ゼロ魔屈指の名言であり、アインズ様に必要な言葉だと思っています。
…アインズ様の『何か』は母親の死と同時に壊れている気がしますが。
ジョゼフ王が焚きつけた東方諸国の軍事動員、それと前後してゲルマニア軍によるサハラでの風石の採掘開始。
二方面作戦を強要されたエルフ側は多正面戦争を抱え込む事となる。
秘密裏に『聖地』へ赴くメンバーは、ルイズと才人、ジョゼフとシェフィールド、ヴィットーリオとジュリオ、ザナックとティファニア。
護衛として、西方聖典隊員が同行する。
「まぁ、それでも技術力で勝るエルフのほうが優勢なのだがな。」
様々な策略を張り巡らせたジョゼフとて、エルフ相手に勝利を得るのは容易いことではない。
「そうか?聖地へ潜入し、大いなる意志を破壊出来ればこちらの勝利だ。勝ち筋があるだけ、今までの大遠征より遥かにマシだろう?」
「ふむ、それもそうか」
はて。トリステイン王は「勝ち筋が無い戦い」をしていたか?とジョゼフはふと考える。
アルビオン戦役において、トリステイン側にも勝ち目は多少あった。
だが、考えても仕方ないと切り替え、ジョゼフは眼下の光景を見つめる。
ゲルマニアと砂漠の間にある「未開の地」。
トロル鬼やオーク鬼、翼人が住む広大な手付かずの自然が残る上空を風竜に乗りながら、ザナック達は進む。
ちなみに、乗っている風竜は「未開の地」をテリトリーとしている風竜の大家族であり、ヴィンダールヴであるジュリオが従わせている。
ここを突破し、海に沈んでいる「聖地」へ入り込むというのが計画だ。
「ジョゼフ様。エルフの巡視船を発見しました。一隻です。」
「一隻か。」
ザナックは空を見上げる。
タルブ戦役において、アルビオンの火竜騎士隊を壊滅させたアーベラージのゴーレム。それは雲の中を進んでいるはずだ。
同様に雲の中を進んでいる才人も、巡視船の存在に気付き、打ち合わせ通りに行動を開始する。
―――――
同時刻。エルフの巡視船にて。
「二方面で戦争だというのに、俺たちはここで巡回任務か。」
「一番退屈な任務だな。」
「一番重要な任務だ。蛮人どもは、間もなく大隆起で壊滅する。蛮人が生き残るためには、大いなる意思を破壊するしかない。連中が少数で通過できるルートの一つがここだ。」
「考えすぎでは?蛮人どもに何ができるというのです?」
巡視船の艦長は新米の発言に呆れる。
二方面に敵を抱えたことで、人員不足に陥ったため、重要度の低い地域の哨戒任務は練度の低い新米が補充された。
「ん?風竜が一家で移動…?妙だな。あんな動きは今までしてこなかったはずだが…。」
エルフの空軍艦隊に所属する老練な艦長はその動きの奇妙さに気づいた。
蛮人だろうと警戒するべき、と部下に通達していた彼でさえ、深層心理ではこう思っていた。
『蛮人共に、自分が知覚できない高度を飛行するゴーレムが作れるはずがない』と。
その常識は正しかった。少なくとも。
アーベラージのゴーレムが、太陽を背に奇襲を仕掛けてくる瞬間までは。
―――――
「え、エルフのフネが…。」
真っ二つになったフネからバラバラと落ちていく小さな影。その正体が何なのかわからないルイズではない。
エルフの恐ろしさはよく知っている。敬虔なブリミル教徒であれば、その死を喜ぶべきなのだろうが、非現実的な光景に思わず呆然としてしまう。
「巡視船を落とした以上、連絡が無いことにエルフ側が気づくかと。」
「その通りです、ジュリオ。急ぎましょう。」
一方、ロマリア出身の二人は全くぶれる事無く旅路を急ぐ。
後に残されたのは、墜落したもののかろうじて一命をとりとめたが、トロル鬼に襲われて最期を遂げるエルフ達だけだった。
―――――
同時刻。
サハラに進出してきた蛮人を撃滅すべく、出撃してきたエルフの本国艦隊司令官であるアムラン上将は蛮人の艦隊をみていぶかしむ。
「中央の艦隊はなんだ?」
「ガリアの空軍、両用艦隊という物です。海でも空でも運用できるとか。」
「蛮人にしては面白い発想だな。何隻か接収するとしよう。」
同時刻。
連合軍の空軍艦隊の中央を占める、ガリア王国両用艦隊の艦隊総司令、クラヴィルは悪寒を感じて身震いする。
「どうなされましたか?」
「いや、何でもない…。エルフと戦う事になるとは。」
「陛下から、事前に策は授かっているのでは?」
「ああ、トリステイン両陛下と協議したという策を授かってはいるが…。」
クラヴィルは空を見上げる。
「…これを、「策」と言っていいのだろうか?」
