トリステイン王子、ザナック!   作:交響魔人

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エア・ヴァン・シャール
帝政ゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿が作り上げた曲刀。長さ90サント。隣国トリステインの『烈風』を討ち取るべく、彼は風魔法無効の剣を作り上げた。
トリステインとの小競り合いで出陣してきた『烈風』を討ち取ってみせる、と息巻いていたゲルマニア貴族は…溺愛している妾腹の息子が欲しがった事もあってこの剣を与えた。
『あの烈風が妾腹の息子に討ちとられれば、トリステイン王国の心胆を寒からしめる』
という思惑もあったが…烈風のエア・カッターを無効にした事で味方の戦意は大いに高まったが、直後にライトニング・クラウドを放たれて絶命。

その後有効打を打てず、指揮系統が崩壊したゲルマニア側は逃走。その後、この曲刀はヴァリエール家の従者によって鹵獲された。

ある日ヴァリエール公爵は、自分に長らく忠勤を励んだ部下にその曲刀を手ずから与えたという…。


ザナックと、リリーシャ・モード

「…艦隊決戦後、ロサイスを占領する。問題は、ここにホーキンス将軍が到着している事だ。対策として王党派の残党に、硫黄を中心に物資を提供している。」

「?!ザナック陛下、どんな手品を使ったのですか…?」

「神聖アルビオン共和国は、綱紀粛正が非常に遅れている。検問は賄賂を渡せば通過し放題。数年、内政に力を入れていれば別だっただろうが…。」

 

 手は打った。

 後は、艦隊決戦に勝つだけだ。

 

「アーベラージの双月が参戦することは、知らしめよ」

「隠さないのですか!」

「どうあっても目立つなら、知らしめたほうが良い。それだけで火竜騎士隊は戦意を失う。」

 

 

 

―――――

 モード大公の粛清と、その後のレコン・キスタによる内乱。空軍士官の数は激減し、残ったベテランもタルブで失ったアルビオン空軍は…。少年メイジを即席士官として雇用。

 その状況で、神聖アルビオン共和国空軍は出撃する。

 

 

 『タルブのゴーレム』が参戦するという事で、火竜騎士隊の参戦は見送られた。

 

 

 

 

 神聖アルビオン共和国陸軍はロサイスに向けて進軍しようとしたのだが…。 王党派の残党が仕掛けた交通網の破壊工作に、陸軍は悩まされる。

 メイジが多ければ対応できるのだが、粛清と内乱で、メイジの数は大きく減っている。そこに、追い打ちがかかった。

 

 トリステインの同志が送ってくれた補給部隊に実戦配備されるガーゴイルの図面。なお、彼らとの連絡はそれ以降完全に途絶えた。

 敵軍が軍事転用するならば非常に有用であると貴族議会は判断し、土メイジを動員して制作、配置に取り掛かかった。

 こうして、土メイジの人手は割かれた。

 

 ホーキンス将軍直属の現場指揮官がトライアングルの土メイジが2人必要だと報告したのに、送られてきたのは疲れ切ったドットメイジ一人という状況であり、進軍が遅々として進まない。

 

 

 

 王党派の残党はザナックが裏から送った多数の支援を受けており、しかもウェールズ王子が帰還する、という事で王党派の残党の士気は高かった。

 一方、レコン・キスタは内戦で疲弊し、士気も上がらない。革命だの、王政の打破だの、聖地だの…末端の兵士にとってはそれよりも今日のパンである。

 何より、難攻不落のアルビオン領土への上陸を許したことで、アルビオン軍人として誇り高い者はともかく、徴兵された末端の兵士は士気が下がっていた。

 

 

 

 ラ・ロシェールからロサイスへの航路で起きた艦隊決戦、アルビオン空軍40隻のうち無事なのは20隻にも満たない。

 一方で、連合軍は60隻のうち45隻を残して勝利。そしてロサイスに、ホーキンス将軍は間に合わなかった。

 

 

 

―――――

 レキシントンにて。リリーシャ護国卿は聞きたくない知らせを聞く。

 

「艦隊決戦に敗北し、残存艦隊は20隻にも満たず…ロサイスに上陸を許した?!」

「リリーシャ様、こうなれば我々だけでもロサイスに出撃して。」

「連合軍は6万の兵力、こちらは6000しかいない!修理せねばならぬフネが半数。制空権は敵に…。ホーキンス将軍は?」

「途中で妨害工作を受けたらしく…。」

 

 

