合の対抗策を求める内容だった。

 

 混乱しているアーナルダに、サルバトール侯爵は別の書状を手渡す。

 宛先が『親愛なるカースレーゼ殿下』と書かれた書面だ。

 

 

「それよりも、もっと悪い知らせがある。」

「これ以上悪い知らせ?」

「読めばわかる。」

 

 

 なぜか端の方に握りしめられた形跡のある手紙を読み終えたアーナルダ皇女は、その場に崩れ落ちる。

 

 

「レコン・キスタの資金源が、ガリア王国?!そ、その狙いが、アルビオンの内乱を成功させてトリステインに侵攻!トリステインがゲルマニアと同盟を組んでアルビオンと戦い、疲弊したところを両用艦隊を動かして本国を攻撃!その後に遠征軍をレコン・キスタと挟み撃ちにして壊滅させた後、用済みのレコン・キスタを蹴散らして、数十年間ガリア王国がやりたい放題出来るようにする事?!」

「ガリアからレコン・キスタに資金が流れていることは私も確認した。ジョゼフ王の真意は不明だが、ザナック王の考えは正しいだろう…。同じ立場なら、私でもこういう筋書きにする。何せ、失敗しても硫黄は高値で売りさばけて元は取れるのだからな。進撃出来る戦力はアルビオンに集中している状況でガリアが攻めてきた場合、ゲルマニア帝国の選定侯は雪崩を打ってガリアに帰属を申し出るだろう。そうなれば…」

 

 

 アーナルダは立ち上がると、サルバトール侯爵に向かって叫ぶ。

 

 

「…ヴァリエール!ヴァリエール家は従軍するの!」

 

 

 トリステイン貴族を当てにするというゲルマニア皇女としてあるまじき発言だが、サルバトール侯爵も咎めない。

 アーナルダに伝える前、彼も部下に対して同じ発言をしたからだ。

 

 敵対しているからこそ、見える物はある。サルバトール侯爵が目を掛けていた武官が、烈風のせいで心をへし折られて引退した例は2ダースを超える。

 

 

「参戦する、という事だ。ザナック王はこの謀略に対する策を提示してきた。」

「これを打ち破る策?」

「両用艦隊の整備は遅れており、完了するのは降臨祭の後になると。つまり。」

「それまでにアルビオンを落とせなければ…。待って!ガリアが参戦するなら、トリステインと共にガリアと戦ってから」

「その場合、ガリアとアルビオンの連合軍と戦うことになるが?」

「…お父様は、なんと?」

「降臨祭までに決着をつけた上で、アルビオンに対して途方もなく甘い賠償をさせる事で和平をする…まぁ、相手が凡庸ならばゲルマニア帝国アルビオン領にして見せると言っていたが。」

 

 

 

 サルバトールはアーナルダを見つめる。

 

 

「わかっていると思うが、艦隊決戦でアルビオン艦隊を打ち負かさねば全ては終わりだ。全力を尽くせ。」

「…お願いです、塔から何人か…」

「諦めろ。この状況で塔から出されても、時間が足りない以上どうする事も出来ん。下手すればレコン・キスタかガリアに逃亡しかねない。」

 

 数秒、額に手を当てていたが…。スッと目を細めるとアーナルダは起き上がり、真っすぐサルバトール侯爵と向き合う。

 先ほどまでの狼狽は消え失せ、冷徹な瞳でサルバトール侯爵を見つめる。

 

「では、全力を尽くさせていただきます。」

「期待している。見送りは結構。」

 

 

―――――

 リリーシャは、拳を握りしめていた。評決は、艦隊決戦に傾いた。

 

 

 ホーキンス将軍はリリーシャに同意したが、レコン・キスタに初期から参加していて閣僚に上り詰めた者はクロムウェルの方についた。

 だが、一部の王党派から降伏した参謀はクロムウェルの側についてしまった。

 

 

 リリーシャとて、アルビオンに敵軍の上陸を許したくない。それでも、確実に勝利する道を取りたかった。

 もしも。リリーシャに「戦略爆撃」という概念があれば。

 

『敵軍を上陸させつつ、補給路を寸断。また、トリスタニアやヴィンドボナを攻撃する』

 

 と主張し、クロムウェルの「使い魔」すら論破できただろう。

 

 

 

 空軍士官は、数さえそろえればよいという物ではない。

 訓練されたベテランでなければ意味がない。

 

 にもかかわらず、粛清と革命戦役で数を減らし、残ったベテランもタルブで失った神聖アルビオン共和国空軍は、学生士官を採用して数を補っている始末。

 これで勝てると思えるほど、彼女は楽観論者ではない。

 

「父上、私は…間違っていたのでしょうか?」

 

 たとえ処刑されるとしても。王族として王政の打破を掲げるレコン・キスタと戦うべきだったのか?