思わず具申してしまったが、「では代案を述べられよ」と告げたトリステイン王に対し、代案を彼は持ち合わせていなかった。
ひたすらジョゼフの命令に忠実に従った結果、今の地位を得た。今回もそのつもりだ。
空の覇者であるアルビオン空軍がレコン・キスタの動乱で壊滅した今、ハルケギニア最大の空軍になった責任は大きい。
―――――
「各艦、攻撃開始!」
アムラン上将にとって、これは戦いではなく演習。
エルフと蛮人にはそれだけ技術力に差がある。
ゆえに、今回も楽に勝てるはず。
トリステイン、ゲルマニア、ガリア、ロマリア、アルビオン。ハルケギニア諸国のフネが結集した陣営。
技術力で及ばず連携不足だが、エルフの空軍に対し、数では大きく勝っている。
早々に撃墜数が目立ち、慌ててゲルマニア艦隊は退却を開始。空白地帯が出来てしまったために、予定よりも早めに撤退を開始するトリステイン艦隊。
ロマリア艦隊は一歩も引かず、撃墜されそうになったら体当たりしてでも落とそうとして躱される中。
中央を占めるガリアの両用艦隊も、徐々に撤退を開始する。
「各艦、追撃を開始。他愛もない。このままアーハンブラ城まで進撃してもいいな。」
技術力で勝るが故の驕り。
彼らは、そうやって今まで勝てた、勝ててしまっていた。彼の認識が甘かったわけではない。
ザナックが、辛すぎただけだ。
―――――
連合空軍が撤退し、エルフの艦隊が追撃を開始する戦場。
アルビオン風竜騎士隊は、連合艦隊のさらに上空、雲に隠れながら機会を伺っていた。
「敵船団が分散した!各員、吶喊せよ!」
ザナックが立案した「秘策」を実行するべく、彼らは奇襲を敢行する。
危険な役ではあるが、戦力が低下したアルビオン軍の存在感を各国に示す事で国際情勢におけるアルビオン王国の地位を向上させたいウェールズ王の思惑。
空の戦いであれば自分たちこそハルケギニア最強の自負を持って、彼らは志願した。
―――――
「アムラン上将?!蛮人の竜騎士が奇襲してきました!」
「旗艦に乗り込むつもりか、蛮人の分際で!散弾で迎撃しろ!」
散弾が放たれてくる事を察知し、フーティスは合図をする。
機動力に長けた風竜騎士は一斉に四散する。
同時に「仮面をつけた」スレンダーな女性が、風竜から飛び降りて旗艦に降り立つ。
その様子は使い魔の目を通して、両用艦隊の旗艦に配属されているメイジからはっきり視認されていた。
―――――
「クラヴィル司令!残念ながら、秘策は失敗に終わったようです…」
「いや、ここからだ。」
「ですが、アルビオンの風竜騎士隊は退却…。」
次の瞬間、エルフの旗艦で「竜巻」が発生する。
「…は?え?」
「これが陛下の秘策。撤退している我らをエルフが追撃して分散した所で、雲に隠れていた風竜騎士が旗艦を奇襲。『烈風』を敵旗艦に送り込む。」
「烈風?!おとぎ話では無かったのですか?!」
「私もおとぎ話だと思っていたよ。この瞬間までな。」
2発のエア・カッターが旗艦を牽引している風竜の鎖を断ち切り。
解放された風竜は四散し、ほかのエルフの艦隊を牽引させられている仲間を解放すべく襲撃する。
「よし、反撃開始だ!信号弾を上げろ!」
旗艦が襲撃されていることに気づき、追撃をやめて旗艦を救援しようと反転したところを牽引させていた風竜達が襲撃してきて混乱の様相を呈している中で。
連合艦隊は再度攻勢をかける。
―――――
「ば、蛮人…蛮人風情があっ!」
直属の部下がたった一人の蛮人に蹴散らされ、怒り狂ったアムランはシミターを抜く。
たかが、蛮人ごときに。それもたった一人にフネを奪われるなど、彼のプライドが許さない。
部下が壊滅しても、相手が烈風だろうと戦意を滾らせて立ち向かえる彼は、優秀な指揮官であり軍人であった。
「まもなく他の艦隊が帰還する!そうなればお前に逃げ場はない!」
フネの制圧を完了したら、敵の指揮官を捕らえろ。
ザナックからそう命令されていた烈風は「ブレイド」を唱え、アムランと切り結ぶ。
―――――
サハラにおける戦いは終わった。
作戦に参加したハルケギニア諸国の艦隊、2割が撃墜され、残った艦隊も半数は何かしら修理が必要ではあったが。
大破しているとはいえ、エルフのフネ、それも旗艦を鹵獲した上に総司令官を捕虜にした事実は、連合軍の士気を大いに高め、エルフの士気を大いに下げる事となる。
Q;エルフの旗艦に「カウンター」をアムランは張っていないのですか?
A;相手が蛮人なので、必要ないと判断しています。