 目の前が真っ暗になるリリーシャ。

 難攻不落だが、一度上陸を許してしまった以上、残っているのは疲弊しきった共和国陸軍のみ。

 開戦前に恐れていたことが現実になりつつある。

 

 まだ竜騎士がいるが、5つの部隊のうち2つが壊滅という有様。

 クロムウェルの『虚無』でどこまで戦えるというのか…。

 

 

「ロンディニウムから、早馬です!レキシントン駐屯軍とサウスゴータ駐屯軍は敵軍を食い止めよ、との事!」

「…そうか。」

 

 

 まだだ、それならまだやりようはある。

 レキシントンに来るならサウスゴータから奇襲、サウスゴータを攻撃するならレキシントンから打って出る。

 リリーシャはまず、レキシントンの守りを固める。

 

 

 

―――――

 ロンディニウムにて。

 王族が使用していた私室で、クロムウェルは「使い魔」に縋りつく。

 

「しぇ、シェフィールド様!て、て、敵が、私の国に上陸してきました!」

「安心しなさい。貴方の後ろにはあのお方が付いている。」

「お、おお!ですが、不安なのです!こんなことなら、艦隊決戦を行わずに補給路を寸断しておけば、と。」

 

 

 『使い魔』の『主』も、その発想はなかったため、リリーシャの策には素直に感心した。

 だが、サイコロの目が艦隊決戦となったために、評決を艦隊決戦にするよう誘導した。

 

 

「サウスゴータの準備は?」

「は、はい!撤収を命じておきました!トリステインの同志から送られた設計図もあって、順調です!」

「これで、時間は稼げるでしょう。」

 

 シェフィールドは、あざ笑う。多少の、そう。多少の誤算はあるが…。すべては、『主』の計画通りに進んでいる。

 

 

 邪魔になりつつあるリリーシャ護国卿には「サウスゴータとレキシントンで敵を食い止める」と伝えて置き…。

 その実、サウスゴータからは撤収。レキシントンの後方に督戦隊を配置。

 

 サウスゴータで物資と戦力を分散すれば、連合軍相手だろうとモード大公の派閥であれば疲弊させつつ、時間稼ぎが出来る。

 そう、シェフィールドは考えていた…。

 

 

 

―――――

「ロサイスに上陸出来た。後は降臨祭までに、ロンディニウムを落として終わらせる。」

 

 

 この戦いにおいて、ザナックは総司令官として戦場に身を置いている。

 どういうデザインにするべきか、という事で揉めたため…ザナックは茶色を基調とした鎧、リ・エステーゼ王国に伝わる宝物を模した物をスクウェアメイジに作り上げさせた。

 

 

 アンリエッタも連れてきて、ウェールズ王子とともにヘキサゴンスペルを使うことも考えたが…。

 何かあったときは、アンリエッタに即位してもらわねばならない為、国に残すことにした。

 

 

『私に何かあれば、妹を即位させて支えてほしい』

 

 

 というザナックの言葉に、マザリーニ枢機卿とデムリ卿は…表情が抜け落ちた顔で小さく頷いた。

 どうやら、まだ許していないらしい。まぁ、あの夜のことはザナックも忘れられないのだが。

 

 

「アルビオン共和国陸軍は全部で5万、こちらは6万…。物資も、降臨祭までの分しかない。」

「レコン・キスタが王党派を倒したように、サウスゴータ、レキシントンの順に落としていくべきでは?」

 

 

 ロサイスにて、ゲルマニアの第二皇子カースレーゼ、ウェールズ王子を天幕に招き、参謀将校と将軍を連れて議論を交わしていた。

 

 

「サウスゴータは物資の集積地。ここを取れば物資に余裕が生まれる。」

「それに交通の要所。モード大公の派閥にとってもゆかりのある地。ここを切り取られば、レコン・キスタに加わっているモード大公の派閥をおびき出して各個撃破を狙えるのでは?」

「まて、物資は降臨祭までしかないのだ。ロンディニウムの攻略のみを考えれば」

「道中の城や砦を放置して、後方を寸断されはしないか?」

 

 

 

 裏にガリアがいる。ということを知らせないために、ザナックは表向き『連合軍の物資不足』を『降臨祭までにレコン・キスタを制圧する必要がある』という理由付けにしている。

 真相を知っているウェールズ王子もカースレーゼ皇子も同様だ。

 

 一方で真相を知らない部下の一部は躍起になって物資不足を解消しようと考え、行動している。

 

 

 

 

 

 