 

 

―――――

 トリステイン王国の処刑場。

 

 

 新たに高等法院長に就任したバートと娘婿であるノベラは、リッシュモン一派の処断を行う。

 

 刑場に引き立てられたベルナルドは、跪こうともしない。

 

 

「前王の時からお仕えした身でありながら、レコン・キスタのクロムウェルと通じて情報を流した罪は重い。最後に、言い残すことはあるか?」

「本当に、アルビオンに勝てると思っているのか!トリステインが議会制に移行すれば、戦いを避けられるのだぞ!」

「主君を売り渡す者は犬にも劣るというが、まさにその通り。執行せよ。」

 

 

 警吏が引っ立てようとするが、ベルナルドは振り払い、傲然と歩きだす。

 執行人として立っているアニエスの前まで来ると。

 

 

「平民の手にはかからん!」

 

 と叫び、自ら頭を地面に叩きつけて自決。

 壮絶な最期に、処刑場にリッシュモン一派の最期を見に来ていた者達の一部は肝を冷やす。

 

 

 

「…モーガン、トマソン、ミリアムの処刑を執行せよ。」

「嫌だ、し、死にたくない!」

「わ、私は高等法院でやっていける才能があるんだ!」

「いやぁ!な、なんでもするから殺さないでぇ!」

 

 一斉に騒ぎ立てるかつての上司の子供達。だが、バート高等法院長の眼は冷たい。

 

 

「トマソン君。君には高等法院試験において、不正を行ったにもかかわらず不合格だった。」

「あの時は調子が悪かっただけだ!試験のために、5回も清書したんだからな!」

「綺麗に文字を書くことは勉強ではない。作業だ。覚えなければ意味がない。ちなみに、リッシュモンの正妻カロリーナの妹、ロジェンヌの子供エリクとディミだが…。」

 

 

 代わってノベラが口を開く。

 

 

「アンリエッタ王女殿下とギンメル卿の嘆願があったことで、極刑は行わない。今後、二人が婚姻して独り立ちするまで保護観察はギンメル卿が行い、それまでの期間に罪を犯せばギンメル卿を連座で裁くことにする。」

「「ありがとうございます。」」

 

 

 

「待てよ、な、なんでお前たちが許されるんだ!」

「そうよ!私も助けてよ!」

 

 

 

「売国奴の親族は極刑だ。アニエス殿、速やかに執行を。」

 

 

 散々抵抗し、逃げようとするが…刑吏の手から逃れられず、三人とも処刑が執行される。

 仲が良かった記憶など微塵もないが、親族が目の前で泣き叫びながら処刑されたことで震える双子。

 

 ザナックから呼び出しを受け、双子は恐る恐る前に出て跪く。

 

 

「エリク・シュトラだな?」

「は、はい。ザナック陛下におかれましては、ご、ご機嫌麗しく」

「処刑を見届けたばかりだから、良い気分ではない。お前が開発したというガーゴイルは、非常に有用性が高い。私の街道整備事業に伴い流通業の需要が増す事を想定していた事も含めて、期待している。人員を手配するため、アルビオン戦役中は製造と破損した場合の補修に専念せよ。」

「は、はい!」

「まずは、だれが見ても作れるように詳細な図面を用意しろ。」

「お、恐れながらザナック陛下。レコン・キスタの手に渡れば…」

「俺としては、その図面がレコン・キスタの手にわたってほしいところだがな。」

「ええっ?!」

「内戦で荒れ果てた状況では、土メイジは大忙しだ。その上でこのガーゴイルを作ろうとすれば、さらに土メイジは疲弊する。何より、鹵獲できればそのまま運用できる。こちらには、考案者がいるのだからな。しばらくは、妹とともに仕事に励め。」

「わ、わかりました。すぐに取り掛かります!」

 

 

 

 

 

 

―――――

 ヴァリエール公爵家の大広間にて。

 

「レコン・キスタの裏に、ガリア王ジョゼフ、か」

「本当なのですか?王政の打破を掲げている組織に、現国王が出資など…」

「事実だ。ガリア王の真意は推測になるが…トリステインとゲルマニアに同盟を結ばせ、アルビオンと戦わせる。我らが疲弊したところを見計らって、攻め込むつもりだろう。」

「な、なんと…」

「両用艦隊の整備が遅れているらしく、降臨祭までには間に合わない。であれば、降臨祭までに終わらせるためにザナック陛下の軍に参戦する。」

「恐れながら公爵様。降臨祭までに終わらせる、と言って終わらせた例はありません。」

 

 

「であれば、私が終わらせます。」

 

 

 ヴァリエール公爵夫人の言葉に、全員が静まり返る。

 

「そのために、準備を進める。一個軍団を編成する為に、前線士官の選抜を行う。」

 

 

 指示を受けて一斉に動き出すヴァリエール公爵家の文官と武官達。

 その中に混じっている一人の武官の腰には、飾り気のないシミターが下げられていた。

 

 




ゼロ魔二次で、レコン・キスタ陣営に入っていたオリジナル主人公が「連合軍をあえて上陸させて、補給路を寸断する」と提案して、すごく感心しました。
島国とはくらべものにならないレベルで本国からの補給が難しいので、補給路寸断はより効果的な一手になるでしょう。


おまけ。ゲルマニアで行われた会話

シュペー卿「ファイヤーボールやファイヤーウォールを吸収して無力化する。トライアングルスペルの『爆炎』は防げないが、いきなり『爆炎』を使うような冷酷な火メイジはまず居ない。まずはファイアーボールで様子見をするのが火メイジの定石だからな。」
依頼主「だが、見た目が地味すぎないか?」
シュペー卿「派手な見た目にしてしまうと、相手は魔法の武器と思って警戒するかもしれないから、これぐらいのほうが良い…。」
依頼主「炎を連想させるような模様を描くぐらいいいだろう?」
シュペー卿「……刃の片面を真紅で塗り上げておこう。それでいいな?」
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