「ほ、報告します!サウスゴータから敵軍は撤収しつつあります!」

「あのサウスゴータが!切り取れるだと!」

「カースレーゼ皇子殿下、ここはサウスゴータを奪還して、拠点にしてはどうでしょうか?」

 

 

 色めき立つアルビオン王党派とゲルマニア軍の上層部をザナックはにらむ。

 

「物資の集積地かつ、交易の要所であり、モード大公派の拠点をレコン・キスタが差し出してくれると?」

「?!それ、は」

「だけど、サウスゴータを奪還出来るなら。」

 

 

 カースレーゼとウェールズも、動揺を隠せない。

 だが、ザナックは違う。

 

 サウスゴータを奪還したところで、ロンディニウムを降臨祭までに落とせなければ戦略的に敗北なのだ。

 ゆえに、撤収しつつあるサウスゴータに物資は残っておらず、もはやサウスゴータに関わるのは物資と時間を浪費するだけとザナックは見抜く。

 

 彼らも薄々わかっているが、それだけ軍事的にも魅力的なのだ。サウスゴータという都市は。

 

 

 

「ザナック陛下!サウスゴータ方面から、風竜騎士が一騎、偵察に来ています!」

「始末しろ。」

 

 敵は一騎、10騎で行けばしとめることも可能だろう。

 

 

「…レキシントンに向かうぞ。」

 

 

 

―――――

 アルビオンの風竜騎士隊のフーティス士官は、敵陣を偵察する。

 

「連合軍の予想侵攻ルートは…レキシントン?サウスゴータには来ないのか?」

 

 

 火竜騎士隊を殲滅した例のゴーレムは、ロサイスにいる。

 ゆえに、こうして風竜騎士隊の補充メンバーで最も練度の高いフーティスは、ロサイス近郊の偵察任務に来ていた。

 

 使い魔の風竜が警戒するような声を上げてフーティスは気づく。

 あのゴーレムでは無いが…

 

 

「…!トリステインの風竜騎士隊か!」

 

 

 

 

 

「…敵は一騎!」

 

 魔法の矢、を放たれるがフーティスはあっさりと躱す。

 このままサウスゴータへ撤退するのが定石だろうが…。

 

 

 難攻不落のアルビオン大陸に土足で踏み込まれた怒りと、タルブのゴーレムによる恐怖心を拭う為にも、彼女は一戦交える事にした。

 単騎で突っ込んできた事に、トリステイン風竜騎士隊は動揺し、四散する。

 

 包囲しようとするが、フーティスは抜ける!

 

「早いっ!」

「人竜一体…!」

 

 火竜騎士隊がタルブで殲滅でき、アルビオンに上陸出来た事。もはやアルビオン軍に、連合軍に立ち向かえるだけの力はない。

 その認識は、たった一騎の竜騎士に覆された。

 

 

「…アッハハハハハハ!」

 

 その雰囲気から、フーティスは高笑いをあげる。

 この練度ならどうとでも出来る!自分なら!

 殲滅は無理だろうが…。タルブの悪夢を払うために数名、血祭りにあげてやろう。

 

 

 

 

「この声色、もしかして女の子?」

「じゅ、十対一で挑むのか!風上を抑える!」

 

 

 ルネ・フォンクの指示を受けた赤毛の副隊長、アッシュ・ペントルドンは近くの同僚とともに行動しようとするが…。

 突然、揺れを感じてそちらを見る。

 

 金髪で金色の眼。フーティスが乗り込んでいた。

 

 

「?!」

 

 フーティスが素早く殴り掛かる。

 かろうじて防御が間に合い、手甲を殴ってしまい拳を痛めたフーティスは、苦悶の表情を浮かべつつ追撃しようとするが。

 

 新手が来たことで、風竜から躊躇なく飛び降りる!

 

「なっ!」

「馬鹿な!」

 

 双子のトリステインの竜騎士が驚愕するも、フーティスはフライで飛ぶと、自身の風竜に戻る。

 そんな戦いぶりを、ロマリアから来たオッドアイの少年は楽し気に見ていた。

 

 

 

「…へぇ。行くよ、ラズーロ」

 

 

 

 新手が来ていることに、フーティスは気づく。

 どうやら、トリステインではないようだが…。ゲルマニアでもないだろう。となれば、ロマリアか?

 

 

 

 互いにブレスで交戦するが、その邂逅でフーティスは新手が尋常ではない乗り手という事を悟る。

 竜騎士、ではない。何か別の力で竜の力を引き出している…。

 

 

 使い魔たる風竜と心を通わし、血のにじむような努力を重ね、力を追い求め続けた求道者であるフーティスはこれ以上の交戦は危険と判断。撤収する。

 

 金色の瞳と、オッドアイが交差し…。互いにそれぞれの陣地へ帰還する。

 

 

―――――

 サウスゴータにて。

 

 

「戻ったか、フーティス副隊長」

「敵軍はレキシントンに向けて出撃するものと思われます。それに合わせて我々も後背を」

「その計画は廃棄となった。」

「…はい?」

 

「貴族議会の命令だ。サウスゴータを放棄、撤収せよとの事だ」

「サウスゴータを敵に差し出すのですか!」

「物資は回収せよとの事だ。いくぞ。」

 

 

 不本意な作戦だが、命令とあれば仕方ない。

 だが…。サウスゴータを放棄するならレキシントンに配置されたリリーシャ護国卿とその直臣はどうなるのだろうか?

 

 

 考えても仕方ない。フーティスは撤退することにした。

 

 

「…ところで、あのガーゴイル?は一体…」

「トリステインの同志からもたらされた、物資運搬用のガーゴイルだ。なかなか役に立っている。連中を蹴散らした後は根こそぎ鹵獲して、活用してやる。」

 

 

 物資を回収したレコン・キスタはその場を後にする…。

 

 

―――――

 神聖アルビオン共和国軍レキシントン支部は、大騒ぎになった。

 

 

 

「敵軍が、ほぼ全軍をあげてレキシントンに進軍?!サウスゴータ駐屯軍はどうした?!何故動かない!」

「ホーキンス将軍が間に合えば、勝てます!それまでしのげば」

 

 側近の言葉は言い終わることが出来なかった。

 

「ほ、ホーキンス将軍はロンディニウムに帰還!サウスゴータから駐屯軍は物資を引き上げたとか!」

 

 駆け込んできたその伝令の言葉でリリーシャは察する。

 自分は、自分たちモード大公の派閥は切り捨てられた、と。

 

 

「これでは無駄死にです!ロンディニウムに撤退を」

「ロンディニウム方面に、部隊は?」

「…長弓隊が、配置されておりました。道を開けさせようとしたところ、射かけられ…。」

「督戦隊、か。」

 

 

 最初から。クロムウェルは聖地奪還、いや、王政の打破しか頭に無かった。

 戦後に内乱からの復興を訴え、奇襲に反対したり、艦隊決戦に反対したり…。さぞや、自分は邪魔な存在だったに違いない。

 伯父上を討ち取るまでは、旗印になったがもう用済み。

 

 だからサウスゴータを空にして、敵部隊を駐屯させて物資を浪費させつつ、自分たちを敵軍に始末させて実権を握る。

 それがクロムウェルの狙いだったというわけだ。

 

 

 リリーシャは、自分に付き従ってくれた側近達に目を向ける。

 

 

「よく、今まで私に尽くしてくれた。」

「リリーシャ様?」

「…認めたく、認めたくはないが…。父上は、きっと神と始祖のご威光に背く行いをしたのだろう。伯父上が、隠し通さねばならないほどの。」

 

 それは、リリーシャ・モードがずっと胸に秘めていたが、口には出せなかった想い。

 認めたくは無いが、そう考えればジェームズ王の行動につじつまがあう。何故、父を理由を明かさず処断したのかも。

 

 

「リリーシャ様…。」

「連合軍に、降伏の使者を送る。」

「お任せください!」

 

 

 

―――――

 ロサイスから進撃していたザナックは報告を受ける。

 

 

 

「レキシントンから、降伏の使者が?」

「聞くだけ時間の無駄でしょう。」

「いや、会おう。降伏するつもりなら、受け入れたい。」

「?!不可侵条約を結んでおきながら、攻撃されたと言いがかりをつけてきた相手です!」

「本当に降伏するというならば、余計な時間を取らずに済むし、戦力の消耗もなく情報と物資が手に入る。」

 

 

 

 一時間後。ザナックは使者と顔を合わせる。

 

「レキシントン総司令、リリーシャ護国卿の使者として参りました。」

「要件は?」

「…降伏を受け入れていただきたい。」

「ならば、レキシントンに駐留している部隊は武装解除を受け入れてもらう。それと、レキシントンの物資は連合軍が徴発する。」

「…はい。」

 

 

 どうやら、クロムウェルは。レコン・キスタはモード大公の派閥を切り捨てることを選んだようだ。

 これで情報と物資、何より大義名分を奪える。

 

 

―――――

 武装解除されたモード大公の派閥の者達。

 そんな中、ザナックは初めて従姉と出会う。

 

 軍装しているが、それでも美しさは損なわれていない。

 

 

「リリーシャ・モード。神聖アルビオン共和国の護国卿を務めている。」

「ザナック・ド・トリステイン。連合軍の総司令官だ。降伏するならば受け入れる。捕虜の宣誓を。」

 

 神妙にしているリリーシャを、ザナックは見つめる。

 降伏せねばならない、というのもあるのだろうが…。それ以上に、解放感を彼女からザナックは感じた。

 

 

 捕虜の宣誓をしたリリーシャから、ザナックは杖を預かる。

 

 

「降伏を受け入れてくれて、感謝する。」

「貴女からは聞きたいことがある。一緒に来てもらう。」

 

 

 これで。私の戦いは終わった。

 この時のリリーシャ・モードはそう考えていた。

 

 

 この時、は。

 

―――――

 レキシントンを無血で制圧し、新たに司令部を設置したザナックは改めてリリーシャと向き合う。

 

 

「伯父上と叔父上の間に何があったのか。知りたい気持ちはあるが、ジェームズ王が亡くなった今、それを知ったところで時は巻き戻らない。」

「…そう、ですね。」

「まず確認しておきたい。何故、王族であるのにレコン・キスタに加入を?」

「当時の我々は王党派に追われており、隠れ潜むのが精一杯だった。レコン・キスタが蜂起し、王党派に勝利を重ねた時に打診があった。ジェームズ王を討つために参加しないか、と」

「レコン・キスタを討つという一点で王党派と協力など心情的に無理だな。そして、聖地奪還と王政の打破を掲げてトリステインへ侵攻したと?」

「私は!何故父上が処断されたのか、その理由を知りたかった!それは叶わず…。そもそも、あの内乱が終われば戦後復興を最優先にする、という約束を交わしていた!」

「その書簡はあるのだな?」

 

 リリーシャは頷き、彼女の側近が即座に差し出す。

 

「…確かに確認した。」

 

 モード大公の派閥としては、内乱後は聖地奪還よりも復興を進めると想定はしていたが…事実だった事で今後やりやすくなったことを確認する。

 側近が即座に出してきた事といい、どうやら想定されていた質問らしい。

 

 

「ならば、不可侵条約を結ぶつもりだったのだな?」

「クロムウェルが暴走した事で止められなかった。あの戦いで亡くなったトリステイン人とその家族は、相当恨んでいる事だろう。」

「彼らが恨むべき相手は、指示を出した者だ。ところで…。艦隊決戦を行わない、という選択肢はあったのか?」

 

 

 その発言に、リリーシャは目を瞬かせる。

 

「…ハヴィランド宮殿の会議は筒抜けだった訳ですね。」

「…は?」

「私が艦隊決戦を行わず、ロサイスに上陸させた上で補給路を寸断する、という提案を間者なり通じて知っていた訳ですよね?」

「本当に、あったのか。」

 

 言葉を失うザナックの表情を見て、リリーシャは微笑む。

 

「私の提案が受け入れられていれば、立場は違ったかもしれませんね。」

「そうかもしれないな。まぁ、違うことが一つある。」

「それは?」

「私は貴女を処刑しないが、レコン・キスタは国王である私を確実に処刑することだ。」

 

 

 その他、レコン・キスタ内部の情報を聞き出し、リリーシャの身柄はトリステインが預かるという事で丁重にトリスタニアへ送るようザナックは厳命する。

 

 

 

「ウェールズ王子。思うところはあるだろうが、リリーシャへの手出しは許さない。彼女が死ねば…降伏したモード大公の派閥の者は、最後の一人になっても戦い続けるだろう。」

「わかっている。それにしても、父上と叔父上の間に何が…。」

「それは、後世の歴史家が暴くだろう。さて、これで残るはホーキンス将軍と、クロムウェルと虚無か。この顛末はアルビオン側に広く宣伝する。」




オバロ勢で、「街道の集結点」であり「物資の集積場」にして、「堅牢な大都市」が手薄になれば、大半のキャラが切り取りに行きそうです。
罠ではないか?と疑う人物はいるでしょうが、これだけの好条件がそろって切り取りにいかない理由がないので抑えるのは大変かと。

それでいて切り取ったら手勢の半数が反乱…。オバロ現地に『アンドバリの指輪』があったら、それを巡った争いが起きるでしょう。
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